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銀河騎士隆盛期 壱 神の章(公国惑星オーウェル編)1~2


名もなき荒野


 ゴーッと風が流れていた。

 公国惑星ローウェルの、寂れたローランド辺境伯領地、ククルククスの外れにある、名もない荒野のただ中で、シーカゲ(カイゼル)は、金属製の両手の義手、それぞれの、親指と薬指を合わせて、その二つの掌に僅かに隙間を開け、その隙間に只管、ジンウ力を集約し、放電の火花が散るイメージを思い浮かべて、ジンウ力を練っていた。

 ジンウ力を練ることで、全身に微細ではあるが、静電気が発する域に、達したシーカゲ(カイゼル)は両手の掌に、より強い電力を集結しようと、それをイメージしながら、その力を増すために、試行錯誤を繰り返していた。

 親指と薬指を合わせて、その左右の掌を合わせる手印ムドラーは、身体の強化のためにシーカゲ(カイゼル)が独自に編み出したものだ。

 シーカゲ(カイゼル)はカンデン一門に対する、敵愾心のみを心に秘めて、ジンウ力の暗黒面を求めて、交易船を乗り継ぎ、銀河を放浪した。

 ジンウ力の物理的効果を生涯、研究したと伝えられるアレックス老師が、晩年を過ごしたのが、このククルククスの外れにある、名もない荒野のただ中だということをシーカゲ(カイゼル)が伝え聞いたのが、三か月前だった。


 苔の一念で、その住処(木造の粗末な山小屋)を探し当て、その小屋の古ぼけた木箱の中から、ジンウ力を電気エネルギーに変換し、空間に放出する研究の資料を見つけたのは、彼の執念の一言に尽きるだろう。

 その、アレックス老師が残した記述を元に、シーカゲ(カイゼル)は、自ら試行錯誤した、身体に生じた微細な静電気を両腕の掌の特殊なムドラーに集め、それを放電する力を、少しづつではあるが増しつつあった。

 特に、ジンウ力を丹田に集約する為の、呼吸法、息を吸いながら掌を上に向けて、上げ、息を吐きながら、その掌を下に向けて下す、というものを取り入れてからは、自分の身体で練ることのできるジンウの力が、格段に増した。

 その結果、空中電撃の力と、その到達する距離が、自分でも驚くほど増した。シーカゲ(カイゼル)は不敵な笑みを浮かべて、高笑いした。この威力なら、カンデン一門にも通用するだろうという確信を胸に。

 シーカゲ(カイゼル)はジンウの暗黒面の修行を完成するために、公国惑星の南極にある、コキュートスの森の奥、氷河期のサーベルタイガーの生き残りが潜むという、裁きの洞窟の深部に入ると決めた。出会いうる最大の強敵を求めてのことだった。


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