懺悔
「オジサン…俺と遊ばない?安くしとくよー。今無一文だから…」
通りかかった人当たりの良さそうな、いかにもカモになりそうなスーツを着たサラリーマンみたいな男に声をかけてみた。
まあこの辺りは二丁目なんで、声掛けてれば誰かしら誘いに乗ってくれるだろう。
「仕事で通りかかったけどホント二丁目こえーなー。なんだ金無いのか?」
「うん。客に一服盛られて財布ごと持ってかれたー。」
「不便だなあ。それでこんな所で座り込んでんのか。飯食ってんのか?ガリガリだぞ?」
「んー。昨日から食って無い。」
「ならとりあえず何か食わせてやる。何食いたい?」
「赤くてドロドロした奴は無理ー。多分吐いちゃう。オジサンの白くてドロドロしたのなら飲んだげてもいーよー?」
「白いのな。なら胃に優しいうどんでも行くか。」
そう言ってうどん屋に連れて行ってくれた。
久々にまともな物を食った。
流石に頭が冴えて来て悪いと思ったので、行き付けてるバーへ連れて行った。
○○○○○○○○○○
「マスター。この人命の恩人だから俺のツケでなんか飲ませてあげてー」
「タクミ、払える目処はあんの?」
「今日は財布やられたけど、まあ近い内にねー」
「ハイハイ。可愛いタクミの恩人ならサービスしときますよー」
「おじさぁぁーん、あそばなぁいー?安くしとくぅー。」
前に来てた子がいた。
別の客に絡んでいた。
まだやらされてんだなー。
まあ長くは身体も持たないだろうなあ。あの感じだと…
明日は我が身か…
近い自分の未来を見てる気分になった。
「俺は佐々木って言います…」
オジサンがマスターに挨拶してるけど、目はあの子を見据えていた。
何かあの子の客になりたい…と言うより何だか…猛禽類みたいな目に見えた。
今まで優しそうに見えていたので少し驚いた。
生理的に嫌なんかな。あー言うのは。
暫くしてマスターはあの子を追い返していた。
○○○○○○○○○○
「あれー?佐々木さんだー」
久々に金が纏まって出来たので、マスターに溜まったツケを払ってついでに飲みに来た。
「タクミくん、今晩は。」
「佐々木さん、あれから何度か飲みに来てくれてるのよ。いやータクミ、良いお客連れて来てくれてありがとー!」
何故かマスターに感謝されている。
なら何か奢ってくれよ。
「佐々木さんだいじょーぶ?こーゆー店、家族とか心配しない?佐々木さんノンケでしょ?」
俺は大体そっちかどうかは鼻が効く。
「ははは。俺は妻に家出てかれたからなー。今は寂しい一人暮らしだよ」
「えー!マジでー!狙っちゃおうかなー俺!」
俺もノリで営業トークをした。
そんな和気藹々と喋ってるといかにも未成年っぽい子が店に入って来た。
オドオドしていて多分初めて来たんだろう。
俺は思わず声をかけてしまった。
「どうした?ボク。こんな所来ちゃダメだろー?」
「あのっ俺っそのっ…自分がゲイかもって…確かめたくて…」
「そっかそっかー。まあ話聞いたげるからこっち来なー。あっちは危ないお兄さんが多いから…」
確かに店の奥にはあまり良い噂を聞かない輩が屯っていた。
「マスター、オレンジジュースー。」
「はいよー。」
そこからその子の話を聞いたげてアドバイスをしてあげて家に帰した。
「もう来ちゃダメだよー。成人したらまたおいでー!」
「タクミくん、凄いねえ。子供の扱い慣れてるし、先生みたいだった」
佐々木さんが関心していた。
「タクミはリアル先生だったんだよー。佐々木さん。」
「そうなんだ!」
「うん…まあ…色々あって先生出来なくなって…今はそのひぐらし。」
「そうかあ…」
俺はさっきの子にまるで高橋に出来なかった事をしている気持ちになっていた。
あの時もちゃんと話を聞いてあげれば良かった…
あの時、嘘でも好きだよ、付き合うよって言えば良かったのだろうか。
ずっと後悔していた。
同じ年頃のさっきの子に、まるで高橋に懺悔する様な気持ちになっていた。
佐々木さんは根掘り葉掘り聞かないでいてくれた。




