誕生日の決意
先生、直樹の誕生日に自分の好き嫌いは良く無いと思うよ。大人として
直樹は今は学年で言えば高校3年生になっていた。
この家に来た時は16歳で、慣れない生活なんかであれよあれよと年が明けて、暫くバタバタしていて…
「そう言えば直樹って誕生日っていつだっけ?」
「えっ?もう終わってる…10月…」
と、知らない間に17歳になっていた。
それから年が明けて夏が過ぎ…
家に来てから今年は初めて直樹の誕生日を2人で軽くお祝いしようとなった。
あまり今までそう言う経験が無かったらしく、直樹は物凄く喜んでいた。
どうしよう…期待に応えられる自信がない…
今までだと、「プレゼントは俺!」なんてアホな事もしていたが…
子供の誕生日ってやっぱケーキとかプレゼントとかよなあ…
まず俺がケーキなんか絶対食いたく無い…
店の客とかならモエとかマッカランとか山崎辺り出すと喜ばれたりするけど…
流石に未成年に酒は出せんしなあ…
学校居た頃はあんなに子供に囲まれていたのに、今は本当に分からん。
何食いたいか聞いても直樹は全然分からんらしい。
俺も特に食に思い入れが無いから困っている。
まあ何かデパ地下で適当に見繕おう。
プレゼントは…
ずっと考えていたやつがあった。
丁度良い機会だと思った。
○○○○○○○○○○
「何か誕生日に夢とか持ってたら本当にすまん。俺、こう言うのホントわからんくて…」
「ううん!俺、誰かに誕生日お祝いされた記憶殆どなくて…本当に小さい頃に親に。気がついたらいつも家もメチャクチャだったから終わってた感じでさ。ちゃんと覚えててくれてお祝いされるのが本当に嬉しい!」
ちゃんと…ホントすまんなあ直樹…結局普段より少しだけ豪華になっただけだった…
次は店に来る子持ちの客に子供が喜ぶ奴を聞いとくからな。
次は…
「あんな、直樹。今日で18になった。良い機会かなって思ってな。俺、前々からずっと考えてたんだけど…」
そう言って俺は養子縁組の資料を直樹の前に出した。
「俺はこの先も直樹とずっと一緒に居られたら良いなあって思ってる。直樹と家族に…俺の子供になって欲しいなって思ってる…」
「直樹はどう思うかな…?」
佐々木さんの直樹が18になったら家を出て…の話があったので、それまでには何とか直樹と話し合って、直樹が良ければ養子にしたいと思っていた。
「家族…嬉しい…タクミさんと…ずっと一緒…夢みたい…」
「ホント!?喜んでくれてる!?俺も嬉しい!」
「嬉しい!嬉しい…嬉しい…けど…」
「?」
「俺はね…タクミさんに親になって欲しいんじゃなくて…隣にいたいの…」
「…」
「ごめんね…俺は…タクミさんが好きなの…困らせてるよね…」
「…」
「ずっとタクミさんが苦しんでるの知ってるのに…こんな事言っちゃダメだったよね…」
「…」
「ちょっと考えさせて…ホントににごめんね…ホントに嬉しかった…」
「…」
そう言って直樹は自分の部屋へ行った。
俺は…
ここで何か言うとまた…どうしても高橋との事を思い出してしまって
また同じ結末になるんじゃ無いかって
怖くて
恐ろしくって
一言も、何も言えなかった。




