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39:御前会議-2

「ウォースは以前、禁呪に手を出したことがあります。そのときの呪いは我らの手で打ち破り、呪いはウォースに返りました。禁呪を扱う者はただでは済まなかったのでしょう、その後しばらく奴らは大きな動きを見せませんでした。だが、最近またちょこまかと行動を起こしているようです。海軍では何か動きを掴んでいますか?」


 そう話を振られ、海軍元帥ユアンシェンが口を開いた。


「現在、ウォースは悪名高きデッセル団を始めとする多くの海賊団を使って、我が海域で海賊行為を繰り返している。これに対し、海軍では巡視船を出し、奴らを見つけ次第駆除している」

「ウォース自体は何か攻撃を?」

「いや、あいつらは海の向こうの自国に引っ込んで、全く動こうとはしていないな」

「ふむ……」


 ドルネールが少し考え込むような仕草を見せると、国王が「どうした?」と声をかけてきた。


「ドルネールよ、何か気になることがあるか?」

「はい、陛下」


 居ずまいを正し、ドルネールが国王に向き直る。


「今までにもウォースは禁呪を用いてきたと申しましたが、あの国が禁呪を使ってくるのは、大体において二十年から三十年ごとなのです」

「ほう?」


 二十年から三十年など彼らにとっては昔話の領域だが、齢百二歳のドルネールにしてみれば何度か経験している「いつものこと」だった。


「これは、呪いが術者に返っているためだと思われます」


 呪いは魔法とは別の(ことわり)だと言われている。プリモナール王国では魔法が盛んだが、呪いについてはウォースの方が研究は進んでおり、プリモナールは未だそれに追いつけていなかった。だが、呪いが破られるとその呪いが術者に返るといのは、プリモナールでも知られていることだ。


「なるほど、禁呪が返ればその術者は生きてはいまい。次の術者が育つまでの間はおとなしくしておると、そういうことだな?」

「我々もそのように考えております」


 国王よりも遙かに年上で、プリモナール王国の文字通り「生きる辞典」であるドルネールがそう言うのだ。国王はその内容に思わず眉をしかめた。


「そうして、そろそろ次の頃合いだと、そなたは見ておるのだな?」

「ご明察、痛み入ります」


 その言葉に、会議場にいる者達は皆、低く呻くような声を上げた。


 過去に使われた禁呪については、いくつか伝説のように言われている。

 曰く、魔獣を操って、大量の魔獣を他国に送りつけたらしい、とか。

 曰く、呪いの力で魔獣が人間の腹を突き破って現れ、多くの村人が食い殺されたことがあるらしい、とか。


 二十年前には王立騎士団が騎獣とする妖魔──魔獣の中でも知性があり、人間が躾ける事のできる物を妖魔と呼ぶ。騎士団では、これらを使役して彼らの騎獣としている──がいきなり魔獣化し、騎士団では大きな被害を蒙ったという。これは「らしい」などではなく、実際にドルネールが対応した事件だ。


「つまりドルネール総長は、剣聖・ユグノー・アル・オニールを、この禁呪の対策に当たらせているとい事ですね?」

 陸軍元帥エマシアス王太子がそう言えば、ドルネールは曖昧に首を横に振った。


「エマシアス元帥。私はユグノーの任務は密命だとしております。陛下であっても、ユグノーの任務について語るつもりはございません」

「不遜だぞ、総長!」


 そう言って立ち上がったのはアスターだけで、それを叱責したのは国王だった。


「アスター。剣聖ドルネールに向かってなんたる不遜。剣聖は余が亜父と思っている方だ。その剣聖に向かって、たかが王立騎士団副総長に過ぎぬそなたが無礼を働くなど許さぬぞ! どうやらそなたは副総長という地位に胡座をかき、なにか勘違いをしているようだな」

「で、ですが、陛下に対してこのような……!」


 ことあるごとに国王はドルネールを亜父───父に次ぐ者と呼ぶが、アスターにしてみれば、国王である父がいくら剣聖とは言え、臣下を敬うなどあり得ないことだ。


 だが。


「ならばアスター。陛下である余に対して、そなたが喰ってかかっておることは、どう考えておるのだ。まさか余の王子であれば、相手が剣聖であっても、国王であっても、何をしても許されると思うておるのか」

「ま、まさかそのような……」


 御前会議の場で国王に対して逆らっていた自覚など、アスターにはなかった。国王の言うとおり、自分はどうやら父である国王に対して甘えていたらしい。だがここは御前会議の場で、国の重鎮に今のやりとりを見られているのだ。

 即座に顔を青くしたアスターを、国王は指で指して、弾くような仕草をした。


「衛兵、その不心得者を離宮に連れて行け。そなたには三ヶ月の謹慎を命じる」

「父上!?」

「次に剣聖に無礼を働けば、そなたを王立騎士団から追放し、即日テレンス王国に婿入りさせる故、そろそろ腹を決めておとなしくするが良い」


 そう言ったきり、国王は二度とアスターを振り返らなかった。議場で警護をする近衛兵が、アスターの前後に立って退出を促す。


「父上! お待ち下さい、父上!!」

「では、会議の続ける。それで剣聖、ウォースについてだが」

「父上!!」


 国王に向かって必死で嘆願するアスターを、近衛兵達が早く立つようにと促す。だが、例え国王の命令があっても、相手は王子だ。勝手に体に触れて連行するような不敬は行えない。



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