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38:御前会議-1 

  ◇◇◇ ◇◇◇


 プリモナール王国、王都デネグフト。王城の会議場にはテーブルがロの字型に組まれ、国の重鎮が座っている。上座にはアウグスト国王が、その右にカゼフ宰相が、左側には第一王子である陸軍元帥エマシアス王太子が座っている。右の列には各大臣や筆頭判事などの文官が座り、左の列には武官が座る。第二王子である海軍元帥ユアンシェン、剣聖ドルネール王立騎士団総長、剣聖テオドール王立騎士団飛行団長など錚々たる顔ぶれが並び、剣聖ドルネール総長と剣聖テオドール飛行団長の間に第三王子であり、王立騎士団副総長の肩書きを貰っているアスターが座っていた。


 十日に一度、国の重鎮達はこうして国王に招集されて御前会議を行う。議題はその時々で違うが、先ほどからアスターが剣聖ユグノー・アル・オニールについて、ドルネール総長に向かって問い糾していた。


「ドルネール総長! ユグノーはあなたの命令で秘密任務に就いていて不在だと言うが、それは本当なのですか!? もし本当なら、何故副総長である俺にも何の説明もないのです!? ユグノーがいないから、この国の魔獣の討伐件数は半減しているのですよ!? あなたの命令で、国を危険にさらしているのです!」


 アスターが詰め寄っても、ドルネールは全く素知らぬ顔をしている。


オーサ・アル・ドルネール。王立騎士団総長である彼は、どう見ても六十代くらいにしか見えない。かつてアッシュブルーだった髪色こそ今は真っ白くなっているが、眼光は鋭く、まるで一枚板のようにがっしりとした体躯には少しの隙もない。。だがドルネール総長は三代前の国王の時代からこの席に座っているのだ。当年取って百二歳。膨大な魔力量が彼を老いから遠ざけている。たかが二十五歳のアスターなど、彼から見たら幼子のような物だった。


「ユグノーには今特殊な任務を与えています。ユグノーが今の任務から退けば、この国は今以上の危険に晒されます。ユグノーにしかできぬ仕事です。だからこそユグノーをその任務に就けたのです。この国を憂うのであれば、殿下には口を出さずにいただきたい」


 ドルネール総長の声は低く平坦だった。何の感情も見えない声。だが、アスターを「殿下」と呼び、敬語で話す話し方に、彼の思いが見て取れる。

 アスターは副総長で、ドルネールの配下なのだ。本来ならアスターを「殿下」と敬称で呼ぶことも、敬語で話すこともおかしな話なのだから。


「し、しかし総長!」

「王の御前会議の貴重な時間を、まだ水掛け論に使いますか? 話があるなら騎士団本部でお聞きします」

「本部ではあなたは私の話をまともに聞かないではないか!」


 その物言いに、その場にいた者達は溜息をついたり呆れた顔をした。


 ドルネールの言うことは全くその通りで、そんな話は御前会議の場ではなく、騎士団本部でやってくれ。大体、総長が自ら第一騎士団長に下した命令に噛みつこうとは、アスター殿下はどうかしているのか? 副総長という地位を得ているのなら騎士団の規律には従わなければならないし、総長がまともに話を聞かない時点で少しは察するべきだろう。


 だが、アスターは総長がユグノーの不在を庇っているだけだと考えている。本当は命令など出していないはずだ。ああ、ユグノーは俺のために身を引こうとして、姿をくらませたのだ。そんな必要は全くないのに! 早くユグノーを探し出さなければ。そのためには総長を説得しなければならないというのに、総長は自分と話をするつもりが全くないようだ。それなら、御前会議という逃げ場のない場所で言質を取るしかないではないか!


「アスター、控えよ。御前である」


 エマシアスが冷たく切って捨てると、アスターは相手が王太子であることを忘れてでもいるのか、「ですが!」と反論しようとする。


「御前である。今後御前議会への参加を禁止されたくなければ黙れ」


 兄の冷たい目。第三王子というスペアにもなれない身で、国王の前で剣聖にくってかかろうなど、どれだけ身の程知らずなのか。子供のわがままに付き合っている暇など無いのだ。


「剣聖ドルネール。愚弟が失礼した」

「わたくしの指導不足にございましょう。どうかご容赦を」


 ドルネール総長にとって、副総長である筈のアスターはただの生徒であり、任務について情報を共有するべき相手ではないと言ったような物だ。アスターが声を上げようとしたが、エマシアスに睨まれて口を閉ざした。

 この議場にいる者達は皆、白々とした顔でアスターを見ている。アスターがそれに気づいていないことで、更に温度感が下がっていく。


 ドルネールはそんな議場を見回してから、小さく咳払いをした。


「それよりも私は、ウォースについての話がしたいのですが、よろしいですか?」

「ええ、もちろんです」


 海を挟んだ隣国ウォースとは現在、不可侵条約を結んでいる。だがそれは表向きで、陰では海賊共を操って、プリモナールに少なくない被害を与えているのだ。だがそれを問い糾しても、「海賊共には我々も手を焼いているのです」などと白々しく嘯くばかりだった。

20260314:ドルネール総長の見た目について一部修正しました。

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