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34:真夜中の森-2

 慌てて辺りを見回すと、遠くに何かが飛び立っていくのが見えた。


「鳥? こんな、夜に?」


 ダリルは茫然と空を見上げ、それから慌てて宿舎に戻ることにした。

 ヒューイがいない以上、見つかったら自分が脱走したと思われる。それに、こんなところで狼や熊に襲われるのはまっぴらだ。もしヒューイが脱走したんならしたで、そん時には大いに嘆いて見せれば良い。俺がこんなに良くしてやったのに、根性がないガキはこれだからって。そうだ。俺の責任じゃない。あいつの事なんか知るもんか。


 森からの帰り道は、ひどく暗くて、誰かに見つかるのではないかとビクビクしながら歩いた。こんな夜中に、何だって俺がこんな目に。もしあいつが戻ってきたら、ただじゃ済まさねぇぞ。


 そうしてダリルはこっそりと部屋に戻る事に成功し、ベッドの中でイライラしながら眠りに就いた。


 朝目覚めると、やはりヒューイの姿はなかった。ほら見ろ、やっぱりあいつは逃げ出したんだと思ったが……昼前には小走りに工廠に向かって行くヒューイを見つけてぎょっとした。


「おい、ヒューイ!」

「あ、ダリル!」


 声をかけると、ヒューイはすぐに足を止めてダリルの元に来た。まったく悪びれた様子がない。何て奴だ! 俺に見られてたとも知らないで!


「おい、お前昨日抜け出してどこ行ってたんだよ!」

「え? 昨日? あ、セオと剣の稽古を……」

「その後だよ!」


 堂々とごまかそうとするヒューイにむかつきながらそう詰め寄ると、ヒューイは不思議そうに小首を傾げた。


「え? その後は疲れてすぐ寝ちゃったけど……」

「は? お前ばれてないつもりか? 俺はお前の後を追って森まで行ったんだぞ」

「森?」


 ヒューイは目をぱちくりさせると、申し訳なさそうな顔をした。


「ごめん、それ、夢でも見たんじゃないかな……。セオと剣の稽古をした後は、俺、疲れてすぐ眠っちゃったよ……?」

「は!? そんなわけないだろ!」


 だが、ヒューイはまるで可哀想な物を見るような目でダリルを見ると、「今日はちゃんとぐっすり寝れると良いね。じゃ、俺艦長のお使いで工廠に行かないといけないから、また後でね!」と、さっさと立ち去ってしまった。


「は? あの野郎……! アレで誤魔化したつもりか……!? 絶対しっぽを掴んでやるからな……!」


 それからダリルは毎日ヒューイを見張っていたが、夜中に彼が一人で抜け出した事は、その後一度もなかった。疲れて眠ってしまう事はあったが、気を張っているせいか、ヒューイとセオが戻ってくるとすぐに目を覚まして、それからヒューイが抜け出すまで息を潜めて気配を探る。


 だが、気がつくと朝になっていて、ヒューイが抜け出す気配を感じた事は一度もなかったのだ。


『ごめん、それ、夢でも見たんじゃないかな……』


 そんなわけないだろ!? そう思いながら、それでも当たり前のように普通に暮らしているヒューイを見ていると、なんだか自信がなくなってくる。


 まさか、本当にアレは夢だったのか?


 いや、でもまさか。そんなはずはない。俺はしっかり覚えている。あの森の暗さ。木々のざわめき。鳥が空を飛んで……鳥? あんな夜中に、鳥が空を飛ぶか……? いや、フクロウやヨタカなら……。


 ダリルはぐっと喉を詰まらせた。


 あの距離で、あの暗さで見る事ができたのだ。フクロウやヨタカのサイズなら、あの大きさで見えるはずがないのだ。あの鳥は相当大きかった。まるで、そう、魔獣のような。


 魔獣? 魔獣がこんな海沿いに? いや、まさか。魔獣は山に出る物だ。こんな所にいるはずがない。


 なら、本当に夢だった……? いや、まさか。でも……。 


 そこでダリルはふと思い至った。



 そうだ。もし夢でなかったとしたら……あの時ヒューイは、どこで何をしていたのだろうか────。


   ◇◇◇ ◇◇◇

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