31:雷魔法-2
え? 本当に? 本当に魔法なのか? 雷魔法? 雷? すごく珍しい属性? え? すごい? すごいの?
「え……。ほ、ホントに……?」
恐る恐る聞き返すと、ヒューイはそんなセオの動揺をまるっと無視してぐぐっとセオに顔を近づけた。
「それ、今も出る?」
「いや、出そうと思って出るわけじゃないんだ。あの時は、火事場のクソ力っていうか……」
「それを、いつでもコントロールできるようにならないと! 魔力の発現は個人差があるけど、14、5歳くらいから25歳くらいの間が多いんだ。発現するきっかけは、やっぱり命の危険にさらされた時が多いらしいよ。でも一度発現すれば、体の中に魔力の筋道ができるから、コントロールできるようになるって。だから、コントロールできるように頑張ろう!」
ぐっとヒューイが握りこぶしを固める。それを見て、セオはあっけにとられた。
「どうしてそんなに詳しいんだ? ヒューイも、魔力があるのか……?」
セオはもうヒューイを自分よりも年下だとは思えなくなっていた。
あれだけ強くて、冷静に敵を倒せて、その上魔法についてこんなに詳しい。魔法が発現? 魔法って生まれつき持ってるか持ってないかなんじゃないの? 魔法がそんな途中で発現するだなんて知らなかったのに!!
セオの驚いたような顔に、ヒューイは小首を傾げた。今更そんな事を言われるなんて思わなかった、とでも言いたげに。
「俺達みたいな山育ちの中には、魔力のある人が出やすいんだ。これは、魔獣に対抗する為じゃないかって言われてる。俺の村にもいたし、俺も少しならあるんだ。ほら、俺の体は軽いだろ? 俺は跳躍力が人よりもかなりあるんだよね。マストの一段目になら、簡単に飛び移れるんだよ」
「そんなに?」
そう聞き返しながら、こないだのデッセルとの戦闘を思い出す。ヒューイは軽くロープを握って、ロープを頼りにマストの一段目に飛び乗った。
だが本当は、ロープなんてなくても飛び移れた……?
「うん。これは多分、飛赤猴と戦ってたからだと思う。猴は、飛ぶから」
「でも、俺は海育ちで、周りに魔力のいる人なんていなかったのに……」
なのに何で俺が……と、セオは少し怖くなる。
海のそばに住む者で、魔法がある奴なんて聞いた事ない。魔法はどこか遠い所の……物語の中の出来事だ。それが、どうして自分に……?
「そうだよね。魔法が使える人って、基本、王立騎士団に入れられちゃうんから、山育ちでもなければ、周りに魔法使える人なんてそうそういないよね……」
「王立騎士団に?」
「うん。魔獣と戦うには、魔法が必要だからね。魔力持ちはたいてい騎士団に入れられちゃうみたいだよ?」
ヒューイの言葉に、セオは余計に怖くなった。魔法が使えると? それじゃあ……。
「どうしよう。俺も、騎士団に行かないといけないのかな……。なぁ、誰かに報告とかしないといけないと思う? でも俺、魔獣と戦うなんて……」
魔獣。森や山を焼き、動物や人を喰らう、厄災。そんな物と向かい合ったら、自分なんて一撃で殺されるに決まっている。
カタカタと震えだしたセオに、ヒューイはまたもや小首を傾げた。
「報告って……艦長とかに? え? どうなんだろう……。海軍って陸軍や騎士団とそれほど仲も良くないって言ってたから、報告しても見て見ぬ振りをしてくれるかもしれないけど……。このまま、黙っちゃってもいいんじゃない?」
「え? 見て見ぬ振り?」
「うん。だって、艦長達だって、せっかくここまで育てた自分の所の兵士を騎士団に取られたらいやなんじゃないのかな」
「そ、そうかもしれないけど、でも良いのかな。あの、ほら、義務とかじゃないの?」
「え~? 義務かどうかとかは知らないけど。でも、山だとソロ活で魔獣を狩る狩師の人もいたから、必ずしも騎士団に入らないといけないって訳じゃないんじゃないかなぁ……」
「そ、そっか……」
その言葉にほっと息をつく。あからさまに肩の力の抜けたセオに、ヒューイはまるでいたずらをする子供のような顔で笑った。
「じゃ、内緒にしておこうよ。俺も内緒にしてるし。だって今更騎士団に連れて行かれて、魔獣と戦いたい?」
セオは慌てて首をぶんぶんと横に振った。
今までずっと魔獣と戦ってきたヒューイがそう言うのだ。それなら自分も内緒にしても構わないよな……?
ドキドキしながら内緒に仕様と決めたセオに、ヒューイが一つの提案をする。
「でもさ、魔法のコントロールはできた方が良いと思う」
「ど、どうやって……」
騎士団に行かないのなら、魔法の訓練は独学という事になる。そこに思い至って、セオは更に震えた。
20251122:文字間違い訂正




