表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

01:始まりの港

本日より新しい小説をお届けいたします。

今回、ファンタジーなのですが、大丈夫でしょうか(>ω<;)

また、えちシーンは匂わせだけで、Rつかないんじゃないかな~と思っております (>ω<;)

それでも大丈夫だよ!という方はお付き合いくださいますと嬉しいです。

それでは、『少年と剣聖と海の魔獣』始まり始まりです!


なお、初回投稿で後書きの署名と登録名に相違があったため、登録名に合わせて訂正しました。

大変失礼いたしました。

  苳子拝

 海風が涼しい港街。軍港だろうか、大きな帆船が何艦も海に並び、軍服を着た男達が艦と港を行き来している。

 そんな中、港の一角では数人の男達が立て札の前に集まって、軍服を着た男と顕現轟々話し合っている。


「おい、だから、肝心の給料はどんだけもらえるんだよ! うちはこないだの嵐で船をやられて、商売あがったりなんだ!」

「ちょっと! 海軍って、海賊だけじゃなくて、海の向こうのウォース王国の奴らとも戦うんでしょう!? ねぇ、うちの子を働かせるなら、ちゃんと安全な仕事をくれるの!?」

「バカ言うな! 海軍で働こうってのに安全なんてあるかよ! そんな事より給料だろ! 危険な仕事なんだから、給料は他よりよっぽど高いんだろうな!」


 海軍の水兵募集の立て札のようだ。みんな少しでも良い条件を引き出そうと、採用担当らしい軍人とわめき合っているが、その中で1人、年の割には落ち着いた顔で、でも熱心に立て札を読む少年がいた。

 立て札の周りにいる軍人のうち、まだ若い水兵が少年に声を掛ける。


「坊主、名前は? 今いくつだ? 海軍に興味があるのか?」


 声をかけられた少年は、真剣な顔で水兵に向き直る。


「俺、ヒューイって言います。えっと、年は、十六です。海軍……水兵ってどういうことをするんですか?」


「もちろん、船で戦うんだよ。海賊やウォースの奴らから国を守るんだ。まぁ、最初は見習いだからそんなに怖い事はないぜ? デッキ掃除とか、帆の扱いとか、船の係留とか、砲台の助手とか、そういうのを教わりながら技術を身につけていくんだ。もちろん、厨房の仕事もあるし、航海士の助手みたいな仕事に就く奴もいる。もっとも、海賊が出たりウォースが攻めてきたりすりゃあ砲弾が飛んでくることもあるし、白兵戦になれば敵を斬り合う事もある。だが、自分達の手で祖国を守るという、尊い仕事だ。どうだ、男なら自分の家族や大切な人達を自分の手で守りたいとは思わないか」


 若い水兵がそう言って少年に話し始めると、周りの奴らも彼らの会話に聞き耳を立て始めた。どうやら具体的な仕事の話が聞けるらしい。これはしっかり聞いておかなければなるまい。


「……そう、ですね……」


 少年はどこか思い詰めたような顔で、水兵と立て札の間に視線を彷徨わせている。どうやら真剣に入隊を考えているようだ。水兵はここぞとばかりに少年ターゲットを絞ることにしたようだ。


「十六ならもう一人前だ。坊主、故郷(くに)はどこだ?」

「ホルニー村です。山間の小さな村で……半月前に魔獣が出て、俺の家族や仲間達は皆魔獣に喰われました」


 魔獣と聞いて、その場の大人達から太いどよめきの声が起きた。


 魔獣。魔力を持ち、普通の動物よりもよほど凶暴で、人を襲うと言われている。中には知力を持つ者もいて、徒党を組んだり、人間に罠を仕掛けてくる物もいる。体が大きいだけでも厄介なのに、火を噴いたり空を飛んだり雷を落としたりする物もいるのだ。一度(ひとたび)魔獣に襲われれば、人間の村など一瞬で壊滅すると言われている。


「え……。おい、山には魔獣が出るってのは本当なのか?」

「もちろんです。あの、海の方には出ないと聞きましたが、本当に出ないんですか?」


 恐る恐る聞いてくる少年に、周りの大人達は目を見開いた。


「で、出ねぇよ、魔獣なんて! いや、海にも魔獣はいるとは聞いてるが、海の深い所に住んでるから、陸の方まで襲ってこないらしいぜ。俺も海軍は長いが、まだ一度も海の魔獣にお目にかかった事はない。……山には、そんなに出るのか……?」


 その水兵は、まだ若いせいか露骨に眉に皺を寄せ、ブルブルと身震いをした。


 山間部を守る陸軍は魔獣と対峙することもあるらしいが、魔獣を狩るのは主に魔法を自在に操る王立騎士団の連中だ。一般の軍隊……つまり、魔法を持たぬ者達が魔獣と戦うことなど、まずありえない。

 いくら軍人といえども、魔獣はやはり怖いのだ。そこまでの覚悟ができていない若者なら当然に。特にこんな風に、実際に魔獣の被害に遭ったことのある者の話を聞かされようものなら、思わず身震いしても仕方があるまい。


「そうなんですね。山には……少なくとも俺の住んでた山には、魔獣はたくさん出ました。……俺、もう身内が一人もいないくなって……。それでセンレル村に行けば、じいちゃんが昔世話してやった奴がいるから、何かあったらそこを頼れって言われてて。それで……」


 ヒューイが訥々とそう言うと、若い水兵は今度は呆れたような顔をした。


「は? じいさんの昔世話した奴? バカだな、そんな奴らが、今更お前の面倒みてくれると思うか? そんな不確かな話に頼ろうとしないで、ほら、うちに来い。宿舎も飯も制服も支給だ。給金もちゃんと出るぞ」


 その話を聞いて、周りにいる奴らが思い出したようにざわめきだした。今まで遠巻きに見ていた奴らも、ぞろぞろと集まってくる。


「給金はどのくらい出るんだ?」

「俺は父さんの手伝いでずっと船に乗ってたぜ。見習い期間は無くても良いだろ?」

「なぁ、海には魔獣は出ないって言ったよな? 危ないことはないんだよな?」


 その場にいる奴らが口々に質問し始めると、奥から数人の軍人がぬっと現れた。水兵の制服ではなく、士官の軍服を着ている。


「よしよし! そのテの話は宿舎で聞こうか!」

「え!?」


 とっくに入る気満々の者も、まだ決心のつかない者も、そのまま彼らはみんなまとめてまるっと宿舎に連れて行かれた。


 もちろん、その中に妙に落ち着いた目をしたヒューイがいたことは言うまでもない。



◇◇◇ ◇◇◇

ということで、『少年と剣聖と海の魔獣』始まります!

次回はヒューイではなく、王宮の剣聖のお話が出てきます。

また、こちらのお話は毎週日曜日の夜20時を目標にアップしていきますので、よろしくお願いします!

応援のいいねや★評価などいただけますと犬まっしぐらに喜びます!

よろしくお願いします。


苳子拝

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ