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退屈世界の破壊神  作者: ぽぬん
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27.甘い蜜は毒となり、病は進行する

「情報提供の礼だ」

「は、は?!ゼクス?!なに……わ、わ、やめてくれないか?!こんな初対面の男に!破廉恥だよ?!」

「だ、そうですけれど……」

「ティオ、セリハのことを思うなら少し勉強はしておいた方がいいぜ?」

「な、なな、なんの勉強だい?!ふぁっ?!」


 眠っているセリハの前で、クロエに弄ばれているティオ。

 恥ずかしさはあるのだろうが、そこまで強く抵抗しない所が見て取れる……いたずら心を誘ってしまう、可哀想な男だ。


「神職らしい初さだなぁ?賢者信仰は別に貞操を守らなければならない、なんて規則はねぇだろ」

「そういう問題じゃないのだよゼクス!!わぁ……そこは……っ」

「ふふ……ゼンが可愛がりたい気持ちがよくわかりますね……ここがいいのね?」

「よくない!!い、いいかげん離してくれないかい?!ひぃっ……」


 クロエの鎖が揺れ、パッとティオから体を離した。

 ティオはその場にへたり込む。


「あら……これから女の体を教えるところでしたのに」

「なぁんか、気持ち悪いからやめだ」

「はぁはぁ……辱めておいて気持ち悪いはあんまりだよゼクス……その、君はいつもこんな事を?」

「さぁ?どうだろうな?」


 そう言ってクロエの乳房を両手で持ち上げて見せると、ティオは顔を背けた。


「さて、お前の守りがあるとはいえ、勇者様が保険を残してる可能性は捨てきれん、行くぞ」

「……ソウゴは、そんな悪い人ではないと思うけれどね」

「だからだよ。正義の名のもとにこの世界を平和に、正しく導くって息巻いて、しっかり正当にファンタジーを楽しんでる奴なんかに、絡まれたくねぇ」

「ふぁんたじー?」

「はっ!まぁいい、アイツは俺のことを殺したいほど嫌ってる、会わないに越したことはねぇの、わかったか?」


 乱れた服を直しながら立ち上がり、ゼンの問いに頷いて笑うティオ。


「すべての誰かと気が合いわかり合い、仲良くなる……なんてことはない、か……そうだね、無益なことはしない方がいい……だから、僕も、あの時君が助けてくれたことは、誰にも伝えていないのだからね」

「いい判断だ」

「ふふ……ティオさん、またお会いしましょう?今度はあれくらいじゃ済まないでしょうけれど、ね」

「え……それは……うぅ……」


 返答に困っているティオに手だけを振り、廃墟の聖堂から出ていくゼンとクロエ。


「……本当に正しい道……なんて、分からなくなるね、セリハ」


 静かになった聖堂で、ふたたびガラスケースに触れながら、眠るセリハに話しかけるティオ。


「彼にだけ見える僕の光の柱は、きっと僕の願望のせいなんだ……見つけて欲しい、僕も連れて行って欲しいなんて、馬鹿げた願望……進化に影響を及ぼすほどだったなんて驚いたけれど……それほど惹かれたんだね」


 ゼンが座っていた場所に残っていた空の酒瓶を拾い、室内の端、瓦礫の間に隠したティオ。


「ゼクス……君の光は見えないんじゃなくて、本当は透明なだけで……見たことが無いほど、透き通っているだけなんじゃないのかな?なんて……これも願望なのだろう、ね」


 呟いた直後、背後で転移魔法の発動の光が……振り返り、笑顔で出迎える。


「おかえりソウゴ!おや?慌てているようだね?どうか……したのかい?」


 *


 *


 *


 何事もなかった事のように合流し、早々に出発するゼン一行。


「ねぇ、ゼン……内緒でなにしてたの?」


 いつも通りゼンにくっついて浮いているファイン、コソコソと耳打ちをする。


「ちょっとエッチなこともしてたでしょ」

「気になるのはそこかよ」


 後ろを歩く3人との距離を確認し、ファインにだけ聞こえる大きさで話す。


「お前に隠しても意味ないのがめんどうだな」


 仕方なく……聖堂で見たもの、話した者のことを簡単に伝えるゼン。


「う〜ん?それがお互いに必要だったのはわかるけど……さすがに、近すぎナイ?」

「問題はそこだな」

「鉢合わせることはなかったケド、なんかネ?変な感じ、ダネ?」

「都合が良過ぎる……もう踊らされることはねぇと思ってたが、神はやはり神かよ、クソが」


 機嫌を損ねる結果になったものの、ゼンが自ら進む道に隔たりがあることの再確認にはなった。


「まぁ、でも、問題なく仕掛けは機能しそうだったからな、収穫はあった」

「なにそれ?」

「聖女が蘇ってからタイマーが動く、特別製の時限爆弾だ」


 今度は嬉しそうなゼン。


「内緒の話、秘密の話……ボク大好き!」

「お前だけじゃない、黒ブタも知ってるからな」

「む……ちょっと嫉妬」


 平坦な道は続く。

 なんの面白みもない、普通の道に見える。


「ゼン・セクズ、依頼の完了報告をする【夜の都】にそろそろはいるが……」

「なんだ?問題でもあんのか?」

「出来る限り長居はしたくない、ギルド支部に行くものと、物資の補充をするものに別れ、迅速に用をを済まし、都を出よう、いいか?」


 アダルヘルムには珍しく、落ち着きなく進言してきた。


「ククク!おいおい、領主様に挨拶はいいのかぁ?」

「あにぃ……ママ、きっと寂しがってる」

「う……」

「アダル、諦めて?」


 ファインに大笑いされながら、トボトボと一番うしろを歩くアダルヘルム。


「勇者の動向も気になるところだが、それよりも、つまらねぇ旅には意味がねぇ、面白いことを、優先しなきゃなぁ?」

「少々アダルが不憫かもしれませんが……先に備えるのであれば必要ですからね」

「不憫じゃないよクロエちゃん、アダルくんの行いの結果じゃない?ゼンにいじられても仕方ないヨ」


 話に花を咲かせて歩くゼン、クロエ、ファインをチラリ……ため息をつくアダルヘルム。


「あにぃ、ママ……嫌い?」

「女性でありながら領地の事を第一に考え統治する姿はもちろん尊敬している……好き、嫌いというわけではない」

「じゃあ、なんで……そんな顔する、の?」

「その知性と権力で、私にだけ無理難題を突きつける……っ!はぁ……面白がっているのはゼンだけではなく、彼女もなのだ」

「ん……あにぃ、人気者……だね?」

「ゼンに取り次ぐための交渉の窓口として働いた結果がコレだ……ミウの言うように、人気者であるだけなら笑えるのだがな……ありがとう、ミウ」


 小一時間道を進み、【夜の都】の領地付近へ。

 前方に見える道の続き、囲む森、明るい空……近づくにつれ、ハッキリとした形として見えにくくなっていく。

 前方を覆っているのは、水に浮いたオイルのような虹色の膜。


「ボクここの空気好きなんだよネ〜」


 トプンっというを音をさせた様に、潜るという表現が見合うだろう……薄い膜の向こう側へ体を沈める。


「魔力の大結晶……以前とかわりませんね」


 一歩進んだそこは闇夜。

 都の中心の先端にあるあやしい輝きがわずかにのぞいて見える。


「はっ!……ミウ、思い出した」


 クンッと鼻を動かしたミウの表情が明るく子供らしい笑顔を見せる。


「屋台……ごちそう!」

「……おチビこんなに食いしん坊だった?」

「成長期というものではないかしら?」


 足を踏み入れただけで緊張しているアダルヘルムの腕を無理やり引っ張り、走り出すミウ。


「あらあら」

「ミウなりに気を使ってるのかもしれねぇぞ?」

「ゼン……欲には逆らえない、よく知ってるデショ」

「はっ!ま、好きに楽しめばいい」


【夜の都ナハト】は王都に属さない特別な領地として存在し、魔力の大結晶の影響で常に夜の帳を下ろしている。

【魔界エリュシオン】と似ている所もあるが、時の流れは変わることはなく、人が住む事に不便はない。

 変わりなく続く幸せを……その体制が長く続いているのは、この地を統べる【夜の女王】のお陰であった。


『夜に捕まれば、2度と昼を拝むことは出来ない』


 そんな噂が広がるほど、恐ろしい存在としても、広く知られている。

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