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退屈世界の破壊神  作者: ぽぬん
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10-⑦.邂逅と会合

 ゼンが引きつれている人物を一目見て恐怖するフォンゼル。

 クロエの容姿は直視できないほどの露出で、ファインは伝書に描かれた魔王だったからだ。


「指はまともに動いてるみたいだな」

「……な、なぜこんなところにいるのですか?」

「お前のことも気になっちゃいたがな?今日は王に用がある」


 どうにか平静を装いゼンに問いかけた。「なぜ」などと聞いたものの、いずれ王の元に来ることは予想していた事。


「ねぇ?これなんの薬?」


 耳元に聞こえた声……思わず耳を手で押さえて一歩引いてしまった。


「あはっ!ダイジョウブ~なにもしないヨ?答えてくれればネ?」


 無邪気に笑い、面白がりながらフォンゼルを圧する声……正直に答えざるを得なかった。


「魔力中毒の緩和剤です……試作段階ですが……いずれ特効薬に仕上げたいと研究をしております」

「あ~~~~!あの……ふぅん?」


 ふわりと宙を飛びながら実験器具の中でくつくつと沸くフラスコたちをひとつひとつ覗いていくファイン……フッと鼻で笑ってゼンの後ろに戻っていった。


「それが誰の為のものかは……後ほどの会合でお話したらよいでしょうね」

「会合……?」

「王とその取り巻きたちを含めた関係者を集めて来いフォンゼル」

「謁見ではなく……?関係者というのは……どういう……?」

「『花』の関係者と言えばわかんだろ」

「それでは我々は会合の間で待たせていただきます……早めの対応を推奨しますよ?」


『花』の意味をフォンゼルは完全には理解していない様子だった。だが、ゼンが城内にいることは伝えなければならない……時間も許されていないということも。

 一度言い知れないゼンの力に触れたフォンゼルの体は本能的に動きだし、隠し階段を駆け下り、いつもなら優雅に歩いている城内の廊下を息を乱しながら走り抜けていた。

 伺いを立てることもせず、扉の前の騎士たちもフォンゼルの様子に戸惑ってしまい、止めることは出来ずフォンゼルは王の寝室へ飛び込んだ。


「……そうか」


 その様子で察したのだろう……王は静かに表情を曇らせ……フォンゼルの息が整うのを待ち、ゼンからの伝言聞いた。


「『花』の……関係者を集めろと……会合の間にて……」

「ここまで来られては逃げることも叶わぬであろうな……フォンゼル……先日開いた夜会で集められた者たちを呼び寄せてまいれ……移送方陣を使うのだ」

「は……!」


 フォンゼルは急ぎ移送方陣の設置してある部屋へ、王は身だしなみを整え会合の間へゆっくりと進む……長い廊下の先にある黒茶色の重い両扉の前……騎士が扉を開き、王は足を踏み入れる。

 金の刺繍がされた椅子が20席程度、白く輝く長く大きなテーブルに綺麗に並ぶ会合の間。

 大きな窓からは日が差し込み、温かく……穏やかに冷静に話し合いができるようにと常に整理され、清潔に保たれた場所。

 会合の内容にもよるが、通常であればここまで重くピリピリとした空気を感じることはない部屋だ。


「遅かったなアルベアト」

「『白金のゼン』……」


 幼少期の名で王を呼んだゼン。下座に座り、机に脚を乗せ退屈そうに待っていた。

 横柄な態度のゼンの姿に騎士のひとりが食って掛かろうとしたが、王はそれを止める。


「無駄なことはするでない……外で来客を待つのだ」

「ずいぶん偉そうにしてんなぁ?」

「この国と世界を統治する王としてここに立たせてもらっている……」

「あぁ?裏でやってることを引いてもそんなこと言えるのか?」

「……っ」

「王様?お座りになってよろしいのですよ?まだ……時間はあります」


 クロエが優しい口調で座るように促すが、その言葉は王の精神に圧をかけるものだった。

 窓の外から鳥のさえずりが聞こえるだけ。王にとっては地獄のような……静かで穏やかな時間が流れている。どのくらいの時間が経ったのかはわからない……向かいに座るゼンの視線を感じながら何度唾液を飲み込んだのだろう。

 外を飛び回る小鳥の影が幾度通り過ぎていっただろうか……扉が静かに開いたかと思えば、バタバタといくつもの足音と共に騒がしくわめきながら男たちが流れ込んできた。


「王よ!!」

「フォンゼル殿から聞いたが本当か?!」

「何のための配備だ?!」

「我々の保証は――!!」


 呼び出された関係者たちは口々に王へ向かって言いたいことを言い始め、騒がしくなる。


「騒ぐな。」


 一斉に黙り、視線の先がゼンに映るとだらだらと汗が止まらなくなっていった。


「どこでもよい……皆の者、席に座ってくれないか……」


 力ない王の声、ゼンからの圧……従わない理由はなく、バタバタと急いで全員が着席しテーブルと囲む。

 遅れてフォンゼルも会合の間に入り、引き連れてきたメイドに茶を淹れるように指示を出し、王の横に付く……ゼンの隣にファインがいないことに違和感を覚えたフォンゼルは様子をうかがいながらもその時を待った。


「そんなに緊張なさることはないですよ?みなさん当然正しく誠実な行いをしてらっしゃるのでしょう?」


 口を開いたのはクロエだった。


「『白金のゼン』が戻ったことはお耳に届いていることでしょう……彼が世界を取り戻す戦いの前した約束を覚えていらっしゃいますか?」


 覚えのないものがほとんどだったらしい……ただひとりわなわなと震えているのは王だけ。


「ひとつあなたの願いを叶える手伝いをする代わりに……未来ある者たちへ光ある世界を保つよう働くこと……そう約束をしたはずですよね?アルベアト王子」


 一斉に視線が集中する……どう答えるのが正解か、状況はズィリックと同じだが背負っている物の重さが違う。


「貴方の思う未来ある者とは……ここにいる魔薬で私腹を肥やした者たちであったと……間違いはないですか?」

「……」

「その通り過ぎて言葉も出ないか?アルベアト」


 テーブルから足を降ろし、出された茶に口を付けてニヤッと笑ったゼン。


「初めに会ったのは商人だったなぁ?どこでくすねてきたかもんだろうと思っていたがある村に立ち寄って繋がった。半端に精製されたもんが煙草代わりに出回る程度ならどうという事もない。ただ単に一般人が勝手にやっていることだとしたら簡単に終わらせることもできた。だがどうも違ったみたいでな?」


 ドンっとテーブルに置いたのは村で入手した記録媒体。


「残念なことにどの世界にも……どの時代、世代にもこのような物は存在してしまう……先ほどの発言の中にあった通りゼンはそのこと事態は重くとらえていません。ただそこに繋がるのがアルベアト王子を含めたあなた方……国を背負うべき者が完全なる薬物として仕上げ意図的に流通させている事実があることに憤りを感じているのです」


 記録媒体の封を解くと、ホログラフのように文字と人物の画像が展開されていく。


「バナン、エモリー、ニーヴァス、ダイター、フリード、オットー、グリゴア、ハンク、ヨーガン、コルトン。」


 ゼンに名を読み上げられた関係者の貴族たちはビクッと反応を示す。


「残りは割愛するが全員ちゃんと集まってて偉いなぁ?誰もかれも名のある領主や貴族じゃないか。」


 ドンッ!!!カシャァン!!

 持っていたティーカップごとテーブルを強く叩き、砕き割る。


「国が率先して隠し、国を腐らせた。俺がわざわざこの世界を平和に戻してやったのに、だ。約束というよりもアレは契約だ、それをこんな形で裏切ってくれてありがとうな?だからよ、その契約を反故した代償をお前たちに支払ってもらうためにここに来たんだわ。わかるか?」


 顔を青ざめさせていく関係者たち。

 どう逃げられるか、なにを支払うのか……ゼンの言う代償を考え唇を噛む者、頭を抱える者……。

 誰もがうな垂れるその様子をみていたフォンゼルは意見という名の良案を提示する、と発言した。


「ゼン殿……王は自身が犯したその罪の報いはすでに受けているかと存じます……今の話を聞いて『花』が何であり、王がどうかかわっていたのかは理解しました……ですが、いまこの世界で苦しんでいる者たちに私が行っている研究が――」

「やめとけフォルゼン。それはなぁんの意味もなさないことだ。お前が俺に言おうとしている良案っていうのはな?そいつのガキの為だけのもんだぞ?」

「……え」


 横でうつむいたままの王をフォルゼンは見つめる。「そうではない」と……こちらから問う前に発言をしてほしいと。しかし、その思いは届くことはなく……「沈黙は肯定」と。


「だから最初に会った時に言っただろ?俺のとこに来いって。こいつはガキの頃から腐ってる奴なんだよ」

「で……も……い、いや!まず王に対して無礼な発言をしたことを謝罪しなさい!!!」

「本当にもったいねぇ奴だな。じゃあその忠誠心を無くすことができる話をしてやるとするか?」


 自分の進退を考えていた関係者たちもざわつき始める……そして、小さな声で王は何度もつぶやいていた……「ちがう……やめてくれ……ちがう」と。

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