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77. 人の死がわかる女性

 以前、私のヨガスクールに通っていた女性は、とてもかわいそうな人でした。その女性は、看護師になるための勉強をしている、とても努力家の女の子でした。


 そして、やっと念願の看護師になることができました。明るく、誰にでも気軽に話しかけられる彼女は、患者さんにも誰からも好かれる人でした。ところが、数ヶ月して、とても落ち込んでいて、自分に相談したいことがあるというのです。


 それは、自分は、あと数日で亡くなる人がわかってしまう、ということでした。


 それは、どういうことかというと、もともと、霊が見えるという、霊感の強い彼女は、看護師になり、病院に勤務が始まって、患者さんの面倒をみていたある日のこと、あれっ?この人、あさって死んでしまうのかな、と突然、こんな思いが頭に飛び込んできた、というのです。


 それは、そう何かが見えたわけでも聞こえたわけでもなく、その患者さんを見ていたら、そんなことが頭に突然飛び込んできた、というのです。普段、幽霊をみたり、何か声が聞こえたり、することは、確かにあったようですが、この場合は、それとは違って、そんな予感が頭に不意に飛び込んでくる、という。


 しかし、その患者さんはべつに重症なわけでもなく、むしろ退院が近い人なので、何かの間違いで、自分の思い過ごしだと、自分に言い聞かせて、気にしないようにしていたといいます。


 ところが、思った通り、2日後にその人は、発作を起こして亡くなったそうです。


 彼女はとてもショックを受けて、実は、そんなことが、その後、もう続けて3回もあったというので、自分に相談してきたのです。それで、その能力について、詳しく聞かせてほしいと言うと、そういうことがただ勝手に頭に飛び込んでくるだけで、それ以外は何もわからないと言うのです。


 しかし、いつからできるようになったのか、とか、この能力は具体的にどういうことができるのか、聴きました。

 そして、この現象が起きるようになったのは、看護師になって病院にきてからだということです。ただ、誰にでもそう感じるのではなくて、亡くなることがわかる時は、死ぬ何日か前ということらしい。これまでに、わかった人は、5人くらいで、年齢もバラバラで、病気の重い軽いは関係ない。患者さんたちは、本当に様々で、絶対に亡くなるとは思えない人が亡くなったり、かなり重症でも完治して退院することもある。


 しかし、元気で絶対に退院すると思っていた人が、あと2日で亡くなるのがわかった時は、あとの2日間その人と接するのはとてもつらくて耐えきれないというのです。どんなに元気で明るく振る舞っていても、その知らせを知ってしまうと、どんなことがあろうとも、確実に亡くなってしまうという。


 そこで、私は、看護師仲間で、そのことを一部始終話せる人はいないかと聞きました。


 実は、たとえば、2日後に亡くなることがわかった場合、一応、その時点で、何か手を打ったら助かったとか、そういうことはできないかと、そんな無謀なことを思ったからで、同僚に彼女に協力できる人がいないかと思ったのです。


 そして、その後、ごく親しい人で話せる人がいて、全部話したそうですが、最初、とても怖がっていて、一応信じてはくれたようですが、そのことに関わるのは無理だと言われたそうです。


 人の死を事前に知って、それを回避して命を助けるなんて、やはり映画のような話しで、実際にはそんなことは無理なことでした。当然、本人に伝えるわけにもいかないし、それ以外にはできることなんて何もなくて、わかっているのに、自分の無力さにとても悔やまれるようでした。


 そして、その後、わかったことは、せいぜい数日くらいに迫っていないとわからないようで、亡くなった人は、だいたい2.3日前からわかったようです。それから、たぶんですが、以前には、そんなことは全くわからなかったのに、看護師になってから、死ぬことがわかってきたというのは、普段はすぐに亡くなる人が身近にはなかなかいないですから、これまでは、死期が近い人とは、接点があまりないので、病院に来なければ、わからなかっただけではないかというのが、私の見解でした。


 その後、数ヶ月たち、亡くなるまで、何人も、そういう人たちと接することを繰り返す毎日がつらくて、結局、看護師をやめてしまったようです。どうしても看護師になりたくて、目指していたのに、本当にかわいそうに思いました。助けることのできない特殊能力なんて、逆に、持っているだけで不幸だと思います。


 しかし、こんな映画の世界でしかありえないことが、現実にも、こんな能力が存在しているのですね。しかし、世の中には、色々な能力を持っていても隠している人は、けっこういるのかも知れません。映画のように、超能力で人助けをしたりなんて、そんな話しなんて、実際には、なかなかないのかも知れません。


 そう考えると、そんな特殊能力は、むしろ、ない方が幸せなのかもしれないと、心底そう思いました。

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