7. 言葉の壁が立ちはだかる
1日目が終わり、講義が全くわからず、途方にくれてしまいました。しかし、これで、あきらめて帰るわけにはいかないし、私と同じ日本人が頑張っているのだから、とにかく元気をだして頑張ろうと思いました。とりあえず、わかる単語を片っ端から書き取ることにして、あとで、他の人から書いたノートを見せてもらい、うつさせてもらうことにしました。そして、夜、それを見直して勉強しました。
しかし、それにしても、部屋の灯りの、その暗いこと。本当に、日本の外の街灯の方がよっぽど明るいと思うほどです。
しかし、よく見てみると、アメリカ人やヨーロッパから来ている人たちは、けっこう熱心に勉強しているけれど、インド人たちは、授業中もなんだか講義を真面目に聞いている様子がない。それに、授業以外の時間も勉強をしていない。色々なお店を見た限り、なんだか一生懸命な仕事ぶりに見えない印象が、こんなところにも現れているのかなと感じました。まあ、逆に日本人が真面目すぎるのかもしれません。
何日かすぎて、こんなに講義内容に四苦八苦しているのは自分だけなんだろうと思っていましたが、実は、そうではなく、解剖学の講義などは、アメリカ人とか母国語が英語の人たちにも、医学用語がわからないととても困っていたことに気付きました。
そこは、逆に自分だけ有利な点だったのです。というのは、英語対応の日本語の解剖学のイラスト本を持っていたからでした。
これには、とても幸運な出来事があったのです。ここに来る半年前に、知人の紹介で知った、鍼灸院があり、そこの鍼灸師である田辺静観先生と、親しくさせて頂いておりまして、私がインドへ行くことを伝えると、それならと、英語対応の日本語の解剖学のイラスト本を下さったのです。それは、小さな本ですが、身体の各部分の解剖図を事細かく、英語と日本語で記載されており、とてもすごい本で、こんな専門的な本はいらないと思いましたが、その好意のため一応ここまで持ってきたのです。
しかし、これが大当たりで、解剖学の講義を説明を受けながら、その単語のスペルもすぐにわかるし、日本語対応なので、この自分には特にわかりやすい。それに、ほかの外国人からも貸してくれとの声が多く、お互いに理解した授業内容を他の人たちと交換するためのいいコミュニケーションのパイプになり、色々な意味で、非常に役立ってくれたのです。本当に思いがけずに感謝でした。お陰で、くじけずにちょっとやる気が出てきました。