50. 水行は、過酷すぎる
とにかく、10月に入り、すでに氷点下で暖房抜きという環境で毎日寒いのですが、さらに、希望者だけではありますが、水行という過酷な行があります。自分も希望して毎日浴びることにしました。
それは風呂場ではなくて、専用に水行場というのがありまして、高さが1mくらいある水槽に水が満載しており、そこから手桶ですくってかぶるのです。希望者は自分を含めて5人くらいいましたが、だいたい手桶で1人10杯くらいです。
しかし、私は100杯と決めて臨みました。私が100杯かぶる間に、すでに、順番に4人はかぶり終わっています。普通、水行は、終わった後、入浴するか、寒くない部屋で休むのですが、ここの施設は寮監がいる寺務所以外に暖房がある部屋はありません。本当に身体が心底冷え切ってしまいます。一日が終わり、夕食後の入浴まで身体を温められないのは本当に大変でした。
朝、勤行が終わると施設の清掃をするのは行中であっても変わりはありませんが、この頃になると、清掃直前に掃除の仕方の変更があります。寮監がその日の気温を確認して、気温が氷点下以下になると雑巾の水拭きが取り止めになり、乾拭きになります。
というのは、普通は、施設はすべて木造なので掃除は雑巾の水拭きなのですが、氷点下で水拭きをすると廊下はあっという間に凍ってしまい、足袋で歩くと転んで非常に危険で、怪我人がでたこともあります。
たった数℃の違いで凍りつく。10月頃はまだ寒さもまだマシな方で、11月になると、完全に毎日零下になってしまい、年内には、零下も二桁になってきます。
実は、行中の作法で使う、真言密教用の仏器という真鍮製の器具があるのですが、長い時間持っていると、手に張り付いて取れなくなる。もちろん、手は痛いし、たとえるなら、ドライアイスを手掴みすると痛くて手に張り付く、あんな感じです。ほとんど、それと変わりません。
それに、食事の時、お茶が凍るのは本当に驚きました。
しかし、この環境で水を100杯かぶるというのは本当に無謀でした。本当に何も考えずに始めたことが、大変なことになってしまったのです。




