4. 次々と驚きのインド
人通りの多い、多くの店が立ち並ぶ通りにたどり着いた頃は、もうすっかり夜が明けていました。目指すは、北インドにある聖地リシケシ。お店の人に聞いたことによると、ここから、たぶんバスで2回ほど乗り換えて、数時間かかります。
そういえば、空港から何も食べていないので、インドで初めての朝食を食べようかとお店を見て歩きます。一応、来る前に、インド料理を知るために食べに行ってきたので、少しはどんなものがあるかはわかりました。お店は、なんだか屋台のような簡素な作りが多くて、だけど移動式ではなく一応店舗になっている。台風が来たら、お店の前は飛んでしまいそうな、安っぽいし汚ない作りです。お店の前では、揚げ物を揚げながら大きなお皿に移して売っている。これは、テレビで見たことがある、サモサという、見た目が餃子に似た料理です。これを食べてみようかと、近寄ってみると、端の方の黒いこげたように見える箇所が、なんと、これがハエなんです。まあ、少し暑くなってきているとはいえ、いくつもたかっているのに、お店の人は、追いもせずに平気でいる。いつものことで、当たり前なのでしょうか。
一気に食欲が失せてしまい、カフェ(実は、カフェとはとても言えない汚ないカフェ)に入って、チャイ(インドの紅茶です)だけを注文しました。すると、最初に、水がきました。ヨーロッパだと、水は無料ではないのに、ここでは頼んでないのに珍しい、と思ってみてみると、水の下の方が黒いものが溜まっている。にごった水の黒く混ざったものが下に沈んでいるのです。驚いた私は、お店の人を呼んで、それを指差して、これじゃ飲めないだろう、取り替えてくれ、と言いました。
すると、なんと、上の方は飲める、と、怒って強い口調で言うのです。私は、それに対して、言い返すだけの気力もなく、後からすぐに来たチャイをぐいっと飲みほして、すぐに会計を済ませて帰ることにしました。たしか、5ルピー(当時1ルピーは15円くらい)くらいだったと思う。その時、いくら払ったかは覚えていないけれど、お釣りを渡されて、そのお釣りの小銭を見ると、なんと小銭に飴が混ざっている。これはなんだ、と伝えると、これはお釣りの小銭が足りないから、その代わりだという。いやあ、これには、さらに呆れて言葉もなく、すぐにお店を出ました。
しかし、インドに行ったら、驚くことが多いとは聞いていたけれど、もう初日から、ひどすぎる。これからが思いやられると本当に思いました。
やっと、バスターミナルに着いた私は、調べたバスに乗り込み、中にいる若くなくて親切そうな人を選んで、リシケシに行きたいと尋ねました。すると、途中で、乗り換えが必要だけど、自分もそこで降りるから、教えてくれる、という。
やはり、どこにでも親切な人はいるものだなと思いながらも、ここへ来る前に聞いてきた、バスでの注意、ということを思い出していたのです。
これは、今回色々とインド行きについてアドバイスをもらった人から聞いた、バスで犯罪に遭ったというエピソードです。
ある人は、バスに乗っていると、5人くらいの男たちが、自分のほうにやってきて、その腕時計をよこせ、という。すると、躊躇していたその時、腕をぐいっと引っ張られ、腕時計を無理矢理取られてしまったという。
それから、ある人は、やはりバスの1番後ろの席に座っていて、金をよこせ、と言われ、サイフを渡すと、バスの窓から放り出されて、両脚を骨折して、そのまま、そこに置き去りにされたという。バスは、人が少ないと危ないという。それを思い出し、そのバスの中を思わず見回した。幸い、割と乗客が多かったので、とりあえず安心した。ここまで、空路も長かったので、とても眠かったけれど、眠らないように気をつけながら、とにかく次の乗り換えまで、気が抜けなかった。
すると、さっきの男性が、ここで降りるよ、と教えてくれて、一緒に降りた。そして、リシケシまでのバスを教えてくれて案内までしてくれて、無事に乗り込むことができた。この人の親切心には、インド人は、とにかく信用ならないという見方を少しだけ変えてくれて、ちょっとだけ安心することができました。
とにかく、バスに乗っている時間が長すぎる。空港から、ひどいタクシーに降ろされた場所から、徒歩で1時間以上。そのあとの、バスが4時間とか。日本だったら、バスには何時間も乗ることは滅多にないし、とにかくバスは古くてよく揺れるし、おまけに、道路は、いけどもいけども、でこぼこ道で、どこも舗装がされていない。疲れていることもあって、車酔いをしてきた。そのまま酔いながら道中を過ごさなければならなかった。その酔いも、なんとか収まってきた頃、バスは、やっとリシケシ近くの停留所に到着しました。