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28. ハタヨガの指導

  ある日、いつものように、空いた時間に、ヨガの練習をしていると、本部の女性マネージャーがやってきました。すると、


「こんにちは。あなたは、いつもここで、練習をしているのね。毎日、どのくらいやっているの?」

「だいたい、3時間くらいです。いつも、空いている時間に使わせて頂いてありがとうございます。」


すると、

「あなた、去年、シバナンダにいたでしょう。シバナンダの人から、聞いてるわ。」

「よくご存知ですね。シバナンダとは、ここの講義内容も違っていて、とても参考になります。シバナンダでは、教えてもらえなかったことが、ここの講義にはあるので、とても新鮮に感じます。」

「そう。それは、よかったわ。実は、今日来たのは、お願いしたいことがあってきたのです。ここは、半分が病院として、行なっているので、患者さんも治療の一環としてヨガの指導を受けているのです。」

「そういえば、別室で、多くの患者さんが、個別にヨガをやっているのを見ましたよ。とても、いいですね。日本でも、ぜひ取り入れてほしいと思いました。」

「そうなんです。もちろん、ヨガの内容も、患者の病状や様々な状態によって変えているので、全員、別々のプログラムを与えられているの。そこで、お願いしたいのは、1人1人に、最初、プログラムを与えて、一度指導をしますが、毎日やっていると、どうしてもやり方を間違えてきたり、大事なポイントが抜けてしまったりして、どうしても本来の効果がなくなってきてしまうの。患者さんたちは、ヨガを行なうのは、ほとんどが、初めてだから、仕方ないけれど。」

「いやあ。初めてでなくても、一つのポーズを正しくやり続けるのは難しいですよ。時々、見直さないと、プロでない限り、だんだん大雑把になってしまい、ポイントがずれてきたり、勝手にやりやすい方にやり方が変わってしまったりしますね。」

「そうなのよ。そこで、あなたに、患者さんがヨガをしている時に間違えているポイントを見て、時々アドバイスしてほしいのです。」

「えっ。私が、患者さんに教えるということですか。」

「そういうことね。あなたは、シバナンダを卒業してきたのだし、今でも、時々、あなたが練習しているのを何回も見てきたから、大丈夫。あなたになら、まかせられると思います。午後1時から3時までの間は、患者さんのヨガをしているホールにいって、みんなのやっているのをみて、間違ったやり方をしたり、直した方がいいところがあったら、教えてあげてほしい。患者さんは、多いけれども、1人1人観察して、気がついたところがあったらでいいので、ぜひお願いできないかしら。もちろん、ただというわけにはいかないから、授業料をかなり免除させて頂きますよ。どう、やって頂けないかしら。」

「わかりました。ありがたく、引き受けさせて頂きます。かえって、自分の勉強にもなります。ありがとうございます。」

「ああっ、よかったわ。ありがとうございます。では、早速、明日の午後から、お願いします。明日午後1時になったら、ホールに来てください。皆さんに紹介して、説明しますから。」

「わかりました。こちらこそ、宜しくお願い致します。」


 これは、自分にとって、まさに、渡りに船でした。ただ、同じやるなら、質の高い指導を受けたいというだけのインド行きから、シバナンダアシュラムにいたことで、今ではすっかりヨガの指導者を目指す自分になっていたので、これは、またとない、とてもありがたい機会でした。


 そして、翌日から、指導が始まりました。ホールとは言っても、日本だと何かコンサートをやるとか、そういった広いレベルの印象ですが、15人程度の人数がヨガができる程度の広さで、いわゆる英語でいうホールと日本語とはニュアンスが違っていて、意外に狭くて、かえって自分にはとてもちょうどいい広さでした。


 あまり患者さんの近くにいて気が散ってもいけないので、ホールの角から、ぐるりと回りながら、患者さん1人1人のポーズを観察していきます。それをよく観察して、その人の個人的な適性でできないのか、間違えていてできていないのかは少し観ているとわかる。それから、手を抜いてやってできていないのか、わからなくなってできていないのかもわかります。


 なるほど、やってみると、こんなに人のやるのを観察したことがないので、とても勉強になりました。しばらくしてから、患者さん1人1人のことをメモにとり、どんなプログラムでどのポーズを行なっているのか、どんなところが苦手でどれが上手なのか、間違えやすい点など、すべてノートに書き込んでいきました。


 結局、最初の教え方に問題があるケースも見つかって、改めてぜんぶのポーズを教えたりすることもありました。そして、ある時、最初の指導をしているところに遭遇して、それを見ていました。すると、教え方があまり上手くない。上手くないというよりも、相手が理解したかどうかがわからないまま、次にすすんでしまう。教え方そのものは、上手いのですが、相手の立場に立って教えていないので、患者さんがきちんとわからないまますすんで、終わってしまうので、患者さんは、完全に理解していないまま行なうので、だんだん大切なポイントが抜けていってしまうのです。


 私は、相手の理解を確認しながら、進んでいくので、できたところまで説明をしてできたら、次に進むので、相手が理解できていることは確実なのです。相手の立場に立って丁寧に教えながら進めてゆく、この丁寧さこそ、日本人らしいのかもしれないと思いました。


 そうしているうちに、何人かの患者さんから、最初から私に教えてほしいという声が多くなり、改めて、女性マネージャーから、患者さん全員に最初からの指導を頼まれるようになりました。すると、一度教えると、以前よりも途中での間違いが格段に減っていきました。それは、患者さんの、最初からの理解度が深くなっているからなのです。それに、以前よりも、皆さん、より熱心に楽しくやっているように思えました。

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