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19. 真の幸せを感じる時

 ここにきて、ひと月経ち、ふた月が経って、こちらでの生活もだいぶ慣れてきました。

少しずつ余裕が出てきて、時々散歩をしたり、夕方、外に出て空を見上げたりしていました。日本にいる時は、なかなかそんなゆとりはなかったのですが、ここでは、テレビも新聞も読みたい本などもないし、授業以外にやることがないということもあって、ただ夕方、景色をみたりすることも多くなっていました。


 ある日の夕方、沈む夕陽を見ていると、なんだか自然に涙が出てきました。その夕陽は、とにかく綺麗で、じんわりと心に染みてきて、これまでに味わったことのない感動が溢れてきました。改めて、景色を見ることなど、日本にいる時はなかったし、日本とは全く違う生活環境で気分が異なるせいもあったかもしれませんが、その夕陽に心打たれたのです。


 そんな気分の中で、なんだか幸せ感が溢れてきたのです。日本にいる時は、テレビや雑誌をみたり、あれもほしい、これもほしい、あれもしたい、これもしたい。しかし、ここには、何もないのです。ほしいものも最初からない、みたいテレビも、そもそもテレビがない。すると、人間って、不思議なことに、それに慣れてしまって、もうどうでもよくなってしまったのです。そのような欲がだんだんなくなってきて、なんだか心がシンプルになってくる。自分の心の中から、余分なものが、削ぎ落とされていく感じです。


 そう考えると、普段、人は、物に支配されて、自身から自由を奪われていく。ここでは、心を支配するものもないし、休む時間がとても心良く感じる。ほっとする時間が気持ち良く感じる。それをとても幸せと感じるのです。こういう生活で感じることが、本当の人間本来の幸せではないのだろうかと感じました。人間って、環境によって、幸せ感も変わるんだなあと感じる瞬間でした。これは、日本にいたら、決して味わえない経験でした。

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