10. 次々と出てくる驚きの生き物たち
ここでは、全寮制ですから、当然自分で洗濯をし、庭にロープを張って干すのです。すると、時々、洗濯物がなくなっている。実は、探すとすぐに見つかるのですが、少し離れたところに野生の猿がいて、こっちを見ています。どうやら、ただ見ているのではなくて、私たちが猿に気づくのを待っているのです。
というのは、その猿は、見ている私たちの洗濯物を持って、待っている。それは、この洗濯物が私たちのものだというのを知っていて、この洗濯物は、食べ物をくれたら、交換で返すということなのです。最初、猿を見た時は、まさか、そんな、そこまでのことをするほど賢いなんて信じられないと思ったのですが、友人が、バナナを投げたら、それを受け取って、洗濯物を手からはなしたのです。猿は何匹もいて、みんな手に手に洗濯物を持っている。
どうやら、この猿たちは、人を噛んだり、襲うことはないようで、あくまでも、洗濯物との交換で餌をもらいにきているだけのようでした。しかし、こんなことが日常的に起こっているのです。野生の動物がいるのは、日本なら山奥でしか考えられないですが、まあ、ここも人が多くいるとはいえ、山奥なので、仕方ないとあきらめて、自分は、洗濯物は室内で干すことにしました。
それから、トイレに入った時のこと、ここのトイレは、水洗ではなくて、便器の前にカップが置いてあり、用をたしたあとで、カップに水を入れて、それを使って流すという仕組みです。
すると、ある時、座って用をたしていると、なんと目の前にさそりがいました。さそりは、しっぽの先に毒針があり、その毒は、小さいさそりほど毒性が強く、その毒によっては、刺されたら命がないという。
ここ、シバナンダ・アシュラムは、ここの創始者のシバナンダ氏が医師であったことから、病院が併設してあるとはいえ、いつも血清があるわけではないといいます。ここで知り合ったインド人の話しでは、彼の友人が、ある時、さそりをみつけたので、草履で踏みつけたが、それに穴が空いていて足の裏からさされたという。その刺された毒のせいで、焼け火箸を足の裏につっこまれたような痛みがあったということで、たまたま血清が間に合って、幸運にも命が助かったのだと聞きました。1番毒性の強いさそりの毒になると、象が数時間で死ぬといいます。さそりに遭遇したら、後ろのしっぽを垂直に立てたら、次の瞬間には、飛び跳ねて刺されるのを覚悟した方がいいと言われました。つまり、しっぽを立てられる前にどうかしなければなりません。今、トイレで遭遇してから、ここまでのことが、一瞬で頭の中を巡りました。
今は、しゃがんでいる体勢で、すぐ立ち上がるにも立ち上がっただけでは、さそりの攻撃を避けることはできない。それに、そのほかの避け方は考えられません。さそりは、しゃがんでいる自分の右前にいます。そして、信じられないことに、ものすごく小さな、おそらく1番毒性の強いさそりなのです。恐怖を感じながら、どうしたらいいかが、数秒間頭の中を駆け巡り、次の瞬間です。
さそりが、ぐっと、しっぽを立てるのを見た私は、一瞬早く、勢いよく、右足を前に出して、さそりの右側から内側へと蹴って、さそりを便器に向かって蹴り入れました、と同時に、カップを持って、その水を便器に放り込み、さそりを流し込む。この、連続動作が成功したことによって、なんとか、さそりに刺されることなく、この窮地から脱することができました。本当に、怖くて、この後もすぐには動けませんでした。こんなさそりが、ここでは、日本でいうゴキブリ並に頻繁にでると聞き、本当に、ここには住みたくないと思いました。
それから、ヘビもよく出るのですが、1番危険なのが、コブラです。さすがに、ただのヘビなら日本でも見ますが、コブラは猛毒があるので、ひどい時は血清がなければ命に関わります。一度、アシュラムの中で、2mくらいのコブラを捕まえた人が先の尖った鉄の棒で頭を突き刺しているのに遭遇しました。あと、夜中に寝ていると、口のすぐ横に何か生き物が当たり、危うく口に入るところでしたが、天井をはっていたヤモリが落ちてきたのでした。思わず飛び起きてしまいましたが、これが2回ほどありました。本当に、インドは、生き物嫌いの自分には、もう特に、2度と来たくないところになりました。本当に、気持ち悪いこと、この上ないのです。




