2話 異能
....どうしてこうなった。
「(自分の身体には翼が生え、母さんはスライムのようになってしまった...何故、ボク達はこんなことに...?)」
....そう考えていると、突如外から凄まじい爆音が。
「...?!」
その音に驚く劫月。
外に出て状況を見ると、そこには混沌が広がっていた。
街はボロボロになり、炎が広がり、奇妙な見た目をした人々がいがみ合って、傷つけあったりしていた。
爆音の正体はこれらか。
どうやら、変化していたのは自分たちだけではなく、回りのみんなも変化しているのが目に見えた。
「....お、女だ」
横から男の声がした。
そっちに振り向くと、外見上何も変化していない男だった。
「な、なんですかあなたは?!
なんで街はこんなことに?!」
困惑気味に言う。
「しかも羽も生えてて、凄く美人...手込にするッ!」
劫月に飛びかかる。
「うわっ?!ちょっ?!」
劫月は抵抗するが、男は離れない。
「振り解けねえだろ?
これは俺の異能、パワー強化だぁ!まさに最強ッ!女子供を犯すのにはちょうどいいッ!」
「ッッッ!やめろっ!初めてがこんな奴なんてやだ!」
「へっ、お前は最初で最後の体験だ!どのみちお前は犯されて死ぬんだよ!さぁ!大人しく犯されろ!」
劫月の下半身に手を伸ばそうとした瞬間、男の脳天に衝撃が走る。
「...ぷえ...?」
そのまま男は劫月に乗っかるように倒れ込んだ。
「ッたく、変態ジジイ。滅びやがれ。」
そこにいたのは黒髪の同い年くらいの青年がいた。
どうやら助けてくれたらしい。
「アンタ、怪我は。」
男をどかし、手を貸してくれた。
「...大丈夫。助けてくれてありがとう。君はいったい...?」
と、少し混乱気味に言う。
「俺は凌雲。
流月 凌雲
(リュウゲツ リョウウン)。」
「リュウゲツ...って、最近越して来たって人だよね?
何が起きてるか知ってる?」
質問攻めのようになっている。
「わからん。朝起きたら、ヘンな身体になってた。」
「...!それってボクと一緒だ!
僕もこの羽が起きたら生えてたんだ!」
「これってなんなんだろうな。俺は、身体の好きな部位が硬くなる力だ。」
「...とりあえず、助けてくれてありがとう。家で安全に暮らしておくね。」
「...そうか、安全n...」
その瞬間、二人の視界は爆炎で包まれた。
....劫月の家が爆散した。
劫月と凌雲は爆風で飛ばされ、塀に激突した。
「...ッグウ...!家...が...なん...で...」
「...」
凌雲が上を見上げると、戦闘機が、街に無造作に攻撃しているのが見えた。
「あれが...家を...」
「...ッ!母さんッ!」
劫月は家の残骸を掻き分けていく。
...そこにあったのは、血の跡と、ドロドロで生焼けな肉片。
「....なんで、なんでこうなるんだよ!殺すならボクを殺せよ!なんでだよ!」
少し発狂しつつ言った。
「...落ち着け。」
「落ち着いてられるかッ!家族が死んだんだぞ!」
羽で凌雲を殴りつける。
「...悪い...」
凌雲には効いてないようだ。
「...みんなは今何してるんだろう...逃げてるかな...」
「...ここじゃ危険だ。安全な場所まで行くぞ。」
「...待って。」
そう言うと、劫月は瓦礫で組み立てた墓を建てた。
そして、二人は、安全な河川敷まで逃げてきた。
「...ここまでくれば大丈夫だろう。」
「...母さん....」
「....いつまでも引きずるな。悲しみが募るだけだ。」
「深海に陸は無事かな...」
「...それは友達か。」
「うん、友達。すっごく仲が良くてね、近所では三兄妹って言われてたんだから。」
「...そうか」
「...二人を探しに行く。」
「探しに行くって、今この状況で、しかも安否がわかってないのにか?!」
「...うん。
ありがとうね、助けてくれた上に、安全なところまで連れてきてもらって。さよなら」
学校の方面へ歩き始める。
「待て!俺も行く!一度助けたやつが死んでるところ見ちまったら後味が悪い!特にメリットがある訳でもねえけど、協力してやるよ!」
凌雲は追いかけた。
次回-消息-