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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
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3.検証事項のおさらい

 ヤマビコさんたちも読み終えたので、次はリーさんとポユズさん。

 教本は二人読んだらボロくなったけど、絵本はそういうことはないようで安心した。資料室や書庫にも置いてあるものだから、大丈夫とは思ってたけども。


「やっぱり人の持ち本だと『メモリー』には登録されないみたいだねえ」

「猫も買うまで登録されなかったから、この本はそういう仕様なのかもしれないにゃん~」

「にゃん~、やっぱりこの最後のところのが原因かね?」


 全員読み終えたので最後の頁を開く。例の魔法文字ってやつですな。


「魔法文字っていうらしいにゃ。本屋さんいわく、これだけ魔法文字が残ってる本は希少って話にゃ。然るべきとき、然るべき場所で唱えれば魔法となる呪文で、一度唱えれば文字が消える術式で刻まれてるらしいにゃん」

「おお、それはお高いのも納得。本はスクショ出来ないのがお約束だけど、もしかしてこれメモも出来ないのかね?」

「にゃあ、前の部分の月齢のメモは出来たにゃんよ?」


 メモを試してもいいか聞かれたので試してもらうと、やはりメモは出来るようだ。そしてメモっても別に呪文が消えたりもしない。


「あ、でもこれ1文のみだね。これ以上をメモするにはスキルが足りませんって出る。スキル??」

「メモスキル??」

「きっと製本師のスキルにゃんね~」

「待って猫ちゃん、製本師?てなあに?」

「にゃん? 本屋さんのジョブにゃん。『動く文字』で作るインクが仕事道具って言ってたにゃんよ~」


 フーテンさんも本屋に通ってるのに知らないとは。もしかして探索者ジョブじゃないと話が出てこないんだろうか?

 エドさんを見ると肩をすくめられた。


「探索者の依頼に『動く文字』があるのは知ってるが、あの辺の依頼は全部、謎依頼だからな」

「図書館ダンジョンでたくさん取れるとかじゃないにゃ?」

「察するに本から取るんだな? ランが取れるってことは採取系か。図書館ダンジョンで本を調べる…」

「ブックマックとエフェメラに囲まれてとんでもないことになるわね…」

「にゃん…」


 デバフmobと魔物を呼ぶmobの共演は、たしかにご遠慮願いたいやつだ。


「猫ちゃんが検証したい話、この魔法文字のとこ関係する?」

「今回はしないにゃん~」

「おっけー、じゃあメモは消しとくねえ」


 残しといてもいいのに、律儀さん。



「今回検証してほしいのは、月夜に生まれたての精霊と契約することにゃんよ~。『精霊使役』のスキルを取るのに10SP必要になるにゃ」

「また見つけてきたのねランちゃん…」

「この本からして予想はついてたけど、精霊かぁ…」

「月夜に精霊が見られる精霊スポットは観光名所として掲示板で紹介されてるにゃん。今回は明後日が黒月夜だから、『月夜じゃないのに精霊が見られる』スポットの『隠者の村』が怪しいと思うにゃん。でももしかしたら勘違いで、無駄足の可能性もあるにゃ。だから万全を期すなら、暗黒夜を挟んで次の赤月夜ってことになるにゃ」


 月齢の頁を開いて、今は春明はるあけの季、次は風光かぜひかるの季と説明する。あとは例の観光名所スレも参照のこと。このスレがあってよかった、集合知バンザイ。


 それから『精霊使役』について、現段階でわかってることも一通り説明。

 といっても大した量ではない。


 精霊は契約すると石の中に住むこと。今のところアクセサリーしか試していないが、おそらくその他の装備品に住まわせることも出来るだろうこと。

 精霊とその住居となる石に応じて、装備品に効果がつくこと。MP増強とか、属性強化とか、スキルが生えたりとか。

 あとは、そう。


「自家製醤油と味噌が作れるようになるにゃん」

「マ!?」


 ヤマビコさんが前のめりになった。


「ポーツにあったクエストは、たぶん醤油と味噌を作るための『漬け物石』を授かるのが正規ルートだったにゃん。猫はクエストのときにそこまで情報を辿れてなくて、他の精霊を手に入れてしまったにゃ。だから確証はないんだけど、後から調べたところほぼ間違いないにゃん」

「『漬け物石』…てあれか、特殊な妖精が住んでる樽じゃないと作れないっちゅー」

「それにゃん。クエスト中にあった料理人NPCはでっかい石を持ってたけど、後で別の料理人NPCに聞いたところ、量がいらないならよく洗った『清潔な石ころ』で十分らしいにゃ」

「『清潔な石ころ』…」

「あと、異界の扉の防衛だったにゃん」

「そこか~~!」


 そこです。


「神さまに会ったにゃんよ~。神さまから精霊が生まれてたにゃ」

「ポーツってことは、釣り神か運送神?」

「運送神だったにゃん。青月は水の底、底無しの海の幽世かくりよに繋がってるらしいにゃん。広がれば世界は浸水していくって言ってたにゃん~」

「待って、それ啓示じゃない?」

「違うと思うにゃ。言葉はややこしかったけど、要はここは青月夜に毎回異界の扉が開いちゃうポイントだけど、ここだけじゃなくて他にもそういうところあるから行ってきてね~、みたいな感じだったにゃん」

「別のクエストのご案内ね。あるあるだわ……神からのご案内は珍しいけども」


 ポーツの昔話を調べていたフレンド(ペチカちゃん)と、魚屋NPCから話を聞いてきた猫の共同作業でクエストをクリア、特に戦闘はなく完全防衛出来たことなどを話すと、フーテンさんが唸った。


「気のせいじゃなければ、生産勢にも異界の扉防衛参加させようとしてるよねえ、これ」

「思ったわ。醤油と味噌とか料理人は確実に釣れるわな」

「防衛でしか手に入らない素材や道具が出てくるなら、純生産もこぞって乗り出してきそうだな」


 猫もそれは思ってた。

 調味料系、他の街にもありそうって考えたら、『料理』だけなわけないよなあって。


 でも他の月夜にもそれぞれそういうイベントが埋まってるのだとしたら、生産戦闘関係なく、ジョブ毎に専用(かそれに近い)精霊が埋まっててもおかしくない、とも思うのだ。


 たとえば魔法数限定の属性魔法スキルなんて、明らかにプレイヤーよりも従魔や召喚獣向けだろう。

 レトにお願いしてリューシー借りてから教本売店見たけど、ラインナップ増えなかったもん。LV上がらない、教本も増えないのでは、魔法スキル付きといえどちょっと使いづらい。

 その点、召喚獣なら魔法の種類が限られているのはむしろやることが絞られて使いやすい。……もちろん使える魔法であれば、だが…。いや、使える魔法ならプレイヤーも嬉しいか。


 ……。

 ま、まあレトの場合は、リューシーがスイッチになって希少進化出来たわけで、その価値はかなり大きかったわけで!

 はい。



 そういう話をした結果、よし、じゃあ早速隠者の村へ行くか!となった。


 いや、最初の予定では黒月夜は明後日だから、今日は本見せて話だけして、じゃあまた明後日にね~て流れになる予定だったんだけども。

 月夜に精霊が見られる場所は、それぞれに他のクエストも埋まってる可能性もあるのでは?て話になったら、そりゃ気になっちゃうよね!


 ポーツの白月夜の浜辺も、たぶんあの入り江の洞窟に何かあるんだろう。あそこは船がいるだろうから、釣り神さまに会えるのかも? 神さまの配置的にもそんな気がする。


 しかしアトノ島のクエストも『釣り』や『運搬』、『裁縫』スキルが必要なのに、手に入るのは『料理』のための精霊だったりと、前提スキルに対して報酬が合わないクエストだったし、何が手に入るのかは謎だ。

 異界の扉防衛(と精霊入手)はPTプレイ推奨なんだろうね。



「隠者の村か~~、猫ちゃん、もしかしなくても初見?」

「初めてにゃんよ~」


 だって推奨LV20だもの。つい最近まで選択肢にすらなかった。


「あそこ、ちょっとややこしいクエストが埋まってるんだよねえ。全ジョブ共通の」

「あるわねえ…、『調薬』も結構めんどくさかったけど、戦闘系もあるのよね?」

「あ、ああー! 隠者の村って、アレか!」


 おお?

 なんか村ぐるみで大きいクエストがあるやつ?

 「お前さん、まさかあの祠を壊したんか…?」みたいなやつか。…村のクエストというとすぐそうなっちゃう猫の発想の貧困さよ。


「その辺、履修済の俺らと行くとどうなるかちょっと謎なんだよねえ。たぶん初見の人に合わせた仕様にはなると思うんだけども」

「にゃん~、PT分けるにゃ?」

「あそこ、たしかソロはLV25推奨だったはずだよ。ランは足りないんじゃない?」

「にゃあ~~…」


 LV20推奨はPTの場合で、ソロならLV25らしい。猫じゃたしかにちょっと足りない。

 でも村の中だけなら問題ないんじゃ? あ、外も出る? そうなの? じゃあ無理か…。


 未履修の猫と履修済のみんなで行って、フラグは未履修に合わせるようになるのに何が問題になるのか? というと、「これはあのクエストのフラグっぽいから、別に行かなくてもいいか~」てなっちゃうのが問題なのだ。


 既存のクエストのフラグと思い込んで新規クエストのフラグを見逃しちゃうのとか、あるあるらしい。

 たしかにすごくありそう。

 明後日までとタイムリミットがあったりすると、どうしても触るクエストを選んだりもしてしまいそうだしね。


 何が今回のクエストに繋がるかさっぱりわかっていない以上、フラグはなるべく拾いたい。

 ということで、猫は隠者の村の既存クエスト関連のネタバレ禁止を提案された。

 猫はそこまでネタバレにこだわる方じゃないけど(こだわるなら掲示板や攻略は見られない)、やはりネタバレ無しの初見の楽しさは、それはそれとしてとてもよいもの。

 だから猫にとってはむしろありがたいくらいだ。


 それに、「隠者の村はランに向いてる」とはエドさんの言。


「あー~…。ネタバレしちゃうから詳しくは言えないけど、たしかに猫ちゃん向きかも」

「にゃん??」


 斥候系スキル持ちにおすすめの村ってのは知ってるけど、いろいろってことは他にもありそう? なんだろ、農業? それとも錬金術?


「楽しみにゃん~!」


 深くは聞くまい、敵はネタバレ!!

そんなわけでようやく2章までのおさらい回を終えて、次回から隠者の村へ出発!


『隠者の村』編はかなりの長編となっており、一区切りつくのが20話あたり。5月中はほぼ村編になりそうです。

いっぱい村が見られるドン!(?)


まったりお付き合いください~。



評価、ブクマ、イイネ、感想ありがとうございます。


240502 製本師に当てていたルビを削除し、それにともないフーテンの台詞を一部変更しました

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― 新着の感想 ―
[一言] >因習村 猫ちゃんなら祠壊して八尺ラコラ召喚しそう その本屋で三日はおれ!散財してはならぬぞ!
[良い点] みんなでお出かけ楽しいですよね。 今からワクワクが止まりません。 猫ちゃん向けの村って、いったいどんな感じでしょうか。 [気になる点] 本を作る人という意味だと理解してはいるのです。 で…
[一言] 村いっぱいみます!更新楽しみです!
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