表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
95/281

1.鏡の月は金色

お待たせしました、3章が始まります!

「お待たせしましたにゃん~!」

「今きたとこ~~!」


 おのれ様式美。

 そんなわけで執事さんと別れてギルド通りまで戻ってくると、冒険者ギルド前にはすでにフーテンさんの姿があった。

 猫も「今きたとこ~」て言いたいけど、言えた試しがないな。


 合流前にマイルームへ戻り、釜を仕込んでたから仕方ないねえ。

 なにせ1枚作れば猫の取り分30万の羽根、そりゃ一刻も早く仕込まねばと猫もウキウキしてしまった。


 初級釜は氷で魔羽根予定、中級釜は雷で技羽根予定。でもこれなんでこの属性なんだろな?

 強いていえば氷は『理力』でのコントロールが難しく、雷は比較的コントロールが効く、てやつなのかな。

 教本読んだときには、現象が物質的かそれともプラズマのような形のないものだからその辺に魔力との相性があるんかな~とか思ったけど、果たしてどんな理由なのやら。


 鳥の糞も圧縮してみたいが、釜は残念ながら2個しかない。

 上級釜は猫にはまだ早いけど、24時間圧縮用に初級釜がもう1釜あったっていいんじゃない? などと富豪の発想もほんのり頭をよぎってしまった。

 いやいや、お金って怖いわあ!


 マイルームへ戻ったついでに庭の水撒きだけして、謎のダンスを踊る白ラコラをアポート収穫したところ、白ラコラの群れに襲われた。こんなに立派に育っててもダメなんかい。土にお帰り…。

 白ラコラによる出荷統制が厳しい。畑主なのに作物に勝てない。

 まだ旅行中だけどベランダハーブ農園、再開しちゃおうかなあ~! 動かない植物がちょっと恋しいぜ。


 ……などとやっていたので時間ギリギリになったわけで、はい。反省。




「猫ちゃん、ルイネまで行けた?」

「ポーツ止まりにゃん。前回のイベントを教えてくれたNPCにお礼に行ったら、別のも教えてもらったにゃんよ~」

「おや、長編サブクエ踏んじゃった?」

「にゃん~、流れ的に考えるとポーツのは終わったと思うにゃ」


 異界の扉防衛にしても、ここだけじゃなくて余所もやれっていってたし。


「たぶんヤマビコさん向けのイベントだったと思うから、後で教えるにゃん」

「おお?? 盾…、いや、料理関連?」

「そう、とも言い切れないのがちょっとややこしいんだけど、料理関連のがあるのは間違いないみたいにゃん~」

「ほむ? スキルに応じて違う報酬系?」

「というわけでもないみたいにゃん~。その辺を説明するのにも例の本が必要にゃん」


 全てはあの本から始まった…てわけでもないか。


 魚屋に月夜を教えてもらうところから入っても、たぶん精霊はもらえるわけだし……。ハッ!? 待って『漬け物石』にも名前をつけるの!? …あっ、もしかしてポーツのNPC屋台で聞いた調味料の壺にお名前をつけるってもしかしてそれ!?

 …わあ。え、もしかしてポーツ以外の調味料でも、そういうのあったりする?

 この世界のご当地調味料は精霊で出来てるの、どうなの!?


「例の本ね~。あ、そうだ猫ちゃん、本屋さんに聞いたけどまたすごい散財したんだって?」

「!? プライバシー! プライバシーの侵害にゃん!?」


 猫の散財をお爺さんが余所に漏らしてるにゃん!?


「いや、本屋さんから『チラ見せして金をせしめる計画って言ってたから奮発してやれよ』て言われたんだけどね~、もしかして、その例の本だったのかなと思って。見せてくれるために無理して買ったんじゃない? 大丈夫? なんなら俺が払うよ??」

「にゃん~、ちゃんと納得して買ったから、何も問題ないにゃん」

「そお? ならいいんだけどねえ」

「フーテンさんも本屋さん通ってるってことは散財してるにゃん?」

「俺はほら、お金持ちの大商人だから…」

「散財は否定しないにゃん」

「沼がそこにあるにゃん?」

「どっぷりにゃん~」


 わかるぅ~。


「検証、SP使うけど、ほんとによかったにゃん?」

「大丈夫よ~、猫ちゃんが見つけてきたもの気になるしね~。幸いSP10まだ残ってるし、『農業』も無料取得できちゃったし」

「絶対損はさせないにゃんよ~」


 SP10実は返ってくるしね。あの名付けた精霊を人質に追い剥ぎされる感を味わってほしいので言わんけど。これはネタバレに配慮ってやつですにゃん。何も問題はない。



 冒険者ギルド前で他の面子とも合流予定だったのだけど、ちょっと遅れてるみたいってことで、お先に部屋で待つことになった。


 二度目ましてのフーテンさんのログハウスへ。

 相変わらずドアがでかい…。ドアは拡張ででかくなるのか、増築ででかくなるのかどっちなんだろね? 猫も一番最初のドアに比べたらでかくなってるんだろうか。ちょっと気になる。



「なんかオシャレな本棚があるにゃん…」


 お久しぶりのログハウス、新しい家具が増えてた。

 本の表紙を並べて飾れる本棚だ。猫の実用一辺倒の本棚とは大違いのオシャレさ。


「買っちゃった」


 散財しておられる。お金に余裕がありそうだからな、大商人。きぃ!

 あ、『羽根大全』も買ってる。図鑑系がやはり多めかな? でもなんか辞書みたいな本も結構ある。


「そういえばあの本屋って、読んだことのある本しかないじゃない? 猫ちゃんが持ってる本を読んだら、本屋に並んで買えるようになるのかね?」

「にゃあ、どうだろ? 今回猫が買った本はちょっと特殊だから、原本読まないと買えないんじゃないかと思うにゃ。猫はもしかしたら本屋には並んでないかもとも思ったにゃん」

「本屋さんも言ってたよ~、猫ちゃんがずいぶん変わった本を見つけてきたって」

「猫の買い物が筒抜けにゃん~~」

「猫ちゃんが破産するんじゃないかってわりと本気で心配してるんだよ店主さん。『あの猫、出禁にした方がいいんじゃねえかな…』って言ってたよ」

「にゃあん!?」


 ね、猫だって買う本はちゃんと厳選してますのに!


「フーテンさんだって読んだら絶対買いたくなっちゃう本にゃんよ~」


 机の上に失礼して本を乗せる。はいドッコイショ。

 『月と精霊の扉』は絵本だから結構大型本だ。そんなに分厚くはないんだけども。レトがテテテっと降りてきてテーブルに着席。


「『月と精霊の扉』……。すでに事件の予感しかしませんなあ~」

「読めば君もハーレム野郎になれるにゃん」

「うわあ……マジかぁ~~…、えっ、もしかしてロマンってそういう?」

「そういうよこしまなロマンじゃないにゃん」

「そうか、うん…、いやロマンとは??」

「ロマンはもっと後にならないとわからないから今は本を読むにゃん」

「にゃん」


 フーテンさんはおとなしく座って本を開いた。


「…あ、月の満欠の周期とかの本なんだ。へえ~、よくまとまってる。なんちゃらの季とかってこんなにたくさんあったんだねえ」

「元々は月の異名が知りたかったにゃん。『農業』には月の満欠が関係するものが結構あるみたいで、本によく出てくるにゃ。月夜にひとつずつ異名とかあって、知ってて当たり前のように進むにゃ」

「あ~、あるよねえ、なんかややこしいやつ。メインストーリーとかだと一緒にいるNPCが教えてくれるんだけど、サブクエストだとさっぱりわからなくて逃したりとか、あるあるよ~。たしか有志が開発した月齢調べるスクリプトとかあって、一時期わかるようになってたんだけど、ズレが生じるようになったからって開発中止になったはず」


 へええ~とか言いながらフーテンさんは頁をめくっていく。


「そんなものがあったにゃんねえ」

「あったにゃんよ~。たぶんなんかのメンテか、アプデが入ったんじゃないかっていわれてたねえ。あれはこの、黒月夜が入ってなかったせいでズレたんじゃないかな~」


 なるほど、黒月は後から追加された可能性があるのか。


「第三エディションより前にゃん?」

「前だねえ。黒月は、たしかメインクエストのどこかでちょっとだけ言及されたことがあるよ。満月のない期間が1週間以上続いて『今は黒い月が上る時期だから』みたいな思わせぶりなこと言われた記憶。あれはたしか自由都市マケットのクエだったと思うから、第二エディションで実装されたんじゃないかね? あ、でもスクリプト使えなくなったのはもっと前だった気も…?」


 うーん、とフーテンさんは首を捻っている。


「まあずっと前ってことにゃんね~」

「そうにゃん~」


 後から実装されるなら、もしかして月はもうひとつ増える余地があったりするのかもしれないな~と思ったりしなくもない。

 でも属性の割り当てが15属性揃ってるから、もうないか。

 黄色がないのが気になるんだよねえ。だって月といえば、金とかありそうじゃない? あとは二十四節気するなら五行しそう。属性自体が増えたりして…、いやそれはさすがに、ないかなあ。


「金色の月とかはないにゃんね?」

「あ~、ない………いや、待って、なんかあった気がする……」


 フーテンさんは一度こめかみに指を当てて考え込んでいたが、ついに自力では思い出せなくなったのかツイツイと空中に指を走らせ始める。

 さては『メモリー』検索しとるな。


「あ! そうそう、鏡月ていうのがあるらしいよ」

「鏡月にゃ?」

「転じて凶月ともなる…、とかいっていや漢字なのかよって突っ込んだ思い出。うわ、懐かしいなこれ。えーと『その月はときに赤く、青く、白く、また黒く、あるいは金色にも輝く』…」


 『メモリー』は既にクリアしたクエストのログも入ってるので、メッセージの検索も安心だ。とはいえ、全ログ設定にしてると膨大な量になるので、検索も大変らしいけど。

 猫も一応全ログにしてる。


「『其は鏡の月にしてウロの月、ただ穴が空いているだけの窓、幽世かくりよが覗いている。其は、今はまだ割れていない鏡』……、あれ、これもしかしてメインクエスト関係あるやつじゃない?」

「にゃん? 異界の扉の防衛ってやつにゃ?」

「それにゃん、て猫ちゃん知ってるってことはもしや」

「防衛に成功して20DPもらったにゃん!」

「有能~~!」


 やんややんや。その花吹雪投げるアクションはどこで手に入るんです? 何処からかつづみの音もポポポポポポン!と高らかに聞こえるオプション。ナニソレ猫も欲しい。


「あれ、メインクエストだったにゃん??」

「今、メインクエストって停滞してるのよ。学園都市編?が終わったような終わらないような~みたいな微妙な感じで、続きがなくてさ。それで扉防衛が出てきたから、DP合計とかにひそかに達成目標があって、到達したら次へ進むんじゃないかと予想されてるねえ。そうじゃなくても今、運営はダンジョン推しみたいだから」

「推し活にゃんね」

「そ、そうね?」

夜時間は敵の配置が変わったり、暗くて制限が増えたりするのでマイルームに帰って生産に当てたり、休憩入ったりする人が多い。

洞窟の中とか、ダンジョン内だと時間帯での変化は少なめ(多少はある)。



休載中も評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

読み返してくれた方もありがとう!


連載再開となりましたので、GW中も月曜から金曜まで猫をお届けです。にゃんにゃーん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新チェック入れてなかったから今気づいたとこ~! ごめんにゃん 飼い主が猫の奴隷であるように畑主は白ラコラの農奴なんやろなぁ
[一言] 魔が月、禍月なんてのもあるにゃんね 血で染まった様な紅い月だったり月を十時切りした様な痕跡な月だったりするにゃん
[一言] やった!猫ちゃん待ってた!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ