47.ロマン砲
(切れ目が悪く、途中で切れます)
ポーツの運送ギルドで自由都市行きの荷物を積む。
あれ、なんか猫の積載量増えてる? と思ったら加護の影響か。1%増加だったのがお名前もらったから3%に増えてた。ありがたや~。
せっかくだから、神殿も寄っていこう。お礼参りをしておきたい。運送の神さまも釣り神さまも、自由都市の神殿にはいなかったもんね。やはり海がないと駄目な神さまなんだろうか?
ポーツの神殿は海のそば、白亜の神殿ってやつだ。自由都市に比べたら全然小さいけども。海風が爽やかで気持ちいい。
先に運送ギルドに行ったから荷は重たいが、魔ロバになったルイは頼もしい。レトも荷運びしたいらしくて、カムカムするのでがま口に小さめの荷物を入れてあげたら喜んでいた。
神殿に入り、神像を見上げる。
おお、加護もらってから来ると、像がほんのり色づいて見えるのか。うっすらでも色がついていると、やはり存在感が違う。これはまた自由都市の神殿へ行くのも楽しみになっちゃうね。それとも、こうなるのは本尊だからなんだろうか?
色がつくと運送神の肌色はかなり青みを帯びているので、全然イメージが変わってくる。やはり刺青じゃなくて、鱗だったんだなあ。ちなみに釣り神の方は健康的に日焼けした肌色だ。こんがり。
お世話になりましたにゃーん!
『よく運べ』
「にゃん」
お声がけされてしまった。…積載量ギリギリだったのがよかったのかね?
あ、5%アップになってる。
釣り神さまの方は特に反応はなく。
よし、これでポーツでやっておくことはもうないかな? 自由都市へ帰ります!
初めての転移施設利用でちょっとドキドキしつつ、冒険者ギルドの隣にあるちょっと高い塔?のような場所へいき、受付に1万z払って行き先を告げる。ちなみに従魔と召喚獣も連れたまま行ける。一応サイズ制限はあるけど、街中で連れ歩けるタイプはOK。
受付で番号札をもらって塔の中へ入り、先にある操作盤(?)に鍵のように番号札を差す。すると対応するドアが開くので中に入る。入るとドアが閉まる。そのまましばらく待つとまたドアが開くので出る。すると、そこはもうすでに自由都市の転移施設内。
はい、エレベーターでしたね…。
番号札で入った部屋の中にそれぞれに対応した座標の埋め込まれた空間魔法部屋がある、とかそんな感じらしい。
番号札を受付で返したら、転移は終了。手続きもろもろ含めて5分もかからないし、街中に出るので門を通らなくていいのが楽だ。
自由都市の施設は塔ではなく、普通の建物だった。冒険者ギルドの隣にあるのは変わらないらしい。つまりここはギルド通り。
あっさり帰ってこられるのはありがたいけど、1万はやはり高い。ホイホイ払える額じゃないね。すでに初心者時代が懐かしい…。
さて、まずは運送ギルドで荷下ろし。
さすがにすぐランクアップとはいかない。知ってた!
あとあんまり転移利用して運び屋やってると変なランク名になりそう、ということに気づいた。気をつけよう…ハリボテ運送屋はいやだ。しばらくは街中依頼とかにしよ。
今日は野菜売りのおばちゃん、いなかったな。農村レイドもあるっていうし、村に帰ってるのかも?
焼き鳥のおじちゃんはいたので肉を売って串焼きを買い、ついでにお土産の『ポーツ饅頭』を渡す。
「おお、ポーツまで行ってたのか! 醤油の石は手に入ったか?」
おや、おじちゃんは『漬け物石』のことを知ってるのか。やっぱり料理屋台の店主だからそういうの詳しいのかな。
「にゃん~、『漬け物石』にするのにちょうどいい石がなかったにゃんよ~」
「あー。あれ『漬け物石』っていうからややこしいんだよなあ。あれは大樽用でよ、量にこだわりがねえなら綺麗に洗った『清潔な石ころ』でもいけるんだぜ」
こそこそ、と店主が教えてくれる。いわく、石の重さと同量の醤油・味噌が出来るので、少量しか必要ないなら大きな『漬け物石』でなくても十分らしい。な…なるほど!?
あの料理人のお姉さんは、新しく店をするから大樽用の『漬け物石』だったわけか!
『清潔な石ころ』なるアイテムも知らなかった。綺麗に洗うとそんな変化があるの? 煮沸消毒……いや、『浄化』かな?
「盲点だったにゃん~! 今度行ったときには試してみるにゃん、ありがとうにゃ~ん!」
「おー、こっちも饅頭ありがとうよ!」
こうして後から情報が入ってくると、ちゃんとやっておけばよかったかな~てちょっと惜しくなってしまうな。
しかし醤油が作れる石、アクセサリーじゃないよね? たぶん…。樽の中に石を入れるだけでいいんだろうか。それとも樽に組み込む? あ、もしかして『固定』!? そういうこと!? いやいや、どうなんだろ。気になるー!
気になっても青月夜まではどうにもならないのである。はい。くぅ、歯がゆい…!
さてさて、お次は露店通りへ。
久々にセルバンテスさん(執事)が露店を開いているようでGPSをもらったのだ。狩猟祭以来ですな。というか狩猟祭もメールで話しただけなので実はもっと久しぶりじゃない?
「近くにいたら是非きてね(意訳)」なメールだったので、タイミングがよかった。というか自由都市にいるのを見てメールくれたのかも。
この露店通りをどんぶらこっこと流れるのもなんだか久しぶり。流れ流され無事到着。
うむ、記憶通りのゴザにちょっといい椅子、そして足を組んで斜め座りの優雅な執事。見た目はカッコいいロマンスグレー執事なんだよな…見た目は。
お、『露店黒板』がある。何も書いてないけど。
「こんにちはにゃん~」
「こんにちはランさん。執事小屋へようこそ」
そんな店名だったの???
アッ、だからゴザのままなんです!?
「お待ちしておりました。それでは本日の商談と参りましょう」
「今日は展開が早いにゃん」
「時は金なり、善は急げ、猫に小判、執事に真珠と申します」
「羊と執事を掛けてたわけじゃなかったにゃん??」
「そんなわけで今日の商談です。はいドン!」
セルバンテスさんが『露店黒板』を叩くとクルリと黒板が回転し、裏返る。
そこには『一攫千金! 君もロマンの羽根で空を飛んでみないか?~第3回ロマンコンテスト~』と書かれている。
「すでに開催実績があるにゃん!?」
「ふふふ、さすがランさんお目が高い」
「これまで目のつけどころを褒められたことは数あれど今ほど無駄に感じたことはないにゃん」
「いいえ、無駄なことなどなにひとつ世の中にはございませんよ。大切にしていきましょう。さて、本日ご紹介したいのはこちらでございます」
ささっと執事さんが取り出したのは、ドでかい羽根。これは見覚えがある、というか前も圧縮したぞ?
「ロックランドバルバトロスの羽根にゃんね?」
「その通りです。先日、こちらを圧縮していただいた『大陸羽根』と『大陸大羽根』なのですが、大化けいたしました」
「にゃん?」
セルバンテスさんの話はこうである。
もらったものの、執事の手には余ると大切に倉庫にしまっていたのだが、あるとき知人と狩りの最中に雑談として「羽根は指揮杖としても使えるらしい、なんか超強い指揮杖作ってもらった」と話したそうだ。すると知人から話が巡り、指揮杖を必要とするものが執事を訪ねてきたのだという。
「それはロマン砲を嗜むものでした」
ロマン砲――。
それは『こうなったらめちゃくちゃカッコいい』という夢と希望、そして『ぼくがかんがえたさいきょうのこうげき』、ごく稀に成功するからこそあきらめきれない人類の夢……。
「一撃でへし折れるかもしれない杖だとしても、彼は躊躇いませんでした。『なんなら杖は毎回折る』と語る彼の笑顔が印象的でした」
折るんかい。
ひとまず報酬として、いつも使う指揮杖と同額が支払われ(なおとてもお高い)、そして戦場へ旅立つロマン砲氏。
「羽根はその日、火を吹きました。そしてロマンはこれまでにない輝きを放つ星となったのです」
「いい話だにゃ~」
『大陸羽根』は一撃でへし折れたものの、無事ロマン砲の名に恥じぬ絶大な攻撃力を見せつけ、大活躍したらしい。そして次に使われた『大陸大羽根』も大暴れし、一躍、ロマン砲界(?)は期待の新星なる『大陸羽根』で大盛り上がりとなったそうな。
「そんなわけで、まずは分け前のお支払がこちらです」
「にゃん??」
「元々1枚は30枚の羽根と交換の正当な取引としましても、もう1枚はランさんの取り分と思いますので」
ああ! 猫に相場はわからぬした分!?
執事さんたら律儀。
「にゃん~、あれはオマケだったから気にしなくてもいいにゃんよ~」
「もちろんこれを足掛かりに、再び商品を作ってもらおうという下心がぎっしりと詰まっております。つまりこれは…、もしかして…恋…?」
「恋しちゃったにゃんね……お金に」
「ええ、お金に」
ぽわんとトレード画面が表示される。
………えっ?
「多すぎでは!?」
「フフフ、ランさん、ロマン砲など金と暇を持て余した貴族の遊びですよ。彼らからすればこの程度、はした金だそうで。ポンと出されたときには私も目を疑いました」
「桁が違うにゃん…ほんとに間違ってないにゃ?」
「間違いなく1枚100万でございますよ」
1枚100万てことは1発100万の魔法……。
猫の散財なんてまだまだ序の口でしたな。
ちょうど掲示板で話題になっているから、と該当スレも教えてもらった。『【最強】ロマン砲専用スレ23【最高】』。スレタイ…。そして23スレもあることにびっくり。錬金術総合スレより多いにゃん。
ちょうど最新でも話題に出ていたのでわかりやすかった。たしかに『大陸羽根』が話題になっているし、どこにも売ってないと嘆かれている。
それよりも「うおおお、もってくれロックランドフェザーッ…!この一撃だけでいい…!」「フオオオォォン!」「パキ…ン…!」「この演出が最の高」「折れた後にキラキラ散るのがヤバいアガる」という謎の使用感想たちに猫は今、銀河を背負っている。なんだこれ。
「錬金アイテムだとは紹介しておりません。錬金術師とすでに明かしている方にご迷惑をかけるのも本意ではありませんし、ただでさえ周辺が煩わしくなっているようですから」
「助かるにゃん~」
錬金術師界隈、最近はスレが勧誘で乗っ取られるまできている。余計に錬金術師が出てこられない世界になってしまった。…元からいない世界だって? それはそう。
いやでも本当にどうするんだろね?
そのうち制限スレ――スレ主が指定した条件を満たさない人には見られないまたは書き込めないスレ――が立つんじゃないかと期待するけど、あれってたぶん運営に申請しないとスレ立て出来ないだろうから、やはり立たない気もする。ROM金術師たちにそういう気概があるとは思えない。はい、自分のことは高い高い棚にあげた。猫、高いところだいすき!
ちなみに制限スレは一部の上級職スレや、あとクエストのネタバレを話すスレとかで使われている。まあ猫はそういうスレはだいたい「閲覧権限がありません」てなって読めないので詳細は何もわからん。
「それで、もしまだお持ちであれば、残りの1枚も買い取らせていただけないかと」
「もちろんいいにゃん!」
即答である。
だって猫は持て余してたアイテムだもの!
漬け物石の更なる回収、そしてお久しぶりの執事登場。
終わったイベントの回収(解説)はどこまでしていいか悩むところですな…。
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