44.ついに進化!
マイルームに入ると、ルイは庭の牧草を食べに行った。進化はご飯後でいいか。
レトは白ラコラと戯れにいく。なんか仲がいいんだよね。対畑ホッパーで結ばれた友情なんだろうか…?
ロニは勝手に出ていくことはないけど、自由にしていいと言うと水桶の『白月明』に入っていく。『白月明』でも特に問題はないみたいだ。よかった。
『青白き月光のブローチ』が出来たのなら、『青月明』を作るときに『白月明』も並べておくとよかったかも。いや、ロニが入っていたから二種類の月光を取り込めただけで、普通の『ムーンキャッチ』じゃダメだったりする?
その辺はやってみないとわからんか。
次の月夜では、違う色月明を並べるのもやってみよっと。
ロニはベンチの上の木皿に置いた水晶石と『白月明』にもたまに入っている。でも居心地としては水桶がいいみたいなんだよね。木皿のお店で聞いた『住居に水晶石を敷くと安定する』って話はもしかして同化率なのかなあと気になってるんだけど、ロニしかいないし、何もわからない。
今度は水桶に水晶石を敷こうか考えているところ。しかし敷き詰めるには、量がいるよねえ。
ちなみにリューシーも水桶を好んだので、ミニダンジョンに行っている間はここに沈めておいた。君は塩水じゃなくても大丈夫なのか? まあ海蛇のようで海蛇じゃないようだから、問題なさそうだが。
ティアラさんに依頼するまではマイルームから出せないと思っていたけど、ペチカちゃんのお陰でなんとかなりそうだ。
早速リューシーに声をかけて水桶から引き上げ、『組み紐の石包みペンダント』と組み合わせる。紐系のアイテムにはこういうふうに組み合わせることの出来るアイテムが多い。ロープを他のものに結んだりするのも、ある意味ではアイテムの組み合わせだ。
編み込まれた袋の中へ『カーバンクルの魔宝石(精霊の住処)』をいれて、きゅっと引っ張れば完成。
『魔宝石の組み紐ペンダント』になった。
装備効果は『装備時『時属性魔法』スキルを使用可能(魔法3)』。
お?
おおおお!??
試しにスカーフを外してつけてみると、たしかに『時属性魔法』のスキルが生える。え、面白い。ナニコレ。
使える魔法は『カウント』と『リカレント』。ふたつしか増えてないってことは、もうひとつはおそらく『タイムパス』だったのだろう
カウントは教本買っちゃったし、実質『リカレント』だけと思うとちょっと残念な気もするけど、でも属性魔法スキルが装備すると増えるって、かなり良アクセサリーなのでは?
……それに、猫は気づいてしまった。
ちょいちょいとレトを呼んで、スカーフと『魔宝石の組み紐ペンダント』を交換する。
どうよ!
アクセサリーってことは、もしかしなくても、従魔や召喚獣も装備出来るし、効果を発揮するのでは!?
レトはキラキラした目で猫を見上げ、自分の手を見た後、テテテッと庭へ走っていく。そしてルイの足元までいくと、ペカッと光った。
おおお!? 牧草が伸びた! ――ということは『タイムパス』だ!
すごいぞ、レト!
ルイは伸びた牧草をモッシャモッシャしている。初めての魔法がルイのためとか、レトったら仲間思い…。
いや、他に掛ける相手が白ラコラしかいないから遠慮したのかもしれない。どっちにしろ仲間(?)思いだ。
他にもペカッと光ると白ラコラの上になにやら数字が浮かんだりする。これ、ルイや猫の上にも浮いてるな? なんだろ、LV…ではなさそう?
まじまじと観察していると、まずレトの上に数字が浮かんで、カウントアップしていく。そして途中でその数字が消えると、みんなの上に数字が出る。……なにこれ? たぶん『カウント』だよね?
数字が浮くだけで、特に効果はなさそうだ。ステータスを見てもバフもデバフもついてないし、回復にしてはハートも出ない。全員に同じ数字が出るときもあれば、猫やルイたちの数字から憶測するにLVやHPっぽい数字が浮かび上がるときもある。鑑定的な魔法なのかな?
『カウント』は教本持ってるし、今度ちゃんと読んでみないとな。
『リカレント』っぽい魔法は使ってないので、使えないか、使っても効果がないんだろう。
時魔法師はスキル取るのが大変な割に、使えるスキルが微妙で泣いてるって話を前に聞いたっけ。うーん、たしかに?
はしゃぎ回ってるレトはとりあえず置いておくとして、まずは食事を終えたルイの進化からいこう。
『魔ロバ』
はい、これしか進化先がない。動物から魔物への進化は一択だそうな。まず魔物になって、そこから新しく進化していく。
ちなみに魔物と動物の違いってなにかというとこの世界では「異界に適応出来るかどうか」なんだって。
つまりダンジョンに入れるかどうか。
従魔は使役主との絆があるから動物でもダンジョンに入れる! て設定らしい。要はテイムされた時点で、魔物としての道を歩み始めてるってことだ。
ゲーム内NPCも「異界に適応出来ない人族」は多くいて、だからこそ異界の扉、ひいては異界化が恐れられているって背景があったりする。…そのわりに人族の方が異界化に迎合してたりもして、その辺がいまいちよくわからなかったりもするんだけども。
さて、そんなわけで進化だ!
しっかりブラッシングして労ってから、一旦装備を全て外す。進化すると大抵体のサイズが変化するので、装備は全て外しておくのがお約束だ。
そして『魔ロバ』への進化を決定する。
虹色の光がルイの足元からキラキラと沸き上がり、シュバッと白く明滅してたくさんの星が降ってくる。そしてそれが積もっていき、新しいルイの体を作り上げていく。
最後にピカッと光ったら新生ルイの誕生だ。
灰茶色のキュートで小柄なボディーに、大きな耳、つぶらな瞳。
……何も変わらん!!
緊張して損した!と思ったがよく見ると耳の後ろになんか小さい角が生えてる?
調べてみると、動物からの進化で角が生えるのは物理型、額や顔に模様が出るのが魔法型とのこと。角が今後育つかどうかは進化先次第らしい。ほうほう。
てことはルイは物理型になったのか。まあ魔法型になる要素はなかったから、納得しかない。
…うん、ステータス傾向は全体的に上がって、特に下がったりする項目はない。単純に同型の上位互換だからだろう。といっても進化したことでLV1になったので、ステータスそのものは下がってるけども。
魔ロバは筋力、耐久、それから魔力が増える。特に耐久がかなり増えるみたい。あとは魔力。進化前は魔力がなかったから、魔法防御も低かった。でも今はかなり魔法防御が上がっている。これでちょっと安心だ。
耐久が高いといってもタンク向けの数値というわけではないので、これまで通り猫を乗せてくれる相棒としてお願いしたい。
サイズも変わらなかったので、荷鞍やツールバッグにスカーフ、それに蹄もそのまま使えて、問題なし。
よしよしと撫でると額を擦り寄せてくる。可愛い。
これからもよろしく、ルイ。
お次はレト。
遊び過ぎてMP尽きたのか転がっているのをアポート回収。ほどほどにね。
進化先を確認――おや?
『ビブリオマルモ』に加えて『マジカルマルモ』が増えている。こちらは魔法スキル(属性ランダム)が生えるようだ。
レトが魔法スキルを覚えた扱いになって増えたんだろうなコレ。しかし召喚コストがどどんと200MPに増える。ワーオ。
かなり迷うところではあるけど、魔力の補正値そこそこあるっぽいし、もしかして猫より魔力高くなるのでは? それなら新たな戦闘用召喚獣や従魔は探さずに、魔法アタッカー・レトってことで良い……のか?
この選択肢を見ると、ビブリオマルモはちょっと色褪せちゃうんだよなあ。たぶん下位互換というか、ビブリオ→マジカルで進化なんじゃないかと。
あー、でもビブリオの間に魔法スキルをラーニング出来る可能性もあるか。そうなると……、いや、ダメだ、マルモ種は2回進化で種族限界がくるんだった。それなら、1個飛ばしのマジカルになっておく方がいいのかも。
とはいえ種族限界が来たら『ルイネの林檎』を使う限界突破クエストをやる必要がある、というだけで、進化が終わるわけではない。だから絶対マジカルじゃないと、てわけでもない…。
うん、まだまだ全然先の話ではあるんだけども。
「魔法、好きにゃん?」
レトに聞いてみるとこちらを見上げてうんうんとうなずき、ペンダントを大事そうに抱きかかえる。取らんよ。
んんん、よし!
猫はロニのMP増効果を信じてレトにMPを捧げるぜ!
心配なのはコボルトを飼えるかどうかだけど、コボルトは100MPらしいのでなんとかなる。
それに、猫にも着られるMP増強装備を探せばいい。あと『MP増強』系のスキルもあった気がするので、いざとなったらそういうのに頼る選択肢もある。
猫は『ライトニング』も結局うまく使えなかった程度だ。そろそろちゃんと物理デバッファーを目指してもいい。――というか目指すぞ!
戦闘は猫は物理デバッファー、レトが魔法アタッカー。後は追々。ルイ? ルイは移動の要よ。
よし、では進化!
そっと撫でて、レトに『ビー玉』を差し出す。最初の契約のときに渡したものが進化のためのアイテムになる。そう読んだから、信じるぞ。
レトはやっぱり目をキラキラさせて両手を伸ばし、『ビー玉』を受け取った。
進化先を決定すれば、レトがピカピカと光り出す。
ルイと同じように虹色に光りながら星が積み上がっていき、真っ白にフラッシュしたら完了だ。
さっきも思ったけど、魔法少女の変身シーンぽい。
こんがり焦げ茶色の丸っこくて小さなボディー、短くてフサフサの尻尾、つぶらな瞳。
……こっちも変わらん!
額に模様があったり、角が生えたりってこともない。あ、でも丸耳が大きく…長く? なった…ような? 進化前の写真と比べると明らかに大きく、ちょっと楕円形になってる。比べるからわかる程度の些細な違いだけども。
それ以外には明確な違いはないみたい。
ステータスは結構変わった。素早さと筋力がスンと下がって、魔力がドンと上がる。器用はそのまま。耐久は元々紙だからお察し。こちらはLVとかないので、進化したことで弱体化したりはしていない。単純なパワーアップ。
進化で生えた属性魔法スキルはなんと『回復属性』。
おお、真ヒーラー・レトの誕生だ。いや、ありよ。むしろヒーラーの従魔や召喚妖精探すより、アタッカー探す方が簡単だし、全然あり。
それに元々レトは『ポーションポケット』でヒーラーもしてくれてたもんね。
これまで『スリング』やら『コズミックシュート』やら預けて使ってもらってたけど、今後は杖装備になってもらうことにした。あ、スリングはがま口に残したい? なら入れておきます、はい。
猫は使う場面がほぼなかった『自由なる魔法師の杖』を渡すと、杖を高く掲げてなんだか感動しているように見える。うんうん、よかったね。
アクセサリーは悩んだけど、据え置きとした。
『魔宝石の組み紐ペンダント』は回復属性覚えたから外してもいいんだけど、気に入ってるみたいだし、そのままでいいや。リューシーと仲良くね。
『ポーションポケット』は『畑ホッパー』が入るので継続。
『がま口ポシェット』は投擲しないなら無用のアイテムになるのだが、スリングを持っておきたいようなのでそのまま。新たにつけたいアクセサリーも、今はないしね。
そのうち魔法使いっぽいアクセサリーを装備させたい。お揃い魔女帽子もいいし、BBQ打ち上げのときに見たような猫耳フード付きローブも捨てがたい。
撫でようと手を伸ばすと、はっしと指を捕まれる。はい、握手握手。
これからもよろしく、レト。
猫は別ルートを通ったけどマルモのビブリオ進化の正規ルートは、廃都地方もしくは学園都市のどこかにあるイベントを経て、魔法をひとつ覚えることでひらける。
レトは『属性魔法』スキルを持っていたのでマジカルマルモが出たが、魔法を覚えているだけでスキルのない状態ではビブリオしか出てこない。
ビブリオマルモになる利点はMPが増えること、そして魔法ラーニングが(その他のマルモ種に比べて)容易になること。
魔ロバは味方mobにしか出ない魔物。魔物と動物の中間みたいな存在。次の進化は敵にもなる魔物が出てくるはず。
ロバではなくて馬だったら、進化個体の魔馬が普通に敵対mobとして出てくる。そのため騎獣としての馬を求める人は魔馬や、更にその進化個体にあたるmobを最初からテイムする人が多い。動物の馬はそれほど人気ではなかったりする。
当然といえば当然だが「進化回数が多い(プレイヤーに育てられた)個体ほど好感度が高くなる」という面もあり、好みはわかれるところ。
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