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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
2章 金欠猫には旅をさせよ~魅惑の海旅編~
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43.不採用と精算

「わああ、わああ…! この子、従魔に出来たりするんでしょうか」

「密猟にゃん?」

「南極条約ぅ…!」

「冗談にゃんよ~。試してみるにゃ?」

「い、いいですか?」


 トビュッシーと違い、ペンギンはノンアクティブなようで、ペチペチ歩きながら毛繕いしたりしている。


 従魔の『使役』って戦って言うこと聞かせるか、餌付けしたり懐柔したりするらしいけど、ペチカちゃんはどうするんだろうか。


 お、インベントリから魚を出して、差し出している。あれはたぶん『イワッシー』。

 たぶん『1日漁業権』買って、釣りをしたんだろうな。きっとビギナーツナも釣れたことだろう。魔法師だしね。


 しかしペンギンは魚は食べず、ペチペチ暴れている。


「うーん、気に入らないみたいです」

「にゃん~、餌付けする魚の種類が固定されてるタイプかもしれないにゃんねえ」


 話してたらトビュッシーが沸いたので、猫とレトで釣って回収して一直線に並べつつ『パウダー』、ペチカちゃんが『ライトニング』でドーンと。だんだん流れ作業で出来るようになってきたな。

 ドロップを拾っていたらペンギンが大興奮の大暴れだ。なに?


「もしかして、切り身が欲しいんですかね?」

「おお、あげてみるにゃん!」

「いいんですか?」


 ドロップは後でまとめて精算ってことになってたから、レアドロップっぽいのを使うのを遠慮してるらしい。


「いいにゃんよ~、ペチカにゃんが成功したら猫も試してみるにゃ」

「ありがとうございます!」


 人柱にする発言だったのにお礼を言われてしまった…。


 早速ペチカちゃんは『大飛魚の切り身』をペンギンに捧げ、無事好感度を稼いだらしい。


「私の仲間になってください!」


 ペチカちゃんが『使役』のテイムを発動させると、ポワポワとお互いに光って、テイムが成功した。


「やりましたぁ!」

「おめでとうにゃん~!」


 お祝いアクションがないので、セルフ拍手だ。はやくアクションがほしい…!


 ペンギンの正式名称は『ブルーペングー』で、能力値からすると魔法型だそう。おお、珍しいな獸型の魔法型……、いや、鳥型になるのか? 鳥なら魔法型はそんなに珍しくないな。

 水属性と氷属性の魔法が使えるアタッカータイプとのこと。


「ペペちゃんです!」


 うん。

 人のネーミングセンスには何も突っ込むまいよ。ちなみにペチカちゃんの精霊はポポちゃんである。

 猫はパパちゃんがいずれやってくるのかが気になって夜しか眠れないにゃん…。



 しかし魔法アタッカーか~。

 猫が求めてる戦闘が出来る従魔は、タンクタイプか、ヒーラータイプなんだよなあ。


 しばし『ブルーペングー』を探しつつ、ペペちゃんを観察していたのだけど、どうも猫とは相性が悪そうだ。


 魔法はかなり強力。しかし移動に難がある。小さいから、足がかなり遅いのだ。

 途中からペチカちゃんはペペちゃんを抱えて移動していた。「ピピちゃんも最初はこうでしたから、懐かしいです!」とニコニコ笑顔。


 ペングーサイズだと、猫が抱えて歩くのは難しい。

 飛んでくれればワンチャンいけたけど、トビュッシーと違って空を飛ぶ性質はないようだ。


 ルイというかロバは1人乗り専用なので、他の従魔を一緒には乗せられない。従魔はPT枠を使うことからもわかるように、プレイヤーと同等の扱いされるのがこのゲームだ。施設利用料金とかはかからないんだけどね。

 だから、レトは召喚獣だからルイの騎乗制限に引っ掛からない。召喚獣なら戦闘中だけ召喚という手もあるけど、従魔はそうもいかないしねえ。


 猫は常にルイに乗ってるから、改めて考えると移動の面で結構、従魔の選択肢は狭いのかもしれん…。

 ついでにいえばペングーはたぶん、いつぞや露店で見かけた毛玉のミモモのように、専用護衛を用意しないと連れ歩くのが難しい子なんだろうね。


 うううーん。

 一緒に連れ歩けないのはやっぱりさみしい。

 だから残念だけど、ペンギンは無しだなあ。



 結局、猫はペンギンのテイムは見送り。

 では帰ろうと移動中、また秘密の採掘ポイントを見つけて「石ころポイント発見にゃん~」「わあい、石ころだいすき~」とか言い合いながらカンカンしたら『アクアマリン』が出てビックリしたりした。


 そんな感じで宝箱を開けて、ミニダンジョンの冒険を終えたのだった。




 ポーツへ戻る船の中で精算、と思ってたら船はあっという間に港へ到着した。行きにはあんなに時間がかかったのにびっくり。

 考えてみたら行きは、イベントの情報収集とか、準備のために移動時間が多く取られていたんだろう。船からインスタンスになってたみたいだしね。



 そんなわけで、ポーツの海を見下ろせるベンチで精算となった。

 といっても、精霊はお互いにもらったし、宝箱も一人ずつ開けたし、ドロップや収集アイテムはPT用共通インベントリを使ったので、二分割でぽいと割れて、割りきれないものや、欲しいものだけ話し合えば完了だ。


 ちなみに宝箱からは『漁師の釣り竿』が出た。この宝箱からは主に釣り関連品が出るらしく、釣り竿はまあまあの当たりアイテム。ペチカちゃんは『漁師の玉網たもあみ』だったそうな。


「割りきれない分は全部、ランさんが持っていっちゃってください! 今回、ライトニング教本とか、あと強化potとかもたくさんもらっちゃいましたし」

「にゃん~、ミニダンジョンは猫だけではこんなに狩れなかったにゃんよ」

「私はペペちゃんもテイムさせてもらって、精霊も、あとアイテムもこんなに手に入って、それでもう十分なので!むしろ全然、もらいすぎてるくらいです!」


 ペチカちゃんがぎゅんぎゅん首を振って押すので、猫もあきらめて端数はもらうことにした。

 でもアクアマリン入ってるのよ。もらいすぎはこっちなのだが。


「じゃあ『大飛魚の切り身』は全部あげるにゃん。きっとペペちゃんの好物にゃ。猫が持ってるより有意義にゃん」

「あっ、えっ、う、ありがとうございますぅ!」

「代わりに糞があったらもらうにゃん。これは『農業』で使える気がするにゃあ。もし使えなくても『錬金術』の素材になるにゃん」

「な、なんかすごく不条理な交換を押し付けるみたいで申し訳ないんですけど!?」


 いいからいいから。

 切り身と糞を交換してもらい、こんなもんかな?

 ちなみに『灰青鳥の羽根』は本体が小さいだけあって小さく、指揮杖にはなりそうにない。猫にとっては素材じゃないので、普通に分割だ。これはたぶん、矢羽根とかに出来るんだろう。


「他には必要な素材とかってないです? あ、最低品質素材は使えるんですよね?」

「そうにゃん。あともし『石ころ』いらないのであれば1zで買うにゃん。あと『貝殻』もいらないなら買うにゃ」

「あんまり最低品質って出ないですよね…、石ころはたまにピピちゃんが投げるだけで使い途ないので持っていってください、採掘で結構出ました。『貝殻』……は、うーん、拾ってないみたいですね。どこで拾えました?」

「オブジェクト採取にゃん。貝殻があるとこで拾えるにゃん~」

「それは気がつきませんでした…!」


 最低品質素材は全部で5個もなかった。狙って取れるものじゃないしね。噂によると推奨LV以下とか、あるいは推奨LV以上によるオーバーキルだと最低品質になるらしいから、それほどないってことは適正LVだったということだ。ミニダンジョンはLVに合った敵が出るらしいから、そのせいだろう。

 これは通常品質と交換と言ったのだけど「それはダメです」と言われて低品質での交換に。

 石ころは無料でいいと言われたけどこれは30zにも満たないから払わせてもらった。真っ当なトレードは『交易』のスキル上げになりますにゃん。


「ペチカにゃんの方で、素材って出てるのはないにゃ?」

「と、特にないです」

「…あるにゃ? 羽毛とか鱗とか?」

「うう、その通りですぅ…。で、でも、買取するお金がなくてですね」

「いやアクアマリンもらってるし気にせず持ってくにゃん~。素材の個別販売とかめんどくさいし、猫が持ってても箪笥の肥やしにゃん」


 羽毛は私の方では素材と出てないし、そもそも量が少ない。鱗は数はあるが、こちらは魚がでかかったからか大きめで真円錬成陣には入らないし、猫には不要な素材だ。

 野良PTならおそらく許されないゆるさだが、ちょっと得したなあ、とお互いに思えるくらいで終わりたいじゃない。

 残りの素材はお互いに換金するなり、持っておくなりしようということで精算は終了、今度こそ解散だ。


「あ。あの! ランさん。拙い作で申し訳ないんですけど、これ、よかったら」

「にゃ?」


 ペチカちゃんが差し出すのは紐?だ。鑑定してみると『組み紐の石包みペンダント』。


「石の着脱は自分で出来るようになってますんで、とりあえず、仕立てるまでの間にでも使ってもらえたら、と。あの、色は地味ですが、しっかり頑丈にはなってますんで!」


 ペチカちゃんのいう通り、耐久値は高め、そして色は渋茶と生成で、たしかに地味。

 でもこれってもしかしなくても、『カーバンクルの魔宝石』のために作ってくれた…?

 インベントリに精霊入りアクセサリが仕舞えないことに気づいて、猫の魔宝石に気を回してくれたのだろう。


「すっっごく嬉しいにゃん! 大切に使うにゃ! おいくらにゃ??」

「あ、お金はいらな」

「ダメにゃ、生産は材料費と手間賃は最低限取るにゃ」

「ランさんだって初心者強化potのお金とか取ってませんよね!?」

「あれは猫にはもう使えないから処分品にゃんよ~」

「にゃん…!」


 ペチカちゃんを宥めすかして材料費の3倍を取らせることに成功した。そもそも糸系素材は値段のわりには入手困難で製造難易度が高いって聞いたから、もう少し高くても全然よかったのだが。

 頑なだなあ。


「いつか私もランさんに貢いでみせますよ…!」

「何の闘志にゃん??」


 謎の捨て台詞を吐いていたが、ペチカちゃんには桟橋で釣りをするように勧めておいたので、マグロ漁を頑張ってほしい。

 だってまだ釣ってないっていうんだもん、もったいないじゃん。ツナ美味しいよ。




 ダンジョンの精算を終えて、ペチカちゃんとのPTは解散。また会ったら遊ぼうね、のゆる~い旅路にお互い戻ることになった。


 さて。実はミニダンジョンでルイのLVが上がって、進化可能になっている。

 ついにこの日がきた…!

 ついでに猫も、やっと『騎乗』をラーニングできました。やったぜ。

 長かったなあ…!


 さすがに街中で進化させるのもどうかと思うので、マイルームへ移動だ!



次回、ついに進化!


『使役』スキルによる『従魔』はPT枠を消費し、更に空腹度があるため食事を必要とする、好感度を最大まで上げるためには特定のおやつがいるなどの制限がある。使役主とPTを組んだ状態のため、連れ歩いている間、経験値を分割して取得する。LVに応じてスキルや魔法を覚える。種族最大LVまで上がれば進化可能。

種族最大LVと好感度用おやつさえ整っていればパワーレベリングで進化が出来るため、生産職がテイマーになって養殖を頼むのはわりとよくある事例。

養えるのであればテイム制限はなく、繁殖も可能。

基本的には戦闘用であり、生産やライフ系を手伝えるものは少ない。一方で騎獣であっても戦闘が可能であるなど、兼用出来るのが特徴。


対する『召喚』スキルによる『召喚獣(妖精)』は召喚中はMPコストがかかり、契約や進化には特定アイテム(高価)を必要とする。LVは上がらないがスキルはラーニング出来る。ラーニングしたスキルによっては多少のステータス変化がある。

『使役』の好感度にあたる絆値はんちの共鳴度は一律『一緒に過ごした時間』で決まるため、進化までの時間をパワーレベリングなどで短縮できない。

取得できる召喚石の数に制限がある上、契約解除不可のため、現状契約最大数が決まっている。

噂レベルではあるが、契約石を合体させて新たな召喚獣を作り出す術があるらしい……という話もあるとかないとか。コンゴトモヨロシク…。

戦闘系のみならず、生産やライフ系を手伝えるものも多く、幅広い活躍が期待できる。が、戦闘なら戦闘、生産なら生産と、兼用は難しいのが特徴。



評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
誤字ではないのですが、ちょっと気になったので…… 「だから、レトは召喚獣だからルイの騎乗制限に引っ掛からない。」 の文。「だから」がダブっているので、回りくどい印象になっています。 変更案①: 最初の…
[一言] こういう精算懐かしいなぁ。 自分がこういう事してたのはROが最後かな。 プレイしたのもう20年近く前になるにゃんね……。
[一言] お別れ際のプレゼントにお金払うパパの鑑 お前がパパになるんだよォ!
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