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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
2章 金欠猫には旅をさせよ~魅惑の海旅編~
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41.ひとえつぎの神さま

 ぽつん、と真っ暗な空間。

 あれ。戻れると思ったんだけども。あ、ペチカちゃんもいる。そそそ、と近づいてくっつく。


「あれでイベント終わりと思ったんだけど違ったにゃん?」

「私もそう思ったんですけど…、もしかしてあれとミニダンジョンは別、とかそういう話ですかね?」

「ありそうにゃん」


 なんとなく小声でもしょもしょと話していると、遠くにぽうっと明かりが見えた。

 それがゆっくりと近づいてくる。人影。行灯あんどんを持った女性――いや、女の子。


『おかえりなさい。おかえり。良い絆は結べましたか?』


 チリーンと高く鳴る風鈴のような音、そしてその副音声のように聞こえる言葉。てことは。


「…もしかして、ひとえつぎの神さまにゃ?」

『はい。ここは狭間。世の狭間。何者の手も及ばぬ場所。世界を越えてみなが絆を繋ぐところ。さあ、はぐれないよう、繋ぎなさい、結びなさい』


 小さな女の子のようなひとえつぎの神は、古風な――天女っぽい着物に、大きな帯をしている。生地の種類も色も違う帯が腰の辺りで一重継ひとえつぎ結びで繋がれ、大きな結び目を見せている。

 たぶん異なるものを繋ぎ合わせること、結ぶことが、彼女の司るものなんだろう。

 裳裾はヒラヒラと赤く揺らめき、なぜか魚籠を腰に下げている。…。いや、何も突っ込むまい。

 ぽわん、と目の前にウィンドウが出た。


『精霊に名前をつけてください』


 お。なるほど、もしここで名をつけずに帰ったら、精霊との契約はなかったことになるのかな?

 今は最大契約数とかさっぱりわからないけど、もしあったらここではいらない、みたいなのが出てくるかもしれないもんね。


 まず『カーバンクルの魔宝石』に入った海蛇の方。


「リューシー」


 ポワポワと光って契約が完了する。

 安直? だって掲示板で調べたけど、リューシーなんてmobいなかったんだよ! だからきっとこれはお名前、てことでそのままつけちゃう。


 そしてもう1体、ロニのブローチに入った方――うん、これはロニだな。

 新しい精霊も入ってきたけど融合しちゃった、とかそんな感じなんだろうか?

 ブローチの中にロニ以外は入っていないし、ロニが別の精霊になってしまったわけでもない。念のため一度出てもらったのだが、心なしかでかくなった、ような?


 ペチカちゃんもお名前をつけたらしく、目を白黒させていた。


「も…、戻ってくるんですね!?」

「そうにゃん。覚悟を返せ!てなるにゃ?」

「なりますぅ!」


 そうして名前をつけ終わると、またひとえつぎの神さまの声がする。


『善き縁、善き絆を。仲良くなさい。さあ、お帰り、世界を越えて。越えた世界の向こう側。繋がりは綻びを結び直す。結び直す世界。繋がる。さあ……』


 鈴音すずねの声の神さまが、また道を戻っていく。ゆらゆらと揺れる行灯が遠ざかっていく。

 ふわ、と浮遊感があったかと思うと、ザザアン…と大きな波音に包まれた。



 暗闇が晴れて、かがり火の立つ祠の前。まだ夜は明けていない。

 どうやら、戻ってきたようだ。

 ひとえつぎの神さまのお名前は聞けなかったみたいね。


『おめでとうございます。異界の扉の防衛に成功しました。SP10とDP20を入手しました』


 やっ、たぜ……???


「DP…?」

「とは…?」


 二人で顔を見合わせてみたが、やはり何もわからなかった。うむ。


「防衛に成功したってことは、いいことしたにゃん!」

「ですよね!」


 なんか不穏なイベントの気配を感じなくもなかったが、問題なしということだ!


 …防衛で入手したってことはもしかしてディフェンス・ポイントとか? それ何に使うの? 拠点とか作るの? PVP的なのは嫌なんだが。

 うーん、調べておかねば。




 もう大分いい時間になっていたため、今日はこの場で解散とした。ペチカちゃんはこのままログアウト。でも明日も遊べるというので、今回は行けなかったミニダンジョンもついでに一緒に行こうと約束。


 猫はもうちょっと時間があるので、アトノ島の砂浜で海を眺めつつ、瞑想して『青月明あおつきあかり』を量産することに。まだ青月出てるしね、せっかくだから。『青月明』はいろいろ用途があるし、無駄にならない。

 なおルイやレトにつけてもらってたアクセサリーの『ムーンキャッチ』は無事『青月明』に変化していた。

 ひとつは精霊の住処にする予定で3つ作ったのだが、ロニと合体してしまったので予定がずれた。もしかしたら青成分が増えた(?)ロニがこっちに入るかもしれないし、まあいいか。

 回収してみんなでスカーフ装備に戻る。……はい、レト、ふて腐れない。後でなんかペンダント見繕うから…。


 そういえばロニの入った『白き月光のブローチ』、改めて見たら名前が『青白き月光のブローチ』になっていて驚いた。たしかに『白月明しろつきあかり』ではなくなっていて、でも『青月明』でもない、微妙な色合いに変わっている。全体的には白っぽいオパール感のある輝きなのだが、傾けると深い青が覗く。

 そしてブローチの装備効果は『MP+80』に増えた。違う月夜に精霊を連れていくと、パワーアップイベントが起きるのかな? 4つの月を制覇しないといけないやつ? ちょっとワクワク。

 2体目を狙いに行ったティアラさんの続報も楽しみだ。


 リューシーが入った『カーバンクルの魔宝石』については、アクセサリーにしてないのでまだ効果不明。

 リューシーはロニと違って中に入りっぱなしではなく、わりと自由にふらふら出入りしている。

 釣ったりしてたときから思ってたけど、この子、実体がある。だけど飛ぶ、というか浮かんでる。これはこの島だからか? それとも普通に飛ぶ?

 しかし手で捕まえてみるとスーッと溶けるように実体を失って逃げる。なんなんだろうね?

 最初に釣ったときに食べてたらどうなってたんだろうか…。いやたぶん毒だろうから食べはしなかっただろうけど。でも蛇毒は『調薬』ではポピュラーな材料らしい。

 …よからぬことを考えていたからか、リューシーが引っ込んだ。煮込んだりしないにゃんよ~。



 さて。

 まずは『ムーンキャッチ』を並べて、と。

 いつものように縮小した『トランスファー』を浮かべて瞑想していると、ふいにピロンと通知音がした。

 おや?


『レト は『魔力感知』を覚えた』


 やっ……?

 え、これ猫じゃなくてレトか!?


 えええ??

 いや、すごいよ、すごいけどなんかこう、追い抜かされた感…!

 レトはどこか自慢げに胸をそらし、髭をそよがせている。

 とりあえずレトの額を指先でつんつんして撫でると、はっしと指を掴まれた。握手握手。

 猫も早く『魔力感知』覚えたい。『マジックセンス』はついついかけ忘れることが多いのだ。今回も忘れてましたね…。


 しかし、レトが『魔力感知』かあ。

 『トランスファー』に触りまくってたからかな? さっき魚の群れを感知出来てたりしたのも、それだったのかもしれない。

 レトもついにスキルラーニング済になったし、本格的に進化を検討するときが来てしまった。


 物理戦闘に行くなら『木登りマルモ』だろうけど、レトは投擲得意じゃないみたいだし、やっぱり『投擲』はラーニング出来なかった。

 もう1つの進化先の『シティーマルモ』は斥候タイプ。『魔力感知』覚えたし、こっちの方がいいのだろうか。でも、こっちも特に魔力上がったりはしなかったはず。


 どうだったっけな、とレトの進化先を確認してみると、おおお!?

 増えてる!しかも『ビブリオマルモ』だ!


 やったぜ、これでいいんじゃないのレト? もうこれにしようよ!と一瞬盛り上がったけど、いやいや、勢いで決めるのはよくない。はい。

 よくよく見ると、ビブリオマルモには別に魔法スキルはないみたいだ。もし文字が読めるようになって教本学習出来る、というのであれば芽があるが、やはり教本は読めません、となると召喚コストが重くなるだけになってしまう。コスト150MPはちょっと、いや、かなり重いもん。

 もうちょっとちゃんと検討してからにしよう。猫が文鎮になるのはさすがによろしくない。


 うん、ルイの進化までもう少しだから、一緒に進化ってことにしよう。

 ちなみにルイは進化まであと1LV。魔物型は20LVで進化できるのだが、動物型は25LVで進化とちょっと遅い。これは動物型のがテイムが簡単だからだそうな?

 猫と同じようにLV上げてきたけど、ルイのが必要経験値が少ないのでLVは高いんだよね。猫はまだLV22。


 よし、瞑想やり直し。見るわけじゃないけど『マジックセンス』もちゃんとかける。


 ……。


 『トランスファー』を浮かべたまま待つのを試してみてるけど、全然回り始めたりしない…。

 そしてこれ、そのまま維持するのもそれはそれでめちゃくちゃ難しい。さすが受付のお姉さんはスパルタだぜ。

 魔力の玉自体がふるえるというか振動するというか、かなり大きくブルブルしていて、なんか暴れる感じがある。回そうとしてるときにはこういう感じはなかったんだけども。

 この振動はどうしたらいいんだ…。


 抑える、というかなめらかに、なんかこう、電動餅つき機みたいな? あれは揺すられてるからまた違うか。跳ねる餅を受け止める…私はホームベーカリー(餅つきモード)…、いやなんかそれも違うような?


 うんうんと悩みつつアレコレ試しているうちに仕掛けておいたタイマーが鳴ったので瞑想終了。

 なにもわからん!


 あれ、まだ『青月明』になってないな。もうちょっと時間がかかるのか。


 んん、もう一回瞑想はちょっとやる気になれない。何も掴んだ感じなかったしな~。黒月夜と、次季の色月夜でも調べるかな。

 本を購入したからか、『月と精霊の扉』も『メモリー』から参照できるようになっている。暗くても読めるし便利。


 今季の月夜はあと黒月夜だけなので、次は風光かぜひかるの季。赤黒青白。

 月の順番は法則などわからんから、表で判断するしかない。ただ黒月夜が満ちるのに4日以上かかる季は7季しかないようで、それ以外は3日で満ちるらしい。表を詳しく調べるとそう書いてあった。


 黒月夜が満ちるのに時間がかかると暗黒夜が16日になる…というわけでもないようなのがまた、ややこしい。こちらは年ごとにズレるらしく、いつがそうなのかは書いてなかった。


 たぶん数字に詳しい人が見たら、こういうのすぐわかるんだろうね。猫はやだ。無理っていうか、やだ、考えたくない。

 表があるからこれでいいにゃん~。



リューシーが仲間になった!

DPについては次回!


評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

今週も金曜まで予約投稿済です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ついに進化の鍵が判明しましたね博士! これはマルモ学会にとって大いなる一歩ですよ! なお再現性
[一言] プレイヤーの信仰が豊穣神ママ様とか少女神ちゃん様に偏ってる気がするにゃん
[気になる点] もしかして……ロニと融合したのって猫の凡ミスなのでは? 猫はロニ入りブローチしか身につけてなかったような……
感想一覧
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