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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
1章 初心者猫はお金が欲しい
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7.読書の日

 ログインして観葉植物に光と水と風を与えて、お庭へ。

 草はほんのちょっと伸びた?気のせい?という程度でまだまだかかりそう。

 プランターからはぽちぽち芽が出ており、植木鉢の毒草も、香草も萎れてはいないようだ。

 一応ここには光も風もあるので、水だけたっぷり与えておこう。肥料を買ってきたら今日は農業しつつ、教本で魔法を覚えたい。


 ギルド通りへ出掛ける前にメモを確認。

『冒険者ギルドで採取の知識と道具、採取物を売る』

『農業ギルドで土と肥料、あればレシピ』

『テイマーギルドでブラシ』

 はい。

 ではまず冒険者ギルドへ出発。おはようルイ。




 冒険者ギルドに到着。売店で道具類を確認。やっぱり初心者~のつかない草刈り鎌やら伐採斧やら売っていた。あとは虫取網とか、狩猟罠なんかも扱いがある。

 虫取網…。

 虫も採取扱いなの? ちょっと気になるので買っておこう。3000z。たしかに蜻蛉とか蝶とかバッタとか見かけてはいたし、採れるなら採ってみたいギャザラー魂。


 採取物の販売は出来るらしいけど、ランクもあがるしクエストで納品する方がお得、とのことでちょっと悩む。でもまだ11LVだし、すぐまた上がることはないだろう。

 青ブナの木と鉄鉱石をそれぞれ10個納品するクエストがちょうどよくあったので、納品してクリア。LVもランクも上がらなかった。よし。


 採取の知識については資料室があるらしいので寄ってみる。本を読むと何らかのスキルが生えるやつだろうか?


 資料室と書いてある扉を開けると、ずいぶん埃っぽい。

 『浄化』をかけて、『微風』で空気の入れ替え。窓がないのか、中は薄暗いので『光源』を浮かべた。あ、机の上にランプがある。なに?


『魔力を注ぐと明かりが点ります』


 魔道具ってやつかな。そういえば、魔道具も錬金術の分野らしい。もっとランク上がらないと何もわからんだろうけど。魔道具はドサッとしてチンじゃないだろうなあ。細かいことは苦手だし、ずっと圧縮とかしてそうな気もする。


 試しにランプを手にとってMPを注いでみると、ついてるのかついてないのかわからないくらいの明かりがついた。『光源』を先につけたからか、このランプの明るさがさっぱりわからない。

 一旦『暗源』をぶつけて光を相殺、ランプも消えたのでMPを注ぎ直す。

 ううん、暗い…。これで本を読むのは大変そう。資料室が廃れるのもやむ無し。

 このくらいの明かりじゃないと本にダメージがあるのか、単純に予算がなくてこの程度のランプしかないのかどっちなのか。


 魔道具に魔力を注ぐ、はそういえば属性の魔力でもいいのだっけ。錬金釜がそうなのできっとそう。杖の先でランプに触れつつ『光源』を使うと金色っぽい魔力がランプに吸い込まれる。


 お、煌々と明るくなった。これなら本も読みやすい。


 ランプを片手に標本やら本やらを調べていると、『植物知識』『樹木知識』『菌類知識』『虫類知識』『鉱物知識』『魚類知識』『動物知識』『魔物知識』『魔法知識』『武防道具知識』『文献調査』などのスキルをラーニングした。


 んええ??多すぎない?

 そして『初心者ラーニング手袋』が破れた。知識系スキルは対象外だけど、『文献調査』が技術系スキルだったようだ。

 順番的に『文献調査』をラーニングしたから、スラスラ知識系が入ってきたのかもしれん。〇〇知識は、たぶん料理みたいなラーニングするやつだよなあ…。うーん、掲示板調べてみよう。


 『【目指せ】〇〇知識全般【総合知識】』というスレがあったので読む。


 まずこのゲームには『鑑定』はなく、アイテムなどの品質やレア度も特にマスクされずに表示されている、ように見える。

 しかし実際には『〇〇知識』というスキルが別途存在しており、このスキルの有無によって、アイテムデータに項目が増えるなどする。場合によってはレア度も変化する。

 毒草を毒と表示しないとかはないので安心していい。むしろ毒と見分けのつきにくい草はすべて毒判定にされている。特にキノコ類に顕著。また、分かりにくい鉱石などはすべてレア度の低い方へ統合されて表示されている。

 『交易』スキルのアーツ『目利き』はレア度のみ看破するスキルだが、知識系スキルはレア度が同じで効果の異なるアイテムも分別出来る。

 各種スキルはあちこちで本を読んだり、話を聞いたり、実物を調べるなどしてLVが上がっていく。

 知識スキルは12種類あり、すべて集めると『総合知識』スキルになる。


 ……。はあん。

 スキルリストがのびのびと伸びているのはもう諦めるしかなさそうだ。あと2種類探さないといけない。


 ちなみに料理スキルは、あとお菓子と肉まん?と卵料理を作れば料理がラーニングされる見込みがあるようだ。

 問題は卵とバターや牛乳、砂糖が自由都市では高く、需要が高すぎて入手困難なこと。料理ギルドには売ってるらしいけど、スキル『料理』がないと売店が使えないので本末転倒。

 ちょっと遠い場所にある酪農の街や、農村へ行くと買えるらしい。


 あ、料理の前に、ラーニング手袋破れたから新しく作っておかないと。


 思いのほか、冒険者ギルドで時間を食ってしまった。しかし植物知識などが手に入ったので、雑草の仕分けもきっと捗ることでしょう。



 お次は農業ギルド。

 売店で土を買う段階で、肥料入りの土とかもあるのだなと感心する。高いけど。

 肥料のレシピは資料室にあるらしい。資料室、もしかして各ギルドにあるんです??


 農業ギルドの資料室は冒険者ギルドほど広くなく、種の見本と基本的な育て方、見分け方など参考文献が多くてためになった。

 毒草からヒールミニトマトを栽培する方法の本もあった。魔法必須の植物なので、栽培難易度が高いそうだ。そんなものをチュートリアルで出すな。いや、毒草は毒草で価値があるし、そちらは特に手もかからず採れるのか。ちなみに種を取るにはトマトを放置して完熟させればよいらしい。


 そんな知識を得つつ、ちゃんと肥料のレシピも入手した。『調薬』のレシピだそうで、これはちょっとがっかり。ただ売店で買えるし、マケボで見てみてもいいかな。

 肥料ではなく土のレシピなどもあり、こっちは土に混ぜ込むといいものの一覧だった。灰とか雑草とか落ち葉とかいろいろ。不要なものをすきこむという感じに書かれていたので、この一覧は錬金術の材料になるかもしれないね。しっかりメモしておこう。



 次はテイマーギルド。

 資料室はやはりあるようだ。従魔とのコミュニケーションの取り方とか、進化の方向性、戦闘しない従魔のLVのあげかたについてなど、参考になるものが多かった。


 ルイは私が騎乗したり、荷物を乗せたりしているときに経験値が入ってるらしい。なんと。そして街の外を歩かせる方が経験値が多いとか。

 騎乗用従魔は離れた土地へ徒歩(騎乗)で辿り着いた場合に特別移動ボーナスとして経験値が送られたりするそうだ。なるほど、旅をしなければ!


 売店でブラシの取り扱いがないか見てみると、鞍を買った従魔装備の売店の方に置いてあった。従魔用品全般と、従魔の食糧など消耗品で分かれた売店だったようだ。

 ブラシと、買おうと思いつつまだ買えてなかったルイのスカーフを購入した。赤いスカーフ! 可愛い。

 ブラシも合わせて高かったけど、いい買い物だった。



 予定にはなかったけど錬金術ギルドも行って、資料室を見る。


 錬金術ギルドの資料室は、他のギルドより大きい。さすが知識職? 魔法師ギルドも大きいんだろうか。

 ただ魔道具関連の本や見本がほとんどで、私にはまだ早かった。

 しかし圧縮と合成の本もあったので読んだ。


 合成は火しか使えないわけではなく、光と土でも出来るらしい。また属性を持たない魔力でも合成が可能らしい。めんどくさいじゃん…。


 私がやっていた各種属性による圧縮は『属性圧縮』と呼ばれるもので、各属性の力が圧縮に影響する。魔力を吸いやすい素材であればあるほど変化が出やすいそうな。


 魔力を吸いやすい素材というのは『機能に制限がついている』あるいは『それ単体では何の用もなさない・素材にもならない、あるいは欠けの多い』アイテムに顕著らしい。

 前者が初心者アイテム、後者がビー玉や雑草などのアイテムってことかな? 割れ物ガラスも属性圧縮試した方がよさそうな。


 ちなみに属性圧縮のやり方として、魔石を使う以外に魔法を使用する方法も載っていた。各属性の初期魔法にある、指向性がなく現象の小さい魔法を錬金釜の動力部に近づけると属性が吸収されるらしい。

 なんだ、生活魔法じゃなくても出来るじゃん?

 と思ったけどそうだ、魔法スキルはSPのコストが重いのだ。そして育ちにくいので、SP回収が困難。なので属性魔法は取っても三属性までといわれているのだとか。二属性にして残りはアイテムとか装備でなんとかする人が多いらしい。


 そうそう、魔法を閉じ込める消耗品アイテムを錬金術は作れるそうだ。錬成陣の方のやつね。魔道具の一種で、魔法玉とかいうらしい。


 魔法を込めるのは錬金術師じゃなくてもいいので、魔法使いと組んで作るのがいいとかなんとか。

 …小さい魔法のやつを作って売ったら錬金術にも便利なのでは?


 ちょっと錬成陣、気になってしまうな。見習い卒業したから錬成陣も使えるはずなんです。


 資料室を出て確認してみたら、いちばん小さいやつが使えるらしい。丸い円形の布?で、真ん中に置くものに魔法や魔力を注ぐ、簡単な初期錬成陣なのだそう。

 じっと眺めていると、たまたまギルドにいたプレイヤーの錬金術師さんに「それを買うならお金とランクを上げて、もう二段上のから始めるのがおすすめだよ。ランクは錬金釜でも十分上げられるから」とアドバイスされてしまった。


「これは使いづらいやつ?」

「出来ることが少ないから、ブリッツ――スリングショットの弾を作るくらいしか出来ないんだ。ほら、この中心のところに円があるだろ? ここに魔力を込めたいものを置くんだけど、ここからはみ出るものは、弾かれちゃうんだよ」


 錬金術師お兄さんが説明してくれる。

 たしかに中心の円のサイズは3cmにも満たない。下手すると石ころもはみ出るな。ビー玉専用と言われるとなるほどってなっちゃうくらい。


「この一段上だと7cmくらいあるかな。でも込められる魔法は1種類。そのもう一段上だと、サイズはそのまま3種類の魔法が使えるようになる」


なるほど、大は小を兼ねる?


「うーん、大きい…」


そう、錬成陣、かなりでかい。お兄さんが言うオススメの錬成陣だと、四畳半の半分くらいは埋まってしまう。


「これより上になると錬金釜を中心にセットするタイプになるから、なんか部屋の真ん中で召喚魔法やってるみたいな工房が必要になるね」

「あやしい儀式にゃん」

「錬金術は怪しいものと相場が決まっている」

「そうにゃん!?」


ハハハハ、と笑った錬金術師お兄さんは「これあげるよ」と『初心者状態異常回復薬』を50個くれた。


「圧縮していくといいことあるから頑張ってね」

「万能薬、お兄さんはいらないにゃん?」

「おや、知ってた? 私は余剰がこれしか残らなかったから、万能薬までは無理だねえ。もう買取も出来ないし。中途半端な数でごめんね」

「猫は買取出来るからすぐ集まりますにゃん! 資金調達に助かりますにゃん」

「はは、役立ててくれると嬉しいよ。頑張ってね猫ちゃん」


 バイバイ、と手を振ってお兄さんは去っていった。

 親切なお兄さんだったなあ…。


「これくださいにゃん」


 いちばん小さい錬成陣、『真円錬成陣(Ⅰ)』。お値段なんと30万z。

 いやだって大きいのはお金足りないし。錬成陣ほしいし。

 猫は我が道を行くから仕方ないな!



 お金があると余計なもの買ってしまっていけないね!


 考えてみれば、生産施設でお試ししてからでもよかったのでは?? あと錬金釜の質を上げると何が出来るのかみたいな本を読むのを忘れていた。


 初心者錬金釜は別にLV20越えても使えるけどさ、必要になったときにお金があるとは限らないから。無駄使いするなという話なんだが。でも部屋も増築したいし、庭も広くしてルイとマイルームで一緒に暮らしたい!

 あー。でも庭はもう一段階、広くしてもいいかもしれない。残金と相談して広げよう。




 マイルームに戻ってきました。ルイは今日のところは帰した。部屋を増築したいけどもうちょっと我慢。


 資料室巡りはあまり一気にやると頭に入らなくなるね。読むだけで理解してなくてもキャラクターはアップデートしてくれる、つまりスキルとしての知識に統合されていく、とはわかるけど、やっぱり楽しみたい。1日1ギルドくらいにして飽きたらすぐ切り上げる方がよいかも。今日は知識スキルが出たことで引っ張られてしまった。


 さて、忘れないうちに『初心者ラーニング手袋』作っておこう。


 まず初心者シャツの買い出しをば。

 まだまだ100zどころか10z以下でたくさんあるなあ。100zでも1000zしか元手がかからないって素敵。

 なんだかんだいって需要が高いのは『ラーニング手袋』だと思うんだ。


 30枚ほどシャツを買い、ズボンも乱獲して20枚購入。

 まずはシャツを『ラーニング手袋』に圧縮。

 おや、説明の最後に『1/2』の表記が。なるほど『初心者ラーニング手袋』を使ってラーニング出来るのはスキル2個までらしい。ならこれは料理が終わるまで装備せず置いておこう。


 制限なしなら無節操に『ラーニング手袋』作ってもよかったのだけど、そういうわけにもいかないか。まだ属性も残ってるし。


 庭へ移動して、『ガーデンベンチ』を設置。ここで教本を読む予定。


 MP余ってて勿体ないのでまずはヒールミニトマトのお世話でもしよう。

 買ってきた土に雑草玉を入れて『耕土』で混ぜる。肥料の準備は完了だ。


 『流水』で水やりをして『経過』、成長を見守りつつ水やりしては『経過』。うん、摘芽した草だから育つか不安だったけど、ちゃんと育ちそうだ。


 下葉を取ったり、支柱…はないので小枝を差して茎を支えたり、脇芽を取ったり。ハサミが役に立ったわ。下葉や脇芽はまとめて置いておく。毒草なら錬金術かけるなり、食べるなりしてみたいし、肥料に使えるならそれもいい。


 せっせと世話を焼いていると花が咲いたので、摘まんでポフポフ。やっぱり10個くらい成るかな。

 『経過』して真っ赤な実が成ったので収穫。『ヒールミニトマト』。前よりLVが上がってる分、魔力切れせず収穫までいってしまった。


 植木鉢の土を一回出して再び雑草玉を混ぜて『耕土』して戻す。毒草はあと4本残ってるから、4回収穫出来るな。

 1本植えて、水をまいておく。あと毒草の種も買ってあるし。ヒールミニトマトとは限らないけども。


 下葉は『幻覚草(葉)』脇芽は『幻覚草(茎)』になった。葉は5個、茎は3個。後2個あれば合成出来たのに!


 MPもう少し余ってるから、香草の種を収穫出来るか試してみよう。

 とりあえず『流水』と『経過』と追肥…としていたら花は咲いた。小さくて野趣あふれる白い花だ。風媒花か、虫媒花? 水の可能性も…。とりあえず水やりして、花を尻尾でふんわりと撫でる。筆とかないんだもの。

 尻尾! 自在に動く!とちょっと感動した。ちなみに私の尻尾はふさふさだ。尻尾だけ毛がちょっと長い?


 『経過』していくと種っぽいのが出来た。緑の鞘にひと粒ずつ包まれた種が鈴なりになるタイプ。これは弾けずこのまま枯れるかな?

 更に『経過』すると種の花房を残して葉が枯れたので、ハサミで切り取る。乾燥させたら種がこぼれてくるはずだ。逆さに持って紙袋にいれ『経過』をかけて振ると種がとれた。


 『マリッソの種』らしい。

 ローズマリーっぽい香草はマリッソという名前だったようだ。100粒くらい取れてしまった。これだけ種が取れるということはレア度がかなり低いか、あるいは発芽しにくかったりするのかも? 発芽魔法が唸るぜ? まだ覚えてないけど。


 庭にバーンと撒くことも考えなくもなかったが、とりあえずは植木鉢で。植木鉢の土を再び入れ換えて雑草玉を混ぜ『耕土』。

 香草の種を20粒ほど間隔をあけて蒔いた。適当なところで料理に使ってしまえばいいし。


 MPはもうないので、『経過』と『流水』だけプランターと植木鉢にかけて、農業はおしまい!

評価、ブクマありがとうございます。

1話が長いと言われたので、だいたい5000文字前後で区切るようにしました。(ここから)

前の部分は一気に読んだ方がよさそうな部分も多いので(チュートリアルとか)、そのままです。


ひとまず10日までは毎日18時に予約投稿してあります。

錬金術してるだけの回とか、買い物してるだけの回とか、農業してるだけの回とか、そんなんばかりですがお気に召すようならお付き合いください。


240429 表記揺れ修正(魔術→魔法)

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