10.港街ポーツ
道程としては港町ポーツ、それから技術の街アルテザ、鉱山の街ドゥーア、最後にはじまりの街ルイネの予定。
それぞれの街は距離的にそこまで離れていないし、道も平坦だ。
初期の頃は街道が石だらけだったり、魔物が多かったり、トラブルがあれこれあったりして大変な道だったらしいけど、今はルイの足でぽくぽく半日もかからない。
この道も昔は沼地があったり、茨に覆われてたりしたらしいよ。先人の努力のあとが今の平和な道程に繋がっているということだ。ありがたや~。
図書室で本を読んだあとさっさと冒険者の街フロントを発ち、のんびりと港街ポーツへ向かっている。
フロントは全体的に自由都市の小型版という感じで、目新しさはあまりなかったかなー。まあ、そこは逆順進んでるから仕方ないねえ。
暇な道程は教本読んだり、『トランスファー』を捏ねたり(?)して過ごした。
幽霊倒してLVが上がったので、MPが増えて読める本が増えていたのだ。レトを呼んだ状態で『パウダー』、帽子を脱いだら『ターゲット』が読めるようになった。あと読めないのは『ミスト』、『リターン』と『ポータル』かな。
ミストはもう少し減らしたMP、空間属性ふたつは最大MPが足りないのだと思われる。
そんなわけで道中読むのは『パウダー』だ。
ヨハンの本にも書いてあったしね。俄然気になってきましたので。
前章である魔法の使い方には、ヨハンの教本にあったような説明と、更に詳細な話が書いてあった。
魔力を粉にする魔法だが、粉にしてから3分のあいだ、完全に粉の性質になる。『ジュエル』が3分間、宝石になるように『パウダー』は粉になるようだ。
つまり風に舞うし、重力にしたがって上から下へ落ちる。風魔法と組み合わせると使い道が増えるが、『パウダー』を使ってから風魔法を使うと風魔法にパウダーが吸い込まれてしまうので注意が必要。使う順番を風魔法→『パウダー』にすると粉は風に乗る。
ちなみに可燃性の粉を模しているらしく、火にくべると燃える。そして燃えたあとに魔力に変換される。火に掛けるときには予想以上に燃焼することがあるため、気をつけるように、と書かれている。粉塵爆発的なやつ?
水には溶けず沈澱するが、よく振ると溶ける。水に溶けた魔力はちょっとだけ長持ちになり、3時間で消失。その間に素材として使用する場合は『魔法水』として使えるそうだ。たしか調薬の材料だったかな?
あと魔性植物の土に撒くと喜ぶらしい。…『白ラコラ』は分類的には『野菜』であって魔性植物ではないみたいなんだけど、どうなんだろう? やってみたいような、絶対やりたくないような……。複雑な気持ち。
構造と術式は単純、すぐ覚えられた。
応用編は無属性との組み合わせについて。時間制限のある魔法にかけると制限時間が伸びるそうな。 『ジュエル』に粉かけると3分以上保つとかそういう感じかな?
はい。
『パウダー』を覚えました。パラパラ~。粉の量、割と多め。ちなみに『ジュエル』と同じくMP5魔法。
教本を覚えたあとは『魔力操作』と『理力』の練習だ。
『トランスファー』で出す魔力の塊は、そう簡単には回ってくれない。ぐねぐね回してるとレトが不思議そうにするので、魔力の塊は他の人には見えないらしい。私には『インパクト』のように虹色のシャボン玉に見える。
試しに『トランスファー』を縮小して、小さめのソフトボール程度、10MPほどをレトにほいと渡してみると、ひっくり返ってびっくりしていた。触るとわかる、みたいな感じっぽい?
トランスファーって普通に使うと50MP使うんでそのまま出してたけど、最初はこのくらいの小さいMPで回した方がやりやすいかもしれない。
縮小した魔力の塊を手に出すと、レトが手でつんつんとつつく。つつかれると割れるらしい。作る、割られる、作る、割られると繰り返していたがレトは首をしきりに捻っていた。面白い。
しかしこれでは修行にならないな。右と左で同時に出したり出来ないだろうか。
……。
……、え、無理。まず左から出すとこからだな。
右の手をレトに見せつつ左から出して、左のを回転させ…ることは出来ないのでポンポンとお手玉するように転がす。するとレトが気づいて左側へ行ってつつこうとして、タイミングが合わなくて頭に当たってひっくり返る。ルイから落ちそうになるのをあわてて『アポート』。
レトが私の腹の前に陣取って、どっちの手からトランスファーしても気づくようになるのにはそう時間がかからなかった。なんかの察知能力なんです??
私もポンポンと少し浮かすお手玉くらいなら出来るようなので左右の手をいったりきたりとか出来ないかなと思ったけど、さすがに投げるとシャボン玉消えちゃう。
投げる、投げるといえば空中に浮いてるタイミングで『ジュエル』したら手に触れてないのでもう1個作れるのでは?と試してみると、出来た。2個手元に作ることが出来たぜ。何に使えるってこともないけど…。作るだけならレトに持っててもらえば5個くらい作れるし。
左右に持って投げながら3個目、4個目、と作っているとレトがチョーダイしてるのに気づく。はいどうぞー。もうすぐ消えるけど。
トランスファーもジュエルくらい固まってれば扱いやすいのに…てそういうわけにはいかないか。
そんな感じで修行(?)してるうちに『港町ポーツ』に到着した。
磯の香り! 海! さわやか!そして日差しが強い。雰囲気としては地中海。
このゲームでは気候の固定された街がいくつか存在する。常春の村とか、常冬の街とか。この『港町ポーツ』もそのひとつで、ほぼ年中常にこの爽やかでからっとして少し暑い気候となっている。
ほぼ、というのは一部の季節性イベントのときだけ限定的に季節が変わることがあるからだ。クリスマスとかね。その周辺だけはここも少し雪が降るらしい。
そんなわけで世間が夏だろうと梅雨だろうと真冬だろうと関係なく、からっと晴れてさわやかな気候を保っているわけだ。
いいねえ、過ごしやすいねえ。
この気候を好んで、ここをホームポイントにしてる人も多いらしい。わかる気がする。冬とかここにいたいもん。ぽっかぽか。太陽を感じる。
まずはギルドへ行って、ホームポイントの更新。
それから、漁師ギルドがあったので早速登録した。『見習い釣り師』になった。釣りは全然していないので、報告出来るものはチュートリアル分しかない。
ちなみにこのジョブにつく前の実績を報告できるのにも限りがあって、2週間以内かつ3件までとなっている。なお猫は初心者特典で無期限無制限となっております。初心者っていろいろ優遇されてるのだ。
売店は釣竿や釣り餌、手網や玉網、生きたまま魚をしまうためのバケツなどが売っている。
家具売店では生簀や釣り堀、水槽とかもあるようだ。釣り堀って、魚がわくようになるのだろうか? 餌はどうするんだろ?
あとはアクアリウム系の家具なんかもある。これって漁師ギルドの扱いだったんだな。エドさんがアクアリウム作ってるって聞いたことがあって、ちょっと気になってたのだった。うちは飼えても金魚くらいだろうなあ。
ポーツでは釣りを楽しむつもりなので、釣竿の予備を買っておく。チュートリアルのように持ってかれては困るからね。あとは餌も買っておこう、『白ワーム』らしい。こういうのもどこかで取れるんだろう。岩場とかかな?
他に網とか買おうか悩んだけど、何が釣れるのかわかってからでいいかな。
資料室はやはりなく、本が読みたいなら街の図書室だそうだ。廃都エリアはそういう造りってことね。
それからギルドの並びに『運送ギルド』を見つけたので寄ってみたら、『見習いポーター』として登録できた。なんと。運送ギルド、やっぱりあったんだ!
自由都市では見かけなかったと思ったら、倉庫街の方にあるんだそうな。倉庫街は鳩ポッポ商店街を超えて更に奥地にある。あの辺、住宅街もあってかなり入り組んでて、侵入不可区域もあるからややこしいのだ。だからまだ行ったことなかったなあ。というかギルド通り以外のところにギルドがあったりもするんだねえ。
運送ギルドは『運び屋』の仕事をしたときしかポイントがもらえないらしい。ならこれも何もないかと思ったけど、チュートリアルのときのお仕事の達成分と、それからお使いクエストに混ざってた運び屋仕事の達成分があった。それでギリギリ見習いを卒業、『運び屋』になりました。なお、実績解除のスキルはなし。
運び屋のお仕事、ポーツから自由都市マケットへ運ぶ荷物とかもあるようだ。帰るときには、受けていこうかな。いっぱい積んでる方がルイのLVも上がるし。
売店はやはり鞄類が豊富。初心者背負い袋を卒業したら、アクセサリー枠が空いてもうひとつ身につけられるのだが、どうしようか。
鞄は『郵便鞄』で十分な容量あるし『ポーションポケット』もある。あとは、鞄じゃなくてMP増強アクセサリーにしてもいいなとも思ってもいる。
うーん。特にこれ!という鞄はないし、保留かな。
もうひとつの売店は騎乗用従魔の装備品だ。ツールバッグみたいなのがある。これはルイに買おう。荷鞍で容量十分あるけど、ルイの筋力から考えるとまだ全然持てるみたいなので、追加しておく。
あ、ロバ用の蹄鉄がある! 早速買った。これは装備としては武器扱いだけど、騎乗時のスタミナ減少低下効果もある。
馬用とかはマケボでも見かけるんだけど、ロバ用は全然見当たらなかったのだ。出会ったらそりゃ買っちゃうよね。
従魔用の装備品は高かったが、その価値は十分にある。いい買い物をした。
ちなみにこのゲームでは売店の品揃えは一部アイテムを除き、ジョブLVとランクに依存する。なので自由都市でもここでも、猫がジョブLVを上げない限り、ラインナップは変わらない。
ちなみに魔法師ギルドで発動体指輪が買えなかったのは、限定アイテムだったせいだ。
発動体指輪、実は錬金術で作るアイテムらしい。正確にいうと、錬金術師が部品を作って、装飾工が仕上げるアイテム。だから錬金術がない廃都エリアでは扱いがない、というわけ。
それをいったら魔道杖も一部素材は錬金術で出来てるらしいしそれは、てなるけど。でもまあ発動体指輪は錬金術が出たことによって販売されるようになったアイテムらしいから。
錬金術で装備品に使うアイテムが作れる、ていうのはやはり『魔道工』なのかね?
錬金術スレは過疎すぎて、さっぱりわからない。
とにかく秘密主義が多いのが発展しない理由っぽい。まあスキルLVによる成功率とかがなくて材料とレシピと道具があれば(作成時間はかかるけど)LV1からなんでも作れちゃう、て仕様上、技術やレシピの秘匿はやむなしという気はする。飯の種だからねえ。
錬金術の『魔道工』スキルも、生産の仕様によってはとりたいと思っている。猫はドサッとしてチンがいいにゃん。ちまちまするのは性に合わないにゃん~。
でも情報の詳細がないのよ。リーさんは『魔法薬師』だから、傾向が合わなくて見送ったらしい。SP大事だからそこは仕方ない。
猫は『パウダー』を覚えた!
運送ギルドを猫が発見できなかったのは『運搬スレ』はないからというのもある。昔はあったんだけど、新情報とか全然ないから落ちちゃった。倉庫にはある。
『運搬』はパッシブスキルではなく、一般スキル扱いの10SP消費。マイルーム後に廃れたのはそのせいもある。現在は従魔や召喚獣のための拡張用スキルという側面が大きい。
ちなみにこのゲームの近接戦闘ジョブはどうなっているのかというと、冒険者ギルドで討伐系クエストを一定数受けると討伐者クエストが発生し、冒険者ギルドで第二のジョブに就けるようになる。
見習い討伐者→討伐者→駆け出し討伐者を経て、ランク4から『剣士』のように名称が変化していく仕組み。狩人や魔法師でも討伐者のジョブは就くことが出来るためメイン『弓士』サブ『弓士』のような重複ジョブになることもわりとよくある。
討伐者は単純な討伐数でランクが上がるのだが、狩人は難しい弓(投擲)の試練などもあるため、脳筋タイプはスキルジョブを捨てて討伐ジョブに専念することになったりもする。
ランクの高い弓師や魔法師はプレイヤースキルがあるか、プレイ時間が長い古参のどちらかである。
猫の日番外編…とか一瞬考えたものの結局形にならずに終わりました、無念。
評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。
240429 表記揺れ修正(魔術式→術式)
240222
あとがきの小ネタで駆け出し討伐者が抜けてたので修正。…あとがきのために修正がついてしまうとは…。ついでなので追記↓
剣と槍と両方使ってる場合、別々のジョブにはつけないの?
→ギルドではなく、NPC師匠に弟子入りしたり、NPCの互助会に所属するという形で『剣士』『槍士』のようなジョブに就くことが出来る。討伐者ジョブと違って武器限定の尖った性能を持つ。師匠のまだ見つかってない武器などもある。




