2.神像巡礼
この合同祭祀場に神像のある神々も、本体…じゃないな、本神像?は別のところにある神が多く、ここで加護を得て、聖地巡礼すると神官になれるそうな。
分かりやすくて行きやすい場所にある神さまなんかだと、最初から本尊で加護を得て神官になる人も多いらしい。
加護→光属性獲得→聖地巡礼というのが神官になる道のりだ。回復職じゃないけど、信仰によっては回復職としても優秀なので、神官も取ってる人は多い。
フーテンさんとこのポユズさんは回復しないタイプの神官だけど、彼らのところはヤマビコさんが回復戦士で、リーさんも調薬系のヒーラーだ。
ヤマビコさんは神官戦士を目指してたけど、光属性獲得の道のりがめんどくさくて萎えた人らしい。生活魔法の『光源』を経て光属性を取れるようになってるが、今更なあ…とも思えて悩んでるって言ってた。ラーニング!ラーニング!(他人事)
ちなみに複数神の神官というのも、神がオッケーしてれば問題ないらしい。幸運神とかオールオッケーらしいし。
余所事を考えつつ、まずは幸運神の像の前へ。でっかいにゃん~。
加護は欲しいけど、捧げ物を何にすればいいかわからん。お金はダメらしいし。
うーん、幸運、幸運といえば『万能薬』作れたのは幸運だったな。一応、クエスト用にと確保していた『万能薬』だけど、調薬で作られるようになったので8000zくらいで今は落ち着いている。消耗品として使うにはなかなか微妙な価格だが、イベント使用アイテムということもあってこの水準だ。
そのうち下がるだろうけど、しばらくはこのままだろう。
そんなわけで、今となっては手離しても惜しくないアイテムでもある。
よし、これを捧げよう。
ことりと祭壇に『万能薬』を置いて、両手を胸に当てて目を閉じ、お祈りアクション。
加護くーださーいにゃーん。
『オッケー!』
「にゃ」
え。
見ると万能薬は消えてた。
『おめでとうございます。初めて神の加護を得ました。SP10とプレゼントボックスを入手しました』
え、ええ? オッケーされた??
履歴にも『幸運神の加護を得ました』のアナウンスが出ている。
なんてこった。ありがとうオッケー神。手堅いんじゃなかったのか。まあいいか、もらえるものはもらっておこう。やったぜ。
『幸運神』の加護は、幸運がちょっと上がる。それだけといえばそれだけなのだが、ちょっと、の数値が具体的にいうと+10なので実は大きい。
幸運はクリティカルとか絶対回避とか、あと生産系は特に、成功率にも関わってくる。そんなわけで生産職には絶対欲しい加護だが、純生産はもらいにくい加護として有名だったりする。
……錬金術はあんまり成功率とかないんだけどね。特に釜。
ありがとにゃん~のお祈りをして、次の神像へ。
最初から加護がもらえるなんて幸先がいい。
拝殿をてくてく進んではお祈り、てくてく進んではお祈り。ときどき捧げ物をして、お祈り。
狙い通りに『豊穣神』からも加護を得ることが出来た。ふくよかマシュマロボディの女神様の像だった。ファビュラスぽよよん。
捧げ物は『白ラコラ』。今朝、浄化した水桶で溺死してた新鮮なやつよ。
『元気なお野菜ねェ!』
という声を聞いた。
収穫されても元気なのかお前…。あの水桶、それなりに高さがあるのにどうして飛び込んじゃうのか不思議でならなかったけど、あふれる元気が止まらなかったのだろうか?
豊穣神の加護は『緑の手』というスキルで現れる。農家御用達のスキルだ。やったぜ。
これはLVがない、加護専用スキルだ。そのまま『緑を育む力が上昇する(『育成』にボーナス)』。育成があると更に向上するみたいね? 取っておいてよかった。
ちなみに豊穣神の神官が使える儀式魔法『ハーヴェスト』は、畑のすべてを収穫可能にするというトンデモ性能の儀式魔法だ。準備と日取りが大変だが、その価値のある魔法なのだとか。
儀式魔法や加護が農業特化なので農家しか信仰しないと思いきや、専用神聖魔法が範囲ヒールだったり高回復ヒールだったりと治癒特化でもあるので、実は治癒神官のスタンダード信仰だったりする。
更に害虫特効、害獣特効があるため一部の魔物には滅法強い。実は『豊穣神』はかなり人気の神さまなのだ。
なお畑やらないと加護を得るのが難しいので、治癒神官といったらまず間違いなく農家である。
東拝殿を出て庭園へ降りた。ここでもてくてく進んではお祈り、進んではお祈り。
巡礼中はルイに騎乗はせず、手綱を引いて歩いている。レトは私の肩の上。
お祈りするときは私に付き合ってレトは手を胸に当ててるし、ルイも目を閉じて頭を下げるようにするのが可愛い。賢い…!
ぽくぽくと巡礼する間に、ルイは『旅の神』から加護を得た。
半人半獣のケンタウロスのような神像、とってもでかい。獣部分が前脚は馬、後脚は牛、尻尾は狼とあれこれ混ざっている。より正確に言うと脚は左右それぞれ違う獣が混ざってるらしい。言われてみればたしかに、蹄のかたちが四つとも違うような。
『旅の神』は、騎乗用の従魔や召喚獣の、絆値の高いものに加護を与えてくれる神だ。希に人にも与えてくれるが、基本的には騎乗用の獣を守護する神だという。ちなみに共鳴度や好感度をひっくるめた言い方が絆値だ。
加護の効果は『スタミナ向上』。うむ、旅向けにいい加護を得られた。
更に巡礼は続く。
小さな神像や、祠が増えてきたな。何の神かわからないようなのもたくさんある。
しかしこの神殿にいるからには善の神であり、狂えるものもない。幸運神は交流から生まれる幸を尊ぶため、他者を害する喜びは許容しない。なんでもオッケーするように見えて、やはり手堅い神なのだ。
狩猟神にしても、狩猟を楽しむのではなく「増えすぎた獣を狩り双方にとっての餓えを退ける」のような森の守護者的役割であるらしいから。
まあそんな感じで、邪神とかが入り込む隙間はないから安心して祈るといいよ、なのが自由都市の神殿だ。
逆に学園都市の総合神殿は主神に知識神を祀っているが、この神はそういった別なく「知識こそ至高、些事は構わん」というスタイルで神殿に他の神が奉られるのを許容しているらしく、なんか邪神ぽいのも結構いるらしい。ダンジョンがほいほい出来てるのもそのせいとかなんとか。
トップに置いちゃダメな神じゃん…。
そんなわけで小さな祠や神像にもちまちまと立ち止まってはお祈りしていたのだが、ふと気になる。
なんだかここ、ちょっと不思議な隙間があるような?
神像と神像との間隔がやけに広いというか。ここにもうひとつ神像があってもおかしくないような。
ちょうど真中くらいに立って、地面を見てみると、足跡が付いている。獣の足跡?
もしかしてなにか獣が神像を咥えて持っていっちゃったとか、そういう感じだろうか。クエストになるんかな?
見つけてしまったものは気になるし、足跡を追ってみるとしよう。
しかし足跡は鎮守の森へ続いているようだ。
そっちもたしかに順路なんだけど、せっかくくまなく回ってきたのにショートカットはしたくない。
この小さな祠や神像のところは、一度道を外れたらどこまで祈ったか忘れそうだ。一応GPSは記録するけど、大丈夫かなあ?
迷っていると、さっき詣った神像がほんわりと光った。
『探しておいで』
わあ。
「ありがとう、いってきますにゃん!」
神が行けというならば行くしかないな!
というか加護をもらうと神像の区別はつくようになるみたいで、ちょうどいいサービスだった。
そして加護をくれた神さまは『探しものの神』だそうだ。ぴったり。
加護の効果はスキル『発見』にボーナス。おお、これはうれしい加護。
加護の力もあってか、足跡の続く先はわかりやすい。
大きな木のうろの中へ入っていってる?
鎮守の森はそもそも木々が多く影になっていて、薄暗くてわかりづらい。木のうろなんて更に真っ暗だ。これ、どうなってるんだろ? 中はダンジョンとかさすがにないよね??
神殿内での魔法は全面禁止だが、例外として攻撃以外の光魔法は許可されている。ならばこれは問題ないはず、と木のうろの中へ『光源』を放ってみる。
ぽわっと木のうろが明るくなって、でもそこには何もいない。
『見つかっちゃったぁ』
しかし声はして、何かからの加護は得られたみたいだ。
履歴を見てみると『かくれんぼの神』で、加護は『隠れる』にボーナス。
…なるほど、獣が神像を持っていったとかじゃなくて、神さまが自分で隠れてたのか。
てくてくとさっきの『探し物の神』の神像まで戻る。その隣にはさっきまでなかった神像がちゃんとあって、よく見ると隣と似たような形をしていた。兄弟神とかかもしれない。
改めて『かくれんぼの神』『探し物の神』にそれぞれお祈りをして、次へ。
巡礼の道が鎮守の森へ入っていくと、神像は半獣型が増えた。
このあたりは獣人族の神なのかな?
鬱蒼とした森の空気にガオーなポーズで怖い顔の神像はなかなか雰囲気がある。猫は妖精族なのでこの辺はあんまり関係なさそうだ。
でも一応お祈り。
小さくて何を司っているのかさっぱりわからない神像の道もそれはそれで趣があったが、形がはっきりわかる異形の神たちもこう、ホラーな雰囲気ですな。
てくてくぽこぽこと進んでいき、森ゾーンを抜ける。
ちなみに妖精族は司る神って特にいないらしい。そもそも自由気ままなのしかいない。精霊王とかがやはりいるらしくて、妖精族は信奉するとしたらそっちみたい? 精霊についてはよう知らん。
『精霊使い』て職があるらしいって聞いたけど、一次職じゃないみたいだし、詳細不明。
庭園を一周して、次は西拝殿へ。
本殿の神像は、完全人型が多いみたい。
この辺りは、生産系っぽい? 糸巻持ってたり、大きな木ベラを持ってたり、金槌持ってたり、天秤を持ってたり。
釜を抱えている錬金術の神とかはいなかった。ちょっと残念。
ペンを持って長い巻物を左上から右へと開いている神像。お祈りしたらぽわっとした。
光っただけで特に言葉はなかったけど、加護をもらえたらしい。
言葉があるかないかっていうのは加護の強さによるそうだ。加護→祝福→恩寵とパワーアップするらしいんだけど、加護の中でも更に大小があって、大は次に加護を得る機会があればほぼ祝福になるけど、小だと声が聞けるだけで祝福にはならないそうな。
ペンと巻物の神はそのまま『学びの神』で、加護は『学習経験値上昇(微)』。やったぜ。
学習ってラーニング? それとも教本? まあどちらにしても有用だ。
どうやらレトも同じ加護をもらっていたようなので、文献調査とか含む、本からの学習なのかも?
そこからも西拝殿をてくてくお祈りを続け、ぐるりと一周、幸運神の像まで戻ってきた。
そういえば知識神は無反応でした。ちょっと残念。捧げ物がなかったからだろうか? でも何を捧げていいかわからなかったんだよねえ。
そんな感じで神像巡礼は完了! なかなか長距離のお散歩だったね。
いろいろな神像を見られて面白かった。
最後に神殿へお布施を少しばかり。
これで神のご加護も十分。
明日から、旅に出るぞ!
猫は『幸運』『豊穣』『探しもの』『隠れんぼ』『学び』の加護を得た!
神の加護は行動蓄積によって授けられるので、やってないものは全然得られない。
しかし蜘蛛を倒しまくってる人が裁縫神から加護を得てしまうようなことは稀によくある。
裁縫神『糸巻きお上手ですね♡』
トレント狩りしてたら木工神にスカウトされたり、岩ゴーレム殴ってたら鍛冶神や採掘神に目をつけられたり。隙あらば半生産へ引きずりこもうとしてくる運営の罠とささやかれている。
逆に生産職を戦闘へ引き込もうとする神はいないので、神は過保護。無理はさせない…。守らなきゃ、命…。
評価、ブクマ、イイネありがとうございます。
2月分の予約投稿作業を終えました。しばらくは安泰です。