37.農家の近況
今回から3話が1章のエピローグとなります。
あれこれ悩んだけど結局、『菜園』と『育成』のスキルを取った。それぞれ10SP。
実績解除スキルはパッシブが多い。持ってるだけで効果を発揮するスキル。つまりジョブにまつわることをしてれば勝手にLVが上がる。なので今後もそのジョブでやっていく気があるなら、さっさと取ってしまう方が経験値的にいい。不足を感じてから取得するとスキルLVの上がりがそれだけ遅くなるわけだ。
新しく買った『草刈り鎌』は刃がしっかりしていて、雑草も採りやすくなった。やはりいい道具は違いますなあ。この調子で道具も次々と新しくしていかねば。農家は自転車操業だ。
『白ラコラ』が畑からヨッコラショッと這い出してきて庭を歩き回る珍事はあったが、土から出てずっと活動できるわけではないらしい。
だからどうにかして捕まえて篭に入れておけば、しばらくするとアイテム化する。これは農業ギルドの本に書いてあった。
白ラコラは他の作物が植えてあると、それを虫やその他の害獣から守ってくれる。害獣には人間も含まれる、ということで微妙に役に立つんだか、めんどくさいんだか、ちょっとわからない。白ラコラを先に収穫しないと、畑の作物が収穫できなくなってしまった。
はじめは走って逃げては土に潜ったり、隅っこに隠れたりして行方不明になる白ラコラに手を焼いたが、新しく覚えた『アポート』で解決した。逃げる白ラコラを追い回さずとも、アポートで安全かつ簡単にキャッチ!篭へシュート!(こっちは手動)完璧だ…。
走ってるときは絶対手足がある気がするのに、アイテム化すると普通の大根(?)なので腑に落ちない。
そんな謎の生態を持つ白ラコラだが、畑の見守り用に2~3株畑に植えておくと、レトだけでは捌ききれなかった害獣も倒してくれる。
『畑モール』とか。……モグラいたのか。知らなかったわ。ギルドの本で調べると根菜類を植えてると出てくるようになるとか。ラコラの犯行。
なお『畑モール』は農業ギルドに納品した。害虫や害獣も納品出来るギルドのふしぎ。『畑ホッパー』もレトからもらった分を一部納品した。芋虫系は卵で潰しちゃうから、まだ納品したことはない。
蝶はでるんだけど、虫媒考えると捕獲しちゃうのもなあ。しかし卵は潰す。どこか知らないところで育ってから来てくれ。農家はワガママなのよ。
『赤ラコラ』『黄キャロ』も育てて野菜として納品したりしている。こいつらは歩かないから楽だ。…ちょっと物足りないと思ってしまった。完全に毒されている。
通常品質の種から育てた野菜は、手順があっていればだいたい『高品質』になる。
NPC野菜売りからも高品質野菜は希に買えるが、買える量が少ないらしい。いいものはすぐ売れちゃうってことだろう。
そんなわけで『赤ラコラ』『白ラコラ』『黄キャロ』もヤマビコさんはかなり買ってくれた。うちのお得意様ですな。
ヤマビコさんの薬草農業は順調で、まだラーニングこそ出来てないが、暇なときに育ててるらしい。
料理で薬草はあまり使わないが『薬草茶葉』とか『薬草クッキー』にして売ったり食べたりしているそうな。
最近は庭を畑にすることも考えているらしい。うんうん、農業楽しいよね。
フーテンさんたちも農業しているが、向き不向きがあるのか、薬草種の2袋目を求めたのはヤマビコさんとポユズさんだけだ。
二人には薬草種の収穫方法も教えておいた。種まで育てたら、農業ラーニング出来るのかな?
庭といえば、少しテイマーギルドで家具を買い足して、ルイ用のスペースを作った。
『簡易屋根』と『飼葉桶』『水桶』などだ。
水桶は気がついたときにこまめに『ピュリファイ』をかけてるので、浄水になっている。レトもここから水を飲んでるときがあり、ちょっと危なっかしい。
あとたまにここで白ラコラが溺死している。お前は何をしているんだ…。
そうそう、あまりにもよく水桶に『浄化』するようになったので、せっかくなので『ピュリファイ』覚えました。
生活魔法は魔法自体の習熟度もなければ、魔法LVもないから、同じ用途でずっと使うなら拡大して使うより、専用のちゃんとした属性魔法を覚えた方がいいかと思って。
お金に余裕が出来たら、各属性魔法のいちばん簡単な魔法(光属性の『灯』みたいな)教本を買って、覚えてみるつもり。いくら安価な方の教本とはいえ、15属性分あると結構な出費だ、道のりは長い。
『牧草』は牧畜ギルドに種が売ってたので、適当に蒔いてルイ用のスペースで育てている。あと『黄キャロ』もこっちでちょっと育てている。
畑で育てることもあるけど、こっちは常時植えてある。ルイが自分で掘って食べる用だ。
散歩できるほど広くはないが、まあまあ寛げる場所には出来たみたい。ガーデンベンチもこっちに置いてある。
それから、結局『ベランダ』は買った。買ってしまった…。全然我慢がきかなかったにゃん。
『ベランダ』は半拡張家具らしく、今の部屋を侵食してベランダが出来上がるのではなく、部屋の外にベランダが設置される。つまりベランダ分、部屋が実質的には大きくなる。
といってもベランダは猫の額ほどのスペース。
ベランダを拡張するには『ベランダ増設』という家具を別途購入する必要がある。なおとてもお高い。まあ部屋の拡張と同じようなものだからね。
ベランダの天気は一定で『青空の壁紙』と同じようなもの。これを変更したいなら、ベランダ専用壁紙を買う必要がある。こちらは家具屋にあるらしくて、農業ギルドにはなかった。
『プランター台』も『プランター』も新しく買って、ベランダでは野菜以外を育てている。『薬草』に『キキ草』、『レモベナ草』『マリッソ』、それからエドさんが分けてくれた『ラヴツレ草』。
ベランダハーブ農園ですな。葉っぱ系なのでまとめて育てるのも楽。
こちらはレトに見回りしてもらってないので、植木鉢で『白ラコラ』2匹(匹?)を育てて番をしてもらっている。意外と優秀で、虫食い被害は少ない。戦利品のバッタはいつも植木鉢に埋まっているので、こいつらも捕食植物なのではと思わなくもない。
ハーブにしても野菜にしても、高品質は安定的に手に入るけど、最高品質は未だに採れたことがない。なんか条件とかあってきっと難しいんだろうね。スキルも取ったばかりでLV低いし。
まあ『〇〇の高品質を納品』のクエストはあっても、まだ『最高品質を納品』はないので、もうちょっとLVやランクが上がらないと無理なのだろう。
LVといえば、錬金術もちゃんとやっている。
収穫した種の最低品質→低品質→通常品質が最近の釜の役割になりつつある。まさに農家の釜。
最低品質は交雑しない限り出ないんだけど、ごく稀に出る高品質の種だけをまとめて蒔いてると、ばらつくときがある。ばらついても最高品質は出ないので、まだまだ謎なんだけども。
なお通常品質の種を圧縮しても、育った作物の低品質が出るだけなのでうまくない。
レトのおかげで『畑ホッパー』があまりにも大猟なので圧縮したところ、『畑玉』という蒔くタイプの肥料になった。ありがとうバッタ、お前の犠牲は忘れない。
ついでに『畑ホッパー』と『雑草』を合成すると『畑の土』になる。
いやあ、農業が捗るわあ。
ちゃんとガラスの実験などもしている。
実験過程で『空玉』『月明』などができた。
『空玉』はいくつかの組み合わせで得られるアイテムだが、ティアラさんに相談したところ、アクセサリに使えるものではないらしい。
内側に大きな空洞が出来ているため硝子部分が薄くなっており、脆いそうだ。装飾には使えないし、消耗品の材料になるのではないかとのこと。
『空玉』はビー玉サイズなのだが、かなり少量の硝子で作られたアイテムであり、これを『ガラス工』で作るとしたら、三倍は大きくなるそうだ。そうなるとガラス瓶に分類されそうだし、たぶんこのアイテムは錬金術限定アイテムだろうとのこと。
なるほど。空洞が空いてるってことは、たぶん錬成陣の素材だろう。
『月明』は『ムーンキャッチ』を光圧縮で得られたアイテムで、元々ムーンキャッチを月光に当てると出来ると言われているアイテムだ。
白月夜に当てれば『白月明』に、青月夜に当てれば『青月明』に、赤月夜に当てれば『赤月明』に。満月ではない夜に当てると『月明』になる。
色つきの月明は、擬似的に月夜を作ることが出来る。『青月明』なら青月夜に出来るので、妖精契約が可能だったり、そういうのに使う消耗品だ。
しかし夜に光を当てて変化させるのが大変なので、ムーンキャッチはもはやオシャレアクセサリ用の素材になってしまったわけだ。
『月夜の壁紙』という外の月に連動した夜環境を作る家具アイテムがあるらしく、それを持っていてなおかつ、壁紙を貼る部屋をひとつ用意出来る人くらいしかやらないだろうって。
この壁紙自体、季節イベントの高額報酬でしか手に入らない趣味アイテムで、持ってる人はそう多くないそうな。
『月明』はそれ単体では消耗品ではない。他の材料と合わせると『白月明』『青月明』『赤月明』に出来る合成用素材だ。調薬や裁縫、錬金術でも作れる。多業種用素材ってやつ。
今のところ、錬金術で色変するには素材が足りないので死蔵。
アクセサリにも出来るけど、ティアラさんも硝子研究で忙しそうだしね。
ティアラさんといえば『光玉』でアクセサリを作ったところ、光属性の付与されたアイテムになったそうだ。
これは単体ではあまり意味をなさない効果で、他のアイテムに追加したりして使う効果らしい。ただちょっと癖のある素材で、思うように効果が繋がらないのだとか。
こういうタイプの素材は、繋がったとき爆発的に伸びるらしく『必ず探してみせますわ!』と張り切っていた。楽しみ。
錬成陣も試している。
今のところ『魔法玉』と呼ばれるものしか作れない。
ビー玉をプールポートに、ヒビの入った牙やら爪を設置して魔法を込めると、元がなんであれ何故か丸い玉になる。なお魔法を込めるのに失敗すると素材が弾け飛ぶ仕様。
おそらくそれぞれの素材にMP許容量のようなものがあり、それを越える魔法は弾かれて入らないみたいだ。
初心者の狩れる素材は、MP5の魔法しか入らない素材が多い。
プールポートを用意しなくても作れるんだけど、一度魔法をビー玉にプールしてから無属性で送り込むと安定的に作れる。
ちなみにMP5の魔法であればビー玉は消えずに残り、崩れ去るまでは再利用できる。だいたい5回くらい。
『魔法玉』は使用すると込められた魔法が発動する消耗品だ。これが錬金術と相性がよい。そう、錬金釜にこれを入れると魔石の代わりに出来るのだ。
そんなわけで錬金釜の世界に15属性圧縮の時代がやってきた――ということもなく、まあ細々と売れるアイテムとしてマケボで取り扱っている。
マケボにはまだ3種類しかおけないので『光魔法玉』と『闇魔法玉』しか置けてないんだけど。残りのひとつは『万能薬』とかのちょっとお高いやつ用。
マケボもLV20になると5枠になる。そう、つまりまだなっていない。
猫、まだLV17なのである。
『万能薬』が金策として優秀すぎたにゃん。
しかしそんな万能薬の時代も、ついに終わりを迎えた。
『下級万能薬』のレシピが現れてから既に相場が下がり始めていた万能薬だが、さすが生産の最大手『調薬師』、『万能薬』レシピへ辿り着くのは早かった。
ぐらつき始めていた『万能薬』の価格はついに大暴落。
『初心者状態異常回復薬』も市場から消えてたし、ちょうどいいタイミングだったのでは?
はい。
これがここ1週間ほどの出来事ですかね。
ついに万能薬バブルが弾けてしまった。
にゃん~~!
猫がLV上がるの遅いのは、本人がサボってたというのももちろんあるけど、いつでもどこでもだいたいルイと一緒にいるせいでもある。実質必要経験値2倍。
評価、ブクマ、イイネありがとうございます。