32.行商
よし。それじゃ今日の予定確認。
『調理師ギルドに登録』
『農業ギルドのランクアップ』
『魔法師ギルドで複合魔法を調べる』
『なにか魔法教本を買う』
『サモナーギルドで召喚獣について調べる』
『外散歩に行く』
『本屋に行く』
こんなもんかな?
教本買うのは『アンチポイズマ』がMP減らしても読めないから、もう読むものないからです。
実用的な買い物だよ?
召喚獣については、休ませ方もだけど、コボルト系の召喚獣についても調べたいな。荷物持ったり、農業手伝ったり出来るみたいだし。
外散歩は棚上げし続けてきたのでそろそろ達成したい。
今の猫には『インパクト』がある。安心だね。
うーむ、やりたいことがたくさん!
あ、そういえば本屋より前に冒険者ギルドの資料室も行きたかったんだった。ポルクスの倒し方を調べておかないと。
それにレトに本も見せてあげたい。あそこは絵の本が多かったもんね。司書さんがいないのが残念だけど、一緒に読めばいいか。
ランクアップや戦う経験値で一気にLV20を越えることはまずないと思うが、でも越えない内に初心者アイテムの買い出しは済ませておかないとな。
早速マケボチェックして、安い『初心者ポーション』や『初心者魔力ポーション』をポイポイ購入。
魔力potは最近は庭の手入れでもよく使うので、多めに買っておこう。もし余りそうになっても、転移石にしておけばLVが上がっても使えるので躊躇いなく買える。スタミナpotは使ったことないけど、これも転移石のためにたくさん買っておく。
ちなみにスタミナは主に『武技』と呼ばれる物理攻撃スキルのアーツで消費される数値のため、猫はまだ縁がない。『投擲』覚えたら『チャージショット』というアーツがあるらしいことは知っています。
そういえば、エドさんの作ってくれたらしい『スリングショット』が『コズミックショット』を入手したおかげではみ出たので、レトにどうかな?と思ったら、レトには使えないようだ。『スリング』はいけるらしい。器用度の差かな?
召喚獣や従魔は、鞄アクセサリと召喚主の『運搬』がないとアイテムを持てない。
よって飛び道具を扱う召喚獣や従魔は『運搬』無しでは無力化してしまうという悲しい現実がある。
マルモが不人気だったのも、そういうのもあるのかもしれない。マルモは攻撃は投擲タイプらしいから。
ちなみに第一エディションではまだマイルームがなかったから、みんなほぼ『運搬』持ち。第二からはマイルームが登場したので『運搬』持ちは激減したそうな。
でも第三でダンジョンが増加してたので『運搬』も見直されてるとか。
さておき、レトには『ポーションポケット』ではない鞄を持たせないと、投擲は使えない。自力で石を拾ってもらうしかなくなっちゃうから、鞄買うか、『郵便鞄』をもう1個作るか考えねば。
でも、初心者の靴はあまり見かけなくなってしまった。初心者はマケボが3枠なので、そういうアイテムを売るより、素材とか金になるものを出している。それはそう。
枠に余裕が出来てからそういえばこんなものもあったな、て感じで売るらしい。集めるならなら露店で買取出す方が早そうね。
初心者シャツやズボンも、今のうちに安いやつは買うだけ買っておこう。必要になるときがあるかもしれんし。ないかもしれんが。
一応全部、販売参照価格は教わっているので、マケボや露店で売ってもいいし。
あれこれ買い物してるうちに、ヤマビコさんたちからメールが返ってきた。みんなすべて購入してくれるそうだ。
フーテンさんが露店を出しているそうなので、ひとまずそっちへお邪魔することに。
新しく増えた庭の区画には散水だけして、出発。ルイと一緒にマイルームから出られるっていいね!
騎乗してぽくぽくと露店通りへ。GPSはもらっていたので露店通りのエスカレーター的な流れに乗る。どんぶらこ。
程なくしてフーテンさんの露店へ到着。今日は珍しくオシャレ系の服飾品を売っている。
あ。あれ欲しい。
「猫ちゃんいらっしゃい~~」
「お邪魔しますこれくださいにゃん」
「おや? なんかいいのあった?」
猫が気になったのはポシェット。この『がま口ポシェット』が欲しい。レト用に。モスグリーンの渋い感じがレトにぴったりだ。
「『がま口ポシェット』でいいの? これは重量200しか入らないオシャレ装備だよ?」
「猫は『運搬』持ちだからもうちょっと増えるし、レトが装備するにゃん」
「なるほどマルモ用ね~。では2000zになります」
「オシャレアクセサリーのわりに安いにゃん?」
「そりゃ初心者向けだもの、手に取りやすい価格になってるよ~。それに『がま口ポシェット』はエドが暇潰しに作った革小物だしねえ、他の裁縫師から仕入れてる布製のポシェットよりお安めよ」
「エドさんの手作りにゃん? 大事にするにゃん」
露店の機能でやり取りして、早速レトに装備させる。うんうん、似合う。
レトもかぱかぱとがま口を開けて見ているので、ちゃんとがま口から出し入れ出来るらしい。いつでも頬袋じゃない、よかった。
インベントリを操作して石ころを何個か移動させると、出したり入れたりして楽しそうだ。
「猫ちゃん見た目がすっかり魔法師だねえ」
「帽子効果にゃん~。これがないなら、普通の街着にゃんよ」
フーテンさんは猫をじっと見て、帽子を手で隠すなどしてからうなずいた。
「なるほどたしかに? 特徴的だもんねえ。MP増加効果のある頭装備でなんかいいやつ見繕おうか?」
「猫も生活魔法師の端くれ、これはこれで気に入ってるにゃん。頭装備は麦わら帽子を探しているにゃん。あと堅そうなエプロン」
「堅そうなエプロン??」
「ガーデニングエプロンってやつにゃん。そうそう、朝採れ野菜を卸しにきたにゃ」
「行商ありがとうねえ。急がなくてもよかったのに」
「畑になったから採れるのも早いにゃん~」
『ヒールミニトマト』100個、『薬草(若葉)』100個ずつ200個を買取台に乗せる。
「あれ、若葉は二人分で100個じゃなくて100個ずつだったの?」
「そうにゃよ?」
「大丈夫? 無理して育ててない?」
「全然~。今マリッソは60本、薬草は50本育ててるにゃん。マリッソは1回の採取で枝2本、2回採取出来るから240個の収穫見込にゃん。薬草は1回4枚、3回採取出来るから真面目にやれば600枚にゃん、2回採取してきたから400枚あるにゃ。さすがに育てすぎたにゃん~」
「予想以上にとんでもないことになってるね~。庭拡張するっていってたけど、更に増やしちゃうの?」
「庭の拡張はルイと暮らすためにゃん。畑は今が限度にゃんね、MP的にもカツカツにゃん」
「なるほどそれなら安心よ~~。もし買えるなら200枚ずつ買いたいってリーたち言ってるけどどうする?」
「200枚ずつでも構わないにゃんよ~。種もたくさんあるにゃん」
更に200枚乗せて精算してもらう。おお、量が量だからか、農産物は意外とお金になるな。
「ヤマビコがハーブ類の高品質は高く買うって言ってたから調べたけど、ハーブ類の種ってランク上がらないと出ないんだねえ。猫ちゃんは外で採ってきたの増やしてる?」
「そうにゃん。その辺で採ってきた『香草』が、種子採って育てたら『マリッソ』だったにゃん」
「庭に希に生えることがある『ラヴツレ』ていう草があるんだけど、猫ちゃんちには生えた?」
見たことも聞いたこともない草ですね?
「猫んちの庭ではマリッソと薬草と雑草しか生えなかったにゃんね。一度雑草を育てたあとは畑にしたから、自然に生える草は今はわからないにゃん」
「『ラヴツレ』も香草分類なんだけど、ハーブティーのレシピがあるんだって~」
「にゃん!? 気になるにゃん!」
「『ラヴツレ』自体の在庫はあるんだけど、増やすのって普通に採取したやつじゃダメなんだよね?」
「根がついてないとだめにゃん~。根つきを植木鉢で育てて、種を収穫するにゃんよ」
「なる~。うちは庭は狭いんだけど、リーの錬金術のLV上げのために、みんな環境は植物育つようになってるのよ。だから『ラヴツレ』とか、それ以外にも変なの生えたら根つきで収穫しておくねえ」
「ありがとうにゃん! 拡張した残りの分は牧草を育てようと思ってるからよかったにゃん~」
フーテンさんの在庫の『ラヴツレ』も見本に少しもらった。やったぜ。ふんわりと甘い果物っぽさに加えて、奥行きのあるフローラルさもあるいい香りのハーブだ。お茶にしてみよ。フレッシュハーブティーも猫は好き。
「リーが『経過』覚えたから庭にかけまくって遊んでるよ~猫ちゃんのために『雑草玉』作っておくって張り切ってたから、またもらってやってねえ」
「嬉しいにゃん! 庭仕事すると減りかたがすごいにゃん~。畑は土がいらないから楽だけど、『雑草玉』がその分多くいる気がするにゃん」
「猫ちゃん農業はヤマビコも気になってるみたいだから、相談に乗ってやってねえ」
おお、農業仲間はいつでも歓迎ですにゃん。
そしてせっかくなら猫の仮説(?)を試してもらいたい。
「植木鉢と土を買ってお試し農業してみるにゃん~! 土と植木鉢は猫が買ってきて融通しますにゃん」
ネックになるアイテムは用意できるので、あとはスキルのない状態での植物の育成難易度がどうなっているかだ。でもそれは、生活魔法で少し軽減されると考えている。
「『流水』『経過』『耕土』『微風』『浄化』、もし部屋の中で育てるなら『光源』もあれば完璧にゃん? 種は山ほどあるから猫がお譲りするにゃん~『マリッソの種』と『薬草の種』と、えーと…これがトマトがなる『毒草の種』にゃんね。『赤ラコラの種』もあるにゃん」
「お、おお? 『農業』なしで育てるってこと?」
「料理もスキルなくても出来たし、出来るはずにゃん?」
「…それもそうね? 料理は普通に料理してれば出来はどうあれアイテムにはなるっていうし、農業もちゃんと世話してればアイテムになるか」
「そう思うにゃ。魔法があると待ち時間が少ないから、お試しも早いにゃんよ~」
「なるほど~、じゃあ種と必要アイテムは買い取らせてもらって、スキル取る前に試すように言っておくよ」
「『経過』する前に水まきや肥料をしっかりやるのがコツにゃん。トマトは手間がかかるから、見守って育てるなら『薬草』がオススメにゃん」
薬草はバッタに食われやすい以外はあまり手間がかからない。なので魔法を使った見守り農業ならばいちばんお手軽だ。
土に『雑草玉』をひとつ入れて『耕土』したものを二つ用意して、片方は植木鉢に入れて、もう片方は追肥に使うのが猫の農業だ。『液体肥料』は薬草には重いかも、ということで使わないことを推奨。
植木鉢には5粒入れて、育ってからいちばん大きいのだけ残して他は根付きで摘み取ること。雑草をこまめに抜くことと、もし雑草がアイテムになったときは肥料を足すこと。葉が6枚になったら良さそうなのを4枚ずつ収穫することなどがコツだ。あ、アブラムシや卵は浄化で。そのくらいかな?
根付きで摘み取った分を土に植えれば同じように育てられる。
「時短してる以外はやはり手間暇かかってるんだねえ」
「口頭説明するとあれこれしてるように聞こえるけど、基本は魔法かけてるだけにゃんね~」
種は譲るつもりだったのだが、買ってくれた。とりあえず『薬草の種』だけで十分だそう。
いうて薬草とか10zでは…と思ったが、種も農業ギルドに登録しないと買えないので、1個10粒入りで50zがマケボでの相場らしい。知らなかった。
植木鉢と土は、さすがに予備を持ってはいないので、後で農業ギルドへ行って買ってきてお渡し予定。
なおお金は先払いでくれた。え、いくらなんでも多すぎるんだが?
「せっかくだから全員で育ててみたいし、5人分お願いします。お釣りは猫ちゃん取っておいて~」
釣りはいらねえぜ?
さすが大商人は気前がいい。
まいどありにゃん~。
行商の後は、予定をこなしていくにゃん!
まずはギルド通りへ行き、調理師ギルドに登録、『見習い料理人』になった。
料理を作った実績の報告は料理人として登録する前のものでも大丈夫なので、そのまま続けて報告と納品。
『肉料理』『魚料理』『野菜料理』『お菓子』『卵料理』『保存食』『調味料』などを達成した。保存食は『薬草茶葉』、調味料は『ドライマリッソ』で達成。
『料理人』になった。更に次のランクになるにはもうちょっと足りなかったね。
実績解除スキルは『解体』で、戦闘後ドロップで食材アイテムが落ちやすくなるスキル。これがないと手に入らないアイテムもあるとか。実績解除スキルについては後でまとめて調べることにして、今は保留。
資料室へ行き、本を読む……が、ここはほとんどレシピ本らしく、そこまで本が置いてない。特にいま作りたい料理はないからいいかな?
元々、『料理(焼く)』をラーニングしたからやってみただけで、料理をばんばん作りたい、というわけではない。串焼きとお茶が作れれば十分なのだ。あとたまにお菓子、ティータイム用に。
売店を覗いて調理道具を見る。ヤカンもティーポットも買ってるし特には……『味見カップ』、忘れてたな。これ買っておこう。
あとは『木ベラ』しか調理道具ないから『レードル』も買おう。『串』もいるか、串焼きのために。
紙皿とか葉皿という料理販売のための安価な皿アイテムもあるみたい。なるほどなあ…。
あとは調味料、おお、砂糖や卵、バターも売ってる! 高いし、今は特にいらないけども。
ラーニングに必要なアイテムが登録しないと使えないギルド売店に売ってるの、MMOよなあ。
マケボにしても、売る人がいないとラーニングは出来ない。転売はゲームでは役に立つ側面もあるんだよなあ。うむ、ゲームの転売は文化。現実は絶許。
しかしこの仕様だとすると、人にマンツーマンで教えてもらうとラーニング早かったりしてね。…ううむ、もしかしてあるのでは?
元々はここと次の話で1話だったのでどうにも切りが悪く。
次もギルド巡りです。
普通の(?)ヒラヒラしてるフリル付きエプロンはオシャレ装備としてメジャーなアイテム。裾の長さから装飾までいろいろなタイプがある。エプロンに対する人々のこだわりと情熱が垣間見える市場。ちなみに上着装備。
評価、ブクマ、イイネ、感想ありがとうございます。
楽しくてどんどん続きを書いていた日々を思い返しつつ、あの楽しさが共有出来てたらいいな~と考える日々です。なお今も楽しく続きを書いてます。