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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
6章 猫はいつでも風まかせ

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39.人形遣いの昔

 ゴーレムのお婆さんの話は大変興味深かった。


 その昔、学園都市がまだ芸術都市と呼ばれていた頃、都市の中に異界の扉がたびたび開くようになった。


「当時、都市の界は安定していなかった。今もなお安定していないと伝え聞くが、それよりもなお揺らいでいた時期があった」


 学園都市は街でありながらダンジョンを有している通り、異界の扉があちこちに開いている。それは芸術都市と言われていたときにはなくて、あるときから異界が開き始めたのだそうだ。


「きっと何か原因があるに違いないと、皆は考えた。そして疑われたのが、あたしたちだった」

「にゃあ……」

「あなたたち、というのは」

「あたしたちゴーレム――魔道傀儡まどうくぐつさ」

精霊傀儡せいれいくぐつとは違うにゃんね?」

「もちろん違う」


 ゴーレムお婆さんの言うことには、まったくの別物であるらしい。精霊石を心臓に据える精霊傀儡と、魔道石を心臓に据える魔道傀儡。ふたつは異なる技術からなり、違う知識によって裏打ちされている。


「ゴーレムってのは、そもそも本来は異界でしか生まれないんだ」


 異界でしか生まれない魔物、というのは数々あるのだが、そのひとつがゴーレムだ。一説には人間を模したものであり、だからこそ異界の街にはゴーレムが現れるのだ、という話もある。

 そんなゴーレムを擬似的に製作する人形製作師たちは、界の歪み始めた芸術都市で、ある疑惑をかけられた。

 彼らがゴーレムのために異界を作り出したのではないか、と噂されたのだ。


「疑惑は広がっていき、あたしたちは処分を迫られ、主人や製作者は身動きを封じられていった。中には都市を見限って出ていくものたちもいた」

「にゃん~、出ていっちゃったにゃん?」

「ああ、あの街にいるよりはまだ生きる道があると言ってね。それも正解だったかもしれない。それくらい皆、追い詰められたんだ。異界を作り出すなんて大それたこと、マレビトでもない限り、出来るはずがないってのにね」

「マレビトが持ってるのは異界に干渉する能力であって、異界を作れるわけではないですよー」

「そうにゃんよ~」

「おっと、ふたりはマレビトだったのかい。そいつは失礼したね」

「いえ、話の腰を折ってしまってすみませんでした」

「構わないよ。そうか、マレビトかい……」


 ゴーレムお婆さんは大きく息を吐くようにプシューと蒸気を吐く。これがあるから、あまり傍へは近寄ることが出来ない。スチームパンク感。


「そんな折、職人街に大きな異界の扉が開いてね」


 職人たちはあわてふためき、工房を捨てて逃げ出した。しかし中には戦うものもいた。

 それは人形遣いたちだった。


 ……なんかそんな話、聞いたことあるな。たしか隠者の村にいた、シャイアネイラさんがそうじゃなかったっけ?

 そのとき大暴れしたのが原因で、殺戮鬼マーダーロールと呼ばれていたとか、聞いた覚えがあるぞ。


「あたしたちは戦って戦って、異界の扉を街から切り離すことに成功した」

「おお! すごいじゃないですか!」

「ああ、あたしたちの誇りさね。……でも、異界の力っていうのはすごいんだねえ」


 ゴーレムは異界の存在。

 その理が働き、お婆さんたちゴーレムは、この異界から出られなくなってしまったのだそうだ。


「召喚獣とかにはなれなかったにゃ?」

「召喚獣になるには、我々は数が多すぎた」


 魔道傀儡とは、精霊傀儡と違い量産型人形の技術であり、ひとりの人形遣いが10体以上を使役していたのだそうだ。

 どうも軍隊を指揮するような技術っぽいな。


「もちろん何体かは主人に拾われたよ。それでもすべてじゃなかった。……ここにいるあたしたちは、見捨てられたんだ」

「にゃん~……」


 話を整理しよう。

 ここは芸術都市だった頃の職人街が異界化で切り離された場所。

 ここにいる人形たちはゴーレムで、元は魔道傀儡だったが、異界の理によってダンジョンに閉じ込められてしまった。

 元の人形遣いさんにも全員を救うことは出来ず、放置されてしまっている。


 うーん。

 これってもしかして、強力なゴーレム入手のイベントなんじゃなかろうか。

 ここで召喚獣にすることで、名のあるゴーレムゲットだぜみたいな。


『なるほど、その可能性はありますね。その場合、このままだと使えなくて、強化イベントを挟むような形になりそう』

『にゃあ、そして『魔道傀儡』へ……みたいなやつにゃん』

『あり得ますね!』


 問題はショーユラさんは召喚枠を使いきっていて、猫は『召喚石』を持っていないことだ。不覚……!

 レキ、シロビで『召喚石』使いきったままだったのだ。召喚獣はしばらく迎えることはないだろうと、油断しきってました。反省!


『やはり僕ら、ここでお役に立てることなくないです!?』

『にゃん~! あきらめたらダメにゃ、そこで試合終了にゃん! きっと何かあるはずにゃんよ!!』


 ふたり目配せしあってじたばたしていると、ゴーレムお婆さんが言った。


「さっき、マレビトは異界に干渉する力があると言ったね」

「はい、言いましたけど」

「その力で、あたしたちを解放することは出来ないだろうか」


 ピコと目の前にウィンドウが現れる。


『ゴーレム・ウィッチにDPを注ぐことが出来ます 0 /50』


 DPかあ。

 それなら猫でもお役に立てるけども。


『思ったより全然必要DPが低くて逆に気になるにゃん』

『どういうタイプのDPでしょうね?』

『解放するとどうなるにゃ?』

『学園都市に復讐にいくとかだと困っちゃいますよね!』

『それは困るどころの話じゃないにゃんね!』


 わからないことは聞いてみるしかあるまい。


「解放されたら何がしたいにゃ?」

「主人を探したいねえ」

「ご主人さんはルイネアです?」

「いや、あたしの主人は人族だったよ」

「……残念ながら、ご存命じゃない可能性が非常に高いですねえ……」


 学園都市が芸術都市と呼ばれていたのは、百年以上前だという話だ。


「そうかい……」


 再び、長いため息のように蒸気が吹き出す。


『ランさん、壁の中にGPSがありますけれど大丈夫ですの?』

『にゃにゃ、ティアラさんにゃ!?』

『そうですわ。さっきまで消えてたGPSが突然壁の中に現れたものですから、話しかけてみましたの』

『こっちには来られそうにゃ?』

『ううん、どうかしら。近くの壁まで行ってみますわね』

『『鍛冶』が必要っぽくて困ってたにゃん~、よかったら来てくれると嬉しいにゃ!』

『こちらは逆に『裁縫』『錬金術』が必要なものばかりで、わたくしにこなせそうな依頼がなくて困り果ててましたの。お役に立てるならぜひ向かいますわ!』


 祝・個別チャット開通!

 たぶんさっきの会話でイベントが一段落したのだろう。それで遮断されていたチャットが戻ってきたらしい。PTも無事復活したようだ。

 ショーユラさんも個別チャットがきたのか、頬に手を当てて頭上を見上げている。どういうポーズなの。


『僕たち、壁の中にいるようですね……?』

『知らなかったにゃんね』

『今、タスクさんから通信きたんですけど、『召喚石』なら持ってるそうで、こっち来てくれるみたいです』

『こっちはティアラさんが『鍛冶』イベントがあるならってきてくれるにゃん~』

『いいですね~! あとは辿り着けるかどうかですね!』

『にゃんね~。ティアラさんいわく、お外には『裁縫』や『錬金術』のイベントも転がっていたみたいにゃん』

『聞きました、『裁縫』イベントあるけど来れないかというお誘いだったので。んもー、出たら回らないといけませんね!?』

『猫もにゃん』


 まだ見ぬ『錬金術』イベントが気になる!


 いや、その前にゴーレムお婆さんなんだけどね。さっきのDP案内を見るならば、ゴーレム・ウィッチさん。

 猫としてはメタ的にオズかな? と思っていたけど、どうやら魔女の方だったらしい。


 魔女といえば、あの建物の下敷きになっていた足はなんだったんだろう? あとトンボドローンも気になる。

 『欠けた通行証』として集めてきたものたちは、城に入った時点で消えてしまったんだけども。


「にゃあ、猫たち、城に入る前に『通行証』を集めてきたにゃんよ。あれはいったい、なんだったにゃ?」

「『通行証』……あたしは詳しくないね。どんなものだい?」

「ウィッチボットから案山子を作ったり、スチールソルジャーからブリキの樵を作ったりしたにゃ。あとライオンのぬいぐるみと」

「それは一緒に戦った、あたしたちの仲間の残骸だね」

「にゃん……」

「きっと集めて直そうとした子がいるんだね。あたしたちは、直す技術を持ってやしないのに……」

『ん~、この集めてる子っていうのがオズなんですかね?』

『そっちも重要人物の予感がするにゃんね~』


 まだまだクエストが埋まってそうな気配がするぞ。


『壁まで来ましたわ! ヒーラーのタスクさんとも合流いたしました。見たところ、特に仕掛けはなさそうですけども』

『にゃん~~?』


 ティアラさんが来たのは、北側の方角。猫たちからみても、壁には何もないように見える。

 猫はひとまず壁にピタリと触ってみた。


『転移扉が解除されました。転移しますか?』

『あっ。転移扉が出ましたわね。行ってみますので、ちょっと離れていてくださる?』

『了解にゃん~!』


 ちょっと離れると、すぐにまずティアラさんが転移してきた。それからタスクさんも転移してくる。


「来られましたわね!」

「うぃっす、合流~。て、デッカ!」


 ティアラさんとハイタッチしてる隙に、タスクさんはゴーレムの大きさにびっくりしている。


「いや……、さすがにこのでかさは予想外」

「男に二言はないでしょう!」

「召喚しても使いこなせる自信がありませんなあ!」

「修理でコンパクトになる可能性もありますし!」

「あるかなあ!?」


 ティアラさんはそっとゴーレムに近寄った。


「ゴーレムさん、わたくし金属を直す術は持っていますの。でも、直し方には詳しくありませんわ。どうしたらいいか、教えていただける?」

「炎と金属の音がする、懐かしい気配だ。ありがとう、お嬢さん。あたしを直してくれるかい……?」

「ええ、きっと」


 ティアラさんは周辺に散らばっている工具と炉を使って『鍛冶』が出来ることを確認出来たようで、ぐっと握り拳をつくった。


「やりますわよ!」


 頼もしいにゃん~!

評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございます。


ハッピー猫の日!(1日遅れ)

なんと猫も300話に到達しました(教えていただいて気づきました)

こんなにたくさん読んでくださって、いつもありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
3日かけて300話読みましたにゃん! とても面白かったです♪ 私もこのゲームで遊びたい…ねこも好きだしNPCとお話するの好きなのでやるならやっぱり風猫族かな これからも更新たのしみにしていますにゃん〜…
300話おめでとうございますにゃ
[良い点] 更新にゃーん 300話おめでとうですにゃん [一言] あくまでフラグ立てるだけで、ほかの人にスライドできてよかった むしろ他の人からは錬金術や裁縫の方がスライドされてる…… 猫はともか…
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