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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
6章 猫はいつでも風まかせ

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38.落とし穴の先

 ぐるぐるあてもなく動き回るかな、と思っていたのだが、ふいに床が抜けた。


「んにゃ!?」


 いや本当に突然スポンと。

 罠か!? 落とし穴!? 城の中で!?

 そんなことある!?


「にゃああああ――!?」


 びっくりする猫をよそに、落とし穴はまるで滑り台のようになっており、猫はルイごとツルツルと流れていく。いや、底がないタイプの落とし穴よりはマシだけど、暗く狭い中をすごいスピードで流されていくのもかなり怖いな!?

 結構な距離を滑らされたあと、ポイっと放り出された先は、思いの外やわらかな場所だった。ぼふんと体が埋まって跳ね返る。

 猫、ルイ、ロニ、シロビ……おっとレトがいない。あわてて探すと埋もれていたので掘り返す。

 掘り返していて気がついたけど、これはぬいぐるみの海だ。綿がはみ出たり、ちょっといびつだったりするぬいぐるみが、色とりどり山のように広がっている。

 天井を見上げると石造りで、城の中ではあるみたい。


 ゴミ捨て場、というにはやたらとファンシーな場所だ。なにしろ足元がぬいぐるみで埋まっているので、しばし呆然としてしまう。


「うわわわわ――――!?」


 おっと、新たな犠牲者が来たようだ。

 音の方を見ると、壁の上の方にスロープの先がいくつか出ている。なるほど、ああいうところから出てくるわけね。

 しばらく待っていると、スポンと射出されてきたのは蛍光グリーンの熊だった。知ってる熊ですね。


「んぶ!!」


 勢いよくぬいぐるみの海に突っ込んでいく。例の因習村ポーズになるかと思ったがそんなことはなく、すぐ復活した。


「ここは……!?」

「ぬいぐるみの墓へようこそにゃ」

「にゃん!?」


 蛍光グリーンの熊ことショーユラさんと目が合う。ショーユラさんは万歳をしたあと、ぎゅっと手を握った。


「あああ、よかった! 変な罠踏んだかと思いました!」

「変な罠は踏んだと思うにゃん」

「……やっぱり?」

「猫とショーユラさんだけなのか、まだ来るかにもよりけりにゃんね~」

「なんでしょうね、この人選」


 色とりどりのぬいぐるみを掻き分け、とりあえず合流。ときどきやたらでかいぬいぐるみがあったり、ちょっとゴシック系なぬいぐるみがあったり、人形の手足などもあったりする。

 やっぱり失敗作とかを放置してある場所、と取るべきだろうか。

 

「何はともあれ、まずは脱出といきましょう」

「出られるところを探すにゃん!」


 周囲を眺めていくと、ぬいぐるみの海はそれほど広くない部屋だとわかる。天井付近の壁から突き出したいくつかのスロープ、それから壁際には扉。


「扉があるにゃんね」

「半分以上埋もれますし、開かない気がしますけどね」

「うーん、スロープを登っていくにゃん?」

「結構なスピードで落ちましたから、現実的ではなさそうですねえ」


 たしかに。


「となるとどうしたものか……!?」


 考えようとした猫たちの前で、ぬいぐるみが渦を成していく。猫たちもその渦に巻き込まれる、と思いきやそういうことはない。周囲のぬいぐるみたちが吸い込まれるように光になっていき、やがて部屋いっぱいに広がるほど大きなぬいぐるみを形成する。


「ぬいぐるみたちの様子が……!?」

「ビッグぬいぐるみにゃん!?」


 ぬいぐるみの海が吸い込まれるように合体したぬいぐるみは、なんだか悪夢に出てきそうな見た目をしていた。ワオ、なかなかのホラー。


「あ、ああー……! 僕こういうの心が痛んじゃいます!」

「猫もあんまり好きじゃないにゃん~~」


 あちこちを適当に継ぎ接ぎに組み合わせたようなぬいぐるみは、何本もある両手を振り上げて不格好なファイティングポーズを取る。


「BOSSっぽいにゃん!?」

「わかりやすぅい!」


 猫じゃちょっと荷が重いぞ、と思ったけどさすがぬいぐるみ、よく燃えた。シロビの『ファイアストライク』とショーユラさんの魔法が合わさって、ぐんぐんHPが減っていく。

 巨大なぬいぐるみの攻撃は比較的大振りなパンチしかないとあって、こちらの消耗も少ない。いや当たると大きいので大変だったんだけど、ワンパターンなのでだんだん当たらなくなり。

 そうかからずに、巨大なぬいぐるみは縫い目が裂けていき、ポンポンと破裂しながら燃え尽きた。なかなかシュール。


「にゃあ、思ったより弱かったにゃん?」

「ですねえ。ありがたいことでしたが」


 倒し終わればぬいぐるみの海はきれいさっぱり消えた。壁の扉が開けられそうだ。


「順路というわけですか」

「ぽいにゃんね~」


 幸い扉に鍵はかかっておらず、軋みながらも開いた。先にはかなり狭い通路が続いている。


「隠し通路って感じにゃんね」

「その雰囲気ありますね。大人数が通ることは、想定してなさそうな」

「猫たちだけが罠にはまったのにも理由があったのかもしれないにゃ」

「うーん、僕と猫さんの共通点ですか……」


 警戒しつつ、猫を先頭に進んでいく。猫もショーユラさんも『罠感知』は持ってないけど、猫は『発見』があるのでこの隊列だ。あとショーユラさんは魔法師なので、防御が紙なんだよね。防御については人のことを言えないが、猫の方が回避が高いので。


「あっ!」

「にゃん?」

「『精霊傀儡せいれいくぐつ』じゃないですか!? 僕と猫さんの共通点!」

「にゃあ、ストルミさんとロニにゃんね。ストルミさん連れてきてたにゃ?」

「いえ、見せるとナマさんがうるさいので今日は連れてきてませんが」


 ナマナマさん…。

 しかし共通項が『精霊傀儡』のスキルだというなら、猫とショーユラさんの二人になるのは納得だ。


「てことは、この先には『精霊傀儡』の情報があるかもですね!」

「だといいにゃんね!」


 ロニはもう少ししたら『同化』して『昇華』させてあげたいと思っていたところだ。その前に新たな『精霊傀儡』についての情報が入るならば、ありがたい。


 狭い道の先を進んでいくと、扉に突き当たった。猫とショーユラさんは顔を見合わせる。うーん、蛍光グリーンの熊、顔は可愛い。匠の技。


「ここは僕が行きましょう…!」

「着ぐるみなのに!?」


 前へ出ようとするショーユラさんを思わず止めると、額を打つリアクション。

 その後ちょっと止まったあと、猫を見つめてぐっと手を握った。


「ここは僕が行きましょう…!」

「なんでやり直したにゃん!?」

「いや、着ぐるみってNPCには割と無視されるというか、あまり気にされないんですよ!」

「アルテザルールは通用しないにゃんよ!?」

「いやローカルルールじゃないです! 学園都市でもそうでしたもん!!」

「学園都市でも着ぐるみしてたにゃ!?」

「ときどき着たくて仕方なくなって……!」

「依存してるにゃ……!」

「にゃ、にゃん~!」


 熊は手を左右の頬に当てて首を振っている。着ぐるみ仕草が板につき過ぎているんだよなこの人…!


「いや、これはわりとガチな話なんですけど、学園都市って人族陣営なんですよね」

「にゃん?」

「自由都市や廃都と違って、ルイネアとは敵対関係に近いんです。その関係で、異種族嫌いが多いっていう裏設定がありまして」

「にゃあ……」


 そんな話が。

 そういえばこのゲームって陣営とかあったんでしたね。猫は陣営フリーだけど、所属陣営が決まっているとところどころで有利だったり不利だったりとある。

 都市関係でも、大まかに廃都はルイネア陣営、自由都市はフリー、学園都市は人族陣営と別れているのだった。


「まあ僕も、アルテザがホームなのでルイネア陣営なんですけど」

「猫は陣営フリーにゃんよ!?」

「それは悩みますね!?」


 敵対陣営より、陣営なしの異種族猫の方がまだマシだと思うんですけど!

 あーだこーだと相談した結果、このまま猫が先頭で扉に入ることになった。ショーユラさんは肩を落として落ち込んでいる。


「小さい猫ちゃんに守られる熊……、ああっ、僕のアイデンティティーが崩壊しそうです……!」

「熊のアイデンティティーを持ってたにゃん??」


 ショーユラさんのアイデンティティーはどうなってるんだ…?


 疑問に思いつつもとりあえずは横へ置いて、扉をノック。

 誰かいるかな?


「……誰だい?」


 嗄れた声が返ってきた。

 おお、人(推定)がいる!


「こんにちはにゃん。城にお邪魔してますにゃ。落とし穴に吸い込まれてここまで来ちゃったにゃん」

「それは災難だったねえ……、どうぞ、入っておいで」


 許しが出た。

 ショーユラさんと顔を見合わせて、扉に手を掛ける。ぐっと押すと、暗い通路に橙の明かりが滲み出た。

 扉が開くと、まず目に入ったのは大きなゴーレムだった。壁に凭れて座ったゴーレムと、燃える小さな炉。それから床には何かの陣が描かれ、ところ狭しと工具や部品が散らばっている。


「散らかっていてすまないね」


 そう声はするが、その主はいない。猫たちがきょろきょろと辺りを見回すと、ギギッとゴーレムの頭が動いた。


「ああ、外からきた人にはわからないか。あたしはこのポンコツゴーレムさ」

「にゃあ……」

「ゴーレムの方……ですか」


 ピコピコとゴーレムの目が光る。


「ああ、もうすぐ動けなくなると思っていたが、ちょうどいいところに来てくれた。どうかあたしを少し、直してくれないか」

「にゃあ、猫、金属加工の技術は残念ながら持ってないにゃんよ」

「僕も専門は布と革で、金属は扱えないですねえ……」


 二人とも『鍛冶』は持っていない、と断ると、ゴーレムは深いため息のようにプシューっと蒸気を吐いた。


「そうかい、残念だ……。それなら、これがあたしの運命だったんだろうね。……最期に少しだけ、話を聞いてはくれないかね」

「お安いご用にゃん~」

「それでよければ、お力になれそうです」

『にゃん~、硝子連合に助けを求めることは出来ないにゃ?』

『アライアンスチャットが封じられちゃってますからねえ。個別チャットなら使えるっぽいので、ちょっと誰かしらアタックしてみます』

『よろしくにゃん~!』


 アライアンスチャットは使えないけど、ショーユラさん宛の個別チャットは出来たので、誰かしら通じるといいな。GPS送信できたら近くまで来れないかなあ。

 『精霊傀儡』がないとここまで来られないのだとしたら、ゴーレムの救助はなかなか難易度が高い。

 猫は硝子連合の『鍛冶』LVまでは把握出来ていないので、連絡はショーユラさんにお任せだ。

先週に引き続き遅くなりました。

評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございますにゃーん。 同じお兄さんでもフーテンさんとショーユラさんでは趣が違いつつ、返事に「にゃ、にゃん~!」がさっと出るところ好きです。 精霊傀儡はあるけどゴーレム関係スキルのない二人…
もうすぐ猫の日ですねー そして次で300話、楽しい話を続けて頂きありがとうございます。 喋るゴーレム(魔導傀儡)自体、新発見になりそうですね。 廃墟はともかく学園都市のスチームパンク要素がふえて、そ…
取得の前提スキルじゃないなら今回みたく保持者不在でイベントクリア出来るのか判らんな
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