表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
6章 猫はいつでも風まかせ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

280/285

21.金持ち猫の近況

 ビオパールでの冒険を終えてしばらく、猫は巡礼の旅を再開した。

 といっても特に目新しいことはなくて、本当にあちこち行ってはお祈りしただけ~なんだけどね。


 あ、でも陶芸の里イマリでは、ちょっと面白い発見があった。

 というのも、ビオパールで硝子連合が言っていた硝子に関する発見っていうのが、イマリでの出来事だったのだ。

 七宝に硝子の要素をもたせることに成功したとかで、なんと、『錬金術』を使わなくても『ガラス工』や『陶芸』だけで属性付き硝子が作れるようになった。

 ――猫、『属性宝硝子(ビジュー)』屋、廃業の危機!!


 幸いにして(?)、今のところ作れる属性は限られているし、『錬金術』で入るよりも低い属性値にはなるみたいだ。でも『錬金術』なしで属性付き硝子が作れるようになったのは大きな進歩である。これから複数属性とか、強化属性とかもきっとあるんだろうしね。


『分業した方が性能のいいものが出来る仕様ですもの、これからもきっと『錬金術』とはシナジーがあると感じていますわ!』

『にゃん~!』


 ティアラさんはそう言ってくれたけど、素材頼りっぱなしの猫としてはたいへんドキドキした案件だった。

 ううん、硝子だけじゃなくて素材になるアイテムを開拓していかないといけないな。


 そんなわけで陶芸の里イマリでは、合流した硝子連合とものづくりでワチャワチャしていたので、観光どころじゃなかった。まあそういうこともあるよね。



 イマリ以外にビオパールのあと寄ったのは、魔道具マーケットと隠者の村。


 魔道具マーケットは、リボンの件があったので何かあるんじゃないかと期待していたのだけど、特に何もなくて拍子抜け。猫にはまだまだ絆が足りないってことみたい。にゃん~!

 そりゃ、猫レベルでなんとかなるならもうちょっと情報出てるはずだ。思い上がってはいけない。


 隠者の村は『精霊使い』の本拠地とあって、以前と比べてかなりの賑わいになっていた。『精霊使い』は誰が持っていても邪魔にならないジョブだし、メインストーリーに関わりがありそうでもあって、すっかり人気ジョブなのだ。

 村に別荘を建てた猛者も多いみたいで、ひっそりとした小さな村が懐かしいくらい。NPCが流れてきたわけではないから、発展は特にしてないんだけどね。ギルドも相変わらずこじんまりとしている。

 ハッ、別荘っていうか隠者の村に畑を買ったら富豪ワープ出来るんじゃないの!? て猫もちょっと思ったのだが、さすがに『精霊使い』のためだけに畑を買うのはもったいなさすぎるなと自重した。もし畑を買うなら、ポーツで買いたいし。


 さておき、隠者の村ではちょっと興味深い話が聞けた。

 お久しぶりのナナちゃん先生は『精霊使い』が盛況でお元気。生き生きとして、楽しそうに新しい人形のお世話をしていた。


「ランもすっかり精霊と親しくなりましたね。新しい器も、それぞれ合っているようで素晴らしいです」

「にゃあ、手探りだけどいろいろ探してみてるにゃん。次は人形や装備での『昇華』を目指しているところにゃんよ~」

「それはいいことです。ただ、入る対象が整っていればいるほど、精霊は形を覚えていきますから、方向性の定まらない無暗な『昇華』には気を付けましょうね」

「方向性にゃ?」

「はい。武器や防具に入り『昇華』を続けた精霊は装備精霊となり、最終的には物体と融合し、精霊器となります」

「強い装備になるにゃんね」

「あら、道具になることもありますよ。精霊器はとても強力ですが、成るためには同じ形状のアイテムを『昇華』し続けなければなりません」


 ふむふむ、つまり剣なら剣で、杖なら杖で『昇華』し続けないと、精霊器にはたどり着けないってことか。


「対して、人形に入り『昇華』し続けた場合、最終的に目指すのは神格を得ることになります」

「にゃあ、その話を詳しく聞いてみたかったにゃん!」


 つまり、ルイネアの代わりに精霊を捧げる方法だ。


「でも精霊が神格を得るのは、シャラさまを間近に見たランならばもうすでにご存じでしょう?」

「にゃん~、やっぱりシャラさまくらいに育った精霊じゃないと、ああいうふうに異界の扉を封じることは出来ないにゃ?」

「異界の扉の深さにもよるでしょう。シャラさまが封じた異界は、元は堕ち神が封じていた異界でしたから、広かったと思います」

「狭かったり、生まれたての異界の扉であれば、小さな精霊でも封じられるにゃ?」

「おそらくは。しかしあまりにも弱い精霊は、異界の扉にただ吸い込まれていってしまうと聞きます」

「にゃん~、たとえばロニは犬のぬいぐるみだけど、人間型じゃなくても神格は得られるにゃん?」

「ええ、それが人に使われるものではなく、人の傍らにあるものならば」


 おお、ロニもワンコの神になれる可能性。これはまたショーユラさんたちに犬型?のぬいぐるみをお願いしなければ。

 実はロニ、同化率が70%に近づいてきているんだよね。そろそろ『固定』して、『昇華』に備えたいと思っていたのだ。

 作ってもらうのだから、次こそちゃんとお金を払わなければならない。今なら札束をスイング出来るぜ。


 うーーん、しかし猫はロニに愛着がある。きっとぬいぐるみや人形を選んだ人は、みんな愛着がわくと思うんだよ。それを手離す選択肢があるというのは、なかなか際どいところだよね。神になったらその場を離れることは出来ないんだろうし。

 まだまだ先の話だろうけど、合致する案件が来たら猫はロニを手離せるんだろうか。難しい選択な気がするなあ。


 ……と、いう話を同じく人形に入った精霊をもつショーユラさんにぬいぐるみの注文ついでにしてみたところ、こんな返答があった。


『うちのストルミさんは、元がルイネアというだけあって意識というか意志がはっきりしてる精霊なもんで、僕が嫌だって言ってもうなずくまで梃子でも動かないでしょうね!』

『にゃ、なるほど、精霊の意志があるにゃんね~』

『ストルミさんはどうも異界の扉を閉ざすのは使命と考えているようですから、ちょうどいい扉があったら飛び込んじゃいそうでいつもヒヤヒヤしてますよ』

『個性にゃんねえ』


 今はロニもプルプルするだけだけど、そのうち本当の犬のように動き回るかもしれない。そうなったら、きっと他の従魔たちと同じように意志を見せるのだろう。

 それで異界の扉の前から動かない!てなったら、それは、精霊が望んでるってことで許可しちゃうかもしれないなあ。ちょっと悔しいけども、納得だ。


 そうそう、ナナちゃんにはついでにこんなことも聞いた。


「ルイネアは精霊になると聞いたことがあるけど、その精霊はどのくらいの強さにゃん?」

「ランは古いことわりをよくご存じですね。ルイネアは異界の扉へ身を捧げるとき、精霊になります。しかしその強さは、精霊としては未熟そのものとききます」

「にゃあ、ヨワヨワにゃんね」

「はい。二十四季はたしきを巡った月明かりの精霊と同等くらい、と伺ったことがあります」

「にゃん!?」


 そ、それってロニと同じくらいってこと!?

 にゃんと。

 てことは、ストルミさんてめっちゃ強そうと思っていたけど、精霊としては全然まっさらだったのか。

 だからイベントとはいえ、人形の素材やレシピもそう難しくないもので間に合ったのかも。


 逆にいうと、ルイネアの生け贄って本当に最終手段で、実はあんまり効果がないんじゃないかなあ…?

 はてさて。


 そんなわけでいろいろ話を聞いて、猫もようやく『精霊使い』がランクアップした。

 ランク2の『精霊使い』から、2ランク上がってランク4の『いろいろ精霊使い』へ。

 これはどうもいろいろな種類の装備に精霊を入れていたり、いろいろな属性の精霊を持っているときに出る称号みたいで、大抵の人がランク4はこの称号になっているらしい。

 実績解除スキルは『精霊最大数アップ・小』。所持できる精霊の最大数が3増える。『鞄拡張・小』と同じく、取りきりのスキルで成長はしない。小があるので大があるのだろう。

 猫は今のところ、精霊もっとほしい~てこともないので、このスキルはパスかな。まあSPもうないんですけどね!


 そして隠者の村で忘れてはならないのが猫の師匠こと、ジョンさん。そう、猫ったらジョンさんと師弟関係なのだ……ついつい忘れがち。


「待ちくたびれたぞ、猫よ」

「ごめんにゃん」


 こういうときはさくっと謝ってしまうに限る。

 ジョンさんは糸のような目を細めて猫を見る。やめてこわい。

 相変わらず限りなく黄色に近い黄緑カラー……。いや、逆にジョンさんが青くなったらヤンデレ化してそうで嫌かもしれない。そう思うまでになってしまった。

 慣れって怖い。


「しかも新たなソウも覚えてないではないか」

「見透かされてるにゃん!?」

「わからいでか。新たな芽が生えてないではないか」

「にゃん~~!」


 『無属性魔法』を集めることも、『生活魔法』を集めることもすっかり忘れていたな……。

 『練糸』に『魔紡』も覚えるだけ覚えて使っていない。魔法が増えてくるとそういうことあるよね~、てそんな話をしたらもっと怒られそうなので黙っておく。


「わかる……、わかるぞ、猫」

「なんか急に流れが変わったにゃん?」

「猫にも守るべきものが出来たのだな」

「にゃ、にゃん??」


 どゆこと???


「強さを求めるようになったのであろう?」

「にゃん……」


 そ、そう言われるとそうなのかな??

 自分ではそんな気なかったけど、確かに最近は適正LVより上のところへいったりして、ちょっと強さを求めていたのかもしれない。

 なんかそう指摘されるとちょっとドキッとしてしまったぞ。


「なに、強さを求めるのは悪いことではない。人として、いや猫も含めて生物として、当然のことよ」

「主語がドでかいにゃん?」

「しかし十八道遁術ジヤドウトンジュツはいつでもそなたと共にある。ゆめゆめ忘れるでないぞ」

「にゃん……」


 な、なんだかすごくものわかりのいい師匠みたいじゃんジョンさん……。

 いや実際そうなんだけどうっすら黄色みが増したような気がして安心できないぜ。き、気のせいだよね?


 十八道遁術、つまり生活魔法を探すのもまた再開しないとな~。といっても、どこにあるのかなんてさっぱりわからないんだけども。どこか頭の片隅には置いて、忘れないようにしないと。

 やることが、やることが多くていろいろなことを忘れちゃう! やることリスト作らなきゃ!



 巡礼の旅についてはそんな感じ。

 あっさり? いやいや、話せばだらだらと長くなるくらいには、いろいろあったんだけども。それよりも猫にとっては、巡礼の旅を終えた方が重要だったのだ。

 そう、つまり……、神官になったのである!

 いやあ、長い道のりでしたね。



更新お待たせしました。

生活環境の変化がありまして、ちょっと書ける時間が減ってしまいました。今までと同じような定期更新は厳しそうです。

のんびりお付き合いくだされば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新されてない? ならば何周でも読み直すぜ!精神でやってるので 無理せず、ゆっくりまったり猫ペース♪で大丈夫にゃーん 読者は待てる子ですにゃん!
更新うれしいにゃーん! 精霊使いの道もまだまだ深そうで先が楽しみです。そしてついに神官!どんなスキルが出たのか、どんな神官猫になるのか、続きが待ちきれないにゃん。といいつつ、待てる読者ですので読み返し…
ネコ同様、マイペースに更新して行きましょ~ ご無理はなさらず。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ