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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
1章 初心者猫はお金が欲しい
28/281

27.初心者装備の圧縮実験・前

今回は前後編なので途中で切れます。

 ポーションの結果を共有したら、次は初心者装備の実験。

 検証用の素材となる初心者シャツとズボンは、フーテンさんが集めてきてくれたものを使用する。

 ただ15属性もあるとは思ってなかったのでちょっと足りないらしい。私が集めてきた分も使うことになった。


「ごめんねえ、見込みが甘かったわ~」

「猫のが集めやすいからかまわないにゃ!」


 では装備の検証開始だ。



 まず回復属性は『ふわふわ毛糸』。


「糸素材だね~。これでセーター1個分かな。これも作れるアイテムの幅が広いねえ」


 木綿の布はもちろんだが、土属性で出た『土糸玉』も作れるアイテムが多い素材らしい。

 糸系は最初は『編み物』で、中級になったら『機織り』で布にして使えるそうだ。

 素材加工用のスキルがたくさんあって、裁縫は大変そうだなあ…。



 聖属性は『乙女の前髪』。


「わっは、懐かしいやつ出たね~」

「ウィッグ装備なー。『蜘蛛の巣ヴェール』とセットで流行ったなこれ。たしかどっかのダンジョンにいる幽霊から髪をむしるんじゃなかったっけ?」

「人聞きの悪い! 幽霊の抜け毛を束ねて作るのよ~NPCのヅラ職人に『金の毛髪』100本か『銀の毛髪』100本を渡して依頼だったはず」

「100本にしてはフサフサ過ぎるにゃん?」

「要求本数が多すぎてもめんどくさいからね~。あのダンジョンに幽霊狩りに行く人が今はもはやいないのでは?」

「立地が悪い、暗い、アンデットしか出ない、レア特になしのダンジョンだもんねえ」

「金・銀はランダムなんかな?」

「ウィッグ自体は何種類か指定できたはずだから、たぶん完全ランダムか固定のどっちかじゃない?」


 出てきたのは金の前髪でゆるふわ短めショートウェーブだったが、パッツンとか真中分けセンターパーツ、七三などいろいろあるらしい。

 金でサイドにドリルがあるやつと、銀のパッツン姫カットのやつが人気を競っていたとかなんとか。



 空間属性は『ポーションポケット』。


「お、真っ当な装備」

「これはあるとちょっと便利なやつやな。序盤はかなり重宝するはず」

「今は家具の棚倉庫あるし、初っぱなから増築拡張出来るからそこまで恩恵ないかも?」

「どうだろ、やっぱり持てる量多い方が楽じゃない?」


 『ポーションポケット』は見た目には影響しない透明な装備で、見えないポケットを増設する。

 性能としては、回復効果のあるアイテムのみ3種類まで入れられる、重量制限1000のポケットだ。

 回復アイテム以外は入らないが、ポーション等回復アイテムは重量がやたら重い。そのため序盤はポーションの所持量限界に常に悩まされたらしい。

 初心者ポーションは重量1だけど、下級ポーションは重量20あるから、初心者ポーションがない頃はかなり持物問題が深刻だったそうな。少ないと死にかけるし、かといって重量限界ギリギリまで積んでると、素材が拾えないしで、悩みの種だったとか。


 そんなわけで人によってはかなり長い間お世話になるアイテムとのこと。ちなみに装備で、アクセサリ枠をひとつ消費する。運搬持ちなら+300の恩恵付。

 猫こういうの好きにゃん。持ちものは持てれば持てるほどいい。



 氷属性は『ゆきんこケープ』。


「これはクリスマスにならないと手に入らない季節限定アイテムだねえ」


 雪の結晶模様が編み込まれた青い毛糸のケープに、裏地は白い毛皮、ふちにもファーがあしらわれていて、前には白いポンポン付の紐が結ばれている。


「クリスマスイベント中に現れる謎のお婆さんのお願いを叶えるともらえるやつだ」

「あったかそうにゃん~」

「上着装備の上から着れる着ぐるみ装備枠なのに防寒(弱)ついてて、冬のフィールドとダンジョンには重宝するのよ」

「年に1個しかもらえないし、毎年模様違いみたいだから、おしゃれとかコレクション的に手放さない人が多くて出回らないんだ。これは去年のだね」


 なるほど、模様違いに色違いだとオシャレ的には別アイテムだから手放しづらいな。


「ランダムかしらね?」

「どうだろ? 前の年のが出るのかも?」



 雷属性は『海月のかさ』。


「オッフ。懐かしのネタ装備きた」


 透明で大きな球体のヘルメット?というか、まあクラゲのかさのようなもの。それに触手というにはカラフルでコミカルな飾りがいろいろぶら下がっている。被ると上半身をまるっと覆ってしまうが、これでも頭装備らしい。


「いや、たしかにネタ装備やけど、あんまバカに出来んで。腹立つことに性能はすこぶるいい。これのせいで戦士職はネタを強いられた時期があったんや…」

「あったあった。臨時に来る前衛が全員クラゲなのな。一時期、前衛そのものがクラゲと呼ばれていたくらいで」

「みんなクラゲすぎてうちのクラゲがどれかわからなくなる現象があったよね」

「そんなに!?」


 これは被ってる方はちゃんと外が見えるけど、見てる分にはクラゲの中は見えないので、咄嗟に誰かわからなくなるらしい。よく見ると見えるんだけど、すりガラス越しのような感じなんだって。


 お察しの通りのネタ装備だが、物理防御が初級装備としては格段に高い。見た目を捨てて盾になるクラゲが増えたのも納得である。

 クラゲが鉄板だった時代もあったようだが、今ではただのネタ装備であり、見た目も相まってほとんど着られていないらしい。



 毒属性は『ウィザード・ドレス』、そして木属性は『ドルイド・ローブ』。


 このふたつは正統派オシャレ装備で、いまでも街着として愛用している人が多いそうだ。


「昔の装備はシンプルなのよ。今のはどれも結構主張が強いから、あれこれ組み合わせるなら昔の装備の方が使いやすいのよね」


 リーさんが言う通り、二つともシンプルなワードローブだ。


 『ウィザード・ドレス』はハイネックに長袖、踝丈ロングスカートのドレスで袖も癖がない。上に何を着るかでかなり印象が変わりそうだ。

 カーディガンやストールはもちろん、エプロンならクラシカルメイド風になりそうだし、上にオーバードレスを着るのだっていいそうな。 たしかにこれっぽいの着てる人、露店で見たことあるかも??


 『ドルイド・ローブ』はロングカーディガンっぽい上着装備で、植物紋様の刺繍が袖口と裾に少しある以外は何も特徴がない。これはブラウングレーだが、他にもさまざまなカラーがあるらしく、秋冬の人気装備らしい。

 これも着てる人、見たことある。


「俺も持ってるよ~、街着に登録してある」

「というかこれ、初級としてはなかなかいい装備じゃないかな? 今まで完全にオシャレ着枠にいれてたけど、性能もそこそこよかったんだね」


 『ウィザード・ドレス』は『魔法師』向き、『ドルイド・ローブ』は回復職や生産者向きの性能らしい。ちなみに共に男女兼用。ドレスといっても男性が着るとカソック風になるので、女装にはならないそうな。


 ふたつとも作る材料を集めるにはかなり手間がかかり、自作を目指しても出来上がる頃には中級が見え、装備としては卒業してしまう、という感じだったので、完全にオシャレ装備枠だったらしい。



 そして無属性は『魔法のハギレ』。


「んんん、『魔法のハギレ』か~」

「いいアイテムにゃん?」

「学園都市にあるダンジョン、七不思議ラビリンスのプチレアなのよねえ。作れるものは限られてるんだけど、そこそこ高値で取引されてるわね」

「七不思議ラビリンス自体は浅い層は敵もほとんど出ないし弱いし、金策にマラソンしてる初心者も多いっていうからアイテム的にはおかしくないねえ。『魔法のハギレ』から出来るアイテムも初級装備が多いし」

「わかった、オシャレ装備の材料にゃん!」

「その通り~! わりと確率が渋い上に必要数が多いから、肝心の装備対象者である初心者が金策で売り払ってて、装備を手に入れるのがおしゃれしたい上級っていうまあいつも通りの歪な構造」

「新装備とは得てしてそういうものさ…」


 『魔法のハギレ』は裁縫用アイテムで、さまざまな用途があるため人気で需要過多のアイテムらしい。

 敵を倒してのドロップじゃなく、拾えるアイテムだというのだからそりゃ初心者はマラソンして売るだろう。私でもそうする。


「アイテムが地面に落ちてるにゃん?」

「七不思議ラビリンスは、光る繭があちこちに落ちてるのよ。その繭を採取するとなぜか中にアイテムが入ってる仕様なの。宝箱の亜種かな」


 なるほど?

 レア度の低い宝箱がたくさん落ちてるダンジョンか。めちゃくちゃ楽しそう。

 設定としては、このダンジョンは他のダンジョンのようにふたつの界が重なって出来ているのではなく、多重に界が重なってるせいで界の歪みが山ほどあるらしい。その歪みに魔力がたまって、繭のようなものを生み出す…という感じなのだとか。


「繭の位置は決まってなくて、急にぼんやり光って現れるから魔物のリポップに近いな。最初に繭を開けた人から5分以内はアイテムが取れるってんで、光目掛けてみんな走ってるから、ほんまにマラソンやであれ」


 それはそれで大変そうだなあ。



 そんなわけで初心者の布装備シリーズは一通り終了だ。


 しかし闇属性の『影走り』シリーズがガチャで出ると言ったら、『ウィザード』と『ドルイド』も一応シリーズ装備なので、もう一度試してみることになった。


 結果は『ウィザード・ハット』と『ドルイド・チュニック』。


「魔女帽子! そういえばあったねえこんなのも」


 『ウィザード・ハット』はつばのあるとんがり帽子で斜めに折れている、いわゆる魔女っこの帽子で想像されるもので間違いない。


「やっぱりどっちも標準色だねえ」

「固定かしらね?」


 『ウィザード』も『ドルイド』シリーズも、ふたつとも最初は1色、前者は黒、後者は茶系の固定カラーだったのだが、要望が多かったことから後にカラーバリエーションが増えたそうだ。

 しかし圧縮で出るのはたぶん標準の固定カラーなのだろう。オシャレしたいなら自力で作りなさいという神の声を感じる。『裁縫師』の上位職『服飾師』なら色変更も出来るらしいけど。


 ちなみに『ウィザード・ハット』は、昔『召喚師』に人気があったらしい。

 というのもMP+200という頭装備にしては当時破格の効果があったからだ。魔法師向け頭装備は元々MP増強装備が多いのだけど、これは初級装備としては飛び抜けていたそう。


 一時期は『召喚師』の代名詞といえる装備だったが、装備自体が特徴的過ぎること、また後衛職が『召喚師』をすることが難しくなってきたことを受けて、一気に廃れていったそうな。


「ケチがついちゃった感じだねえ」


 魔女帽子=使えない後衛召喚師、みたいになっちゃったわけかー。それは寂しい廃れ方だ。

 その後はセット装備で性能を上回れたりするものが出てきたので魔女帽子をスルーしてそちらへ行ったりして、忘れ去られたとか。



 『ドルイド・チュニック』は襟と裾に刺繍がある長袖膝丈のチュニック。色は生成り色で、かなりシンプル。


「これ、最近誰か着てるの見たことあるわ。ドルイドやったんやな…すっかり忘れてた」

「俺も~。ていうかドルイド装備の全貌が思い出せない」

「足はサンダルだったような?」

「あー! そうだ、思い出した、そんで頭が鹿の角付きの花冠で、ズボンはないんだ! シャーマン装備って言われてたんだった」


 これで頭が角付花冠で、ノーパン、足元はサンダル? たしかにそれは微妙なシャーマンだな。

 セットを揃えて着ることが必ずしもオシャレじゃないと教えてくれるシリーズなのかもしれない…。


 ガチャになってる装備は革装備は同シリーズが出ることは『影走り』シリーズでわかっているので『ウィザード』や『ドルイド』の革装備や武器を聞いてみると、前者はブーツと杖、後者はサンダルで武器はナイフとのこと。


 なぜドルイドの武器がナイフ?? そこは杖じゃないの?

 まあいいか、きっと儀式用とかなんだろう。


 ナイフは買った分が80本ある。

 フーテンさんが集められた分が10個(ナイフは予備として手放さない人も多いのでこの数だったらしい)だったので、9属性は検証できる。


 毒の『ウィザード』シリーズ(ちなみにこれがなぜ毒で出るかというと主に使用する素材が毒系魔物の素材らしい)、それから木属性の『ドルイド』シリーズ、闇属性の『影走り』シリーズは決定として、あと5属性どれにするかは決めてもらうことにした。


「火属性で素材になるかの確認、それから無属性も知りたいし、ラーニング手袋が出た時属性も気になるし、他のシリーズじゃないアイテムが出た属性の武器も知りたい…。うーん、火と無と時、あと空間、聖属性でいいかな?」


では、いざ実験!

なお『乙女の前髪』の幽霊がいるダンジョンは当時、羅生門と呼ばれていた。



昨日はバタついていて後書きの編集が間に合いませんでした。

リアルが立て込んでおり暫くはあれこれ手が回らないかもしれませんが、予約投稿は仕込んであるので安心です。文明~~

評価、ブクマ、イイネ、いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 羅生門ww じゃあ幽霊は若い女性か老婆かどちらかかなw その幽霊を倒すプレイヤーは下人枠ですかね
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