表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
6章 猫はいつでも風まかせ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

269/286

10.悪魔の木の実

「最近になって、種塚のまわりが枯れ果てていることに気がついたのです。最初は、羊の好きな草が生えていたのだろうと思っていたのですが」


 点々と牧草の枯れ果てる地点が増えており、なにか原因があるのかも…と思っているところだったのだとか。


 いやいや、ちょっと悠長じゃないの里長さん!?


「にゃあ、バロメッツは増えるにゃ。もしかしたら、さっきの1匹だけじゃなくてもっといるのかもしれないにゃん。本体はその種塚にあるだろうから、まずはそこをどうにかしないとにゃん~!」

「はっ、はい、直ちに!」


 早速種塚までいってみると、たしかに牧草の枯れた大地があった。ぽっかりと円形に緑が消え、土が見えている。

 でも中央に少しだけ背の高い草が生えていて、なんだか怪しい。

 わけいってみると、案の定、蹄が生えていた。


「にゃあん~、やっぱりにゃ」

「これが悪魔の羊の芽ですか……!」


 里長はおののいている。


 植物系モンスターとの戦闘といえば、お約束は火だ。しかし牧場ということもあるし、気軽に点火というわけにもいかない。

 これだけビッグメリーがいて食べてないところを見ると、バロメッツってたぶん毒があるんだろうし。

 さてどうすべきか。


 うーん、バロメッツは植物型モンスター。

 ということは、餅は餅屋ということで猫も対抗し、バロメッツのバロンを呼んでみる。一旦マイルームへ戻って、倉庫からバロンを回収。庭においてあげたいところだが、庭を丸剥げにするから倉庫に置かざるを得ない。まあ当のバロンは全然気にしてないようなのでありがたいんだけども。

 さて、頼んだぞバロン!


 ンメエ~と鳴いたかと思ったら、バクンといった。蹄を食べた!

 音符出てる! まさかの共食いが好物判定か!?


 ムシャリムシャリとあっという間に地上部を食べて、穴を掘っている。あ、本体がまだ中にあるのか。えっ、ちょっとそれはホラーだな?

 シャクシャクバリバリと音を立ててバロンが食べていく。

 いやありがたいけど、ありがたいけども里長さんが完全に腰が引けてしまっている。うん、なんか怖いよね。音がね。


 ンメエ~とバロンが鳴く。なんだろ、汗マークが出ているので助けを呼んでいるっぽいが。

 もしかして穴を掘ってほしいのかな? まだ地下にある?

地下茎で増えるのかバロメッツ…?


 スコップは農業用のものしかないが、早速掘るのを手伝ってみる。

 おお…、太い根にびっしりと細かい根がついていて、引っこ抜くのはかなり難しそうな。

 そういえばバロメッツって、綿――コットンが元になってるって言われているんだっけ。繊維のとれる草があるって話が伝言ゲームして、ウールのとれる草として描かれたモンスターだ。

 つまりたぶんドロップは繊維系アイテム。ペチカちゃんや裁縫師互助会へのお土産によいかもだし、ちょっと手に入れておきたい。狸の皮算用。


 ちょっと掘ったら、里長さんにも手伝ってもらって引っこ抜く。猫ひとりじゃとても無理でしたね。

 抜いた根っこはバロンが美味しくいただきました。

 お、経験値入った。

 ドロップは『悪魔の繊維』が3個取れた。ほうほう、これがバロメッツの繊維かな?


「お、おお、ありがとうございます!」

「にゃあ、残りはビッグメリーと一緒にいるバロメッツにゃんね」

「それがありましたね……」


 厩舎まで戻ってみたけど、やはりこちらはビッグメリーに守られていて手が出せない。

 ミルカさんに連れられたフルクがやってきて、けたたましく吠えたてる。


「どうしたのですか!?」

「にゃん~、バロメッツが出たにゃん」

「バロメッツ……、悪魔の羊ですか!? も、もしかしてフルクが反応していたのは」

「そのせいだと思うにゃん~」

「なんてこと! 里長、このままでは」

「うむ、仕方ない、ビッグメリーごと倒すしかあるまい! よろしくお願いします!」


 清々しいまでの他力本願!

 ええーー!?

 この重量級の、岩をも砕くタックルしてくる羊たちは猫には荷が重いんだけど!?


「にゃ、にゃん…!」


 あっああー、LVはたぶん大丈夫なんだけど、ビッグメリーの突進をラージは受け止められるだろうか。ちょっとドキドキ。

 メンバーはルイ、ラージ、ルビー、スーニャ、バロン。レト、シロビ。それからロニ。

 牧場へ離されたビッグメリーたちを追って、戦闘開始だ!


 まずはルビーの『地団駄』、猫の従魔法での支援、レトが『カウント』で『ヒール』の用意を始める。


 ビッグメリーが突進を構えるその前に、ラージがニョンニョンと飛び出していく。さ、サイズ感よ…!

 ラージの被ダメモーションは飛び散るので心臓に悪い。無事! すぐに猫が『ヒール(従)』、レトの『ヒール』が重なる。ダメージは回復しきれない。これはちょっとまずいかも、と思ったところで、スーニャの『ダークミスト』がビッグメリーの視界を覆う。


「ナイスにゃん~!」


 動物系にはデバフがよくきく。

 スーニャは素早さは遅くないんだけど、起動が遅いというか、行動順が遅くなりがちだ。まあ猫が『指揮』とか持ってないから仕方ないんだけど。お猫さまなので、働いてくれるだけ御の字である。


 シロビがバロメッツを狙って『ファイアストライク』を放つが、これはビッグメリーに吸い込まれてしまった。たぶんバロメッツが『隠れる』を持ってるか、ビッグメリーが『かばう』を持っているんだろう。

 にゃん~、ビッグメリーを倒さないことには、バロメッツには辿り着けないっぽい。


 レト乗せ絨毯のルビーがビッグメリーの上に『岩石』を落とす。意外といいダメージ。


 ルイとバロンは草を食べている。ま、マイペースだな…!


 ビッグメリーの突進が『ダークミスト』や『ファイアーウォール』のおかげでかわせるようになるとだいぶ楽になった。幸いにして子羊たちは戦闘に加わらないようで、戦うのはバロメッツとビッグメリーの母親のみだ。

 できればバロメッツだけを倒したいけどやはり無理っぽいかも。なんだか子羊を残して親羊を倒してしまうのは気が引ける。むむ。


 猫は『ヒール』をしなくて済む分、『ダークミスト』が途切れたタイミングで『目眩弾』を撃ったり、シロビの『ファイアーウォール』に『パウダー』を撒いて火柱をあげたりといろいろやってみる。火柱は危険でしたね。もうやらない。

 牧草に引火したので『ミスト』消火したりと大変だった。


 そんなことをしつつも、どうにかこうにかビッグメリーが弱ってきた。

 よろよろと弱ってきたビッグメリーを尻目に、バロンがンメエ~っと鳴いてバロメッツへぶつかっていく。おお、突進。


「んにゃっ!?」


 ついでにルイも向かっていく。あわわ!?

 ルイとバロンによってどつき回されてるバロメッツを、猫も近くなったので魔法銃で狙う。

 えーと、赤い実が弱点。ターゲットを合わせると、『収穫可能』のマークが出た。


 収穫!?

 あっ、一応植物だからってこと!?


 てことはもしかして。銃をしまって、『ターゲット』からの『アポート』。


『バロメッツから収穫しました』


 ペシャリ、とバロメッツが潰れてドロップに変わる。ンメエ~と不満げにバロンが鳴いた。

 そこでリザルトが出たので、ビッグメリーは庇わなくなった時点で戦線離脱していたらしい。倒さずにすむのはよいことだ。

 とはいえドロップには『大羊の白毛』などがあったので、処理上では倒したことになっているっぽいけど。


 ちなみにバロメッツから収穫出来たのは『羊の木の実』だった。バロメッツの種じゃなかった。



 それからミルカさんの連れたフルクに従って、5匹(個?)のバロメッツを退治した。

 やはりビッグメリーの母羊に守られていて厄介だったが、すでに赤い実を収穫すればいいことがわかっている。猫はひたすら『ターゲット』でバロメッツを狙い続けて取れたら『アポート』をすればいい。ずっと早く終わることが出来た。

 母羊であるビッグメリーも、バロメッツが倒れてしまうと戦う意欲を失うのでそこで戦闘終了になるしね。その場合は母羊のドロップは手に入らないのだが。


「これで全部、ですかね。フルクも反応しなくなりました」

「にゃん~、よかったにゃ」


 ミルカさんと厩舎を歩きながら話す。

 フルクはまったく吠えずにご機嫌で猫の後をついてきている。


「にゃ……」

「どうやら、主張を聞いてくれたそちらを主と認識してしまったようで……」

「にゃあ~、それって大丈夫にゃ?」


 そう、猫ったらフルクになつかれてしまったのである。

 バロメッツ退治3体目には戦闘に加わり、ビッグメリーの動きを吠えたてて止めたりしてくれて、おかげで収穫もスムーズに終えることが出来た。


「寂しいですが、私にこの子の主になる資格がなかったのでしょう。もしあなたがよろしければ、連れていってあげてください」

『フルクを従魔にすることが出来ます』


 ミルカさんがフルクに手を翳すと、ポワンとウィンドウが浮かび上がる。

 優秀で大きな白いワンコは、歓迎しかない。

 『テイム』を使うと、1回でテイムに成功した。おお、好感度ばっちり。


『従魔に名前をつけてください』

「リカ」


 女の子なんだって。名前は久々のラ行だ。

 ワオンと大きく尻尾を振って猫にまとわりつく。おっとっと。お座りしても猫の背丈くらいあるワンコ、なかなか重量級。サイズ的にはスーニャと同じくらいだが、重量感が全然違ってがっしりしている。


「いやはや、ありがとうございました。我が里は悪魔から救われました」

「リカのおかげにゃん~」

「フルクもお手柄でございました」


 里長はバロメッツの殲滅を心から喜んでくれて、お礼にと『牧場使用権』をくれた。


「にゃ?」

「あなたの家畜をこちらでお預かりして、大事に育てましょう」

「にゃ…あ……」


 猫の家畜って、白ラコラと、たぶんバロメッツなんだけど大丈夫だろうか? 特に後者はダメな気がする。


「家畜はどんなのでもいいにゃ?」

「牧場の強度や広さによりますね」

「にゃん~…」


 『牧場使用権』は農業ギルドの畑と同じく、畜産のための牧場を借りられるらしい。牧畜ギルドはどこでもあるわけじゃないので、そこが畑と違う。

 また牧場にはランクがあって、一番下のランクだと動物型しかダメみたい。つまり魔物であるバロメッツや、マンドラコラは当然駄目だ。

 白ラコラなら大丈夫っぽいが、お世話としてトレントのモリーを導入しようとするとアウトになる。


 牧畜ギルドでは家畜を買うことも出来るので、何か育ててみるのもいいのかな。食肉や繊維用のメリー(羊)、乳牛のジャジーなど、いろいろある。

 畜産用の獣はブリーダー契約で、従魔とも召喚獣とも違う。10頭単位で飼わねばならない。生き物なので、しっかり世話をしないと死んだり病気になったりしてしまう。

 もちろん基本の世話をおまかせすることも出来て、それは牧場とは別にお金がかかる。畑の自動スプリンクラーとかの設備投資と同じ扱いだ。


 ひとまず牧場契約だけして、家畜は保留にしておいた。富豪ワープ用。いつでも乳製品が買い放題!

 猫に家畜が増えるとしたら、ドゥドゥーのルビーが卵を生んだときかなあ。

 実は花夢蝶のラモとレモのコンビも、メスとオスなので卵を生む可能性もある。主との好感度が卵を生む可能性に繋がるらしいから、まだまだなんだけどね。

評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
木の実って種だと思うニャン……植えるんじゃなくて錬金術の材料になればいいなぁ
更新乙にゃん バロンちゃんまさかの共食い好物判定!? これはバロンちゃんだけの個性なのか、バロメッツ全員が、そうなのか?まあ、進化可能になって良かった・・・のか? そして猫ちゃんの貴重な戦闘描写 …
まさかの方向からブレーメンが揃ったなぁ 共闘的なルートの加入もあるんだ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ