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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
6章 猫はいつでも風まかせ

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8.魔法釜

 錬金釜の材料は、メインとなる『釜』に、魔法のインク、それから『魔鉄』。

 『魔鉄』は品切れなのでマケボから購入。これで材料は揃いました。


 まずは『釜』の蓋を開けて、底面に図案を描く。修正と違って一から図案を書かねばならない。

 うーん、ルドルフさんは紙に書いた図案の上にインクを走らせていたんだよね。てことは、一旦紙に図案を写した方がいいのか。

 おあつらえ向きに、ちょうど行政施設でもらった『羊皮紙』がある。あの『書き損じの紙』を圧縮したやつだ。流れでくれたんだよね。なんでだろうと思ってたけど、このためだったのかもしれない。


 図案はレシピのなかにある。レシピを開きつつ『羊皮紙』を出すと、紙の上にうっすら図案が浮かび上がるので、これを写せば完了だ。らくちん。

 写すのには『灰茶のインク』を使った。『悩めるインク』は蓋を開けると動き出すので、普通には使えないのだ。


 図案を書いた羊皮紙を『釜』の中にセットすると、ポッと光が点った。生産開始の合図だ。

 『悩めるインク』を取り出して、ふわりと浮かび上がったインクを開始地点まで導く。

 やり方としては、ウゴウゴと進んでいくインクを曲がるタイミングに合わせてちょんちょんと触ってやるミニゲーム。下絵があるのでわかりやすい。

 おそらく初歩的な図案だからだろう、ほぼ直線で出来てるから簡単。これ曲線とか入るようになったらどうやるんだろう? なんかややこしそうな気配だけはするぞ。


 特にミスすることなく、図案の上にインクが走った。図案がジワジワと光っている。

 ここで『魔鉄』を取り出し、五芒星の図案の頂点へひとつずつ乗せていく。乗せるほどに光が増して、ポンポンと肉球タッチすると、燃えるように光が爆発した。


 ポン!と音がして完成!

 『古式錬金釜』が出来た。


 おおお。本当に出来た!

 形はまるっきりご飯炊く釜なのがすごく違和感あるけど、猫の作った錬金釜だ。ちょっと愛着わく。

 問題はサイズが他の釜より1.5倍くらい大きいことだな…。

 ま、まあ三段カラーボックスの上に置いておけばいいか。

 これで猫の錬金釜は4つになった。……勢いで無駄に増やしてしまったな。


 あっ、そうだ、まずは本当に錬金釜になっているのか使ってみないことには。

 そして思い出す、魔石が必要なんでしたね。

 インベントリから『魔石』を出して中に入れたら、今度こそ完成。

 この釜の性能はどんなもんかな?


 うん、はい。

 『古式錬金釜』の性能は『初心者錬金釜』と同等っぽい。『変成』は出来ないし、時間短縮効果もなさそう。

 『中級錬金釜』の性能が欲しければ新しいレシピを手に入れるか、自分で図案を改修するかしないといけないんだろう。まあ、妥当かな。


 ……。


 ここでにわかに気になってくるのが、属性魔鉄を使ったらどうなるんだろう? てことだよね。

 だって手元に『ロングソード』から作った属性魔鉄があるから…!


 てことで、釜は3つ買ってあるし早速実験。

 『ロングソード』買って『雷魔硝子クリアサンダービジュー』を作って『変成』、あとはちょんちょんしてポイポイ~の、ポン!


 『術型古式錬金釜』が完成した。

 なんかごっついのできた……。

 術型って、なに??


 なんでかわからないけど、釜に器用+5の効果がついている。道具にプラス効果がついているのはよくあることだけど、錬金術は能力値参照しないから、謎の効果だ。


 試しに『魔石』を入れて、『雑草』10個を圧縮してみたらまさかのエラー。『雑草』が1個吐き出されてきた。

 えっ、どういうこと!?

 術型って、本当になに??

 な、なにもわからん…。

 わからんので錬金術師ギルドにでもいって聞いてみるか。



「なんと、錬金釜を作られたのですか!?」

「作ったにゃん」

「それは今お持ちでいらっしゃいますか?」

「にゃん? 今持ってるのはちょっと違うやつにゃん。でもこれもよくわからなかったにゃんよ~」


 早速、錬金術ギルドの受付で自作錬金釜について問い合わせると、受付さんは大変驚いて対応してくれた。


「こ、これは『術型古式錬金釜』じゃないですか! ずいぶん渋いものを作りましたね」

「渋いにゃん? 猫、たまたま作ったらこれになったにゃ。どういう効果があるのかは知らないにゃん~」

「そうだったのですか。術型と魔型は『錬金術』の限界に挑むための釜と言われているのですよ」


 受付さん曰く、錬金釜には元々、魔型と術型があったらしい。けれどオーソドックスな万能型が登場して、このふたつは廃れたのだそうだ。

 万能型は、今出回っている錬金術ならではのもの。つまり、レベルも能力値も関係なく、レシピさえあれば誰でも作れる。

 たいして術型は、術者のレベルや器用値が反映される型だ。


「反映されるとどうなるにゃ?」

「技量が満たないレシピは扱えなくなってしまいますね。逆に、簡単なレシピは使用素材が少なくなったり、品質がよくなったりするそうですよ」

「にゃあ、普通の生産と同じになるにゃんね」

「その通りです」


 なるほど、そういう釜もあるのか。それで器用プラス効果がついてたわけね!

 ちなみに魔型は参照が魔力になる釜だそうだ。なるほどなるほど。


「錬金術の真髄に辿り着くには、万能型では無理だ…なんて意見も昔は多かったんですよ。今となっては完全に万能型が主流ですが」


 ふむふむ、『術型古式錬金釜』は、器用型の猫には合ってるかも、てことだな。


「もしよろしければ『錬金釜』の買取もありますが、いかがいたしますか?」

「にゃあ、今はやめておくにゃん~」


 『古式錬金釜』はマイルームに置いてきてしまったので、ひとまず売却はなし。

 調べてみると、ギルドの実績に『錬金釜を納品する』がnew!で登場していたので、ランクアップには必要になりそうだ。


「術型錬金釜に詳しい人とか、詳しく書かれた本とかはないにゃん?」

「万能型以外の釜を使ってらっしゃる方は、残念ながら今はいらっしゃらないかと…」

「マイナーにゃんね~」

「万能型が普及したことで、レシピの取り扱いランクなども失われてしまいましたから。思わぬレシピが高レベルで扱えなかったりなど、意外と不便があったようですよ」

「にゃあ、なるほどにゃん~~」


 『雑草』がエラーになったのはそのせいか!

 『雑草玉』のレシピが猫には本来、取り扱えないレベルだったのだろう。納得~~。

 これはたしかに、かなり不便がありそうだ。出来ると思ってるレシピが出来ないんだもんね。


「錬金術師は不要なものをちょっとだけ有用なものに変えると言われ始めたのも、万能型が普及し始めてからなんですよ。規格を整えて、すべてを10個『圧縮』と決めてしまったことで、失われたレシピも多くあったとか」

「もったいない話にゃん」

「ええ、本当に。もし、古いレシピを発掘なさったら、ギルドまでご報告いただければと思います」

「見つけられたらいいにゃんね~!」


 おっと。

 ポコンとウィンドウが出てきた。

 『錬金術師の再興2』だって。失われたレシピを3つ探すとクリアらしい。再興って、こういうのもあるのか。

 失われたレシピ、気になっちゃいますな!


 受付のお姉さんは本について言及しなかった。てことはまあ、ないんだろうなとは思いつつ、久しぶりに地下にある秘密の書庫へ。

 この書庫の罠から、林檎の木を初めて見に行ったんだっけ。もうすでになつかしいぜ。


 図書館ダンジョンで林檎を得るクエストについてはだいぶ検証が進んでいる。『総合知識』で得にくい知識のひとつが『魔道具知識』であることがヒントとなって、このクエストに繋がっているのだろうという予想がされている。

 錬金術師も最近では特にROMな職ではなくなったので(めでたい)、初心者ではこのクエストをするために臨時PTなどもよく組まれているらしい。今ではいちばんお手軽に林檎を得る方法と言われている。

 冒険者ギルドの、宝石魔法が得られるクエストと合わせて人気だ。


 そういえばテイマーギルドにも秘密の書庫はあったけど、仕掛けのクエストはなかったな。冒険者ギルドのがソロ専用だったから、テイマーギルドのはPT専用だったりして。

 ちょっと気になって掲示板を調べてみたけど、やはりテイマーギルドには特にクエストがないようだった。いや、でも絶対あるはず!と探している人は結構いるらしい。たしかに、ありそうだよね。


 …などと余所事を考えつつ書庫をうろついたが、新しいレシピにつながりそうなヒントや、『錬金釜』に関する本はあまりなさそうだった。残念~~。


 ひとつだけ気になったのは、『術型錬金術のススメ』という本だ。

 『錬金術』は魔法ではなく技術であるからして、本来は正しい分量が存在し、一律10個なんてふざけた話ではないんだよ~~ということをオブラートに包みながら書かれていた。

 著者によると正しい『圧縮』とは、術式が噛み合うものでないとならないそうだ。術式が噛み合わないことで、本来出来るものより品質が著しく落ちてしまったり、本来出来るはずのアイテムへ至らなかったりするもののなんと多いことか、と万能型錬金釜への恨み言が続く。お、おう。


 『術型錬金術を始めるときには、まず5つから始めてみることをオススメする。術型錬金術の基礎は奇数である』とな。

 ふむふむ、半分の5個から始めて、出来なかったら足す、出来るようなら減らすというのがポイントなんだって。


 素材を減らしたり、新しいものが作れたりするかもしれないのは大変な魅力だけど、簡単な『錬金術』が複雑になっていくのは悲しい。

 ガラガラしてチンでいいにゃんよ~~!

 でも知ってしまうとなんだか無視できない!!



 ……にゃふん。

 ひとまず好奇心は満足したので、釜作りはこれでストップだ。

 あとひとつ素材の釜はあるけど、魔型の釜はこれまでの傾向を考えるとおそらく『氷魔鉄』が必要になる。猫は『氷魔硝子クリアアイスビジュー』を作ることが出来ない上、魔力を参照する釜は猫には合わないので、今のところ作る意味がない。

 せっかくだから、リーさんに『術型錬金釜』がいるかどうか聞いてみて、どちらかを作ろうかな。リーさんなら『錬金術』のLVも高いし、猫より能力値も高そうなので役に立つかもしれない。


 『術型錬金釜』そのものについての実験はまた今度じっくりやるとして…。

 今は次の目的地、酪農の里ファームへいっちゃうぞ!

評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
更新乙にゃん >ご飯炊く釜 羽釜かな >術型錬金釜 そういえば、坩堝を使うって話も前にあったし、錬金術も道具揃えようとしたら大変になるのかも? 錬金術の沼は深い!
「取り敢えず何ができるか確認」なら万能で試してそこから術(魔)型で追求、がベターかねぇ? とはいえ猫ちゃん的にはガラチーンしたいにゃんのに……術(魔)型釜がもっと広まったらあとは任せるにゃんよ〜って…
更新ありがとうございますにゃーん。 術型錬金術はますます沼が深そうだけど、魔道具マーケットで漏れ聞いた話やルドルフさんのレシピがヒントになってそうで楽しみ~。 酪農の里での食い倒れも期待してますにゃん…
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