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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
6章 猫はいつでも風まかせ

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7.魔法インクの作り方

 にゃ~ん、お買い物は気分がよい。

 まずは露店通りを冷やかし、求める商品――インクや釜はなかったので、鳩ポッポ商店街の雑貨店へやってきた。

 このあたりの店は攻略には直接関係ないフレーバーアイテムの出品が多い。たとえばお手紙とか、小皿とか、ティーポットとか。そういうのに大変弱い猫はなるべく近寄らないようにしてきた場所だ。

 でも今は仕方ない、 だって必要だから! にゃふふん。


「にゃ~~」

「うちのインクは色や性質の差こそあれ、魔力は帯びていないんだ。だから『錬金術』には使えないね」

「『錬金術』に使うインクは魔力が必要にゃん?」

「そう聞いているよ。特殊なインクだって。錬金術師が自ら作らないといけないんだとか」

「にゃん~~」


 無慈悲!

 購入して済ませようというズボラはだめだったらしい。


「『錬金術』に使うインクと別なのは絶対にゃん?」


 諦めきれずに食い下がって聞いてみれば、文具店の店主さんは苦笑と共に教えてくれる。


「うちのお得意さんに錬金術師がいるんだよ。普通のインクも作れるみたいで、たまに珍しいインクを売りにきてくれるんだ。そのときに教えてもらったから、たしかだとおもうよ」

「にゃん~、残念にゃん」

「もし、君も珍しいインクが出来たら売りにきてくれるっていうのなら、簡単なインクのレシピは教えてあげるよ」

「にゃ! ぜひお願いしたいにゃん~!」


 レシピ助かる~!

 簡単なインクは、木の実を煮込んで作るものだった。

 材料は木の実に『屑鉄』、『葡萄酒』と『ラガの雫』。木の実は出来るものと出来ないものがある、とな。

 初見は『ラガの雫』だけど、どうやらマケボで購入できそうだ。そんなに高くない。材料から察するに没食子インク、となるとたぶんこれは、樹脂かな?


 煤から作るランプブラックは難しいインクになるんだろうか。いや、染料インクも顔料インクも、種類はいっぱいあるしな。

 とりあえずは基本のインクが作れればよし!


「ありがとうにゃん~!」

「インクの買取は5瓶から承っているよ」

「たくさん作ったら持ってくるにゃんね!」


 お礼代わりにお手紙用の新しいインクを1瓶購入して、文具店を後にした。これはお礼なので散財ではない。



 さて、インクを作るとなると、専用鍋が必要になる。

 猫が今持っているのは以前から使っていた『料理』用の鍋のみなので、『調薬』用の鍋は新しく買わねばと思っていた。

 コンロが『料理』用なので『調薬』が多少劣化するのはもう宿命なのだけど、それでもインクを同じ鍋で作るのはちょっとね。ゲームとはいえそこは気になる。

 『錬金釜』にする釜も欲しいし、いざ行かん調理道具専門店。


「これなんかどうだい?」

「いいにゃんね~~これくださいにゃん」


 鍋はあっさり決まった。レシピの分量からすると大量に煮詰めて作るようだから、それなりの大鍋だ。ちょっと魔女の鍋っぽい。イーヒッヒッヒッて猫も出来てしまう。


「鍋釜ねえ。米を炊くような釜…、これなんかどうだい?」

「にゃあ……、これ3つくださいにゃ」


 失敗したときの予備として、あと実験用に、ちょっと多めに買っておく。誰かに依頼するときでも、実物は持っていると便利だしね。


 あとはインク用に必要な細々とした道具を買う。『調薬』用のがあるけど、薬とは別にしておきたい。もちろんフレーバーアイテムなので買わなくてもいいっちゃいいんだけど、一応『道具』なのであると成功率にプラス効果がある。

 猫のコンロは『料理』用なので少しでもプラスにしておきたい。よってこれは散財ではない!


 うーん、財布の紐がとってもユルユル。

 これから気を引き締めていかないとな!


 

 レシピと道具を揃えたところで、次は材料だ。

 まず、マケボや市場で手に入るものは買っちゃう。『葡萄酒』に『ラガの雫』。

 『葡萄酒』は食料品店で、『ラガの雫』は香料店で手に入れることが出来た。後者はやっぱり樹脂で、ちょっといい香りのするオレンジ色の塊だった。両方ともマケボよりは安い。猫の場合、NPC販売だと値引きがきくのでそれもあるかも。

 『屑鉄』は『鍛冶』で出る失敗作だ。これについては硝子連合から、生産の失敗作ということで結構な量を買い取らせてもらっていたので、不良在庫がある。

 残念ながら『屑鉄』は10個で『金属片』の最低品質になるだけの、あまり面白味のないアイテムだったのだ。ようやく使い道が出来ました。


 あとは肝心の木の実。

 たぶんこの木の実って可食じゃない、渋い木の実じゃないと成功しないと思うんだよね。だって没食子インクならタンニンが必要なわけだし。

 というわけで渋い木の実を探してみることに。


「渋い木の実? また変なもんを探してるねえ、食べるのかい?」

「食べないにゃんよ~」


 困ったときのおばちゃん情報網。いつもお世話になっている野菜売りのおばちゃんに尋ねてみる。


「中の種は食べるのでも大丈夫にゃん」

「うーん。中の種を食べるといえば『マーロの実』なんていいんじゃないかい? 外側はトゲトゲしているから剥いだりして、種だけを収穫するんだ」

「よさそうにゃ!」

「『マーロの実』の殻なら、扱ってるところで聞けばいくらでも売ってくれるはずだよ。捨てるもんだからね」

「にゃあ、ありがとうにゃん~!」


 いらないものを役立てるのが『錬金術』、ということでちょっと心ひかれちゃう。いや、これはインクの材料なんだけどね。

 いいことを教えてくれたお礼に、今日もおばちゃんの最低品質野菜を買い占めちゃう。

 完売ありがとうラララ~を一緒に歌ってお見送りした。

 そういえば、おばちゃんの村もまだいってないな。レベルを上げなければ…!


 おばちゃんに教わった通り、『マーロの実』の扱いがあるお店で問い合わせたら、『マーロのイガ』を売ってもらえた。

 マーロの形だけではピンとこなかったけど、イガが出てきたらわかった。

 栗だこれ!

 いや、だってマーロ、猫の手くらい大きいんだもん。おにぎりサイズだよ。これだけ大きいとちょっとピンとこない。


 交渉して、『マーロの実』を20個購入したら『マーロのイガ』100個を譲ってもらうことになった。

 『マーロの実』の方は焼き栗にでもしよう。料理人のヤマビコさんにレシピをきいてもいいかもしれない。



 材料が揃ったぞ。ということでレッツ・クッキング、じゃないやファーマシー。


 レシピの確認。

 まずよく洗った『マーロのイガ』に被るくらいの水と『葡萄酒』『屑鉄』を入れ、数日放置する。色が出てきたら更にとろ火で煮出し、イガなどを濾しとる。

 試筆してちょうどいい色だったら『ラガの雫』を入れて完成だ。


 そーれ『タイムパス』。

 煮出すのは燃料の問題で時短が難しいけど、経過させるだけなら簡単。そして煮る。イーヒッヒッヒッ。


 あっという間に『灰茶のインク』が出来上がった。ごく普通に通常品質。

 インクの色は名前の通り、ちょっと灰色みのある濃茶。『惑えるインク』に比べると粘度が足りない気がする。

 『マーロのイガ』5個で出来るのが20個分かな。『ガラス瓶』にとりあえず入れておく。


 んー、まあ試すよね。

 はい、10個で『圧縮』。

 『マリオのインク』になった。最低品質。なんぞこれ。


 錬金術スレ……には、ないな。

 インクで検索してみると、魔法銃スレが引っ掛かった。


 ふむふむ、人名っぽいカタカナがついてるインクは魔法銃で使えるインク。一例として『ジニアのインク』『ロアノのインク』『ポアロのインク』などなど。

 なるほどなるほど?

 つまり、これで一応『魔道工』で使えるインクになっているわけだ。


 うーん、単純すぎる気がするぞ。それに、10個で最低品質1個にしかならないんじゃ、通常品質にするのにインクが1000個も必要になっちゃう。

 もう一声、なんとかならないだろうか。


 『惑えるインク』のときは、錬成陣で作ったんだよなあ。

 『文字水溶液』に『純魔石』、『魔法のゲル』。


 ものは試しで『灰茶のインク』に『純魔石』、『魔法のゲル』を足してみる……、あ、これは失敗だわ。粘度がすごい。錬成陣にかける前にわかっちゃう!

 たぶん『魔法のゲル』が余計なんだな。


 でも『魔法のゲル』は魔法とついているし、インクに入れた方がいい気がする。

 となると邪魔なのは粘度をつける他のもの、ということで『ラガの雫』を避けて作ってみよう。


 もう一度『マーロのイガ』を水に入れる。そーれ『タイムパス』、イーヒッヒッヒッと煮出して濾す。

 この状態で『ガラス瓶』に移すと、出来上がるのは『マーロの煮出し液』。ふむ、インクにはまだならないわけか。

 『ラガの雫』の代わりに『魔法のゲル』を入れて、さらに『純魔石』をいれて、錬成陣ドーン。

 『クリエイトウォーター』!


 はい完成。

 『悩めるインク』。

 悩んじゃった。


 まあ、(何かの動作する)インク名なので、『惑えるインク』と同系統。たぶんこれはこれで合っているはず!

 『惑えるインク』には『魔道工』の成功実績があるし、こちらを量産してみることにする。

 『ラガの雫』も買った分はインクにしちゃお。『灰茶のインク』として、文具店に売りにいってもいいし、お手紙に使ってもいいしね。


 『悩めるインク』は茶色味が失せて、無彩色の墨色っぽいインクになった。赤味が消えるのは不思議だな。それに、『惑えるインク』よりちょっと薄い。


 そういえば本屋さんはインクの濃度について言っていたな、と思いだし、ちょっと分量を調節したり『タイムパス』を多めにかけたりして品質向上を狙ってみる。

 結果、『悩めるインク』の高品質を安定的に作れるレシピを発見した。やったぜ。

 しかしこれ以上濃くするのは難しい。『マリオのインク』を作るには、たぶん他の材料がないと無理なんだろう。


 他の材料か~。

 『マーロのイガ』を変えるとインクは別物になりそうだから、変更するとしたらそれ以外か?

 いや素材を変えても植物の木の実から作るものはすべて『悩めるインク』になるという可能性もある。

 ん~~、わからん!

 『迷いの木コブ』を手に入れていれば試せたけど、木コブは手に入らなかったんだよね。残念ながらマケボに木コブは出ていない。はい解散!


 とりあえずインクは出来たからよかろう。

 次はおまちかねの錬金釜だ!

評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございます。

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更新乙にゃん 大鍋!魔女!イーヒッヒッヒッ! ね◯ねるね◯ねをちょっと思い浮かべてしまいました。 装備が以前の魔女帽子なら完璧な見た目でしたねw 次はいよいよ錬金釜、楽しみです!
[良い点] 更新にゃーん [一言] 『惑えるインク』に『悩めるインク』 『魔道工』に必要なインクシリーズは不思議なインクばっかりだ
更新ありがとうございますにゃ~ん 次も楽しみにしていますにゃ~ん マリオに魔導工、土管工なら惜しかった
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