表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
6章 猫はいつでも風まかせ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

261/285

2.巡礼の旅~ポーツ

 転移施設ポータルポートから海へこんにちは。

 磯の香りがぷんと漂い、カモメが飛び交う青い水平線はやはり気分が上がる。

 早速GPSの導きに従って、巡礼の神像へ。ここも大きい神像かなと思いきや、小さくてなにもわからない神像だった。おや、予想外。だんだん大きくなるパターンかと思いきや、そういうわけではないのか。


『あなたの上に導きがありますように――』


 お祈りすれば例の文言が返ってきて、次の神像へのGPSを入手。これでポーツの巡礼は完了。


 さて、我が別荘地ポーツ。

 なんだかんだとちょくちょく来ているので、やり残しは特にない、かと思いきや後回しにしていたものがある。

 そう、隠れ島である。

 忍者の師匠がいるらしいし、虎猫のマティさんにも再会して話を聞きたい。今回はちゃんとダイアモンドは倉庫にしまってチャレンジだ。

 隠れ島はイベント経由じゃないと辿り着けないと言われていたのだけど、最近マイナーアップデートがあって航路が出来ました。ただし運賃が5万zとなかなかお高い。今しか乗れないセレブ運行である。勢いがないと乗れないぜ。

 行くぞ隠れ島!



 にゃあ~ん。

 まず『猫まっしぐら』を使って猫ちゃんたちを呼び、その中からボスっぽい猫を選んで追いかける。するとマティさんに会える。フーテンさんから教えてもらったマティさん攻略法だ。

 会いに行けるアイドルならぬ会いに行ける風猫族であるマティさんは隠れた人気の存在。ニャンニャン言ってくれないところは好き好き別れるところだが、概ね渋めの猫ちゃんとして評価されている。なお一部には嫌われてもいる。マティさん、地元のギャングな猫ちゃんだからね。


 呼び寄せた猫ちゃんのボスを追いかけて、早速マティさんを発見。今日もくっきりしたキジトラの縞が決まっている。猫ちゃんの虎模様は大変よいもの。


「マティさんにゃ」

「お? どいつか知らねえが俺の名前を知っているとはな」

「にゃん…!」


 おっと、顔を覚えられていない。

 「誰でしたっけ」は好感度が低いとなりがちなシチュエーションなのだが、風猫族の猫はこれまで出会ったことがなかった。…くぅ、ちょっと悔しい!


「にゃん~、前に会ったとき、マティさんから里のフェネリを訪ねるように言われたにゃんよ」

「にゃア~?」


 渋い猫ちゃんの貴重な「にゃア」!

 にゃんにゃん言わないマティさんだけど、感嘆はにゃあになることがあるんだな。にゃふん、ちょっと得した気分。


「それであんたは俺に何が聞きたいんだ?」

「里ってどこの里にゃん???」


 はい。いちばん気になるのはそこだ。

 マティさんはやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。


「マレビトの風猫族はそれも知らんのか」

「知らないにゃん。教えてほしいにゃん~」


 にゃんにゃん。

 ミー(仮)さんのときも思ったけど、風猫族相手ににゃんにゃん言うのは、プレイヤーやNPC相手ににゃんにゃん言うのとはまた違う趣があるな。

 猫ちゃん相手に、ついついにゃんって言っちゃうときの感覚に近い。


「猫、風猫族に里はないって聞いてるにゃんよ。実はあるにゃん?」

「いや、そんなもんはない」


 きっぱりと否定された。となると里とは?

 じっと見つめて待っていると、マティさんは呆れたようにため息をついた。


「風猫族に里はねえが、集う場所はある。風車の街ウォーデンヒルだ」

「にゃあ」


 なんか聞き覚えがある、と思ったら今フーテンさんがクエストで泊まり込んでる街か。

 あれ、でもフーテンさんは風猫族を探してたな? 集う街なのに会えなかった?

 疑問は残るが、そこが里ってことだろうか。


「そこにフェネリさんはいるにゃん?」

「さてな」

「にゃん~~」


 ぐぬぬ。微妙に里の説明にもフェネリさんの居場所にも繋がってないのが悩ましい。

 しかしこれ以上聞いても教えてくれそうにない。何故なら尻尾が苛立たしげに振られているからだ。ここは引き時。


「教えてくれてありがとうにゃん!」

「ふん」


 好感度が駄々下がり!

 まあ風猫族から情報を聞き出すのは難しいのだ。商売する種族だから、本来は情報もお金でやりとりする。しかし、そう、売られてないものは買わせてくれないのもまた風猫族だ。よってこちらから金銭やお礼の品を渡すのは失礼となってしまう。気難しい猫ちゃんなのである。

 マティさんが「いくら出す?」とか聞いてくれれば話は単純だったんだけども!

 チョロそうに見えてそううまく行かないのが風猫族だ。残念~。


 背中を向けるマティさんの前から名残惜しく立ち去る。

 マティさんはニンジャ系の師匠NPCでもあるはずなので、猫としてはもう少しお話ししたかった。悔しいぜ。


「お前…」

「にゃん?」

「足音がうるさいぞ。風猫族ならもう少しどうにかするんだな」

「にゃあ、頑張るにゃん!」


 スキル『忍び足』は持ってないんだよなあ!

 マティさんは『隠密』系の師匠だったか。いつか『隠密』が生えたらお世話になろう。今の猫には『隠れる』が精いっぱい。これ、移動しながらは使えないんだよね…。



 気を取り直して、ニンジャ師匠探し。狭い島とはいえ、地道にうろうろ探すのはなかなか骨が折れた。しかしようやくひとり発見。


「ハイ! あなたニンジャ、ネ!」

「にゃん!」


 発見できたウーミンさんは、金髪のグラマラスな豹獣人美女だった。たしかに名前のイメージで探すなと言われるだけある。アジア系では全然なかったよ。

 ニンジャの師匠探しは手当たり次第話しかけるわけにもいかないので、なかなか難易度が高かった。

 ウーミンさんを見つけられたのは、壁に不思議な出っ張りがあったからだ。調べたら出てきたのが美女だった。か、隠れ身の術!?


「見つかったらしかたないネ! あたしのとっておき教えてあげるネ」

「嬉しいにゃん~」


 隠れ身の術ですね、わかります。

 というわけで隠れ身の術こと『インビジブル』を教わった。はい、もう覚えてます。


「オウ! もう覚えてるネ? じゃあ次の段階を教えるネ」

「にゃん?」


 『インビジブル』は『ミラー』のように壁のイメージで使うものなのだが、これを布のように使うことによってMP消費が抑えられ、よりヘイトを取りにくくなるんだそうな。

 ふむふむなるほど…、と話を聞き終わると『インビジブル』が『インビジブルカーテン』になり、消費が減って効果が増大した。

 こういうパターンもあるんだね。


「ありがとうにゃん~!」

「あたしのとっておき、役に立ててネ!」


 そういうとウーミンさんはスーッと消えていってしまった。おお、『インビジブルカーテン』ってこんな感じに見えるのか。

 思わずちょっと『マジックセンス』を使いたくなったけど我慢した。去るニンジャは暴いちゃいけないものだ。


 ニンジャ師匠はもうひとり、イワンさんがいるという情報を得ている。しかしイワンさんは聞くところによると格闘系のニンジャ師匠とのことなので、見送ることに。

 なにより島内を探し回るのに飽きちゃったんだよね! さすがにぐるぐるしすぎた。これだけ巡って見つからないのだから、猫はフラグが立ってない可能性も高い。

 かーえろかえろ。


 せっかくだから帰りは『ダイアモンド』で捕まってシンドバッドの冒険をしていこう。2回目なので心の余裕もバッチリ。

 島の脱出法もわかっているしな……とか油断してたら呆気なくやられた。なんということ!

 『ダイアモンド』は拾えていたからマイナスにこそなってないけど、いけると思ってたからびっくりした。

 前回は執事さんにかなり守ってもらっていたんだなあと今更ながらにわかって、そっと感謝だ。そういうさりげないやつって、なくなってみないとわからないもんだよね。



 気を取り直してポーツへ戻ってきた(戻された)。

 ポーツであとやっておきたいことといえば、釣りだ。漁師のランクアップをしたい!

 『1日漁業権』を購入し、釣り三昧。いろいろ釣れるポイントがあって面白かった。どうせなら隠れ島に行く前に漁業権買っておけばよかったな! きっとあの島にも釣りポイントがあっただろうに、惜しいことをした…。


 そういえば以前「ハズレ」を引いた謎の釣りポイントは今回も「ハズレ」だった。当たるといったい何が出るんだ…。

 掲示板を見れば答えはわかるだろうけど、ちょっとワクワクもするので見ないで当たってみたいところだ。


 漁師はランクアップして『大漁旗の漁師』になった。これは1日に釣った魚の量が100匹を越えると出る称号だそうだ。ほとんど『チッギョ』だけどね! 『猫まっしぐら』にしよ。


 マイルームに工房部屋を作ってコンロ(『料理』用)を買ったので、わざわざ生産施設までいかずとも『料理』や『調薬』が出来るようになった。『調薬』は専用コンロじゃないからちょっとランクが下がってしまうんだけどね。

 でも猫の使う『調薬』レシピってだいたい飴なので、『料理』でも作れるからあまり影響はなかったりする。


 閑話休題、漁師がランク5になったのでSP10を手に入れた。やったぜ。

 『大漁旗の漁師』は漁獲量が増える効果(微小)。投網漁でもしてれば効果を感じられるかもしれないけど、釣竿ではあまり関係ないかな?


 ついでに料理ギルドにも寄ったところ、あともうちょっとでランクアップだったのでマイルームで早速『チッギョ』を調理。やはり自宅ですぐ作業できるのはいいね!

 ランク4に上がって『魚料理の料理人』になった。うん、作った量でいうと『猫まっしぐら』がいちばんだと思う……。

 称号効果は魚料理にプラス効果(微小)。猫ちゃんがよりいっそう寄ってきちゃうかも。


 その後は日が暮れるまで『貝殻』拾いに『砂』拾いをして、水平線に落ちる夕陽を眺めた。良い景色だなあ…。

 やはりポーツはリゾート。

 もし家を買うならマケットかポーツかかなり悩ましいところだな。

 今のところ店舗を持つ気はないので、家を作る予定はないんだけどね。家を買うお金があればもっといろいろなものが買えますし。

 夢見るだけは自由よ。

 そのうち猫はポーツに畑を買ってしまいそうな気がする。畑は各街で土壌が少しずつ違うらしくて、揃えると沼らしいんだけどね。ポーツはトマトにオススメと聞いて気になっている。

 いやいや、さすがに畑を買うお金は残ってないぞ! いつかね。


評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
狗を捧げられたのがヒントなんだろうね。 ランを生贄に!
[良い点] 更新にゃーん [一言] 妙に塩対応なのは何かフラグを踏み損ねてるんだろうなぁ…… あー、せっかくもう一人に会えたのに…… 猫は普段忍び足しないから…… でもインビジブルが進化したのは…
ツンツン猫のマティさん、家の亡きハチワレをちょっと思い出しました 毎日会ってるのに時々「お前、誰だっけ?」みたいな塩対応されたり… 若い頃は超ツンツンでしたが、10歳前ぐらいから超デレデレになりました…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ