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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
5章 金欠猫には旅をさせよ~わくわくの森旅編~

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28.石壁の街ボウフォル

 石壁の街ボウフォルは、国境の山脈を背にした辺境領にある街である。今は沈黙しているが火山を有し、この火山を封じ自らの力にしたという火の英雄フーフェズの一族が治めている。

 この属性の英雄というのは全部で8人いて、その子孫の家系を「瑞獣の加護を受けし八家」といったりする。英雄はそれぞれ獣の姿を持っており、それが転じて瑞獣となったとかなんとか?

 石壁の街なんていうから土属性かと思ったら、火が延焼しないための石壁らしくて面白い。領主の力によって沈静した火山ダンジョンを持っていて、結構人気なんだって。

 火属性を極めたい人は、このボウフォルへ来ることになる。特に人族で火魔法師であれば、フーフェズを継ぐ当主に会うクエストをこなさないといけないそうだ。



 えっちらおっちらやってきました石壁の街ボウフォル。

 道中の敵は火属性がよく効いて、シロビとスーニャのお陰でかなり楽に進むことが出来た。シロビさまさま、スーニャさまさま。

 シロビもスーニャもまだ仲間にしたてだし、それほど絆値はんちが高くないのだが、戦闘意欲の高い子たちみたいで、しっかり戦ってくれる。ちょっとオーバーキルや不要なデバフがあるのはご愛敬。

 レトがスーニャの『ダークミスト』をみて「!」てなってたのは以前は使えたのを覚えているからだろうか。ごめんよ…。しかしレトにはヒーラーの道を歩んでもらいたい。

 レトが文字を覚えたことで、教本が読めるかも?と思ってみたのだけど、レトが教本を読むにはまだまだ難しいみたい。やはりMP調整がむずかしいのかもしれない。

 召喚獣にはLVがないので、新たな魔法を覚えるのはラーニングしかなく、大変だ。そのぶん、最初から優れた魔法を持っているのが召喚獣や召喚妖精の特徴なんだけどね。


 石壁の街というだけあって高い石壁を有する門を越えて、中へ入るとこれまた石造りの家と道が続いている。街というよりは砦という方が合いそうな佇まいだ。

 自由都市マケットもわりと石造りの建物が多い街なのだけど、それとはまた雰囲気が違う。石の色のせいだろうか?こっちの石は黒っぽく、ぎっしりとして統一された印象がある。


 まずは冒険者ギルドでホーム更新。ついでに依頼チェック。

 『フィラメントの討伐』『炎竜の討伐』『火炎草の採取』『竜果の採取』『精霊の涙の納品』などの依頼がある。おお、竜果はここでも取れるんだな。猫も育てたいし、どんな木かちょっと気になるので是非見ておきたい。

 フィラメントは投擲専門店『緑の軌跡』で聞いていた、『投石玉』で倒すといい敵だ。こいつは物理は防御力が高く、魔法で叩くと燃え上がる厄介な敵らしい。『投石玉』を使うとぴったり倒せてちょうどよいんだって。

 フィラメントを倒すと出る『きれいな火花』というアイテムは『魔宝石』や『魔鉄』を加工するための必須アイテムとあって、今とても人気だ。ボウフォルが出現する前はBOSSドロップだったアイテムなので、価値が暴落したアイテムでもあるんだけどね。『投石玉』の価格が上がるはずである。


 この街もギルドは大きな建物が3つほどあって、各種ギルドがぎゅっと詰まってるタイプ。一通り巡っておこう。


 運送ギルドで荷物を下ろして、商業ギルドでルイネの特産品を売却。ルイネの特産品は食物類と、木材なので、それほど大きな価格にはならず微々たる儲け。

 ボウフォルの特産品に期待したいところだ。


 はい。

 ぐるっとギルドを回ってランクアップしたのは、ブリーダー。

 白ラコラの大量出荷で報告が多かった。ランク5になり、『プランツブリーダー』となった。たしかに植物しか育ててなかった。一応、卵も孵してるけども。

 実績解除スキルは『育成譲渡』で、ブリーディングした個体を他者に譲る――テイムさせることが出来るスキル。このスキルがないと個体譲渡は出来ないという、本格的にブリーダーやるなら基礎になるスキルだ。

 猫は今のところはいいかな。白ラコラはテイム出来ないし。いや白ラコラそんなに作らないけど。これから先、マンドラコラが山ほど増えるとか、ルビーやラモが卵を生むなら考えるかも。

 ちなみにブリーダーは育成した個体をギルドを通じて販売することが出来る。これもランク5からのシステムで、やはり『育成譲渡』が必要だ。

 まあ、おいおい考えることになるだろう。


 ランクアップはそのくらい。あとはあんまり活動できてなかったしね。


 さて、それじゃあ情報収集していこうかな!

 林檎の木があるかどうかを探る、という大義名分はあるけど情報収集というよりは観光だ。メインはそっち。新しい街だし、いろいろ楽しみたい。


 ボウフォルは採掘の街、鉱石の街でもあるらしく、石工や鍛冶の店なども多い。新装備を求めてやってくるのか、プレイヤーも多くにぎわっている街である。

 NPCの種族は多種多様で、人族以外にも地人族を多く見かける。それから、背が高くて顔が犬ベースという火狗族という種族もちらほら。かれらは風猫族や地鼠族と同じく、妖精族の仲間だ。

 火狗族はまだプレイヤー選択は出来ない。おそらく陣営が他国になるからだろう。そこまでマップがまだ広がっていないからね。たぶん巨人族と同じく前衛タイプなんだろうなあ。なにしろいかつい。


 始まりの街ルイネはだだっ広くてなにもない感じだったけど、このボウフォルは狭いところにぎっしり詰まっている感じ。実際狭いわけではないのだろうけど、濃い色の石壁がちょっと圧迫感あるのかも。

 この石は『黒火岩』と呼ばれる石材から出来ているそうで、採掘ギルドから依頼が出ていた。ダンジョンから採ってくる素材なのか、外のフィールドで採ってくる素材なのかは不明。たぶん猫のスキルLVでは採掘出来ないと思われる。

 ゲーム的なお約束としてここも『鉄鉱石』が出るので、猫はそっちの採掘でスキルLVを上げようかな。


 『鉄鉱石』といえば、いつぞやの初心者装備の圧縮実験で手に入った『魔鉄』。学園都市の方で要求されるクエストがあったらしいんだけど、ここでもクエスト要求されるらしくて、今『魔鉄』がかなり人気らしい。

 廃坑ダンジョン2層では、『鉄鉱石』の採掘ポイントで『魔鉄』がレアで手に入ると聞く。要求クエストがあるこの街のダンジョンでも、『魔鉄』が出るという噂だ。これは初心者も掘れるっていうんだから、猫も期待したい。

 まあ、ダンジョンいくのは街観光終わってからね。調べてみたらLV帯は猫より高いけど、1層はフィラメントしか出ないので『投石玉』さえ用意しておけばいけそうだ。特攻しにいく初心者もいるらしい。ガッツがあるな。


 黒っぽい石壁を眺めつつ、NPC露店街で名物だという飴を買う。わたあめみたいだけど、中にパチパチする飴が入っていてシュワシュワする不思議な食感。フィラメントを模した飴で『フィラメン糖』というらしい。安直!

 せっかくなのでお土産にいくつか買っていく。


「まいどあり。気に入ったかい?」

「パチパチしてとっても面白いにゃん~。猫、この街は初めてなんだけど、ここは見とけっていう場所とかあるにゃん?」

「そりゃあもちろん、炎のフーフェズの泉だよ! あの絶えぬ火は一度見て、浴びてきたらいい」

「面白そうにゃ、見てみるにゃん! 」


 火を浴びるってなんだろ? 普通に火を浴びたらダメージ負いそうだから、なにか特別なエフェクトなんだろうか。

 火なのに泉とはこれいかに。消火設備か?


「近頃は妙な噂もあるけど、やっぱり街のシンボルだからね」

「にゃあ、噂にゃ?」

「ああ、絶えぬ火が弱まってきてる、なんて、年寄り連中が噂するのさ。あんなに力強い炎なのにさ」

「にゃん~、本当なら困った話にゃんね」

「困るどころの話じゃないよ! だからそんなこと、あるわけないさ」


 年寄り連中が噂してた、ていうことは、昔を知ってる人が話してたってことだし、意外と本当のことだったりしそうだな。

 でもこの話題は突っ込むと店主さんの機嫌を悪くしちゃいそうだからここまで。


「ありがとうにゃん~、飴美味しかったにゃ!」

「いつでもまたおいでよ!」


 ただの観光のはずがなにやらクエストの予感~。今回はLV上の街に来ていることだし、なにか起きても手も足も出なさそうだぞ。……まあいいか、出来なくても出来ないなりに、回るのは楽しそう。

 なにより泉の火を浴びるなんて、ちょっとやってみたいもんね!


 GPSをもらえたので早速、炎のフーフェズの泉とやらに向かう。街の中心部にあった。まっすぐいっていれば普通に辿り着いていたな。

 小規模な噴水みたいなのを想像していたけど、トレドの泉のようなかなり立派な建築だった。主たる石像は2体あり、片方は男性で片方は女性。男性はローブ姿で松明を持ち、片手を差し伸ばしている。その手の先で女性は泉へ向けて跪いて祈るようなポーズ。

 そしてその2体を挟んで、コボルトをいかつくしたような石像たちと、人間の群衆の石像がにらみあっている。

 何かの場面を表してそう。調べたらわかるかな?

 泉の回りには街の人々が集まっていて、そこそこ混雑している。憩いの場…というよりは、なにかを待っているような。待ち合わせ場所……てわけでもなさそう。


 それにしても、男性の松明にチョロチョロ火が燃えているだけで炎の要素が全然ないのだが。これが絶えぬ火ってやつなのだろうか?

 本来なら水が入ってそうな泉は枯れ果てているし、これではたしかに弱まってきている説の方が信憑性があるんじゃない?

 首をかしげて通りすぎようとすると、呼び止められる。


「そこの猫さん、いくら風にしか興味がないからって、燃える火の泉を見ていかないなんてもったいないよ!」


 猫と同じくらいの背の、火狗族の少年だった。一見するとコボルトのようにも見えるけど、手足がコボルトよりもずっと人間に近いし、毛が短い。


「でも燃えてないにゃんよ?」

「なにをいってるんだか。ちゃんと見ないと!」

評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新にゃーん [一言] 火狗族はいかついのか…… 妖精族系だから、スピードアタッカーだと思ってた やっぱりあるんだな、観光名所 んでも、弱まってるって噂が出るってことはちとまずい事にな…
「これは世にも珍しいバカには見えない日なんだよ!」?
新しい街の観光はこの世界に詳しいNPCとの交流含めて楽しそうですね〜〜。 浴びられる火って不可思議現象っぽい!火魔法使いにとって重要な街ってことは、火魔法のディープな話とかも眠ってるのかな?なんにせ…
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