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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
5章 金欠猫には旅をさせよ~わくわくの森旅編~

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24.やわらか魔法師の祖

「精霊の祠にあやかしの火が現れる? そんなこと、あるわけないではありませんか」

「いや、見たことないなあ…」

「あやかしの火かはわからないけど、いつだったか、妖精の導きで迷い込んだ人間が妖精を見たって騒いでいたことならあったよ」


 うーん、あやかしの火じゃ反応は鈍い。まあ、あなたのお墓に幽霊出ますか?はちょっと印象悪い質問だよね。

 方向を変えよう。


「精霊の祠に妖精? たまに現れるって聞くわ」

「妖精はよく見るよ。小さな妖精なんかはよく祠で遊んでいる。ほら、妖精は精霊さまと相性がいいだろう? だからじゃないかな」

「妖精の種類? 姿を隠してるものが多いからわからないな」


 妖精は結構いるらしい。しかし姿を隠している。妖精は姿を隠していると光の玉になってしまうので、精霊と区別がつきにくいし、何者かわからない。

 総合すると小さな妖精が多そう。てことは、やはりあの人間大のあやかしの火が現れたのはおかしいみたいだね。

 ……と、メールだ。


『先日はメールとアドバイスありがとう存じます! 無事新しいアイテムが出来上がりましたわ。また何かお役に立てることがあれば、いつでも仰ってくださいませね』


 ティアラさんからだった。

 どうやら先日の、廃鉱探索のための「火でもない、光でもない明かりアイテム」が完成したらしい。名前は『蓄光ランタン』、鍛冶とガラス工の複合アイテムだそうだ。

 写真スクショが添付されていたが、まるっこいガラス玉と蔓草のような金属が絡み合うデザインで、ちょっと欲しくなってしまった。マイルームに飾りたい。

 そういえば、ティアラさんは鍛冶もやってるから思い当たることがあるかも。おつかれさまメールを返信ついでに、ちょっと聞いてみることにする。


『ティアラさんは『大地からなる大地と触れあうもの』というフレーズで何か思い当たるアイテムはないにゃん?』

『まあ、謎解きですの? またクエストを拾われたのかしら! さすがですわ。今宵は復活(まつり)と聞きますから、くれぐれもお気をつけて。謎解きは、そうですわね…、ガラスで大地と触れあう、ガラスの靴というのはどうかしら?』


 さすがティアラさんぶれないガラス推し、とちょっと笑ってから、ふと振り返って考えてみる。

 マルモ――ねずみ。鐘が鳴る。ガラスの靴。収穫した野菜――。


「もしかしてシンデレラにゃん!?」


 あわててティアラさんにはお礼メールを送信し、ペチカちゃんと連絡をとる。


『た、たしかにシンデレラありそうですね!?』

『どうしよう、ガラスの靴をお願いした方がいいにゃん?』

『いえ、ガラスの靴はたしか諸説あったはずです。皮の靴とか、金の靴銀の靴とか…』

『にゃあ、それに何を作るにしてもレシピは必要にゃんね』

『はい、それも情報収集してみますね』

『よろしくにゃん~』


 レシピについては、まずはティアラさんに『ガラスの靴』ないし『銀の靴』にあたるアイテムがないか聞いてみることに。

 あと情報収集しておくべきは鐘とカボチャかな。カボチャはプキン、橙と緑が主にある。


「プキンはこの辺では育てていないね」

「この村で食べるなら、プキンよりラコラがおすすめだよ。今なら赤と黄色がある」

「大地の収穫といわれると、ラコラかキャロかなあ。土のなかで出来るものならポテ芋もあるけど、この村では育てていないから」


 まさかのラコラだった。

 たしかにヤマビコさんに出荷しようと思って取っておいた最後の白ラコラがインベントリには入ってたんだけども!

 あとは鐘についても調べてみた。


「この村にはご覧の通り鐘楼はないから、決まった時間に鐘が鳴るってことはないよ」

「鐘の音か。以前、この村を『狂った精霊』が襲ったことがあったけれど、その断末魔は鐘のようだったと聞くよ」

「鐘の音といえば、この前の月夜に誰かが聞いたって言ってたわね」

「鐘の音? ああ、たしかに聞いたよ、赤月夜の夜だったからよく覚えている。真夜中に鐘の音がして起き出したら、真っ赤な月が天辺にいたんだ。それで花畑の方が異様に明るかった。あれはきっと、妖精の国の鐘だったに違いない」


 なんか不穏な話が出てきたな。

 でも『狂った精霊』が出てくるというなら、それは過ぎ去ったメインストーリーの話だろう。たぶん今回は関係ないはず。

 そして赤月夜に花畑が明るくなるといえば精霊だ。妖精の国との関係性は不明。この話だけじゃちょっとわからないな。

 青月夜だとしたら、どこになるだろう? たしか水辺や、淀みなく流れのあるところ、なんて聞くんだけども。


『残念ながら、金属で出来た靴となりますとサバトンなどのごっつい靴一択になってしまいますわ。これを銀や金で作っても雅ではないですわね。『ガラスの靴』はミニチュアの置物としてはあるのですけれど、履くことは考えられていないのですわ。お力になれず申し訳ないです』

『とんでもないにゃん、調べてくれてありがとうにゃん~!』


 ううむ、ガラスの靴を手に入れるのは難しそうだ。

 他に何か知恵を貸してくれそうな人はいないだろうか。ガラスの靴を履いてる人にも聞いてみるか。


『フーテンさん、ガラスの靴で思いつくことって何かないにゃん?』

『にゃん~? 『純魔の系譜(マギカ・ブラッド)』のこと? それ以外?』

『どっちでもにゃん』

『ええ……、もうちょっとヒントをおくれ』

『にゃあ、ルイネアの精霊の祠でガラスの靴っぽいヒントをもらったにゃん~、でもガラスの靴は手に入らなさそうにゃん。この際、銀や金の靴の話でもいいにゃ』

『猫ちゃんまた何か拾ってきてるにゃん? ルイネアのガラスの靴か~。シンデレラといえば、ユーリハーは小さい頃から銀髪で灰被りって言われてたって話がメインストーリーにあったね~』

『にゃん? 銀髪だとダメにゃ?』

『ルイネアは基本的に金髪で、長い年月を経て銀髪になるみたいな話があるみたいよ。今でこそユーリハーの銀髪は年月相応だけど、昔はそうでもなかったとかなんとか』

『そんな背景ストーリーがあったにゃんね~』


 ちなみにユーリハーはガチの魔法師で、彼女があまりにもHPが低いため、それで魔法師はシンデレラって揶揄され始めたんだって。

 へえ~~。

 ユーリハーは元祖やわらか魔法師だったのか。


『まあ直接ガラスの靴は関係ないんだけど、って、そうだ。たしか『ロキの靴』ってアイテムが魔法師の装備にあったはず。あれは銀の靴だね~』


 『ロキの靴』は見た目は銀の革靴だが、ヒールが銀細工で出来たハイヒールで、オシャレ装備としても人気がある。なお男女兼用。

 銀細工部分が大地と触れあっているし、用件は満たしているようにみえる。


『ありがとうにゃん~! とっても参考になったにゃ』

『どういたしましてにゃん~! ところでルイネといえばなんか精霊の丘で大規模レイドあるみたいだけど、その関係?」

『にゃん?』


 精霊の丘は赤月夜の精霊スポットがあるという、花畑のある丘だったはず。さっき花畑が明るかったって話を聞いたばかりだけども。

 かつてメインストーリーで大きな戦い――つまりレイドが起きた場所で、鎮魂もこめて花畑になったのだとか聞いた覚えがある。


『今のところ戦闘になりそうな気配は全然ないにゃんね~』

『じゃあ無関係かな? ならよいか~。こっちイベント中で今回はそっちにいけないから残念~』

『にゃあ、風猫族の虎猫さん会えたにゃ?』

『牢屋監禁なう』

『谷底送りにゃ!?』

『ニャハハ。暴れてくるわ~~』


 ダイアモンドの谷へ行くらしい。まあ巨鳥といっても弱点は風、きっと大丈夫なのだろう。たぶん……きっと……。や、やわらか魔法師シンデレラ心配…!


 それにしても、ルイネで大規模レイドか。全然それっぽい話は出てない、よね? 強いて言えば死者の国だか妖精の国だかがどうこういってたやつくらい?

 こっちは無関係のイベントだろうし、猫たちのLVではお呼びじゃないだろうから、気にしなくてもいいだろう。


 早速、ペチカちゃんと情報共有。


『なるほど『ロキの靴』ですか。そういえばあれも銀の靴でしたね。これは合ってそうな気がします!』

『じゃあ、『ロキの靴』を手に入れてみるにゃん』

『あ、それなら私が買います』


 LV帯的に『ロキの靴』も視野に入り、もし違ったとしても無駄にならないのでとペチカちゃんがロキの靴をマケボで入手してくれることに。

 たしか『亜妖精ブーツ』の次に必要になる魔法師の靴装備だったはずだ。……猫、実はペチカちゃんにLVを抜かれている。くぅ!

 猫だってもうすぐLV30になるにゃん!


 それからペチカちゃんが仕入れてきてくれた情報で気になったのは、精霊の祠が精霊スポットの可能性があるという情報だ。


「青月夜には村の中で精霊が見える、ていう情報がちらほらあるんです。見えた場所を考えると、どうも精霊の祠があやしいんですよ」

「にゃあ、青月夜の精霊スポットは水辺って言われてるにゃ。中にやはり湧水でもあるにゃん?」

「たしかに水琴窟みたいな音がしてましたもんね。どこかしら水のわいてるところはありそうです。……精霊スポットと緑の火は無関係かもですけど」

「同じところにあるんだから十分あやしいにゃんよ~」


 一通り情報とアイテムが集まったので、月夜前に一度、精霊の祠へ入ってみることになった。

 もう日は傾き始めており、夕暮れの赤い光が差し込んでいる。


「ユーリハーさまから伺っています。どうぞ中へ」


 祠前ではルイネアの衛兵さんが中へ通してくれる。金髪のルイネアだ。年齢が関係しているなんて知らなかったな。そういえば隠者の村のご長寿ルイネア、シャイアネイラさんも銀髪だったっけ。


 中に入ると真っ暗な祠を、『灯』を掲げて奥へ進む。しばらく進むと、やはり緑の火が揺らめいているのが見える。

 カン、コロ、カンと金属を奏でるような水音が反響する。


 緑の火の前にたどり着くと、炎が大きく揺らめいた。

 おお、反応がある。


「大地の収穫、大地の生物、大地からなる大地と触れあうものがある……」

『合ってたみたいですね!』

『やったにゃん!』

評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新にゃーん [一言] ペチカちゃんが早いのか、猫がのんびりなのか…… 蓄光ランプはちょっとほしい
大丈夫かなーシンデレラ商人w
フーテンさん、まさかのやわらかシンデレラ(笑) ペチカちゃんと猫ちゃんのコンビは、ほのぼのしてるのに次々にイベント引き当ててすごいですね
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