6.小さな本棚
早速新しい『モンシラのタマゴ』をテイムして(25回)、『タマゴポケット』にインした。孵化は一週間後。
ラモはマイルームで放し飼いにしようか迷ったが、しばらくは連れて歩くことにした。生産タイプとはいえ、LVを上げるには戦闘をしなければならない。その辺はプレイヤーと一緒だ。
HPがめちゃくちゃ低いので危険な場所には連れていけないが、幸いにして廃都エリアは初心者向けだ。奥地へいかない限り、そうそう強い敵は出ない。もし出たとしたら猫ごと送還だ、それはもはや事故なので気にしないものとする。
あとは重要なのは、新しいタマちゃんが孵る前に新しい『従魔の証』を手に入れないといけないくらいかな。『迷子の犬狼』クエストをやらなければ。
生産型従魔はPTに入れなくても工房や畑などで力を発揮してくれる。しかしそのまま放置していると好感度が下がっていくので、おやつを奮発したり、ときどきはPTに入れて連れていったりということが必要になる。
猫の従魔が増えたらラモには庭や畑で働いてもらうことになるが、それまでは一緒にいてもらおう。幸いにしてラモは自分で飛んで移動できるし、移動速度も遅くない。ときどきルビーの絨毯で休んだりもしていて、3匹がワチャワチャしているのはかわいい。
レトは青虫の頃はちょっと引き気味だったけど、蝶になってからは小さい手(脚?)同士でハイタッチしたりとコミュニケーションをとっている。ルビーはその様子を満足げに眺めている。
……ハッ!? ドゥドゥーだから!? ルビー先生、妄想タマゴはまだ早いと思います!
そんなわけでドゥーアに戻ってきた。月夜が明けたので人通りは少なくなっている。といっても、プレイヤーの地人族人口はかなり多そうだ。裁縫師たちにとってアルテザがホームなように、鍛冶師たちにとってはドゥーアがホームなんだろうね。
まずは行政施設へ向かう。猫は久々に新しい本が読みたい!
欲もあるけど気になることもある。『ニャルコール』とか植物の異変関連とかね。こういう時期限定のものはイベント扱いになっており、その時期しか関連書物も出てこなかったりする。
アルテザの図書室は見たけど、恵雨季ではなかったからなあ。発つ前に気づけたらよかったね。
ちなみに行政施設にはポストがあるのだが、お土産としてポストカードが買える。これを買うとメニュー画面でドゥーアを示すアイコンがポストカードの絵柄になるというちょっとしたお楽しみコンテンツである。ちなみに何もしないと文字だけのシンプルさ。
ドゥーアのはいかにも洞窟都市らしい入り口から大通りを見た風景のものだったので購入。お値段は1000zほどと、メニュー画面に手をいれるにしてはお安い。気づいた人だけのお遊び要素なんだろうね。
購入したポストカードはマイルームに『コルクボード』があれば貼っておける。猫はまだ買ってない。次に欲しい家具である。
それからポストカードなのでもちろん手紙として出すことも出来る。切手代込み。
今回はお手紙の予定はないのでこのまま持ち帰り。
そうそう、お手紙といえば先日、自由都市の投擲専門店『緑の軌跡』の店主さんからお手紙がきたのだ。以前『宝魔法玉』を預けた件で、とのことで。NPCからの初手紙ということで大事に保管してある。
『宝魔法玉』はちゃんと猫が想定した通りの効果が出たそうだ。つまりぶつけると魔法キャンセルに使える。ただやはりタイミングがシビアらしい。でも上級の投擲師にとってはありがたいアイテムとなるだろう、ということで取引が決まった。なかなかいい報酬になるので、猫の新しい収入源となっている。
ちまちまと猫も稼いでいるのよ。そんなわけでドゥーア観光の軍資金はちゃんとある。お土産だって買えるのだ!
でもまずは図書室。
『マジックセンス』をかけて早速突入。
本もいっぱいだけど光って見えるところもいっぱいだ。調べていくと、『動く文字』が多め。捕まえて『硝子瓶』に詰め込んでいく。
『不思議な栞』は2枚と少なめ、残念。いや、コレクターになるつもりはないし、カードゲームもしないんだけど。でもなんか欲しくなるよね、栞。
チェックが終わったらあとは読書時間だ。
従魔のみんなは施設に入る前にマイルームへ戻したけど、レトは肩に乗せてきた。早速本へと駆けていっている。はいはい、それが読みたいのね。小型の絵本だったので机の上へ開いてあげたら、後は自力で読めるようだ。
レトが読み始めたのは『森の食べ物』。後で猫も読んでみようっと。
気になる本はないかな~と眺めていると見つけたのが『メエメエ様と人形遣いの村』。……これはもうちょっと前に読みたかったな! パラパラ読んでみたけど、アルテザ冒険の前にこれがあれば…!という内容だった。くっ、こういうところにヒントが隠されてるんだよなあ!
たしかに順路としてはドゥーアからアルテザなので、逆順で進んでる猫が悪いんだけども。
次に見つけたのは『森に棲むもの~動き出す緑の怪物~』。このサブタイトルどこかで見た覚えが…?
あ、魔性植物の本かも。中盤に見覚えのある記述がある。前に読んだ本の増強補完版みたいなものだろうか。
『魔性植物~動き出す緑の怪物~』はマンドラコラを調べたときに読んだんだっけな。すでに懐かしい。あの頃白ラコラは歩いてなかった……、いやすでに歩いてたか? まあいいや。
森には野生のマンドラコラがいるらしい。花を咲かせれば倒せるとわかっているので、事前に気づければ勝てそうかな。
トレントは斬攻撃に弱い。火に弱そうに見えるけど火事になる割に倒せないので絶対やらないように、などと書かれている。
あと気になるのはアルラウネだが、たとえ片言でも人語を話すアルラウネと出会ったなら決して敵対しないこと、とある。話さないアルラウネは倒してもいいらしい。どういう基準??
詳しく読んでみると複雑な発声器官のあるものとないものがいるらしく、あるものは強力な魔法を使うが、ないものは使わない、という区別なんだそうな。
魔法を使わないからといって弱いわけではないのだが、複雑な発声器官を持たないアルラウネは群れないため比較的討伐が安全。逆に話すアルラウネは必ず群れを持っているので、手を出すとえらいことになる、とも。
特に時を経たアルラウネは知識も豊富で人のように集落を築き、家畜を飼って暮らしていたりもする。そういった村へ訪れた際には、敵対すると生きて出られることはないと言われているらしい。
ふむふむ。アルラウネもいろいろいるのね。
なおトレントの話すやつも希にいるけど、これは気にしなくてもいいとある。トレントが話し始めるのは木の成長によるものではなく、精霊や妖精が宿っているだけなのだそう。もちろんいい精霊もいるので、話してから決めるといいとのこと。
それからトレントが枯れ始めるときは、トレント全体が好戦的になるサインなので要注意だそうだ。
うーん、喋る植物、なかなか厄介そうだ。出会わないことを祈ろう。
ちなみにマンドラコラは歌ったり叫んだりはするけど人語を話すことはないようなので安心した。
動く植物以外は、わりとよくある動物タイプが多いようだ。特に新規で気になる魔物はいなかった。これなら猫も大丈夫そう。
気になるのはやはりブラックニャッコがいるようなのと、小型のカーバンクル種も希に出るって書かれているところかな。
木の芽時は植物だけのことではなく、それを食物にする草食動物にも影響する。繁殖し増える、成長途中の魔物が増える、というようなことが書かれていた。そういう体でゲーム的には生息数が増えたり、新種(?)が出たりするってことかな。
気になるのは小さな魔物ほど繁殖力が高いという点だ。小型のカーバンクル種……、うーん。まあ会ってもいないものを心配しても仕方ないな!
レトの読んでいた『森の食べ物』には、『ニャルコール』が書かれていた。やはりこの時期は虫が増えて『ニャルコール』が増えるという話みたい。
虫こぶそのものが増えるので、インクの材料になる『迷いの木コブ』なども採取出来るようになる。おお、『魔道工』でインクも使うし、良さそう。探してみよう。
他には『薬草』やその他の草は品質のいいものが多く採れるなんて利点もあるらしい。
へええ~、……いやいや、待て待て、猫は迷いの森を戻るんじゃなくて、廃都ルイネへ向かうのだ。順路を逆走しているからヒントがすでに来たところのしかない!
まあいいか。次に戻るときの参考にしよう。
あと気になったのは、図書室内にミニチュアサイズの小さな本棚が置いてあったこと。レトにピッタリサイズ、だけどそんなわけないしなあ。
レトは気に入ってくるくる回ってたけど、やはり本棚の中身は読めないようで首を傾げていた。
うーん、やはりビブリオマルモになるべきだったのかなあ。かわいそうな気もしてしまうが、でもただのマルモからビブリオマルモに進化する道が魔法以外にもあると思うからさ。気長にレトが文字が読める方法を探していこう。
しかしこの小さい本棚はなんなんだろうね? 猫が読もうとしても『小さくて中身が読めない…』の表示が出て読むことが出来ない。
本も読み終えて他に気になるところもなかったので、図書室を出て受付で聞いてみる。
「小さな本棚ですか? あれはチネズミ族の本棚ですよ」
「にゃあ?」
「他所から来られた方だとご存知ないかもしれないですね。昔、この地にマルモに似た、賢いマルモの種族――地鼠族がいたという昔話がありまして」
受付さんいわく、その地鼠族が洞窟を掘り、洞窟都市を築くのに力を貸してくれた、という伝承があるそうだ。しかし地鼠族の国は狭かったので、それを人が広げて今に至る、とか。
それって洞窟都市だった頃の、乗っ取っちゃった都市の主が地鼠族だったってこと?
マルモの巣を乗っ取ったというと、なんかちょっと思ってたのとはかなり違うんだけども。
「我々は地鼠族と共存してきましたから、奥まったところには、小さな地鼠族の部屋があることも多いんですよ」
へええ。攻略サイトとかにはなかった情報だ。来てみないとわからないことってあるもんだね。
掲示板を見てみると、地鼠族の名前はないけれど、ミニチュアの部屋があった話は結構あるみたい。ドゥーアは元々は小さい妖精族の都だったというのは、周知の事実のようだ。
ちなみに地人族はドゥーアの最初のダンジョンの奥にある廃坑の、更に奥にある地下都市グリングに住んでいるらしく、ドゥーアにいる地人族は出稼ぎである。
地人族の故郷というのはその地下都市らしくて、種族クエストが難航しているという噂も聞く。
ついでにいつも通り『動く文字』や『不思議な栞』が出ていたにゃんよ~と報告をして、行政施設を後にした。
次はお買い物!
評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。
今週もお疲れさまでした。
次回更新は3/10(月)です。




