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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
1章 初心者猫はお金が欲しい
21/281

20.召喚チュートリアル

区切りの関係で短めです

 サモナーギルドは無事登録出来て、『見習いサモナー』になった。


 登録したことでチュートリアルが受けられるようになったが、警告として『チュートリアル中に契約した召喚獣・召喚妖精は放棄できません』と表示される。


 『召喚』は『使役』と違ってスキルLV1から3体と契約出来るが、使役と違って召喚契約の解除は出来ない。契約数はLVを上げると増えるけど、今のところ最大で20体。

 LV30で最大数に到達して、そこからは増えないそうだ。なので最初のチュートリアルでの選択を後悔している人も多いそう。


 ちなみに召喚獣にLVの概念はなく、通常進化もしない。代わりに魔石や宝石を貢いで進化させるらしい。金のかかるスキルだ。

 『使役』は呼び出すのにPT枠を必要とするが『召喚』は必要としない、など、性質こそ似ているけれどさまざまに差別化されている二つのスキルだが、実際調べてみるとかなり違う。


 実は移動用の騎獣と割りきるなら召喚の方が多い。

 使役は何しろ食費がかかるし、無理な行動をさせると好感度が落ちていうことをきかなくなったりするし。その点、召喚獣はそういうことがない。

 進化させるには一定時間召喚して魔力を馴染ませる必要があり、これを共鳴度というのだが、信頼や好感とはまったく関係なく、単純に時間で決まる。


 そのせいか、意思のない存在というのも多い。

 たとえば召喚用の騎獣は『ファントム』と名のつくものがほとんどで、獣の形で存在しているモヤのようなものだ。触れるし乗れるが意思はなく、指定した通りに動く。絶対服従で扱いやすいそうな。

 便利は便利かもしれないけど、私の求める旅仲間とは違ったので、初期スキルは『使役』にしたんだよね。


 閑話休題。

 チュートリアル、受けます!

 猫の半分はチュートリアルで出来てるにゃん。


 『召喚』のチュートリアルは『使役』と同じく、ミニフィールドの中で好きなのを見つけてきて契約してみましょう、というものだった。


 フィールドなのにルイがいない心細さよ…。


 スタート地点には召喚講師がいて、あれこれと『召喚』について教えてくれる。

 だいたい掲示板や攻略サイトでみて知ってる内容だ。開始前に使役か召喚で一応、悩んだから猫は詳しいんだ。


 召喚契約には『召喚石』というアイテムが必要。ギルドで購入可能。チュートリアル参加者にはおひとつプレゼント。やったぜ。


 『召喚石』は契約失敗しても失われないが、契約が成功すると『契約石』という廃棄譲渡売却不可のアイテムになる。

 一度結んだ契約は容易には解除できないので、絆を結ぶ相手はしっかりと吟味する必要がある。

 などなど、講師の話を聞く。


 知らなかった情報は『妖精との契約は青月夜じゃないと出来ない』『擬似的に青月夜にするためのアイテムも存在する』という話かな。


 青月夜って、あの図書館ダンジョンのルイネの林檎があったところみたいな月かな? 青白かった。あれは特殊フィールドだったっぽいけども。

 ならあそこに妖精がいたら契約出来たのかもしれない。


 ちなみに妖精に妖精族は含まれない。

 妖精と妖精族の違いは、本体が現世うつしよにいるか幽世かくりよにいるかの違いらしい。

 幽世というのは現世以外のすべての世界を指すときに使う言葉で、精霊界も妖精界も、ついでにいうならリアル世界も幽世に含まれている。

 つまりプレイヤーは、こちらでは幽世から来た妖精の一種と認識されているわけだ。なんだかファンシー。


 召喚獣と召喚妖精の主な違いは、魔法型か物理型かということだろう。召喚獣にも魔法を扱う種類は多くいるが、妖精ほど多岐にはわたらない。

 また召喚を生産に使う場合には、召喚獣は力仕事や単純作業を担当するが、妖精はもっと複雑だったり特殊な作業が出来る。反面、召喚獣ほど生産性は高くないという特徴がある。

 ざっくりいうなら前衛は召喚獣、後衛は妖精という感じだ。召喚獣は力仕事、妖精は職人。


 ひとまずミニフィールドをうろうろしてみるけど、使役のときと違って強そうな魔物やふわふわした光?などが飛んでいて、様子がかなり違う。


 魔物は飛びかかってこそこないが、かなり強そうなのがいる。

 使役のミニフィールドにいた魔物はスライムっぽいジェリとかミミットとか、いてもポルクスかフルクくらいで、みんなもうちょっと穏やかな顔をしていたもんだよ。

 こっちのフルクやポルクスは一回りはでかいし、面構えが凶悪だ。ミミットは額に宝石?がついている。あれは角じゃないよね? 杖には出来なさそうだし。カーバンクルのミミット版か?


 召喚獣との契約は気に入る貢物を差し出すか、戦闘で調伏した上で召喚石に『封印』するかのどちらかだ。

 同じく戦闘で調伏するが、『使役』のテイムは魔物が生存している内に契約を結ぶのにたいして、召喚は魔物が死んでから『封印』で契約が出来る。そのかわり契約できるのは特殊個体だけ。


 蘇生薬というアイテムがあるけど、あれは死後その場に止まっている妖精(=プレイヤー)を肉体へ戻すための薬らしい。

 それと同じく、体の外で魂が止まる個体が魔物にもいて、その魔物ならば死後、体の外に出た魂?を『封印』することで契約出来るというわけだ。

 もちろん必ず成功するわけではなく、相手が契約してもいいと同意した場合に限る。


 そんなわけで、ここにいる魔物は強そう。とても戦闘なんて出来ない、死んでしまう。

 チュートリアル中は死んでも講師の前に戻されるだけらしいが、そんなデスマラソンは嫌だ。


 戦闘で仲間にするやつ以外がいい。

 …それってつまり戦闘向けじゃない召喚獣ってことでは?

 戦闘スキルが欲しかったはずなのに、これは服を買いに行くための服がない現象では??

 まあいいか。



 遠巻きに草原を走っているモヤっぽいものが見えるので、あれはたぶんファントム系の騎獣だろう。

 召喚石で触れると契約出来るらしいが、当然逃げられる。相手が超速い鬼ごっこだ。

 うちにはもうルイがいるから騎獣はいらないし、鬼ごっこもなー。


 何かよさそうなのはいないかなあ、と眺めているとまるっこいネズミがいた。


 おお、君は皆が契約解除したいナンバーワン召喚獣の『マルモ』ではないか。


 チュートリアルで魔物に負け続けた人々が妥協で選んでしまう魔物らしいが、後々悔やむことになるので絶対に別のを探せとまで言われている魔物だ。

 一部に熱狂的なファンと擁護の声はあるが、その辺の草原でも捕まえられるので、チュートリアルでとるのはもったいないらしい。


 マルモが出来るのは、罠発見など斥候の真似事に危険察知、それから石礫による攻撃。初期には重宝することもあるが、別の魔物で代用可能なので役目が失われていくそうな。


 マルモは特殊進化すると斥候技術が上がるのだが、ネズミのため、意思疏通が困難という難点がある。

 たとえばあちらの道に魔物がいた、という場合でも、レッドゴブリンなら『三匹、四つ足』くらいは手指や手振りで簡単に伝えられるが、マルモは三匹と伝えるのにも時間がかかる、という具合だ。


 従魔や召喚獣はこちらの話すことは理解してくれるが、向こうが言いたいことは察するしかない。人型じゃない斥候はそれだけで不利だ。

 同じ理由で鳥も話題に上がるが、鳥はまだ空からの索敵があるので、差別化出来ているそうな。


 うーん、鳥か。

 ここでも飛んでるけど遠くにしか止まらないし、全容がわからない。サイズがやたら大きい気がする。

 顔は見えないけど、戦闘で倒さないと駄目なら凶悪なお顔なんでしょうね。

 『投擲』を覚えてない猫では、たとえ当てられても倒すまではいけないだろう。

 無理。


 どうしようかなーと思いつつ、じっとマルモ観察していると、バッタを捕まえてムシャムシャしていた。

 おや、バッタ退治出来る?

 君、採用。


 虫を捕る鳥もいいなと思ってたけど、鳥にマイルームは狭そうだしね!


 マルモは倒しても簡単に契約出来るが、その辺で拾った石を差し出してもお手軽に契約出来るらしい。

 その辺で拾わなくても石ころは持っているが、せっかくだし、石も拾いにいく。


 このミニフィールドにはさまざまな召喚獣候補がいて、その中には綺麗な石を好む魔物もいるので『水晶石』というアイテムが拾えるらしい。


 洞窟のような場所を見つけた。

 お、ここ採掘出来る。久しぶりのツルハシを出してカンカンと…、あ、なんかいる。


 これが妖精かな? 帽子を深く被った、海外の飾りによくあるような小人。ノームとかかな?

 ふてぶてしく座り込んでニヤニヤしているのは、青月夜じゃないと契約出来ないからだろうか。


 チュートリアルの妖精は貢物をもらうだけもらって逃げてしまうのでトラウマ製造機らしい。

 可愛い妖精ちゃんに貢ぎまくったのに逃げられて、実は絶対契約出来なかったと後で知ったとか、聞いていたのに忘れてたとかよくある話らしい。妖精は見つけにくいので、舞い上がって記憶が飛んじゃった人が結構いるとか。


 そんなわけで妖精は無視だ、無視。

 気にせず石を拾っていると、なぜか近くにきて眺めている。そして何かこっちだ、と指差すのでついていくと、なんと『水晶石』があった。おお、すごいぞ妖精! 石を探してくれる妖精もいいなあ。


 これは何かお礼に貢いでおくか。妖精はみんなキラキラしたものが好きなんだっけ?

 今拾った『水晶石』を渡すのも本末転倒なので、水晶石に似てなくもない、ということで『ビー玉』を渡してみた。思いのほか喜ばれたのでよかったよかった。


 うん?持ってる『水晶石』と『ビー玉』を交換してくれるの?

 じゃあ5個どうぞ、と渡すとどこか悔しそうに『水晶石』3個くれた。そして妖精は消えてしまった。石探しにいったのだろうか?


 マルモの元へ戻り、ふと思い立って右に『ビー玉』左に『水晶石』を差し出すと、『ビー玉』に寄ってきた。

 マルモが嬉しそうにビー玉に抱きつく。ぺかっと光って『契約可能です』と表示されたので、召喚石を近づける。

 フッとマルモの姿がかき消えて、代わりに透明だった召喚石が薄い緑色に変化する。


『召喚獣に名前をつけてください』


 召喚獣になると性別はなくなり、無性になる。仲間の名前はラ行にしようと思って、先に決めていた。


 『レト』


 名付けると、契約は完了し、キラキラとした光が石に降り注ぐ。『召喚石』はマルモの形になり、『契約石』になった。

 あらかわいい。翡翠の根付みたい。


 完了した契約石を講師に見せると合格をもらえて、チュートリアルは無事終了した。


ようやくタグの『サモナー』が詐欺じゃなくなりました。

先につけてしまって反省。


猫自身がまだ特にブレーメン(の音楽隊)を意識してないというのもあり、モチーフに関係ないものもしれっと仲間に入る。


評価、ブクマ、イイネありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
こういう寄り道ばっかりのVR記大好きです。
[一言] 外れネズミに敗北した土妖精ェ… 害虫退治できないからしゃーない
[良い点] 寄り道って楽しい! 「にゃん」が他プレイヤーへの感染度が高いのがいいにゃん。 [一言] 作風大好きです、応援しています。
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