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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
4章 成金猫はごろごろしたい
207/281

39.騒がしい夜

 ノーカさんからは更にメールが来た。


『情報助かります。薬草類も卸せるものがいますんで、もし必要ならまた声かけてください』

『ありがとうにゃん~!』


 リーさんとポユズさんはノーカさんが来るのを待って、薬草類を清算後にケータくんの元へ合流することに。

 ケータくんの受けていたポーションのクエストは、属性銃店主が消えたあと別のクエスト主に受け継がれて続いているらしい。

 ちなみに無人販売所はちゃんと紹介されたけど、その後さらに依頼したくせに消えちゃったそうな。あの店主気まぐれすぎるな??


『ルドルフさんいわく『妖精の店』って言われてるらしいにゃんね』

『妖精の店……、掲示板では見なかったニャン。新しいとこかもしれないニャ』

『暗黒夜近辺だけ営業してるって話にゃんよ~』

『そんなレア店だったニャ!?』


 そうだったんです。

 ケータくんに物資と応援の合流を伝えたら、猫は気まぐれ散歩のお時間。

 マーケットのあちこちをうろうろしちゃうぞ……ていうと猫ったらめちゃくちゃサボってるみたいだな。


「猫ちゃんどちらかというと働き者じゃない?」

「それはそれでロールモデルがあってない気もするにゃん」

「ロールモデルとは」

「猫は気まぐれにいきたいにゃんよ~」

「その点はばっちりにゃんね~」


 ばっちり気まぐれというのもそれはそれでどうなんだ??

 例によって生産スキルがなくお暇になってるフーテンさんが猫の街歩きのお供をしてくれている。


「そういえば適当に歩いてるみたいだけど目星はついてるの?」

「猫はいつでも気まぐれにゃん!」

「やっぱりばっちりにゃん! 行き当たりばったりね~」


 はい。

 初めて来た場所で土地勘なんてあるわけないですし。そもそも魔道具マーケットはクエストしてGPS手に入れながら歩くか、しらみ潰しに歩き回るかでしか目的地に辿り着けない街って言われている。

 猫、属性銃目的で来たからそれ以外のクエストはノーチェックだったのだ。


 さて、『不思議な栞』を置くにしても、集めるにしても、誰かに話しかけないと始まらない。しかし魔道具マーケットは混雑してきているわけで、誰も彼もがクエスト目当てにNPCに話しかけていている。もちろんNPCとは何人か同時に会話できるようにはなっているんだけども、なんとなく味気なくて猫は好きじゃない。

 とはいえ好き嫌いを言ってる場合でもないかな~。と思っていたら、いた。誰も話しかけていないフリーのNPCだ!

 NPCは緑のフードを被っていて種族は不明だが、スタイルからすると女性と思われる。


「こんにちはにゃん~」

「………」


 あれ、返事がない。


『『不思議な栞』を渡しますか?』

「にゃ」


 なんか変な選択肢が出たぞ??


『猫ちゃんが謎の隙間にこんにちはしたら新しいクエストが出てきた件』

『人がいたにゃんよ~~!』

『PT猫ちゃんだったにゃんよ~!』


 間違い通話チャットだった。またミスったのかフーテンさん。PT組み直してたからね。


『それにしても人なんている~?? 俺には露店の隙間に話しかけているようにしか見えないんだけど』


 フーテンさんがルイを回り込んでしげしげと猫が話しかけているNPCを眺める。わりと近距離にいるんだけど、見えないとな??


『猫には緑のフードを被ったお姉さんが見えるにゃんよ』

『なにそれ怖い。同じPTなのにおっかしいな~~。猫ちゃんだから??』

『風評被害にゃん~! 『不思議な栞』が関係してるみたいだし、栞を持ってるかどうかで分岐してるのでは?』

『あ~~、それはありそう』


 とりあえずフーテンさんに適当な栞を1枚渡してみる。すると、無事にNPCの姿が見えたそうな。


『カードバトルとかトレード用のNPCなのかも?』

『にゃあ、そのパターンにゃんね。問題は今回のがトレードなのか、それとも然るべき場所ってやつなのか?』

『なんか関係しそうな柄あったっけ?』

『うーん??』


 パラパラと栞をめくってみるが、種族も不明だし、関係しそうな柄はない。強いていえば緑のフードから連想して、森の絵柄の栞がもしかしたら?というくらい。

 何がどう進むかはわからないが、このまま無視するには気になる展開だ。ひとまず森の栞を渡してみることにする。


「この栞でお願いするにゃん!」

「……」


『『不思議な栞』を交換しますか?』

「はい」


 どうやらトレードであってたらしい。そして交換前に変えてくれる栞の柄はわからないとな。

 猫の前にくるくると回りながら新しい栞が現れるのと、緑のフードのお姉さんがフッと消えるのは同時だった。


「にゃあ」

『何度も交換は出来ないってことかね~』

『トレードなら崖の栞を出しておくべきだったかもしれないにゃん』

『いやあ、ここ森もないでしょ』

『それもそうにゃんね~。あ、よさそう』


 新しく入手した栞は、どこだかの市場の店先が描かれている。…というか、あれ? この栞の絵ってまさに今、ここじゃないか?

 フーテンさんにも見せてみると、「それっぽい」と見解の一致をみた。


「これを設置するってどうするにゃん??」

「店の前に置く、て感じじゃなさそうだねえ」


 うーん、この角度でこう!て感じの絵柄なんだけどな。と栞を前に出して絵と店先を比べてみる。

 すると栞がキラキラと発光しはじめた。


「おお、当たり?」

「ぽいにゃ」


 栞が次第に猫の手を離れて高く浮上していき、金色の光の粉を周囲一帯に撒き散らすようにして頭上でパアンと霧散した。

 そしてポンと説明ウィンドウが出る。


『土地タイプ:店 毎ターン販売物に応じて属性のマナを1発生』


「カードゲームだこれ!?」

「わあ」


 妖精召喚って、なんか思ってたのと全然違うんだけど!?

 そもそも毎ターンとは?? ターン制どうカウントされてるの??

 謎しかない!


 周りは突然発光があったのでどよどよしている。お騒がせしております。


「……猫ちゃん、カードゲームとかする方?」

「ブームに乗ってちょっとやってすぐ飽きる方にゃん」

「予想に違わぬ感じだった。そして俺もそのタイプ~」


 つまりフーテンさんも、なんとなくカードゲームっぽいなってことしかわからないってことだな。うむ、わからん。

 販売物に応じて、てことはこの店が利用されるとターン(?)にマナ(??)を生み出すことが出来るわけだ。

 …マナ、何に使うの? 召喚?? 土地カードだったから簡単に設置できたけど実は召喚にはコストが必要?


「…コスト生み出す土地カードは基本にゃんね!」

「そうね~~」

「栞を置いていく方針には変化無しにゃん! わからなくてもやることやるだけにゃん~!」

「それもそうね~!」


 はい。

 たぶん置く順番とかちゃんとするとなんかしてコンボとか起きるやつ。でもわからん!

 わからんから猫は見つけた順番で置いていくぞ!


 一応アライアンスで繋がっている人々と情報共有はしてみたものの、カードゲームガチ勢は残念ながらいなかった。


『たしかに順番とかあるかもしれんけど、置くだけであかん罠カードとかはさすがにないやろし、置けるだけ置いとったらええんちゃう?』

『これってたぶん、コレクター向けのイベントでしょ? コレクションしてる人にアイテムとして消費させるってだけで十分意地の悪いクエストだから、消費するだけでかなり効果があると思うわ』

『それな。コレクターだったらかなり悩ましいとこだぞ、これ』

『このカード効果?が、全体影響なのか、アライアンス単位なのかも不明だしね。掲示板調べてみたけど、そもそも『不思議な栞』が第三エディションからだから、コレクターそのものが少ないみたいだよ』


 栞はマケボ販売不可アイテムなので、コレクションは茨の道だ。入手は学園都市の図書館ダンジョンや、その他街の本棚に限られる。トレードするにしても、元手になる枚数が集まらないことには始まらない。

 現状高く買ってくれるコレクターNPCに『不思議な栞』は集まりがちで、プレイヤー間取引すらままならない、と嘆かれているらしい。ちなみにコレクターNPCはもちろん売ってはくれないそうな。


 話している途中、アライアンスに人数が増えた。


『お邪魔します~~!』

『度々すみません、ありがとうございます』

『今回は来れましたわ~!』

『DP稼ぎに来ました!』

『いらっしゃいにゃん~!』

『にゃん~!』


 アライアンスチャットがワイワイする。硝子連合が合流だ。どうやらノーカさんとタレイアさんが会ったので、アライアンスに巻き込んでくれた模様。

 ノーカさんには『事後承諾ですが』と恐縮されたが、猫は大人数でも全然構わない。強いていえばケータくんが文字通り借りてきた猫になってないかちょっと心配ではある。リーさんたちがついているし、大丈夫とは思うけど…。


『こんにちはー! お邪魔します、ナニコレすごい大所帯!』

『こんにちは、アライアンスありがとうございます』

『いらっしゃいにゃん~!』


 おっとサクラさんとシノノメさんだ。これはケータくんからの合流かな? 無事フレンドになれただろうか? 気になる。でもメールで聞かないだけのデリカシーは猫、あります。

 続けて野次馬テイマーさんたちも合流したので、サクラさんたちと一緒に行動してたようだ。


 それから、これだけ大所帯だと来たとしても合流はないかな~と予想していた裁縫師互助会もなんと合流してくれた。どうやら着ぐるみでの参戦。


『お邪魔します』

『着ぐるみ!?』

『着ぐるみがおる!』

『アルテザ以外での着ぐるみ珍しい』

『待ってこの着ぐるみたちのお名前はもしかしてもしかするやつ!?』

『はわ!?』


 アライアンスチャットがどよめいたが、裁縫師たちは控えめな『お邪魔します』以降は沈黙を保っていたため、徐々に着ぐるみについての言及は止まった。

 うん…引きこもりたちなので優しくしてあげてほしい。そしてイベントを楽しんでDPを稼いでほしい。最近はいい素材が採れるダンジョンを作ろうと戦闘や探索面も少しずつ頑張ってるんだって。

 ちなみにペチカちゃんも着ぐるみに混ざっての参戦だ。うさちゃんの着ぐるみを借りたらしい。メールで教えてくれた。


 すごいな、猫の知り合い大集合じゃない?


「猫ちゃんNPCだけじゃなくてプレイヤー知り合いも多いよね~」

「猫は他力本願だからいろいろお世話になりっぱなしにゃん~」

「持ちつ持たれつにゃん~」


 そうなってるといいんだけどね!

 なにしろ猫に出来るのはお知らせだけなので、みんなそれぞれにクエストを楽しんでくれるといい。

お待たせしました!

5話書けたら再開しよう~と考えていたのですが思ったより遅くなりそうなので、不定期更新ということで1話更新です。

次回更新は未定ですが、来週も1話更新したいところです。

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― 新着の感想 ―
「なんだい今日は…  腕に変な機械どころか、全身変な格好の連中を見かけるが…」 「通行人はどいてた方がいいぜ! 今夜、この街は戦場と化すんだからよ!」
猫ちゃんとフーテンさんのゆるゆるがめっちゃ好きです ゆるゆるお兄さんらぶ
街まるごとテーブルっぽいゲーム盤って考えればいいのかな、神視点で俯瞰した場合 猫の周りは有名プレイヤーがいっぱいニャン
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