26.掘り出しもの屋
まず運送ギルドで羽根を出荷。いつもならここでお小遣いが増えるところだが、猫がモンシガで使用したロマン羽根代が天引きされたので収入はなし。仕方ない。
その後は、ルイに乗ってちょっと街の散策。
というのも猫、初心者錬金術師ちゃんに会って思い出したのである。
この街には『掘り出しもの屋』なる店があることを…!
掘り出しもの屋は人が捨てたアイテムを拾って商売している店、という設定で、システム上はプレイヤーが「捨てる」コマンドで廃棄したり、一度は拾ったがインベントリから捨てて放置したアイテムが商品一覧に並ぶ、と言われている。そして商品はレア度や品質に関わらず一律1000z。
一時期はこの一覧が初心者シリーズで埋まったことで掘り出しもの屋の愛好家がぶちギレるなど騒動もあったようだが、今は初心者シリーズ1000zなら逆に安いと言えなくもないからね。potも捨てられることはなくなったし、ラインナップも順調に元の水準(?)に戻ってきているらしい。
そんな掘り出しもの屋だが、場所は鳩ポッポ商店街から少し下ったところにある。ギルド通りから行くと西側、水路脇の橋の下、と掲示板にはあった。いかにもな位置ですな。
観測スレによると、素材系が大半で、時々ポーションとか売られているようだ。他に『岩石』とか『砂』とか、重たくて捨てたと思われるものも混ざっている。
『岩石』は石工や大工で使われるアイテムだが、石工の装飾工持ちが砕くと鉱石が取れたりもするらしい。なので掘り出しもの屋でもそこまで邪魔になるアイテムではないそう。
とはいえ、最近は『ムーンストーン』ブームで『岩石』が大量に流入しているらしく、「気持ち的には理解できるがいい加減にしてほしい」と観測スレでも大変不評。
そういえば猫も漂着した小さな島で掘り出した『岩石』をいくつか捨ててしまっているので、もしかしたら不思議な力でここに流れてきてるかもしれないわけだ。
『漬物石』が追加で手に入るかも? 『岩石』ガチャしてみるのもいいかもしれない。ルビーの岩石落とし用に弾があってもいいしね。
そんなわけでやってきました『掘り出しもの屋』。
特に看板などがあるわけではなく、橋の下にがらくたが積み上げられていて、その前にお爺さんが座っている、というなんとも趣深い店構え。
「寄ってらっしゃい、どれでも1000zだよ」
「手に取ってみてもいいにゃん?」
「構わんよ」
早速うろうろと見て回る。がらくたの並ぶ店先は面白いものだが、いかんせん『岩石』が多い。8割くらい岩。なるほどこれは残念な気持ちになるのもわかっちゃうな…。
ごった煮の状態を見てみたかったのでちょっとかなり物足りない。が、猫の需要にはまあ、合ってるか。
商人の実績解除スキル『真贋』さんは、ありがたいことに持ち上げるだけでほんのり効果を発揮する。猫の場合はLVがまだ低いので発現率はそう高くないようだが、レア度が高かったり、受注している(または受けたことのある)クエストに関わってたりすると発現しやすい。
猫は『漬物石』にまつわるクエストを踏んでいるので、これに関しては勘が働きやすい、はずだ。
ひょいひょいと『岩石』を持ち上げては戻していると、ぴこんと来るものがあったのでこれはお買い上げ。
他に、なんかやたらと他と比べて重いのにサイズが変わらない謎の『岩石』があったので、これも気になってお買い上げ。中になにかしら入ってそう。これは猫の『真贋』ではぴくりともしなかったので、石工あたりじゃないとわからんのかもしれない。まあ気になるので買っちゃう。
そうやって『掘り出しもの屋』をぐるりとする頃には、『岩石』10個と『石ころ』5個を購入していた。思ったより多かったね。すべて1000zと考えると通常なら怯んでしまうが、化けるとわかっていればなんのその。
それからよくわからないけど面白そうな見た目のアイテムなども物色してみた。
『ねじねじ鹿角』、『天馬の蹄』『悪魔の鱗』、『雲の糸巻』『白い純情』……、いろいろな謎アイテムがあるな。よきよき。猫、こういうの大好き。何に使うかさっぱり何もわからないけど部屋に飾っておきたい。がらくた部屋がほしい…!
あとは羽根類があればな~と思ったけど残念ながら、なし。ロマン羽根の材料としてでっかい羽根は今は高額と聞く。ううん、残念。
がらくた部屋を作るなら、ロックランドバルバトロスの羽根は欠かせないと思う。今度セルバンテスさんに交渉して買おうっと。
他に気になったのは『未鑑定の盾』とか、『未鑑定の短剣』といった未鑑定シリーズ。これはたぶんレアアイテムじゃないから狩場では捨てていくんだろうけど、1000zよりお高そう。でも何かわからないのに買うほどじゃないな、猫の趣味じゃないし……と思っていたら見つけてしまった。
『未鑑定の本』!
すごく気になる。たぶん教本? 1冊しかなかったけど間違いなくこれは掘り出し物! 猫にとってはそう。貴重な読み物だぞ!
ほくほくとお会計。『岩石』も合わせてだいたい3万zほど。う~ん、いい買い物でした。大満足。
一旦マイルームへ帰還し、購入した『岩石』を庭先で洗って『クリーン』をかける。かけている最中にスライディングで『クリーン』を浴びにくる大根をあしらいつつ、結局は白ラコラ全体に『クリーン』をかけることになる。くっ。この大根王国め…今に見ておれ。
目論見通り、7個は『漬物石』に変化した。比重の違いそうな『岩石』はともかく、あと2つも外してしまったらしい。『石ころ』も2個は『清潔な石ころ』だったけど、3個はハズレだ。なかなか思ったものを当てるのは難しい。
まあ何かしらあるようなので、これはどこかの店に持ち込んで『鑑定』してもらえばいいかな。
『岩石』の鑑定といえば、アザラシから最後にもらったやたらと軽い『岩石』も謎だ。これも鑑定してもらわねば。
いちばん手軽なのは冒険者ギルドの素材売買所だが、鳩ポッポ通りからは離れているので近場の店でなんとかしたいところ。
露店通りからも離れているし、『漬物石』『清潔な石ころ』の販売はマケボでいいや。
そういえば料理人スレを見ておこう。
……おお、賑わいすぎてて流れが早い。何もわからん。とりあえず材料は揃ったが、まだ作れてないということはわかった。発酵食品なのでちょっと時間がかかるみたい?
材料の自由度が思いの外高いらしく、あれこれ作ってみたい欲望がスレで渦巻いており面白い。『料理』をする人はいろいろ詳しいなあ…。
とりあえず『漬物石』の需要はかなり高いようで安心した。まだポーツ産の『岩石』から『漬物石』が出来るという情報が出てないらしく、そのまま『漬物石』が掘れると勘違いされているようだ。まさしく今が稼ぎ時ですな。
マケボ価格ってことで『漬物石』は30万、『清潔な石ころ』は35万とした。さあ岩たちよ、猫の臨時収入になーれー。
石といえば、猫のマイルーム帰還に合わせて、岩妖精ガナムのレキも帰ってきていた。
契約後に改めて採集タイプの妖精について調べてみたところ、基本的には「採集してほしいアイテムと期間を指定して旅立たせる」という、お使い的な運用をするらしい。精霊の強さによって行ける場所が変わったり、期間が長い方がレアが拾いやすい、とかあるみたい。
最初の内は一回のお使いごとにお駄賃としてアイテムをあげる必要があるけど、回数を重ねて好感度を稼げたらあとは「お使いのついでに自分用の採集もしてる」扱いになるのか、特に報酬を渡さなくてもお使いに行ってくれるようになるそう。
そんなわけでお使いへ行ってくれていたレキに報酬を渡す。『ビー玉』と庭の水場で作った『属性水晶』とどちらがいいか差し出すと、『ビー玉』だった。
以前本で読んだ「岩妖精にとっては人工物が珍しい」ていうのは事実なんだろう。とても嬉しそうだが、猫がニコニコ見守ってるとスンっと表情を消してしまった。残念。陰ながら見守らねば。
改めてレキのステータスチェック。持ってるスキルは『採取』『採掘』『伐採』。スキルが3つあるってことは、ラーニングの余地はなさそうだ。進化後に期待ですな。
とにかく共鳴度が上がらないことには、お使いを頼むことも出来ない。気ままに行っては帰ってくる生活だ。まあそれでも全然いいんだけどね。
今回レキが拾ってきてくれたのは『石ころ』と『水晶石』。LVがまだまだ低いし、旅立っていったのがポーツの小さな島だったのでこんなもんだろう。
むしろ『石ころ』は『清潔な石ころ』に出来たのでありがたいくらいである。
マイルームにいる内はレキも勝手に消えていかないので、いろいろ装備させておかねば。
とりあえず『影走りのスカーフ』、あと鞄が欲しい。レトに『がま口ポシェット』をもらえないか交渉……決裂! だめでした。
まあせっかく採集タイプなんだし、大きめの鞄を買ってあげよう。そういえばラージは間に合わせでアクセサリーつけてるし、ちゃんとしてあげねば。ルイの蹄鉄も新しいのを買いたい。
よし、『漬物石』売れたら、みんなの装備更新も兼ねて買い物するか!
ついでに掲示板で未鑑定の本について調べておこう。
……学園都市スレか。主に図書館ダンジョンで産出されるアイテム、なるほど。
未鑑定の本には杖代わりの武器になる『魔道書』、アクセサリーになる『祈祷書』、なぜか盾になる『聖女の日記』、そして教本、読み物本があり、鑑定するとこの5種類のどれかになる。
装備類はその他の読み物や教本に比べて明らかに重量があるためわかりやすい。教本は人気がなく、読み物本は一部クエストで使える。本を集めているコレクターの依頼人がいるんだって。それ以外ではあまり使われない、と。
もちろんプレイヤーにもコレクターがいるし、一部の読み物本にはどこかのクエストのヒントが書かれていたりするため、高値で買い取りしてる人もいる。
なるほどなるほど。
ちなみに装備品はかなりレアでそこそこの性能があり、おしゃれ装備として人気なのでこちらもかなり高値で取引されているんだって。
てことは、この未鑑定本はおそらく教本か読み物のどちらかってことだろう。にゃふふん、望むところよ。
未鑑定のままでは残念ながら読めない仕様。鑑定が楽しみ!
居間へ移動し、錬金釜を確認。はい、新しいの出来てた。『火竜鳥の糞』のやつだ。
『竜果の種』。
この種は光ってないが、ゴマ粒のように小さい。しかし『金炎の種』に比べればまだ植物っぽさがある。
マケボで調べたところ、『竜果』はなかったが『赤竜果』なる果物はあった。これっぽい。更に調べて画像を見たらわかった。
これ、ドラゴンフルーツじゃん。
この世界でのドラゴンフルーツは、竜の好物ってことになってる。なお見た目は鱗の生えた心臓。赤いやつ、つまり『赤竜果』はちょっとグロい見た目だ。『緑竜果』や『橙竜果』のように色があって、これによって好む竜が違うらしい。
そして実はこのドラゴンフルーツ、竜のテイム用アイテムとも言われている。調べたら野生のドラゴンフルーツをもぐのは竜に守られてて大変なんだそうな。ほほう?
……植えてみるか。
掘り出しもの屋→1章3話、5話
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次回更新は11/11(月)です。