表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
4章 成金猫はごろごろしたい
190/281

22.旅する島

 プランプランしつつ鳥に運ばれることしばらく。

 海を行く空の旅はなかなか楽しかった。いやあ、360度遮るもののない大海原、晴れ渡る空、鳥の視点で見るのは爽快だ。隠れ島は群島と聞いていたけど、思ったより島の数が多い。青月夜にしかいけないのにあの数だけダンジョンがあるのって、なかなかコアユーザー向けの場所なのでは? 猫にはいろいろな意味で早かったな。

 鳥は隠れ島群島を超えて羽ばたいていく。全然違うところへつれてかれる予感。


 やがて鳥がひとつの島を旋回し始めた。ここで降りるらしい。そういえばこれ、降りるときはどうなるんだろ。ぐしゃってなるのでは!?

 とりあえずタイミングを合わせて『ポヨ』れるようしっかり構えておく。『ダイアモンド』は回収できたし死に戻りも問題ないけど、せっかくここまで来たからには、島で何が起きるのかも見ておきたい。セルバンテスさんに教えたいし。


 アイランド・ルフが滑空していく。ジェットコースター並の勢いで景色が流れていく。ヒエエ、さすがに結構怖い!しかしポヨるためには目を閉じるわけにはいかない。ドキドキしつつもその時を待っていると、ぐんと体が引っ張られ、ブレーキを踏むように羽音がばざばさと鳴る。

 このまま軟着陸か、と思っていたらポイッと放り出された。あっ、先に落としちゃうやつ!?

 

 タイミングを合わせてポヨ、と思っていたが、どういうわけか地面間近でぐるんと反転、そしてお肉で着地。……お肉がクッションになって無事! なるほど!?

 ちょうどよく背の高い草むらだったので、ささっと生肉を脱いで移動。息を潜めていると、アイランド・ルフはそのまま飛び去ってしまった。おや??


 完全にルフが見えなくなってから、草むらから這い出してみる。

 おお、これ草むらじゃないや、でっかい巣だわ。ごろごろと猫サイズの卵と、まだ目も開かない雛が1匹。もちろん雛は猫よりでかい。雛はジタバタ手足をバタつかせながら生肉へありつき、もちゃもちゃと食べている。

 この場にいたら生肉の次は猫が食われる。念のため『隠れる』のアーツ『猫の足音』を使いつつそーっと巣を離れる。

 幸いにして、雛には気づかれずに巣を後にすることが出来た。


 だいぶ離れてからぐるりと見回すと、巣は小高い丘のようになっており、島にはそれ以外めぼしいものがない。ここは雛のいる島、てだけなんかな?

 猫は目も開いてない雛と戦いたくないし、卵を壊して鳥に追われるのも嫌だ。さて、どうしたものか。

 …あ、マイルーム帰れる。てことはやっぱり隠れ島群島ではない場所っぽい。

 預かり物もあることだし、ひとまずはマイルームへ戻って休憩、というかいい時間だし、今日のところはログアウトしちゃおう。




 ログインすると『火竜鳥の糞』を仕込んだ錬金釜がチン出来ていた。早速確認する。


 ……『金炎の種』?

 あ、あれ? 全然予想外のが来たぞ?

 なんかこう、爆弾の素…爆弾なりかけ? 的なものが出来上がると予想してたんだが、なんで種なんだ。いや、鳥の糞だから中に種が入ってるのは、まあ、わからなくもない、か?

 手に取るとほんのりぼんやり金色に燃えている何かだ。火種、のようにも見える。

 しかしこれは土に植えるんだろうか。それとも種ってなんか他の意味がある?

 マケボには売ってない、掲示板にも情報がない。

 お、おお、何もわからない。

 どうしよう……とりあえずポッケに入れておくか。


 うーん、種が出来たってことはもしかして『火竜鳥の糞』を単品で畑に混ぜてもなにかしら芽が出るんだろうか。

 糞を『肥料』にするレシピは『調薬』にあるんだよね。だから圧縮できない端数は『肥料』にしようと思ってたんだけど、ちょっと気になってしまう。いや、でもわざわざレシピがあるってことは、糞単体を畑に置くべきではないか。

 まずは『金炎の種』がなにかを調べるのが先だな。農業ギルドで調べたら何かしら出てくるかなあ?


 とりあえず実験として『火竜鳥の糞』を別の属性でも『圧縮』してみる。種になったし、次は木属性にしておこう。ドサッとしてポチ。24時間後のお楽しみ!


 謎の成果物を作った後は、ラコラのお世話をしてお茶を飲んで、とログイン後の日課を済ませた。

 さて、冒険の続きだ。



 マイルームの扉を開けて島へ戻ると、景色が一変していた。


「にゃん?」


 中央には巣があって、あとは海が広がっており、何もなかったはずだ。それなのに、すぐ近くに島が見える。

 島が動いてる? いや、違うか。向こうの島が近づいてきている!


 近づくにつれて、全貌が明らかになってきた。

 巨大な亀である。立派な森が甲羅に出来ていて、それが島に見えるのだ。

 は~、運送神の海蛇のときも思ったけど、海はスケールが違いますなあ。クジラ島ではなかったけど、亀島も十分ファンタジー。

 巨大亀はやがて島の岸辺とくっついた。いかにもこちらへ乗り移れといわんばかりだ。

 もちろん渡っちゃう。だってこの島にいても雛に挑んで死に戻るか、『リターン』する以外にないもんね!



 上陸した亀島は、森に辿り着くまでが崖のようになっていてなかなかスリリングだった。初めて『フック』や『マジックロープ』が役に立ったぞ。ロッククライミングは『軽業』に含まれる。駆け上がるみたいな専門的技術になると『登攀』とかいるらしいけど、ゆっくり確実に上るなら『軽業』で十分だ。


 上りきった亀島の森は外から見るよりずっと明るく、あちこちが採取ポイントでキラキラしている。やったぜ取り放題。


 mobの気配もなさそうなので、ルイたち従魔とレトの再召喚もする。ルイは少し森の匂いを嗅ぐように首を振った後、ぽくぽくのんびり歩いて草を食み始めた。いっぱいお食べ。

 ラージもミョンミョン縦揺れしつつ草を食べているようだ。口がないから食べてるかどうかが動きでは判別つかないのだけど、空腹度が変化するのできっと食べてる。吹き出しも音符やハートが出るので機嫌が良さそう。

 ルビーも何か食べてるな。ルビーは雑食で、穀物も木の実も食べるし虫も食べる、なんなら肉や魚も食べてしまう。ドゥドゥーなんでもあり説。

 レトも久々に虫を捕まえようとして失敗し、ルビーからおすそわけをもらっていた。……なにかしらレトが攻撃魔法を覚えられるように、猫は頑張った方がいいかもしれない…。


 はー、それにしてもこの森、きれいだな。採取ポイントの光だけじゃなくて、金色の光がキラキラしている。何かしらありそうだけど、残念ながら猫には何もわからん!


 ひとまず採取を済ませる。

 『シオミ草』『万年亀苔』『万年亀の甲羅』などが採れた。甲羅は剥落した破片のようなもので、結構大きい。サルノコシカケみたいなキノコかと思ったら違った。亀の甲羅というと鼈甲を考えてしまうが、これはオブジェクト採取だったので、たぶんそんなに価値はないんじゃないかな?


 木々も伐採ポイントになっている。1本くらいもらってもいいかな? 亀が怒ったりする? おそるおそる木の伐採を試す。

 アッ、硬い! めっちゃ硬いこの木!

 これはダメかもしれんな、と思いつつカンカンコンコン、休憩を挟みつつ頑張ってようやく1本採れた。うーん、達成感。これは『シオミ万年杉』らしい。

 伐採ポイントは他にもあるけど、さすがにもう疲れたのでこれ1本でいいや。

 猫が『伐採』で悪戦苦闘している間も亀は移動していたようで、新しい島が見えてきていた。


 次はあの島へ行こう。

 せっかくだから海の旅、遊び尽くすぞ!


 亀は一応息継ぎするらしく、移動中何度かザバーッと頭が出てきていた。でも島の上にはまったく響かないので、泳ぎのプロフェッショナルである。

 頭が出たときに『ヒール』を飛ばしてみたら心なしかスピードが増した。ついでに『クリーン』もしてみた。緑の亀なんだと思ってたら白い亀だった。こ、苔むしてた……!

 苔が剥げたら頭頂部に宝石?のようなものがついているのが見える。カーバンクル亀? それとも弱点かなにかだろうか。せっかく隠されていたのに苔剥がしちゃってすまない。

 次からは『ヒール』と『タイムパス』をかけておいた。苔むせ~。


 のんびり釣竿を垂らしたり、復活した採取ポイントを掘っているうちに、目的の島へ漂着。甲羅を降りた。

 到着までの間に無事、亀は苔むした。よかった。達者で暮らせよ~。


 次の島も小さくて、ほとんどが砂浜、そして中央は岩場という島だった。遠目には何もいないかと思ったが、アザラシやらペンギンやらが山のようにいた。

 あっ、これは猫、死んだ…!

 と思ったらノンアクティブだったようで、全然襲ってこない。よ、よかった。


 アザラシとペンギンは混ざってるわけではなく群れ?に別れているようだ。アザラシはペンギンも食べる生き物だった気もするが、この島にいるペンギンはアザラシと同サイズなので捕食はされないのかもしれない。つまりペンギンはかなりでかく、アザラシは小さめだ。

 大人ペンギンと小アザラシ? それとも単純に種族差かな。


 採取ポイントがたくさんあってわくわくしたけど、ほとんどが糞。いいですけど! 猫の錬金釜が糞だらけになってしまう。

 それから貝を食べるものがいるのか、貝殻が大量に落ちていた。貝塚? オブジェクト採取できるようだったので、ありがたくいただいちゃう。『貝殻』はたくさん欲しい。


 狭い島だったので1周はあっという間だ。

 亀がもう一度来るなんてことはまずないだろうから、ここで猫の冒険(海編)は終わりかな。

 ペンギンやアザラシに手を出して死に戻りするよりは『リターン』で穏便に戻るのがいいだろう。

 あ、でもその前に『釣り』はしたい。亀島からの『釣り』も見たことのないものが釣れて面白かったんだよね。

 明らかに魚ではない海のゴミも混ざってたんだけど、隠されたものがあると『真贋』さんが示すので何なのか楽しみだ。この手の『真贋』で引っ掛かるアイテムも、鑑定士に頼むと用途が明らかになったりする。


 そんなわけで『釣り』をしてみたら、結構釣れる。まあ大半が『チッギョ』なんだけど。たぶん猫の釣りLVが足りないんだろう。

 『チッギョ』じゃない場合は海藻が釣れる。ワカメのように長い。あ、隠れ島のギルド依頼で見た『シンガ草』ってこれなのか。これを草判定はなんか違う気がするぞ。まあいいか。

 釣果をバケツからインベントリにしまっていると、トントンと背中を叩かれる。


「にゃん?」

「コワ!」


 振り向くとアザラシだった。

 アザラシが片手(ヒレ?)を上げて、首を傾げている。


「コワ?」

「こ、こわ?」


 アザラシの鳴き声ってこんなだっけ???

評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

次回更新は11/1(金)です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新にゃーん [一言] 色々採取も出来たし、マイルームにも帰れて利益確定してるからウハウハですねこれは 亀の甲羅と言えば採掘もありそうだったけど、そっちは無かったんだろか…… そして次…
鳥の仲間が欲しいって言ってたのに 巣に居た雛鳥テイムしないのか
片手をあげて挨拶するアザラシ、写真撮影しなきゃ! お願いしてツーショットも撮らせて欲しいですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ