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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
4章 成金猫はごろごろしたい
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18.隠れ島

 そんなわけで掲示板。どこかのスレで読んだ覚えがある。履歴調べればわかるか。

 ……、ロマン砲専用スレ! そうだったそうだった。ドラゴン系統の糞が爆弾の材料になるって話だったんだ。

 残念ながら錬金術ではなくて『調合』スキルで作るもののようだが、不完全なアイテムらしい。てことはなにか別のスキルを複合することになるんじゃないかなあ、たとえば『錬金術』とか…と思ったところで忘れていたのだった。


 猫が持ってる鳥の糞はブルーペングーの『灰青鳥の糞』と、フレアドラゴンバードの『火竜鳥の糞』。前者は『合成』出来る分くらいしかないので、50個もらってる後者をまず圧縮してみよう。


 属性は何にしようかな。

 そのまま火でいい気もするけど、ドラゴン系統の糞には反作用(?)、というか敵方の吸収や無効属性で攻撃すると逆に大ダメージになる特性があるらしい、とスレには書いてあった。ならば炎ではなく、あえて水属性で圧縮する方がいいのだろうか?

 うーん、何もわからん。


 属性といえば、バルトロさんの実験結果にも星金幻属性はなかったので、その実験もしないといけないんだったな。釜を前にするといろいろ思い出す不思議。


 バルトロさん…。

 実はポーツへ行ったときに、バルトロさんの甥っ子マルコくんには会ってきた。一応、バルトロさんへ会いに行ったのは彼の「『貝殻』を叔父へ届ける」という依頼をこなしたからなので、その報告をしなくてはならず…。

 「叔父さんどうしてた?」て聞かれると猫もなんといっていいか。最初は誤魔化していたのだが、意外と鋭いマルコくんに「怪しいお薬を所持していた疑いで衛兵に囚われてしまった」ということはバレてしまった。

 それにたいして「やっぱりか」て言われたのには猫もびっくりである。


「叔父さん、最近おかしいと思ってたんだ。あんなに熱中してた『貝殻』もあまり欲しがらなくなっちゃってさ。手紙も途絶えがちで。だからあんたに直接会って確認してもらえないかとも思ったんだ」


 て話だったらしくて更にびっくり。

 さすがに捕まっちゃったのは予想外だけど、マルコくんとしては叔父に何かありそうってのは思っていたみたいだ。

 バルトロさんめ、こんなに心配してくれる甥がいるのにあんなことをしでかすとは。


「変な薬を作ってたなら、それが人に迷惑をかける前に捕まってむしろよかったよ」

「にゃ、にゃあ~、たしかにそうにゃんね…」


 うん、はい。

 いや、本当に大きなことにならなくてよかったなあ。これで『食糧危機』起きちゃってたらバルトロさん、戦犯だったもんな…。

 猫ったらファインプレー。ノーカさんに相談してよかった! 来てくれた皆にも改めて大感謝である。

 そんな感じでマルコくんへの依頼報告は無事終えたのだった。


 閑話休題、爆弾である。

 材料が限られているので全属性試すわけにはいかない。釜はロマン羽根を作るのに2つ回してるから、使えるのは1つ。それに、これもたぶん長時間かかる『圧縮』と思われる。ドラゴン素材だしね。


 うーん、何属性がいいんだろうか。

 猫はうろうろ歩きつつ考える。座りたいけどなにせこの部屋、今椅子がないのだ。錬金釜が3つもあるとさすがに机の上には置ききれなくて、椅子にも釜を置いてる。うう、大きい机家具が欲しい、椅子がもうひとつ欲しい。お金が……お金が!

 お金が入ったら庭だけじゃなく部屋も拡張したいんだ。そろそろ猫も、工房部屋を考えてもいいんじゃなかろうか? コンロも欲しい! コンロは『料理』コンロにして『調薬』もしようかと思う。薬効より味の『薬膳』がいいのだ。道具もあれこれ揃えたいし、ああ~~。

 あれこれお金について考えていたら、金属性に心ひかれてきた。今の猫の気分は、これ! ということで『火竜鳥の糞』は金属性で圧縮してみることに。実験on実験よ!

 ガラガラしてポチっとすると、釜はやっぱり24時間。はてさて、何が出来るかな~。


 あとは魔法玉を消費してしまったので、錬成陣。なお机が埋まってるので床でやるしかない。

 ……これ、釜は床に下ろして並べた方が猫の生活水準QOLが上がる気がしてきたな。でもほら、床にものを置くと汚部屋の始まりというし。

 悩んだ後、やはり釜は床に置くことにした。家具配置換えして、机の上をあける。椅子も取り戻す。うむ、これがきっと正しい。

 お金が入って工房部屋を作ったら、錬金釜はちゃんと専用の置場所を作ろう。さすがに上級釜を手に入れるまで釜は増やさないつもりだが、このまま24時間圧縮のアイテムが増えてくると増やさざるを得ない気もする。

 みんな釜はいくつくらい持ってるものなの? リーさんは2つって言ってたけど、彼女は調薬師の方がメインっぽいしな。


 模様替えして、いざ錬成陣!と思ったらメールがきた。


『猫ちゃんや~島が見えてきたってよ~』

『今いくにゃん~!』


 次の島へ到着だ!




 ――隠れ島。

 海に浮かぶ小さな島々が連なる群島、名前はあるが知られてはなく、多くは通称でまとめて『隠れ島』とのみ呼ばれる。海流に囲まれ狙った行き来が難しく、漂流することでしか辿り着けない幻の島。不思議と帰るときには海流に阻まれず、むしろ後押しされるそうな。

 プレイヤーからすると、まず幽霊船イベントを経ないと辿り着けない島だ。それ以後は転移施設ポータルポートから飛べるようになる。

 隠れ島にはひとつ大きな特徴がある。それは本島はソロ限定ダンジョン型インスタンスであること。マイルーム使用不可な上、船ではPTを組んでいても、強制的に解除されてバラバラになり、本島内では再会も出来ない仕様となっている。


「それじゃあまたね~~」

「お船乗せてくれてありがとうにゃん~!」

「群島のどこかで再会できたらまたよろしくね!」

「こちらこそにゃん~!」


 帰りの船も別々になってしまうので、フーテンさん一行とはここでお別れだ。お世話になりましたにゃん~。

 船が島へ到着すると入島手続きの名目で港の入島管理所へ並ぶことになる。そして管理所から出るとぽつねんと1人になっちゃうらしい。なお従魔は出せる。


「おや、『ダイアモンド』を持っているのかい」

「にゃん?」


 入島管理所のおばちゃんに声をかけられた。たしかにインベントリの中にはモンシガの『ダイアモンド』が入れっぱなしではある。何かのイベントかな?


「いい値で売れるから、この島で売っていくといいよ」

「ありがとうにゃん~!」


 高く買ってくれるのは歓迎にゃん!

 マケボで売価見たけど、低品質ばかりで通常品質は売ってなかったから価格不明だったのだ。そして低品質ダイアは品質の割りにやたらと高いものが多かった。何か需要があるんだろうね。


 管理所では他には特に声をかけられることなく終わった。

 ぽくぽくルイに乗りつつ、いざ行かん隠れ島探検へ。まずは『ダイアモンド』が売れるお店探しかな。お店探しならこれだろう、と商人ルックにお着替え。


 島自体が小さいこともあって、隠れ島の港街は小さく、ぐるっと一回りはあっという間だ。

 白い石造りの建物が並ぶリゾート風の街で、日差しに反射する海とのコントラストがまぶしい。海風は穏やかで乾いている。

 しかしこのリゾート街、内部は大変入り組んでいる。小さな島はだいたい勾配がきついものだが、坂道に張り付くように家が立ってたり、かと思えば洞窟のようにくり貫かれた通りがあったりと、大変わかりづらい。大通りはともかく、裏道は狭いし昼間でも薄暗いしで、入ったら一筋縄には出れなそうだ。うーん、迷いそう。

 自由都市は気がついたら迷ってるタイプの迷路だけど、それとはまたちょっと雰囲気が違う。踏み込むなら覚悟を決めないとならんタイプというか。街によって道もいろいろで面白い。


 ひとまず大通りを回ってみたが残念ながら『ダイアモンド』を買ってくれそうな店はなかった。残念~。

 でも探索者ギルドは見つけたので寄っていく。

 こういう小さな街には、全部のギルドは揃っていない。見つけることが出来たのは冒険者ギルド、探索者ギルド、漁師ギルドの3つだけだった。商人ギルドがあったら宝石も売れたのにな。運送ギルドがないのもちょっと残念。


 探索者ランクは上がったばかりなのでランクアップはなし。

 そして特にこの街独自の依頼はなさそう。謎依頼も更新されてなくて残念。あれのラインナップ見るのも楽しみなんだけどな。


 冒険者ギルドもランクアップならず。

 全体的に討伐数とかいろいろ不足してるし、納品依頼もサボってるから仕方なし。

 依頼は……、おお、海の魔物が結構出るのかな? セルキーの討伐とかある。セルキーは妖精のか、それとも普通にアザラシ? あとは鳥も出るみたい。アイランドバードの討伐。

 納品依頼は普通に薬草とかが並んでいるけど、見たことのない草もある。『シンガ草』の納品依頼、やたらと高額で気になる。シンガってなんだろね。海藻っぽい外観だったから潜って採るのだろうか。素潜り体験?

 依頼を見るだけでも街のことがわかる気がして結構楽しい。猫、この街では適正LV外れてるので何も出来ないけどね!


 なにしろこの島、来るのにクラーケン(LV37)だの、キャプテンデビー(LV40)だのとBOSS戦を経てやってくるのだ。つまり猫、単身でこの島に来る能力はない。戦闘が起きた時点でポーツ(ホームポイント)送還の可能性が非常に高い。

 冒険者ギルドに来てわかったけど、隠れ島ったらホーム更新が出来ないイケズである。一応船で更新してあったんだけど、帰還先がポーツになってしまっている。

 青月夜のみ移動できる限定の街みたいだから、ホームには出来ないってことなんだろう。

 しかしせっかく来たのだから、観光はしっかりしていきたい。街歩きはしたけど、街中クエストのひとつくらいは受けたい! てことで、管理所で声をかけられた『ダイアモンド』の売買は済ませたいところだ。


 漁師ギルドではランク4に上がって『大物狙いの漁師』になった。

 漁師って水棲魔物の討伐でも上がるらしい。決め手がキャプテンデビーの討伐だったのでこのランク称号になったようだ。他にあんまり釣りらしいことしてなかったしね。

 称号効果は「自分より大きな魚を釣る・倒すときにSTR上昇(微)」だそう。STRか…。釣るときだけマッスル猫になっちゃう。

 お、この漁師ギルドは討伐依頼がある。リトルキャプテン、幽霊船の子ダコかな? 釣りじゃなくて討伐なのか。ミニミニ幽霊船が泳いでるのを想像するとちょっと可愛い。

 しかし討伐依頼が出るほど多いんだったら、運送神に運んでもらって正解だった。猫ったらまた善行を積んでしまったな…。


 さてギルド巡りも終わったし、『ダイアモンド』を売る店を探そう。それにはこの入り組んだ道を進む必要がある。

 『地図作成』、『測量』準備よし! 行くぞリゾート地の迷路へ!

評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

今週もお疲れさまでした。

次回更新は10/21(月)です。

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― 新着の感想 ―
最近様子がおかしいと思ってたんです。捕まって安心しました。(衝立&声変え薬) 関係者へのプライベートの配慮もバッチリにゃーん
[良い点] 更新にゃーん [一言] 【悲報】バルトロさん、甥っ子にいつかやると思われてた模様 まぁ『貝殻』を欲しがらなくなってきた理由は単純に圧縮とかの実験が終わったからってのもありそうだけど(ぁ …
素材だとわかっていても、「釜」に「糞」を入れるのって生理的なハードルが高いように感じてしまいました… 次に釜を使う前に洗いたくなりそうです(笑)
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