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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
4章 成金猫はごろごろしたい
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8.ラコラのお薬

 生産施設へ来た。

 スキルを取ると、生産施設で使える器具が増える。『精密天秤』『薬匙』『乳鉢』『漏斗』などなど調薬器具がどどんと増えた。うむ……細かいやつだ。

 早まった気がしなくもないが、まあ、この道具類はほぼ無視して、料理用の道具で調薬レシピを作っていれば『薬膳』への道が開けるはずよ。


 まずは作ったことのある『毒止み茶』のレシピを『調薬』も使って作ってみることにする。レシピは『毒消し草』『ヌバラ草』『ミルク草』などを蒸してから揉みつつ乾燥させるだけだ。

 そういえば『毒消し草』は『薬草』のように若葉を分けたりはしないんだろうか?

 『毒消し草』を眺めてみると、おお、出来そう。若葉を分けるんじゃなくて、葉っぱと茎とを先に分けておくのか。『料理』のレシピで作っても最後に茎は取るので同じではあるが、やってみよう。

 この作業は『選別』という『調薬』のアーツらしく、どの素材にも多少なりとも必要になってくるらしい。もしかしなくてもそこそこ面倒なやつ…!


 『毒消し草(葉)』と『毒消し草(茎)』になりましたー。こうなってくると気になるのは『毒消し草(茎)』の圧縮。

 はいドーン、予想通り『毒消し玉』ですな。親指大の大粒の丸薬に見えなくはない。ちなみに『飲むと30%の確率で毒を予防』という不完全アイテムである。……これはこれで更に圧縮出来そうな気もするので、ちょっと置いておこう。

 残りの『ヌバラ草』『ミルク草』も『選別』し、葉だけにする。残念ながら選別した残りは共に圧縮するほどの数が確保出来なかった。『合成』なら出来るな…してみるか。

 はいドーン、『草の粉』。なんだか不明瞭な緑のカスが出来てしまった。しかも最低品質。しかし転んでもただでは起きないのが錬金術なので失敗作こそきっと金の卵よ! これは保存しておこう。

 スキルが増えると実験項目が加速度的に増えていくにゃん……。


 気を取りなおして、『選別』した葉だけを蒸し器にかけて、揉んで、乾燥させて、完成!

 『毒消し茶』になった。「ゆるやかに作用する毒消しのお茶。体が弱っていても安心。美味しい」とのことで成功である。

 ふむふむ、『選別』が入るだけでだいぶ変わってくるんだなあ。


 次に、本命となるラコラを使う『咳止め湯』だ。

 基本レシピが『赤ラコラ』だったので、最初は『赤ラコラ』で作ってみる。


 まずは『選別』……洗って皮を剥くところまでは料理と一緒だな。お、根っこの方だけを使うのか。頭(?)は使わない、と。ラコラの薬効って体(?)の方にしかないの??

 不思議なのは『選別』すると野菜の皮とかも残るところだな。料理では皮を剥くと消えるんだよね。てことは『調薬』的には、この残した部分にも利用方法があるのでは?て話になりそう。

 うーん、何もわからんな。とりあえずあとで『調薬』ギルドの書庫の本も見てみよ。


 とりあえず今回は、この頭の部分で『料理』のレシピも試してみることに。

 賽の目にして『精密天秤』で重さを計り、重量に応じて『粗麦飴水』を計って注ぐ。そしてじっくりエキスが滲み出すのを待つ。これが『調薬』でのレシピだそうだ。

 『料理』の方は瓶に1匹分の賽の目ラコラをいれたら被る程度に甘味料を注いでぐるぐる混ぜる。

 同じものをつくるのでも結構違うもんだね。

 ちなみに水飴ではなくて飴水・・で合っている。調べてみたけど作り方からして違うようなので水飴ではないんだろう。たしかに水飴よりサラサラしている。なおこれだけを煮詰めてどろどろにして固形にしてハサミで切って丸めて飴玉にするレシピがある。芋飴…的な…?


 『料理』レシピをぐるぐるしつつ、『調薬』レシピに『タイムパス』をさくっとかけたら完成。ともにピンク色のシロップが出来上がった。これをお湯に1/3ずつ溶かして、と。

 『料理』はそのまま『咳止め湯』、『調薬』は『咳止め薬』に仕上がった。前者の方が心なしか白濁して濃い色味、後者は色が綺麗に透き通っている。共に「ゆるやかに作用する咳止め。体が弱っていても安心。美味しい」とのことで成功である。


 よし、では本命の『白ラコラ』を試してみるか!

 両方とも美味しく出来るのであれば料理レシピで作る意味はあまりないので、ラコラの皮や頭は取っておいて錬金術にかけることにする。

 目分量にして混ぜずに置いておく…なども試してみたが、『咳止め薬』になったのでこっちの作り方でいいや。『調薬』がアシストしてくれているのだろう。ハイブリットレシピよ。


 はい、実験の結果ドン!

 『白ラコラ』では『咳止め薬』、『青ラコラ』では『声変え薬』、『緑ラコラ』では『美声のど飴水』、『紫ラコラ』では『無声薬』が出来た。

 『紫ラコラ』はもしかしなくても毒だねコレ!?


 うっかり毒薬をつくってしまった……とふるえたが、掲示板で調べてみると隠密用のバフ薬だった。なるほど?

 意外といい値で取引されているらしい。特にハミ使いの潜入依頼では必須準備なのだそう。なんでも呼吸音が消えるとか。えっ、すごいね!?

 マケボで見たらなかなかのお値段だった。……う、ううん、ちょっと武器商人のきもち。まあ売りますけどね! 結構なお値段だったのでエドさんにも聞いておこ。いや、それより『紫ラコラ』の種売る方がよいか?

 『紫ラコラ』はそんなに育ててなかったけど、ベランダでもうちょい増産するかな。まだ動いてないけど、動いたら危険な気がするし時短農業しよ。


 『青ラコラ』の『声変え薬』は、いわゆる変声ガスみたいなやつで、ジョークアイテムとして使われたりするらしい。へえ~! 更に一部クエストなどでも使えるそうで、こちらもわりとお高め。ニッチな需要で供給量が少ないっぽい。


 『白ラコラ』は『赤ラコラ』と同じ『咳止め薬』だが、高品質が出来る。

 お湯で溶かさずそのまま飲んで効く薬になり、ポーション瓶で1回分ずつ保管出来るようだ。つまり1回作ると3個出来る。ちなみに『声変え薬』『無声薬』も同じく。瓶、買取で入手した高品質しか持ってなかったので、一部はこれに詰めた。

 『美声のど飴水』は楽士用のバフ薬らしい。歌声にプラス効果。こちらも薄めずそのまま飲むタイプ。調べたけどマケボでは売ってなくて、お値段がわからない。楽士、マイナー職だからなあ。

 楽士のサッサさんに相談のメールを送っておいた。ついでなのでガラス瓶の交渉もしてみようっと。


 さて、問題はアレコレ試しつつ大量に作ってしまった『咳止め薬』だ。ガラス瓶が圧倒的に足りない!

 ビーカーがあったからそこに入れて実験を続けてたけど、ビーカーは生産施設の備品なので持ち帰れない。

 うーん、『粗麦飴水』を飴玉にすることが出来るなら、これも煮詰めてれば飴玉に出来るか?

 ものは試しだ、ダメだったらおとなしくマケボでガラス瓶を買おう。


 かき混ぜながらぐつぐつじっくりと熱していると、ぷくぷくと泡立ちはじめる。お、いけそう。しかし重い。かき混ぜるヘラが重い!! 久々に非力な猫であることを実感するこの重さ、料理もパワー!

 うおおお、と必死にかき混ぜているともったりと一塊に出来てきたので、耐熱手袋をしてねりねりと紐状に伸ばしていく。ハサミで一口大にパツパツ切ったら出来上がりだ。


 『咳止め飴』出来ましたー!

 めっちゃ疲れたけど出来たーと思ったらMPがかなり減っていた。生産もMP使うから、それでちょっと大変だったんかな?

 そもそもが猫のスキルLVだと難しいレシピだったのかもしれない。あとは大鍋でやったのもダメだったね。通常品質が9割だけど、低品質も出てしまった。仕方なし!

 『咳止め薬』10個分で30個作れて、3個1セットで袋詰め出来るようだ。通常品質が9袋になった。

 残りも飴玉に変えてしまうことにしてぐつぐつ。MP使うので合間に教本を読んだりしつつ。


 ちなみに『咳止め飴』は「ほんのり甘くて美味しい。ゆっくりじっくり咳に効く」とあるので、どちらかというと『料理』で作ってるっぽい。『調薬』は取り立てでLVが足りないんだろう。しかし制作中にちょいちょい上がっているので、そのうち『調薬』効果も乗ってくれるはずだ。


 それにしてもラコラは全部喉系の薬になるんだなあ。いや『粗麦飴水』が喉に効くんだろうか? まあ飴玉だしね。


 ちょっと好奇心にかられて『黄キャロ』で作ってみると『黄色飴』という違うアイテムになった。「栄養のある飴。他の色と組み合わせると効果抜群」だそうだ。なるほど、色かあ。

 更に『ヒーリングミニトマト』でやったら『トマトジャム』になってしまった。「栄養があり体力増強効果がある」そうだ。粗麦から出来てる飴だから栄養があるって出るんだろうか。

 『緑ラペ』……これもジャムになってしまった。『ラペジャム』で「栄養豊富だが粒々した食感は好みが別れる」だそう。失敗気味だな。


 飴は根菜じゃないとダメなのか、根菜とは作り方が違うのか。それか栄養のある飴はキャロで出来るアイテムなのかもしれない。たしか赤キャロと紫キャロ、それから白キャロがあったはず? おばちゃんとこでは作ってないみたいだから、猫も実物は見たことないんだけど。

 スキルが増えると出来ることが増えすぎてこわい。


 あれこれ考えつつ飴作りをしていたら、MP減ったまま始めてしまって焦げた。うわあ、大失敗。ジワジワMP減る系の生産はこういうこともあるのか。

 評価が「とても不味い」になってしまった。もちろん最低品質。もったいなや~。しかし錬金術の素材になるかもしれないので、これはこれで取っておこう。転んでもただでは起きない。


 大量に『咳止め薬』を作ってたので飴も大量になった。

 調薬ギルドで飴の納品依頼もあるといいけど、さっきはなかったしなあ…。風邪薬と一緒に持ってると便利アイテムではある?

 元々『白ラコラ』は不良在庫気味だったし、『粗麦飴水』を買った分は『無声薬』が売れれば取り戻せそうだから、『料理』と『調薬』のLV上げってことでいいか~。

 金策って何だったっけ……。



 飴作りを終えて時間とMPがちょっと余ったので、更に大鍋で『イワッシー』を煮て冷まし『猫まっしぐら』を作成した。今回で『イワッシー』も使いきりよ~、とドンドコ作ってたらこれもすごい量になってしまった。

 ……いや、迷い猫クエストはチェーンクエストっぽいし、きっと役に立つときがあるだろう…!

 あと、ニャッコとか猫型mobの好物でもあるからテイムする機会があれば狙っていきたい。無駄にならないはずよ。


 ついでにラコラの頭と皮を錬金窯にかけて『圧縮』したら『純白ラコラ』が出来たりした。純白ラコラでも飴を作るかは悩んだが、おでんがいいっていうしな…。やめておいた。

 そういえば、この飴の大元のレシピはきっとマンドラコラなんだろうなあ。効果はいったい何になるんだろうね?

リアルとは違う現象が起きるのがファンタジーでありゲーム。


評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

次回更新は9/27(金)です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 猫まっしぐらのほうが実は高く売れるのでは?
[一言] マンドラコラ飴とか口から超音波メスとか殺人デスボイス出せるようになりそう(偏見) 猫ちゃんが色々試行錯誤してる回、割と好きなんですよね
[一言] いつか使うかも、でとっておいたものは大体使わないでどんどん積み上がっていくって知ってる… 以上、捨てられないダメ人間の実体験からでした
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