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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
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70.猫の店~精霊の住処屋出張店~・後

「猫がご案内するのはガラスアクセサリー、じゃなくて、硝子の裸石ルースにゃ」

「紐で装備するニャ?」

「もちろん生産者に石を持ち込んで、アクセサリーに加工してもらってもいいにゃん」


 猫はティアラさんからもらった『宝硝子ビジュー』を天鵞絨ビロードの布(商人ギルドで陳列用品として購入)に並べながら説明。キラキラの目映さにケータくんは目をぱちぱちしている。


「あの……、俺、そんなに予算ないんだけど」


 素に戻ってしまわれた。


「にゃん~、大丈夫にゃん、宝石ほどお高くはないにゃんよ~。それに、合わなかったらお買い上げいただかないサービスにゃん」

「そ、それならまあいいけど。参考までに予算は先に教えてほしい…ニャン」

「にゃあん」


 そんなのつまらん、と一瞬思ってしまったが猫は善良な猫なのでちゃんと予算は教えてあげます。大商人にも相談してあるのでばっちりなはずよ。


「8万から12万ってとこにゃんね」

「そ、…のくらいなら、まあ……」


 ちょっと予算オーバーだったと見える。

 しかしアクセサリーにしてない捕獲用の『ムーンキャッチ』が3万なことを踏まえると、どうしても高くなってしまうのだ。

 ちなみに内訳としては無色透明の『宝硝子ビジュー』は8万、属性付きはレア度によりけり10万~12万といったところ。

 赤月夜の精霊であれば、土、火、毒、雷なので、レア度高めは毒と雷ということになる。


「まずは手にとって見てほしいにゃん~」

「う、ニャ」


 肯定の返事がニャン派かな? ロールプレイの試行錯誤が見えるとニコニコしちゃう。


「あ」


 商品への接触許可を出すと、早速ケータくんの腕輪から抜け出た精霊が裸石へ吸い込まれた。

 おお、早速の内覧。

 一応全種類並べておいたのだが、最初に入ったのはやはりというべきか五角形のペンタゴン。火か毒属性の傾向があるんかな? と見守ってると今度は楕円のオーバルへ。雷も?

 じゃあ土属性傾向の梨型ペアシェイプもか、と思いきや、見向きもされないのがちょっと面白い。火か雷なんかな? このふたつはなんか似てそうなイメージ。

 しばらくうろうろとふたつの間をさ迷っていたが、結局、ペンタゴンへ落ち着いた。


「ペンタゴンがよさそうにゃんね~。火属性か、毒属性の精霊さんにゃん」

「そんなのわかるの、ニャン?」


 ケータくんは目をぱちぱちさせて不思議そうだ。


「まだ憶測にゃんね~。そのうちもっと詳しくわかってくると思うにゃん。詳しい属性はこっちでわかるにゃ。試してみるにゃん?」


 猫はペンタゴンの赤と紫を出す。もちろん『火硝子フレイムビジュー』と『毒硝子ポイズンビジュー』である。


「ニャアン…おいくらニャン?」

「にゃふん、手堅いにゃん。赤いのは10万、紫のは12万にゃん」

「ニャ~~~」


 悩んでおられる。


「透明の裸石ルースでも属性UP効果はあるにゃん。これでも十分居心地はよさそうにゃんよ」

「ニャ…」


 ケータくんの精霊、ペンタゴンから出てこなくなってしまったからな。これでは買えないといわれても、追い出すのが申し訳なくなってしまう。


「精霊使いになると教えてもらえる話なんだけど、『ムーンストーン』や『ムーンキャッチ』に入った精霊は月夜を経る毎にちょっとずつパワーアップするにゃん。他の石だとそれはないみたいにゃ。猫の憶測だけど、ケータにゃんの精霊は元々ちょっと大きめで、この『ムーンストーン』じゃ窮屈なんだと思うにゃん」

「それは俺も思ったニャン。でも『ムーンストーン』の高品質は『採掘』じゃないと手に入らないし、何よりめちゃくちゃ高いニャン~!」


 思わずマケボを調べてしまったが、おお、ほんとだすごい高い。驚きの30万からだ。『ムーンキャッチ』より高騰してるとは知らなかった。

 生産品と違って天然物?だからだろうか。それか高品質『ムーンストーン』が元々かなりレアとか、掘るのに『採掘』LVが結構いるとか、その上で他にも用途があるとかかな?


「これはびっくり価格にゃん」

「だろ!? っだ、だから魔石か宝石を探してるところだったニャン~」


 ところどころ素が出てしまってるのがおもしろ……趣深いものですにゃん。

 なおケータくんなりに店売りやマケボは検討してみたが、試したり出来ないから、露店で探すことにしたらしい。なるほど賢い。猫は店売りで撃沈した魔宝石がいくつかあります。まあ高騰してるし、売るからいいけどね!!


「ところで精霊使いってどこでなれるニャ?」

「猫は隠者の村でなったにゃんね~。村人には親切にしておくといいことあるにゃん」

「隠者の村って、黒月夜の精霊スポットの」

「そうにゃん。タイミングばっちりにゃんね~。村周りのセーフティエリアが分かりにくいから、ソロ移動は気をつけた方がいいにゃんよ」

「ニャ…、夜だし何事も気をつけるに越したことはないニャン」


 髭をそよがせるハチワレ猫ちゃんのツンデレは可愛い。


 ケータくんはしばらく頭を抱えてうんうん悩んでいたが、結局多少高くてもいいものを買うことにしたらしい。

 『火硝子フレイムビジュー』と『毒硝子ポイズンビジュー』をお試しして、精霊が『火硝子』を気に入ったようなのでこちらをお買い上げ。


「くううう……」

「まいどありにゃん~!」


 嘆きつつも高いとは言わないのは、たぶんケータくんも風猫族について調べたんだろう。そういうとこは好感度高い。


「これ、オープンに出してやったらもっと売れるニャン?」

「にゃん~、これは猫が作ってるアイテムじゃなくて委託販売品みたいなものにゃん。転売されると先方に迷惑がかかるし、お試し無しで売る気はないにゃん」

「ニャン、ならもし石を探してるやつがいたら教えてもいいニャ?」

「猫の店は気まぐれ営業にゃん~、それでもよければいいにゃんよ~」


 ケータくんは生産は『調薬』らしく、大体ポーション露店をやってるらしい。


「それなら『薬草葉』があったら買い取るにゃん~」

「『薬草葉』はそりゃあるけど」

「猫、実は錬金術師にゃん。10個で『薬草玉』に出来るにゃんよ~。仕様変更のおかげで、他業種の他人の手を借りると効能がUPするらしいにゃん?」

「ニャ、試してみたいニャン!」


 これまで『薬草葉』は下級ポーションにして自分の戦闘後回復用として使ってきたが、そろそろ下級ポーションの作成ではLVが上がらなくなってきたそうだ。ギルドで買い取りがあるので、売るか悩んでるところだったらしい。

 ケータくんが出してきた『薬草葉』は予想より多く、猫の手持ちの『薬草玉』では足りなかった。


「にゃあ、とりあえず今回は『薬草葉』10枚で『薬草若葉』3枚と交換するにゃん」

「3枚でいいニャン??」

「猫、実は農家でもあるにゃん。これは自家製にゃんよ~」


 リーさんとポユズさんの実験によると、ポユズさんが選別して出た『薬草葉』をリーさんが『薬草玉』にして、ポユズさんがポーションにした場合、『薬草(若葉)』使用のポーションより回復量が1割増になるらしい。

 『薬草玉』は『薬草(若葉)』3枚分と代替できるそうなので、3枚で『薬草玉』と等価だ。


「手間賃が入ってない取引はだめニャン」

「にゃあ」


 生産手間賃…!

 久々に出てきたぞ。いや、猫も生産手間賃は支払ってるからもちろん必要。必要なのはわかっているのだが、釜チン代はいつもバグっててよくわからない。主にロマン羽根のせい。


「錬金術師は基準ラインがないにゃん…」

「ニャ、なら『調薬』と同じ1割でいいニャ?」

「素材の1割でいいにゃん」

「そっちがそれでいいならいいけど…、買取はギルド価格?」

「そっちが問題ないならギルド価格でいいにゃ」


 本来、買取はギルドより高額でやるものだ。ギルドじゃなくてこっちに売ってほしいのだから当然、そうなる。


 結局、まずケータくんがいつも露店で『薬草(若葉)』『薬草玉』を買い取ってる金額で買ってもらい、猫は『薬草葉』をギルド価格で買うということになった。

 あれ、なんかおかしくない?


「おかしくないの! 薬草玉はおろか、高品質若葉の買取も滅多に来ないんだぞ!」

「そうにゃん?」

「そうなの! …ニャン!」


 そうだったのか。道理でリーさんたちも高額で若葉を買ってくれたわけである。ちなみにケータくんの買取はリーさんたちよりちょっとだけ低い。これは、リーさんたちが通常買取より色つけて買ってくれてたってことだろう。

 最近はリーさんたちも自前で薬草作ってるし、猫が旅行へいってたこともあって、イベント前にまとめて卸すくらいになっていた。

 猫の畑も増えたことだし、ここらで販路が増えるのもいいだろう。


 今回の『薬草葉』で『薬草玉』が出来たらそれはそれでまた買い取ってくれるとのことだ。調薬師にとって『薬草玉』は今、なかなかホットな素材なんだって。それは知らんかった…。

 マケボでも『魔法玉』出してるから『薬草玉』の価格を見ることなんて久しくなかったしなあ。


 『錬金術』のLV上げはとにかく地道な『圧縮』が基礎になっている。猫の体感では、『錬成陣』は使っていてもそこまで経験値入ってないんだよね。『変成』が出たお陰で素材消費少なめでもLV上げ捗りそうにはなったが、それでも地道な『圧縮』に勝るものはない。『変成』は1つから出来る分、素材がどうしても高めになるっぽいし。

 そんなわけで、素材をもらえた上に、更に買取までしてくれるのは猫にとってありがたさしかないのである。

 つまりこの取引はwin-win。やったぜ。


「…これ、やるニャン」

「にゃん?」


 ケータくんからトレードで渡されたのは、おお! 『紅茶(ラヴツレ)』だ!

 『ラヴツレ』はハーブティーにも出来るんだけど、その場合は『ラヴツレ茶』になるので、これは紅茶が入ってるフレーバーティー。


「くれるにゃん? ありがとうにゃん~!」

「ドゥーアにチャノキがあって採取出来たから、『調薬』のLV上げに作ったニャ。つ、作りすぎたからやるニャン」

「紅茶好きだから嬉しいにゃん~、ドゥーアにはチャノキがあるにゃんねえ」


 ケータくんはたぶん猫のために紅茶を選んでくれたのだろうと思うけど、『ニャッコの寝床』で紅茶に目覚めた可能性もなきにしもあらずなので余計なことは言うまいよ。

 それに、ドゥーアにチャノキがあるのは楽しみだ。しかも採取でとれる。野生の木なのか? それとも茶摘み体験が??

 謎だ。楽しみだな、ドゥーア! まだ行かんけど!


 お礼に『鍵魔法玉』他、『魔法玉』の詰め合わせを渡し、今後ともよろしくってことで、ケータくんとはフレ登録した。

 猫にもにゃん友が出来たぜ!

 


 ケータくんを見送ったあとは、まったり露店。

 さすがに黒月夜前日とあってみんな忙しいらしく、顔は見れなかったがメールはいっぱい来た。みんな楽しそうで何よりだ。黒月がありそうな場所の情報も教えてもらったりして、ほくほく。

 ほどなくしてタイマーが鳴ったので今日の露店は終わり!


 久々にセルバンテス(執事)さんに会えるかなと思ったけど、こちらもニアミスだった。鳥追いに忙しいらしくなかなか自由都市にいないっぽい。なんでも春は巣立ちの季節だから、間引き依頼が多いんだとか?でボーナスハッピータイムが各地であるらしい。

 宅配便に手紙を入れて送ったら、セルバンテスさんは律儀にも手紙を書いて宅配便に入れてくれた。執事にあるまじきファンシーなレターセットだったことには笑ったけど、更に達筆だったのが、似合ってるんだか似合ってないんだか。

 そんなわけで何気に彼とも文通が始まっている。これはこれでなかなか楽しい。

 この前は『卵の殻』が送られてきて『レアだけど使い道がない虚無ドロップです。お納めください』と書かれていた。虚無ドロップ…!

 レアだけあって数がそれほどないのでまだ手をつけられてないんだけど『変成』で何か出来ないかな?と期待しているアイテムだ。

 なおもちろんロマン羽根のやり取りは続いており……つまり、猫はしばらくまだ成金だ。

 お金ってありすぎると困っちゃうもんだね。にゃふふん。



 さて、猫はしばらくは自由都市にいる予定だ。

 やりたいことはいろいろあるけど、今日はなにしようっかな~~!

これにて3章完結です。な、長かった…!


ここまで読んでくれてありがとう、そしてお疲れさま! 楽しんでもらえたなら幸い。

楽しかった!という方はブクマや評価などもらえるととても嬉しいです。

すでに下さった方、また、いつもイイネやコメントくれる方々は本当に本当にありがとう!



またしても猫の寄り道が多すぎて回りきれず、廃都編が終わりませんでした。ドゥーア、ルイネ編は5章で回る予定です。今度こそ!

では4章は?というと途中でカットインしちゃう自由都市編になります。猫のホームタウン・マケットをブラブラ散歩。まったりブラ猫の予定です。


幕間は番外編(モブ視点)と掲示板(『????スレ』)です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 成金猫がブラ猫したら、散財の危機が… でも、楽しいからしょうがないよね
[良い点] 更新ありがとうございます。 次の章も楽しみです!
[一言] 風猫族NPC向けマナーで好感度上がる猫ちゃん 掲示板でNPC扱いされる日も近いにゃん
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