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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
1章 初心者猫はお金が欲しい
14/259

13.書庫の罠

区切りの関係でちょっと短めです

 錬金釜はインベントリに仕舞うと時間が止まる。なので露店をしまい、露店通りを出た後にいったんマイルームへ帰らせてもらい、錬金釜を置いてきた。あとガラスも置いてきた。軽い……!

 そしてルイの手綱をフーテンさんに引いてもらいつつ、錬金術ギルドへ。

 既にリーさんは到着しており、他に三人知らない人がいた。


「ランちゃんこんにちは。書庫の話、教えてくれてありがとう!」

「どういたしましてにゃん! リーにゃんにはやってほしいことがあるにゃん~」


 やってほしいこと?と首を傾げたリーさんにフーテンさんがかくしか~と伝えてくれる。

 その間、私は知らない三人に自己紹介をされた。


「初めまして猫ちゃん? 俺はフーテンの知り合いのヤマビコ。こっちはポユズ、そっちはエドワーズ」


 人族で黒髪がヤマビコさん、イントネーションが関西系だ。背はフーテンさんと同じくらいで高め。街着らしく一般的な服装をしているので職業は不明。


 ポユズさんはこのゲームのエルフっぽい種族ルイネア。サラサラの金髪を後ろで結って流している。キリッとした美形。そして服装は男装の麗人風。


 エドワーズさんは小人族かな? 身長130cmくらいの小柄さ、茶髪。小人族は大人になっても少年のような顔立ちの年齢不詳の種族だ。


 小柄な人型種族は生産加工に秀でた種族と、魔法系に秀でるけどものすごくどんくさい種族と、素早さ器用特化で非力魔力少ない種族といる。

 それぞれ地人族、魔子族、小人族という。小人族は人族だが、地人族と魔子族は妖精族。同じように見えても微妙な差がある。

 なお地人族と魔子族は身長が低いだけで、顔立ちには年齢が出るそうな。小人族だけが永遠の少年少女してる。なのに人族。不思議だ。


 種族特性的に小人族は風猫族とほぼ同じなので、小人族にはなんだかちょっとシンパシー。

 風猫族は妖精族なのでテイマーなどの異種族交流に特性ついてるけど小人族にはない。代わりに身体能力が全体的に小人族のが高いという特徴がある。


 ちなみにフーテンさんは黒髪の人族だ。背が高いけどヤマビコさんと比べるとひょろっとしてる。

 後ろ髪だけちょっと長い、ということに後ろから見て初めて気づいた。ファッションなの?


 リーさんは赤髪の人族。赤毛のゆるふわショートカットで、泣きぼくろのある美人さん。ポユズさんとお揃い?のような服装。もしかして二人とも学園都市装備シリーズをアレンジして着ているのかな?

 ポユズさんはパンツスタイルだけど、リーさんはロングスカートだ。


 なお以前に会ったモルタさんは茶髪の人族だった。

 人族が多いのは、PVP要素の陣営問題が根強く関わってくるから、らしい。自由都市にいるのは、人族か風来坊の種族が多いそうだ。つまりルイネアのポユズさんは珍しい。


 彼らはフーテンさんがよくつるんでる人々で、クランというわけでもないゆる~い感じの付き合いだそうな。クラン作ると面倒で大変だから作ってないらしい。クラン戦みたいなのがあるんだって。それはめんどくさそう。


 今回はリーさんが秘密の書庫へ行くというので、野次馬でついてきたようだ。


「いや、秘密の書庫とか言われると気になるやん?」

「秘密の書庫というか、ただの書庫なんだけど、入ったときにちょっとした仕掛けを動かしたら、『隠された秘密に辿り着いた』てアナウンスが来たにゃん」

「うええ!? 猫ちゃんその話は聞いてない!」

「今初めて言ったにゃん」

「ですよね!? その秘密アナウンスはスキル付きじゃなかった?」

「取得可能になってたにゃん、『魔道工』」

「それは新スキルだわー! 錬金術界隈では聞いたことないスキルよ。名前からすると、魔道具が作れるようになるスキルかしら?」

「まだ取得してないからわからないにゃん~。SPはあるけどやることがたくさんあるにゃん」

「あ~。トマトとか全然急がなくていいからねえ」

「は?トマト??」


 ヤマビコさんが件の調理師さんだったらしく、ヒールミニトマトは買い取りたい申し出があった。後でちゃんと交渉まとめるということで、今は書庫へ。


 ちなみにこのゲームのPT人数の上限は6人。フーテンさんにPTを作ってもらい、全員加入していざ錬金術ギルド。


 ギルドそのものは入会してなくても入ることが出来るし、三つある売店のうちひとつは、誰でも利用できる。しかし残りの売店や、資料室へは入会者しか入れない。

 とはいえPTに一人でも入会者がいれば、資料室には入ることが出来るそうだ。持つべきものは友だにゃん?


 早速資料室へ入り、先程の司書さんに「書庫にあった本がもう一度読みたいにゃん」と伝えると案内してくれた。


「ランちゃんは何の本を探して書庫に行くことになったの?」

「『真円錬成陣(Ⅰ)』の使い方本にゃん」

「えっ? 真円? 菱形ではなく??」

「真円にゃん。受付で会った見知らぬお兄さんにもそれ買うより二個上を薦めるって言われたにゃん。でも猫は……猫はぁ! 散財がしたかったにゃん…!」

「ランちゃん!?」


 リーさんに二度見されたが、ご安心ください!


「大丈夫にゃん、増築拡張もして使いきったにゃん!」

「なんということでしょう…!」

「俺が猫ちゃんに大金を渡したばっかりに…!」


 大金は…流れるときは一気だよね。ほら大きいから、勢いがよくて……。


「にゃあ~。倉庫は元々欲しかったにゃん。アイテムがたくさん入るにゃん。ガチャで出た『大きい箪笥』を置きたかったにゃん」

「『大きい箪笥』があると収納安心だよねえ~。錬成陣は?」

「衝動買いにゃん。人気のないものを使うのが錬金術なのに人気のない錬成陣を使わないなんて片手落ちにゃん?」

「それは一理あるような?」

「それとこれとはまったく違う話のような?」


 そんなこんなで書庫についた。


「ありがとうにゃん~」


 司書さんに礼をいうと、件のランプを示される。


「書庫って本のためとはいえ、どこもかしこも薄暗いよなあ」

「ランプが消えると追い出されるしね」

「回転を早める仕様よ」


 ランプが消えると追い出される仕様は知らなかったな。どのくらいで消えるかわからないけど、いちいち追い出されてたらたしかに読書は大変なような。


「リーにゃんは光魔法使えるにゃ?」

「私の魔法は回復と水ね」

「僕、光あるよ?」


 ポユズさんが光魔法持ちだったらしい。そして僕っ子。


「発動体指輪してるにゃ?」

「うん? してる」

「ならそれを外してもらって、いちばん簡単な光魔法の、指向性のない魔法?ていうやつをこのランプに向かって使ってほしいにゃ」

「え? いちばん簡単な魔法っていうと『光球』かな」

「光球はバリバリ指向性あるやろ」

「あ、あの『光よ!』てやつじゃない?」

「ああー! なんかあったねそういえば。ええと…」

「メニュー見ないと思い出せないやつ」


 よほど使わない魔法らしい。


「わかった、『灯』だ!」


 指先をランプに近づけてポユズさんが『灯』という魔法を使う。ランプがふわっと灯り、書庫が明るくなった。


「おお!?」

「えっ、アナウンス来た!?」

「SPキマシタワー!?」

「謎スキル来た!?」

「書庫ではお静かににゃん?」

「おっとぉ」


 司書さんがにっこりしていて怖かったので宥めるとすぐ静かにしてくれた。よかった。


「錬金術関連じゃないスキルが出たっぽい~」


 フーテンさんが首を傾げている。


「にゃん? 『魔道工』じゃない?」

「『魔纏術』だって」

「魔力を纏うにゃん? 鳥の魔法にゃん」

「知っているのかランデン!?」

「猫のオススメ本を読むにゃん!」


 フーテンさんには『羽根大全』をおすすめしておいた。


「ランちゃん、あの光の前に指輪を外したのはなにかあるの?」

「それはこっちの『真円の書』に書いてあったにゃん。ええと……あった、ここにゃん」

「魔力源へ魔力を注ぐ際の注意点……、あら、本当。外すように書いてある」


 リーさんには『真円の書』を託した。

 ポユズさんたちは似たようなランプのあった場所について話している。


「指輪を外して『灯』とか、明らかに古参お断り、初心者が発見することを狙った仕掛けだよね」

「でも光魔法って取るの面倒やろ?」

「別の魔法を育ててから属性変換を習いにいく。今はどうなってるかわからないけど」

「初心者でも発動体指輪は入手出来るから、意外と気づかれてなかったのかも?」

「冒険者ギルドの書庫もこの仕掛けじゃなかったか?」

「冒険者ギルドでもやったけどアナウンスはなかったにゃん」


 試し済なので会話にお邪魔。


「そっかあ。あそこは別に隠されてはいないからかな?」

「でも時間で追い出される?とかはなかったから読書が捗ったにゃん」

「それは重要かもしれん。書庫の仕様まじめんどいもんな」

「学園都市が出て何がよかったって、読書の邪魔されないのがよかったよねえ」

「学園都市にも書庫はたくさんあるから回ってみてもいいかもね」


 三人も本棚をあちこち見ている。


「……ハッ! めちゃくちゃ読みふけってた!」


 フーテンさんが我に返った。


「その本、とっても面白いにゃん?」

「面白いわ~~。猫ちゃんはこれでロックランドバルバトロスを知ったわけね」

「そうにゃん。そうしたら実物が売ってたからつい買うっていってしまったにゃん」

「なるほどねえ。…あ、そうだ忘れてたわ、猫ちゃん、あやしいスポットを」

「あ。あの椅子にゃん」

「どれどれ……おお、たしかに」


 フーテンさんは椅子に座り、怪しい本を無事発見した。


「これ、リーがキーになった方がいいかな?」

「どうかしら。ランちゃんはやりたくないのよね?」

「猫は見える罠は踏みたくないタイプにゃん」

「なら私が錬金術師として踏ませていただきましょう! 」

「街中戦闘は先に警告出るから大丈夫とは思うけど、もし何か出てくるようなら、猫ちゃんはすぐ俺の後ろに隠れてね~」

「お前は魔法師やろがい」


 ヤマビコさんがフーテンさんの首根っこを掴んで下がらせる。ついでに猫も一緒に下がる。

 フーテンさんはどうやらガチ魔法師タイプらしい。固定砲台型? やはり杖職人の知り合いもいるかもしれないな。

 一応なにかあったときのためにと下がり終えると、リーさんが本へと向かっていき、すぽんと本を取った。


 書庫の灯りが切れたように真っ暗になり、リーさんの持つ本が光り始める。

 パアーッと強い光があふれて眩しくて思わず目を閉じると、次の瞬間には別の場所にいた。

次回、ついに猫の冒険が……!?


猫が書かないのでフルネーム書いておく。

フーテン・ライテン

ポユズ・ポミカン

リーリンカー・ネートート

ヤマビコ・ウミカワ

エドワーズ・ワーズワース

読み上げの問題でカタカナしかつけられない仕様。


身長、猫は100cmくらい。種族平均くらいにしてる。エドワーズはおそらく種族限界の高身長と思われる。


評価、ブクマありがとうございます。管理画面にお星さまが出てびっくりしました。

今後とも猫をよろしくお願いします。


地人族が人族になってたミスを修正しました。妖精族です。(240210)

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― 新着の感想 ―
[一言] >リーリンカー・ネートート どうせなら文字が似てる様なリーリンカー・ネーションにしちゃったら見栄え良かったのではないかな?
[一言] フーテン・トラサンじゃなかったか……
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