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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
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43.新しい仲間を求めて

 お、きたきた。

  1羽だけフワッと来るもんだと思ってたけど、群れで来た。といっても5羽ほど。飛んできたのもいれば、ぽてぽてと歩いてきたのもいる。すでに個性があるな。


 そしてなるほど、これが『魔物の心』。5羽のうち2羽がテイム可能、3羽はテイム不可だ。

 見るからにモブっぽい、特徴のない子は駄目なのかも? と思って眺めていたら、テイム不可の子はちょんちょんとつついたらすぐ森へ帰っていった。

 ふむ、普通のピジョネはああいう動きをするから、残ったテイム可能個体は特別だよ、て感じの演出なんかな?


 メタなことを考えつつ、残っているピジョネたちを見る。


 1匹はメタボ鳩だ。眠たげな目にぼてんとした体、色は意外と綺麗で、くすんだ苔緑から灰青へグラデーションしている。尾羽根も長いので雄なんかな。体長40cmほど(尾羽根を除く)。


 もう1匹は逆に、かなり小さい。メタボ鳩はもちろん、飛んでいったモブ鳩と比べてもずいぶん小柄だ。尾羽根も短く、ころんと丸い。体の割には脚が大きい。体長は15cmないんじゃないか? 結構個体でも差があるな。

 こっちの子は真っ白で、脚だけ赤い。一心不乱に豆を食べている。嘴が高速過ぎて顔がよく見えない。ざ、残像だ…。


 ちなみにメタボ鳩は体格の割りにあまり食べておらず、ボーッとしつつ啄んでは「うーん、こののど越し」みたいにじっくりと味わっている。グルメか?


 どっちも個性が際立っているが、白いのはヒーラーっぽいイメージあるし、欲しいのは魔法アタッカー。

 メタボ鳩にしよう。



 餌付けした状態でテイムを使えばいいはずだが、せっかくなので従魔法の『チャームアップ』も使っておく。

 プワーン、とハートが膨らんでパチンと弾けるエフェクト。このハートが大きいほど効果が期待できるとか、なんとか。そんなに大きくなかったな。まあいいか。


 後は手をかざして、『使役』のアーツ『テイム』。まずは失敗、しかしエサが切れない限り襲ってこないそうなので、余裕がある。

 『テイム』『テイム』『テイム』『テイム』……なかなか成功しないな。

 『テイム』『テイム』『テイム』……あっ。


『ピジョネのテイムに失敗しました』


 ……。

 飛び立って逃げられてしまった…。

 食事の邪魔をしたから嫌がられたのかもしれない。うーむ、食後に挑むべき子だったか。


 餌付けオンリーでの『テイム』はLV差があると成功しにくいとも聞くし、さっきの鳩は大きかったのでLV高い個体だったのかもしれん。



 さてもう1匹はもう逃げているだろう、と思ったらまだ一心不乱に食べてた。よく食べるな。

 この色といい、小柄な体といい、君、もしや野生ではご飯があたらないタイプか?


 うーん。

 ヒーラーだったら役割被っちゃうんだけど、まあそうそうレア個体に当たることはなかろう。

 せっかく呼び寄せたのだ、試してみようじゃないか。


 再び食事中だが失礼して、『テイム』!


『ドゥドゥーのテイムに成功しました』

『従魔に名前をつけてください』


 ………。

 完全に騙された。


 まさかドゥドゥーとは………。

 なんでピジョネに混ざってるんだ。


「……ルビー」


 だってあんよが赤いから。

 テイムしちゃったもんは仕方ないな!




 テイムすると食欲が落ち着いたのか、ぱた、と動きを止めてこちらを見るルビー。お、嘴も赤い。ルビー感ある!

 ルビー、テイムするのはピジョネだから赤い目の子がくるかもな~と考えていた名前だ。 でもこの子、目は黒だな。

 こうして改めてみると、シルエットはちょっとでかい文鳥っぽい。顔もきゅるんとしてかわいいじゃないか。


 これが鶏かといわれるとかなり微妙なんだけど、ドゥドゥーは「平原で歩く小型~中型の鳥」であって、鶏なわけじゃないらしい。

 ドゥドゥーってほら、妄想をタマゴにするから、野生でいるといろいろなミックスをするんだって。でも鳥型を生むとなぜかドゥドゥーの性質を継承する。つまり飛べなくなるし、雄でも雌でも関係なく妄想タマゴを生むようになる。

 結果として「平原で歩く中型までの鳥は全部ドゥドゥー」みたいなことになる、そうな。

 妄想がつよい…!



 さて、ステータスチェック。


 ドゥドゥーのルビー。

 とにかく素早さが飛び抜けている。あの速さは食事だけではなかったらしい。

 素早さが高い分、魔力とMPは平均よりも低め、と鳥型には珍しい。避けタンク出来るタイプ? 斥候するには紅白の色合いがネックになるか。


 持ってるスキルは『星属性魔法』『狙う』『健脚』『地団駄』。

 属性魔法スキルも、鳥型は普通、ふたつ持ってるもんなんだけどひとつ。でも星属性はたぶんレアだな?

 持ってる魔法は『フェザー』『フライ』のふたつ。魔物の魔法はLV1につき2個。ルビーの星魔法は1なので、これだけだ。

 たぶん『フェザー』が『軽』の制限解除版、 『フライ』は浮遊系と思われる。残念ながら攻撃魔法はなし。

 『狙う』持ちだし、飛ぶ鳥ではハズレといわれる投擲物理アタッカータイプっぽいな。そのうち『投擲』を覚えるはず。今の状態ではかなり微妙な立ち位置。


 まあドゥドゥーなら(食べる方の)卵要員としてもいいので、問題ない。

 ……ルビーさん小さいから卵はウズラの卵サイズだろうか? これで鶏卵サイズだったらそれはそれでホラーなんだが。


 『地団駄』は魔物固有の、セルフバフスキル。

 『従魔法』にもLVが上がると覚える『ステップ・ステップ』という全体バフの踊り(?)があるんだけど、これの元が『地団駄』と言われている。

 『地団駄』も育てていけばいずれは全体効果になるし、『ステップ・ステップ』と重ねがけ出来るらしいから、そうなると化けるスキルではある。


 装備はルイのお下がりの『赤いスカーフ』をあげよう。うんうん、似合う似合う。

 それから魔力MP控えめだし、レトのお下がり『ポーションポケット』も持たせておく。ポーション各種入れてある。『ハッピー豆』は入ってません。


 しかし歩く鳥ということはルイに着いてこれない従魔の移動問題……。


 試しに『フライ』を使ってもらったが、うん、これ、浮くだけ魔法ですな。移動できない。押したり引いたりしようとすると着地してしまうし、なかなか癖のある魔法だ。

 更に『健脚』はスタミナが減りにくくなるスキル、これを持ってるならと試しに走らせてみたけどこれも、そもそも元々のサイズが小さすぎる。ついてくるのはやはり無理そう。

 解決するまでは荷車移動ですな。


 ルビーのサイズなら猫でも抱えていけるから、ルイに乗っていない限りは持ち歩けるんだけどね。飛ばなくても大きさの割には軽いし。


 早速PTに組み込み、猫(レト)、ルイ、ルビーのPTになった。

 にゃふん、ついに仲間が増えたぞ!




 新しい仲間を連れて、街道を行くこと1日。

 マイルームで休み休みじゃないととてもやってられない道のりだが、急ぐ旅でもなし、のんびり、ゆっくり。


 次第に森が増えてきたところで、今度は街道を外れて森の中へ。

 街道と違い凹凸が多く、ガタガタするが、荷車で行けないこともない。整備されているが、木の根とかはどうしようもないものね。


 この道はメインストーリーで有志たちが作った、巣を解体するための工事道だそうだ。

 なので森のど真ん中を突っ切るルートでも、荷車が通れる幅も確保されている。ありがたや~。

 この道がなければ、猫はルビーを一旦マイルームへ置いてこないといけないところだった。庭にルビーを単独で放つのは危険な気がする。ラコラ的に…。


 そんなわけで御者台に猫とルビー、ルイの頭の上にレト(落ちそうでちょっと不安)。ルビーは食べてるときの気迫は何処へいったのか、丸くなってうつらうつらしている。なかなか大物。



 進むうちに森は深くなり、緑が濃くなってきた。土を固めて作られた道から、木の板をいくつも渡して作られた橋のような道へと変化していく。

 なんだか自然公園でも歩いているみたいだ。


 熊でも飛び出してきそうな雰囲気だが、『道』というものは整えるとセーフティーエリアになるらしい。だから、道を外れない限りは敵に襲われない(イベントを除く)。

 この工事道もしっかり『道』として整備されているので、安全は確保されているそうな。


 これ、下は沼地か何かなのかな? かすかに水音がするような。

 尾瀬の道のようで、風情がある。それにしては少し薄暗いけども。


 ところどころ咲いている花が綺麗だなーと眺めていたら、飛んできたトンボが花に食われた。

 食虫植物…!

 と思っていたら鳥が来て花ごと食べた。

 更に道の外の草陰からワニが出てきて鳥を。

 そのワニを熊が…。


 ええ………。

 ハイキングコースかと思いきや、道を外れたらとんだデンジャラスコースだったわ…。


 一応、適正LVは越えているので戦闘しても大丈夫なはずなのだが、こんな連鎖する危険なエリア絶対やだ。道から外れたりしないぞ。

 なによりルビーはLV1、今後更にどんな敵が出るかわからない未知の場所より、ジェリとかの平和なエリアから始めたい。

 安全を取る道中だ。



 ひたすら進んでいくと、ちょっと開けた場所に出た。大きな木がいくつか生えており、それが目印になっている。

 うむ、攻略サイトで見た通り。


 プレイヤーが何人かたむろしていて、猫を見ると「やあ」と手を上げた。


「BOSSなら10組で、90分待ちだよ」

「托卵泥棒しに来たにゃん~」

「堂々としたこそ泥発言、嫌いじゃない」


 戦闘服だけどそんなに嵩張ってない、おそらく斥候担当の男性はうなずくと「ちょっと待ってて」と他のプレイヤーに声をかける。


 巣の卵は別にBOSSドロップではないが、BOSS部屋の採取スポットから出るので、BOSSを倒さず取るのはあまりよろしくない。

 しかし調べたところ、ここの托卵は放置する人が大半らしいので、ちょっと分けてもらえないかと思った次第だ。


 ワイバーンの巣には「巣にある卵がすべて失われると、異界の扉が開いてBOSSが赤ジェリになるらしい」という怪談じみた噂があり、卵を拾うにしても1、2個残すのがお作法となっている。一種のジンクスですな。

 メインストーリー経験者ほど赤ジェリを嫌う傾向にある。くだんの赤ジェリは攻略サイトの画像で見る限り完全に血の塊なので、まあ状況が状況でこれが出てきたら最悪よな、というのは理解する。

 ちなみに普通の赤ジェリは透き通った赤いゼリーと全然違うため、余所でトラウマを刺激される人は少ない。

ルビーが仲間になった!


立てたフラグをしっかり回収する猫。

鳥枠、予想通りだったでしょうか。


評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >まさかドゥドゥーとは………。 >なんでピジョネに混ざってるんだ 「素晴らしく運がないな。君は。」 おのれ!ドゥドゥ-!
[一言] まあブレーメンだし飛べるピジョンは来ねえだろうなぁとは思っていた(笑) 浮遊出来るなら首輪&リードつけて牽引という手もありそうだけどMPが無駄に消費されそうだしやはり荷台に乗せるのが一番か
[一言] さぁ、皆さんご一緒に 「このドロボー猫!!」
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