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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
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42.カウント教本

 ルイに乗って街道を行く旅路、再び。


 ポーツからアルテザへ出発。

 その前に早速、荷車をルイに引いてもらい、猫は御者台へ。

 運送ギルドへ寄ってアルテザ行きの荷物をドンと積んだら、準備万端だ。ルイもやる気が漲っている。


 真っ直ぐいく街道であれば、荷車屋台は何の問題もなく進んでいく。

 やはり荷車の御者台に座る方が、鞍に乗るよりは安定感があるね。ゲームなのでサスペンションも完備らしく、それほど揺れもない。快適、快適。

 ただ、クッションは欲しかったかな。今度ふかふかのクッションを買いたい。


 荷車には階段を降りられないという致命的な弱点があるのだが、それはまあ、マイルームにしまえばいいしね。

 ダンジョン内でどうしようもなく立ち往生することが希にあるらしいんだけど、そういうときは『リターン』しようね、というのが荷車の世界だ。ゲーム世界だからこその強引な解決!


 ちなみにオプション部品に『ミニチュア』という小型化の魔道具があって、これを取りつけると荷車をインベントリにしまうことが出来るようになる。こちらが正統派解決法。


 めっっっちゃ高かった! 上級者用装備ですな。

 まあ、買えるわけないにゃんね~~。


 オプションといえば、『屋台』は『荷車』のオプション部品である。


 猫は別に荷車だけで、『屋台』は別にいらんかなと前は思ってたのだけど、風猫族の同胞ミーさんの店を見て気が変わった。

 幌を捲ったらお店が広がったあの光景は、すごくすごくよかったので。猫もああいうのいずれやりたい!

 そんなわけでちゃんと『荷車屋台』だ。


 元々『荷車屋台』で500万だったので、価格としては変わらない。ただ、荷車だけならそこまで手続きはめんどくさくなかったのだ。

 しかしこの屋台を取りつけるのには行政施設でクエストを受ける必要があり、たらい回し系だったのでなかなか大変だった。

 書類読んで書き込んだりするのは、ほとんどミニゲームだったね。


 そんなわけで取りつけた猫の屋台部分は、ミーさんの店をかなり参考にしている。

 店舗カウンターに出来るテーブルと、テーブルクロス。それから椅子。ミーさんの荷車には他に休憩用のクッションコーナーがあったのだが、クッションはアルテザで買う方が質がよくて安いと言われたので、自由都市では我慢した。


 ……猫の場合、売るものが野菜なことが多いから、テーブルよりカゴを並べられる方が店としては使いやすいんだよね。

 いいの! 従魔のおやつ屋は副業(?)だから!




 はい。

 早速暇を持て余しています。


 冒険者の街フロントから港街ポーツへの道より緑と起伏が多少増えたくらいで、あとはあまり代わり映えのない道のり。


 ドゥーアは鉱山の街、アルテザは職人の街。

 前者は高い山と洞窟、後者は深い森とゆるやかな山が舞台だ。

 同じように生産向けの街だが、ドゥーアでは鍛冶やガラス工などの窯系生産、アルテザは裁縫や木工、革工と別れている。

 ゲーム的にはドゥーアで初のダンジョンが登場し、アルテザでは妖精関連が充実した。妖精族の里について詳細が出たのもアルテザからって聞いたかな。


 街道はそのうち森の付近を通るようになるので、それまでに読書を済ませておくか。


 読むぞ、カウント教本!



 ……ハイ。

 なにこれややこしい。


 まず、カウントとは自分にかける変質的なセルフバフ魔法であり、ターゲットを数字に由来させる魔法らしい。

 数を数えることで標的を固定する、数を支配する魔法だそうだ。


 カウントをかけると、まず自分のLVが頭上に表示される。その後、自分のいるフィールド内で敵対、もしくは友好的存在のLVがすべて表示される。

 かけ直すと「味方全体」、LV、HP、残HP、MP、「敵全体」、筋力、素早さ……と順番にカウントする項目が変わっていく。そして最後にカウントした項目がターゲットになる。


 ……な、るほど???


 レトの頭上に数字出る、他の人に出るという形で出てたから、これはまあわかる。

 自分にかける、自分のLVが出る、その後全体でLVが表示される。かけ直すと別の数字になる。

 うん、これもわかる。数字毎回変わってたしね。


 気になるのはステータスではない「味方全体」と「敵全体」という項目があること、「最後にカウントした項目がターゲットになる」てとこだな。


 味方全体、つまりカウントを2回かけた場合、味方全体に同じ数字が配られる。この数字は表示されないそうだ。敵全体も同じく。


 ……時魔法とは数に支配された魔法であり、そのすべては数で出来ている。そしてその真価を発揮するには数に保証されている必要がある……


 ほ、ほう??


 『カウント』でいうと、その真価とは「最後にカウントした項目がターゲットになる」部分らしい。LVやHPの数字を頭上に出す、鑑定的な効果はおまけに過ぎず、本当に価値があるのはターゲット機能。

 そして「数に保証されている」とは、術者自身の持つ能力としての数字、が関連してくるそうだ。

 たとえば、ステータス。

 たとえば、『属性魔法』スキルの所有数。

 たとえば、使用できる魔法の総数。


 『カウント』の真価を保証する数は、自身が所持する『属性魔法』スキルの数(2以上のとき有効かつ『時属性魔法』を含む)。

 レトがターゲットとして「味方全体」を選択出来たのは、『回復魔法』と『時魔法』のふたつを持っていたから。

 なるほど、そういう理由だったわけか。



 これだけなら『カウント』は、『属性魔法』スキルの数さえ揃っていればターゲットを距離や対象人数に関係なく固定するというすごい魔法だが、もちろん難点はある。


 まず、『カウント』のターゲット固定効果が乗る魔法は、『カウント』の次に放つ魔法に限られること。

 そして、他の能動的行動を一切とらず、『カウント』の示すリズムに従って同一魔法を使い続ける限り、『カウント』の効果は持続する。


 どうやら『カウント』はターゲットを固定して魔法を使った時点で、鈴のような音が術者にはし始めるらしい。

 リン、リンと鳴って、その示されるタイミングで同じ魔法を使い続ける限り、ターゲット固定効果が持続するのだとか。ちなみに鈴の音の間隔は使用している魔法LVで異なるらしく、LVの高い魔法ほど間隔が広いんだって。


 レトが猫にポーション使わせたり、パウダーくしゃみでめっちゃ怒ったのもそのせいだったのかも。あれでタイミングがズレそうになったから怒ったのか。すまんことをした。



 えーと、まだあるな。


 ……『カウント』が乗る魔法は、カウントした数字で割りきれる消費MPである必要がある。また、その商(切り捨て)を更に時魔法LVで割った商(切り捨て)により、算出された数字は分割される……


 はあん、なんだって?


 ええと、『味方全体』は2回『カウント』するから、2で割り切れる消費MPの魔法じゃないといけない?

 5MPとか、15MPの魔法はダメなわけか。


 これ、味方全体はまだいいけど、敵全体は7だよ? 厳しくない??

 まあ、そもそも7属性持つのが大変か…。それだけ敵全体ダメージを与えるのは茨道ということだ。


 それからその続きはなんだこれ。商とか久々にみたわ。割った答えを更に時魔法LVで割る??

 算出された数字は分割されるってのはなんだ。

 ……あ、ダメージ量!?


 レトの場合は回復量か。

 ヒールの消費MPは40、2で割ると20。時魔法LVは1なので変わらず。

 つまり20分の1の回復量になってたってこと?


 んんん、なるほど、それなら回復量のショボさも納得だ!


 しかしこれは数字の苦手な猫には到底使いこなせそうにない……。


 というかそもそも、『カウント』のターゲットを指定する効果、使用するには属性魔法スキルが複数いるって時点で現状、猫には使えない。

 『生活魔法』さんは『属性魔法』ではない独立系統だからね。


 ……。

 うん、『カウント』覚えたけど、封印しよ。


 なんかこう、アレだ。

 カードゲームとかによくある、子分の数とか場にあるカードの枚数で強くなるカードとか、場の色によって攻撃力が変わるカードとか、あれの魔法版っぽいイメージ。

 魔法そのものじゃなくて、使用者もしくはそこに存在するものによって威力が変わってくるやつ。ステータス参照ももちろんしてるんだろうけど、ステータスより依存する数値が余所にある。


 こういうのって使いこなせると便利だし強いんだろうけど、説明書ないとまったく意味がわからないよな。場合によっては読んでも意味がわからないやつ。

 いや、うんまさにそれ。

 読まなかったら絶対わからなかっただろうけど、読んでもわからん。なんだこれは。



 肩から教本を覗き込んで一緒に読んでいたレトをつんと撫でると、はっしと指を捕まれる。握手握手。

 時魔法はレトにお任せよ~。頼んだぞ。


 それにしても、レトは本は好きで読んでるようだけど、教本を覚えられないのはやはり『ビブリオマルモ』ではないからなんだろうか?

 MPをちゃんと合わせても、やっぱり覚えられないみたいなんだよね。

 図書館に住み本を読む習性の『ビブリオマルモ』以外は教本を読めない、とかだったなら、ビブリオを経るべきだったのかなあ、とちょっと考えてみたり。まあ、もう過ぎてしまったことはどうしようもないんだけど。




 森、まではいかない程度に開拓の進んだ、少し木々の多めの道を抜けた。

 アルテザは昔は森の奥にあったそうで、ポーツからの街道にはまだ一部、こういう開拓の跡の残る道も多い。

 街道の整備依頼とかで、街道脇の木を伐る依頼もあるのだとか。


 低木が多少ある程度の平原に出たので、この辺で『ハッピー豆』を撒き、ピジョネを呼んでみようと思う。

 森から離れすぎてもいけないし、近すぎても危ないと言われたのでちょうどよいかなと。


 ちなみに『ハッピー豆』、見た目はヒヨコ豆に似ている。どこを目指してるんだこの豆は…。


 ピジョネに上げるのは生豆でも、乾燥豆でもよいらしい。弾けた『ハッピーポップ』も食べるけどそこまで好きじゃなくて、味付きは絶対食べないそう。

 おばちゃんが売ってたのは通常品質の乾燥豆だったので、半分はピジョネのエサに、半分は庭に植えてみたいところ。

 ……豆を植えるためにはまず白ラコラ王国を滅ぼさねばならない。


 適当に撒いて待ってたら来るらしいので、パラパラしたら待ちの姿勢。


ついに読んだけど、なにも解決していない気がする!


猫の理解できた範囲で説明しているのでこんな感じ(だいたい合ってる)

こういう変則的な属性があってもよかろう、という運営の遊び心なのかもしれない。素数魔法とかきっとある(?)


次回、ついに新しい仲間が登場!


評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 白ラコラ王国は柵で囲って 脱走しそうだから堀も掘っておこう でも結局新しい畑エリアを買うことになりそう
[一言] >荷車の弱点 やはりロボ…変形合体ロボはすべてを解決する… >数字の苦手な猫 値段交渉嫌いなのに交易やってる風猫族だからしかたないにゃあ… もう身も心も染まり切ってるにゃん?
[一言] 時魔法は説明を読むと色々面倒くさそう。でも実際に使うと面倒なところがフルオート化もしくはインターフェースが工夫されていて簡単だったりするのかも。ゲームをコンピュータ化するのってそういう事だと…
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